70-1392 Follicular adenoma of the thyroid gland (甲状腺濾胞腺腫)
濾胞腺腫は濾胞への分化を示す良性腫瘍である。線維性被膜により被包されているが、この被膜内にあるかどうかは診断に重要である。被膜に浸潤しているものは濾胞癌で、していないものが濾胞腺腫であり、細胞の異型度はこの差に関与しない。
濾胞状増殖には多くのパターンが見られる。
@ 胎芽性腺腫・・・索状構造が顕著であり、濾胞形成は乏しくコロイドをごくわずかにしか、あるいは全く持たない。
A 胎児性腺腫・・・@と同様の細胞であるが、わずかにコロイドをためた小濾胞を形成する傾向にある。本例はこれだと考える。
B 単純性腺腫・・・正常の量のコロイドを持った成熟濾胞を示す
C コロイド腺腫・・・単純腺腫より大きく多量のコロイド含んでいる
D 好酸性細胞腺腫・・・腫瘍は小さくそろった核と豊富な好酸性の細胞質から成り、コロイドは少ない充実性腫瘍である。
E 異型腺腫・・・分裂像、細胞密度の増加、核異型がはっきりしない被膜侵襲を示す濾胞性腫瘍であるが、確実に癌とは診断できないものを示す
本例は胎児性腺腫であると考えられる。下図では、通常の濾胞より鮮やかな赤に染まっているが、これは標本が古いためである。