Microbes & Environ. に掲載した方法です。
一度に複数の希釈系列を(混釈)植菌可能で、培養に関わる手間を減らせます。
ゲランガムを使うことでコロニーの視認性も高まり、また一度に複数の希釈段階のコロニーの様子が確認可能です(コンタミチェックにも便利です)。
動画では、準備した培地に植菌、培養(恒温槽に入れる)直前までの操作を示しています。 慣れれば、オートクレーブ後の培地からの準備等を含めて 30分/平板1枚 で作業できます。
手順
1. 準備
1) 培地(ゲランガム終濃度0.1%を含む) 80 mL
脱気後オートクレーブしたもの。 W mediumではNaHCO3をオートクレーブ前に添加。 オートクレーブ後使用まで45〜55°Cで保温する。 6穴平板1枚分に相当。
2) 基質・還元剤など
塩濃度の高い基質をオートクレーブ後に添加する場合、基質も培地同様に加温しておく(糖・アルコールなどは室温に戻しておく)。 還元剤は室温に戻しておく。
3) 希釈用培地
培養液を希釈する為に必要量準備する。
4) 培養液
活きのいいものを使いましょう。 Stationary phase手前か、少し過ぎたあたりのもの。
5) その他
6穴平板、アネロパウチ・ケンキ(三菱ガス化学)、パウチ袋、注射針、シリンジ、エッペンチューブ、チップ、ピペットマンなどなど。
2. 培地に還元剤、基質を添加
加温した培地に還元剤と基質を添加する。 その際に、添加する溶液を直接培地表面に注ぎこまないよう、バイアル瓶の壁沿いを伝わらせながら添加する(ゲランガムと基質などが反応して塊になります)。 泡立てないよう転倒混和し、45〜55°Cで保温する。
3. 培養液の希釈
培養液を培地を使って希釈する。 エッペンチューブに適量培地をとり、ピペットマンで900 µLずつ分注する。 シリンジと注射針を使って、培養液をエッペンチューブにとり、ピペットマンで100 µLの培養液を培地が入ったエッペンチューブに添加する(10倍希釈)。 10倍希釈を使って同様に希釈していき、102を作り、以降103...と希釈する。
4. 培地を平板に流し込む
6穴平板の蓋に予め試料の名前や希釈段階を記入しておく。 平板の蓋を開け、培地をウェルの8分目まで流し込む。 残った培地は固化を確認するために、捨てずにとっておく。
5. 培養液の植菌
培養液(希釈液)をウェルの培地内に植菌する(植菌量はお好みで)。 全てのウェルに植菌したら、平板を水平に回転させて混合する。 蓋を閉めて平板の角をテープでとめる。
㊟ 4と5の作業は可能な限り素早く行う。 培地が固まるまでに植菌と混合を終える必要があります。
6. 平板をパウチへ→ガス置換
平板をパウチ袋へ移し、アネロパウチ・ケンキ(1また2枚)も入れて、チャックを閉じる(アネロパウチ・ケンキをテープで袋内に固定すると良い)。 この時点では培地が固化していないことが多いので、平板の移動は慎重に行う。
平板の入ったパウチ袋内のガスをガス置換装置(三紳工業)等を使って置換する(給排気を繰り返す)。 ガス利用性微生物の場合はガスを充填(給気)して、非利用性なら排気して置換を終える。
ガス利用性微生物の場合、パウチ袋のチャックを閉じるだけで無く、専用クリップで袋の口を閉じて、更に事務用クリップなどで専用クリップを固定する(培養温度によっては、ガスが膨張してチャックが開き、専用クリップまでが外れる)。
一度に複数の平板で培養する場合、全ての平板がパウチ袋に入ったあとにガス置換すると、効率よく実験が出来ます。
7. 培養
平板の蓋を上にして恒温槽で培養する。
コロニーの釣菌にはロールチューブの時と同様にパスツールピペットを使うか、シリンジと注射針を使ってコロニーを釣菌(吸出)します。 コロニーを培地に懸濁・希釈して、6穴平板で純化を繰り返します。
以上
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絶対嫌気性微生物の代表的な分離培養法のひとつです。
R. E. Hungate & J. Macy(1973)を基に改変しています。
手順
1. 準備
1) 培地(2倍濃度)40 mL
脱気後、オートクレーブしたもの。W mediumではNaHCO3をオートクレーブ前に添加したもの(原著では滅菌ろ過したものをオートクレーブ後添加する)。オートクレーブ後、使用前に45°Cで保温する。ロールチューブ8本分相当。
2) 4% Noble agar suspension 5 mL
Noble agar (Difco) を複数回超純水で洗浄したものを、約4%となるようにして、50 mLバイアル瓶に分注、脱気、オートクレーブ105°C、1分する。オートクレーブを繰り返し行わないように、オートクレーブ後直ぐに使用する。45°Cで保温する。
3) 培地
培養液を希釈する為に、必要量準備する。釣菌後の植菌用にコロニーの数だけ準備する。
4) 培養液
活きのいいものを使いましょう。Stationary phase手前か、少し過ぎたあたりのもの。
5) 氷冷水
底の浅いバット(発泡スチロールの蓋などでいい)に氷を敷き詰め、水を張ったもの。
6) パスツールピペットとシリコンチューブ
パスツールピペットに綿栓をして乾熱滅菌をする。シリコンチューブは1 m程の長さにする。
7) その他
注射針、シリンジ、エッペンチューブ、チップ、ピペットマンなどなど。
2. 培養液の希釈
培養液を培地を使って希釈する。 エッペンチューブに適量培地をとり、ピペットマンで180 µLずつ分注する。
シリンジと注射針を使って、培養液をエッペンチューブにとり、ピペットマンで20 µLの培養液を培地が入ったエッペンチューブに添加する(10倍希釈)。
10倍希釈を使って同様に希釈していき、102を作り、以降103...と希釈する。
3. 寒天溶液に培地(2倍濃度)を添加
培地(2倍濃度)は基質や還元剤を添加したもの加温しておき、5 mLをシリンジと注射針を使ってとりだす。加温しておいた寒天溶液のバイアルに添加し、泡立てないようによく混ぜる。
4. 培養液の接種
培養液(希釈液)約0.1 mLをシリンジと注射針を使ってとりだし、寒天培地に接種する。泡立てないようによく混ぜる。
5. Roll tubing
培養液を添加した寒天培地のバイアルを氷水水に浸し、バイアルを素早く回転させる。寒天がバイアルの表面で固まり、ロールチューブの完成(3から5は、希釈系列ごとに行った方がいい)。
6. 培養
口を下向きにして培養する。
7. 釣菌、植菌
コロニーが現われたロールチューブから、適当な数のコロニーがある希釈系列を選び出す。バイアルの口にたまった凝集水をシリンジと注射針を使って捨てる。
シリンジと注射針を使って培地をエッペンチューブに少量(〜200 µL)とりだす。
パスツールピペットをシリコンチューブと連結する。チューブの末端を口で軽く咥えておく。パスツールピペットの先をバーナーの火で炙って曲げる。
パスツールピペットの先を培地が入ったエッペンチューブに漬けて、先端を湿らせておく。
バイアルのキャップを開けて、パスツールピペットの先端をコロニーに当てて、吸い出す。
ピペットの先端をエッペンチューブ内の培地に漬けて、培地を出し入れしてコロニーをエッペンチューブに移す。
シリンジと注射針を使ってコロニーをよく潰してから、培地にコロニー懸濁液を植菌する。
以上
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