タ イ ト ル 更新年月日 鉢物の低迷−園芸店とホームセンターの店頭の違い− 2012/05/20 花き生産者の代表者は誰か? 2012/05/05 かたい蕾で収穫した花は花保ちが良いという神話 2012/04/23 スマイルカーブ 2012/04/09 ヒートポンプ除湿による病害の抑制 2012/04/02 農業は産業になっているか? 2012/03/18 フラワーバレンタインの感想 2012/03/12 花き市場からの情報の活用 2012/03/08 バラを作る意味 2012/02/22 日本の切花は芸術品 2012/02/15 生産者は花専門店の御用聞きになるべき 2012/02/07 小規模なバラ生産者の戦略 2012/02/02 フロリアード2012の宣伝 2012/01/26 花き流通業界の再編 2012/01/18 縮小社会での大学再編 2012/01/13 最近の消費者は、と嘆くなかれ 2012/01/08 2012年を迎えて 2012/01/01
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★鉢物の低迷−園芸店とホームセンターの店頭の違い− (2012/05/20)
鉢物の市場価格が低迷しています。鉢物は人気がないのでしょうか?園芸店からは「鉢物がさっぱり動かない」、「ホームセンターに花苗のシェアが奪われて経営が苦しくなってきている」といった声が聞かれます。
鉢物を取り扱う販売経路としては園芸店とホームセンターが主体ですが、園芸店とホームセンターでは対象とする顧客が異なり、経営方針も大きく違っています。MPSジャパンの花き産業の流通コストに関する調査結果によれば(pdfファイル)、花き専門店とホームセンターの販売にかかる経費は大きく違っており、割合で見ると、利潤と管理経費はほとんど同じですが、人件費と販売経費が花き専門店の方が大きくなっています。一方金額では、花き専門店の仕入れ原価が高いことから、花き専門店ではあえて価格の高い高品質の商品を仕入れていることが判ります。当然、販売経費、管理経費、人件費も圧倒的に高く、利潤もいくぶん高めです。したがって、園芸店では高品質な鉢物や花苗を仕入れて、経費をかけて積極的な販売を行い、店頭での従業員による接客活動によって情報提供を行うことが戦略であると読み取れます。
しかし実際はどうでしょうか。園芸店とホームセンターの店頭写真を見て下さい(pdfファイル)。どこか違うような気もしますが、同じようにもみえます。園芸店の店頭のレイアウトはホームセンターとほとんど区別ができない状況であり、園芸店が目指しているポリシーが来店した顧客に伝わっていないのではないでしょうか。
以前のコラムで「園芸店は農産物展示即売所(2002/02/06)」について記しましたが、いまだに店頭の工夫が見られない園芸店が目につきます。生花店は切り花をキーパーに陳列して売っているけれども、売る商品は花束やブーケ、アレンジなど店の技術・工夫を凝らして販売をしています。これに対して園芸店はどうでしょう。市場で仕入れた鉢花をただ並べ替えて、ひどい場合には生産者の出荷したトレーそのままの状態で販売しています。切り花のように手を加えることはほとんどありません。これではどこかの農協の農産物(野菜)販売所とどこが違うのでしょうか?農産物陳列即売所は薄利多売が本来の目的であるはずですので、当然、販売経費の節約、仕入れ価格の低減を図って低価格・新鮮・安心をねらい目にしており、園芸店とはまったく異なる経営方針であるはずです。
私は「園芸は文化だ」と思っています。「文化でメシが食えるか!」という声が聞こえてきそうですが、そうであれば真剣に儲かる農産物陳列販売所を指向してはいかがでしょう。園芸店はもっと目指すべき本質的な道があるのではないでしょうか。中途半端な態勢でホームセンターと同じ土俵で争っていると、農産物展示即売所以下になり下がってしまうのではないかと心配しています。
日本花き生産協会は各県の花き関係組織が支部として登録することで成り立っています。しかし、この10年間支部登録から脱退する県が次々と出ており、約1/4の県が脱退して、全国の花き生産者を代表する組織としての位置づけが崩壊しかけてきています。その理由の一つに、これまで事務局を担当してきた各県の農政部などが定員削減などの影響で組織が変わり、事務局を担当できなくなったことに加えて、次の受け皿として機能してきた農協組織が全農支部となったために県単独事業に対して積極的に動けなくなったことなどがあげられます。
一般に、農業は一次産業として位置づけられていますが、農業という産業を代表する組織、花き生産業という一次産業界を代表する組織はどれが相当するのでしょうか?
共選共販を行っている産地では農協がその役割を果たしていると思いますが、花き生産業界では共販ですら一般的ではありません。農協は組合員である生産者から成り立っているという観点からすると、農協は一見一次産業を代表する組織のように見えますが、実際の法人としての農協の業務は農家への資材の販売や共済、金融、不動産などの事業が大きく、一次産業を代表する組織とは言えなくなってきているのではないでしょうか。その結果として、農協の主張が生産者の考えと必ずしも一致しないという現象すらみられます。
花き生産も含めて、一次産業を担っている農家の経営規模は小さく、自動車工業界や家電製造業界などのように国政に対して大きな声を上げることが難しい状況です。よくテレビなどでは、農協が全国から農家を動員してTPP反対全国集会といった形で「農家の声を聞け」と気勢を上げている光景が報道されますが、「農家の声」なのか「農協の声」なのかが判らなくなる時があります。
農協は経営体として独自の価値観を持っており、その価値観は必ずしも一次生産業を担う花き生産者の価値観と一致しているとは言えません。今だからこそ花き生産者の思いや将来の展望を正面から考える組織が必要になってきていると考えるのですが、現実にはどうもその反対の動きが始まっているような気がします。
花き生産が産業である限り、行政や政治を動かす力が必要です。花き生産者の声を結集して代弁する強い組織が必要だと思います。
★かたい蕾で収穫した花は花保ちが良いという神話 (2012/04/23)
バラやキクは蕾がかたい状態で収穫されます。バラでは花弁が開き始めた花を出荷すると、市場からは「開きすぎ!」とクレームが寄せられます。
バラでもキク、カーネーションでも蕾から開花し始めまでの時期に大量の糖を必要とします。花弁の細胞はこの時期に細胞内に糖を取り込んで浸透圧(細胞内の糖濃度)を高め、これによって花弁の細胞は吸水して膨潤化し、急速に花弁の面積が増加します。開花始めから完全開花までは花弁が急速に大きくなるため、人の目から見るとダイナミックに変化しているようにみえますが、実際には花弁の細胞は水ぶくれで大きくなっているだけで、その原動力は蕾から開花始めまでの間に花弁細胞に蓄えられた糖(浸透圧)です。
花は収穫されるまでは株からふんだんに糖の供給を受けることが出来ますが、切り花として収穫された途端に株からの糖の供給がなくなり、切り枝の中に含まれているわずかに残った糖に頼らざるを得ません。
したがって、蕾がかたい状態で収穫を行うと花弁の細胞は充分な糖の供給が行われず、浸透圧(細胞内の糖濃度)が高まらないため細胞が吸水できず、完全開花まで到達できずに途中で咲き終わってしまいます。これに対して花弁が開き始めた状態で収穫された切り花は株から充分に糖の供給を受けることができるため、花弁細胞の浸透圧(細胞内の糖濃度)は充分に高まっており、花弁の細胞は充分に吸水して完全開花まで達することが出来ます。
切り前を遅くして収穫した花は咲き切るとすぐに散ってしまう印象がありますが、そうではありません。むしろ充分に糖を蓄積した切花は、咲き始めから咲き終わりまではエネルギーをほとんど必要としないため、花保ち期間が長くなります。さらに花保ち剤(フラワーフード)を使うと鑑賞期間はより長くなります。これに対して固い蕾で収穫された切り花は必要な糖の供給が株から受けられず、花保ち剤に入っている微量な糖ではとても間に合わず、エネルギー不足で咲き終わってしまいます。
この数年バラは香りのある品種が多くなっています。香りの成分は花弁の成長と共に作られますが、香りの成分は炭水化物ですので、これの生合成にも糖が大量に必要とされます。当然、香りのバラは固い蕾ではなく、咲き始めで収穫することで日保ちが長くなると同時に充分な香りを楽しむことが出来るようになります。
蕾から咲き切るまでの期間が一定と考えると、蕾が固い方が開き始めより鑑賞期間が長く感じられるかもしれませんが、実際には固い蕾で収穫した切り花は咲き切る前にエネルギー不足で途中で終わってしまうため、鑑賞期間が短くなります。
切り前を遅くして収穫した切り花の方が鑑賞期間が長いことは生産者もうすうす気が付いてはいるのでしょうが、花き市場からのクレームを素直に信じ込んでしまっているのではありませんか?
切り前が遅く、開き始めてから収穫された花は流通過程で花弁に傷が付きやすく、取り扱いに注意が必要です。しかしその反面、ギッチリ詰め込んでの航空輸送が出来ないため、輸入切り花にはまねをすることの出来ない国産切り花の差別化戦略としても活用できます。
キクでは、咲き始めてから収穫したフルブルームマムの花保ち期間が通常の堅切りした輪ギクより長いことは既に知られていますし、咲き切った豪華な花は新たなキクの魅力を提供してくれます。
そろそろ消費者が花の魅力を存分に味わっていただけるために、生産者も花き市場も販売店も、切り前を再度考え直す時期にきているのではありませんか?
スマイルカーブって知っていますか?台湾のパソコンメーカーの会長が提言した収益構造を表すイメージで、製品開発・企画−部品生産−製品組み立て−販売−サービスの工程を横軸に、縦軸に利益率をとった場合、開発や企画あるいはサービス業務の利益率が高く、製品組み立て業務の利益率が低く、両側が高いカーブを示して両側が持ち上がった「人が笑った時の口のような形」を示すことから『スマイルカーブ』と呼ばれています(日経エレクトロニクスpdf)。
従来の日本の産業構造は、最終組立業者を頂点として従属的支配下に部品メーカーが集まるという、いわゆる「系列」であり、付加価値(=利益率)は最終組立業者が握っているという状況でした。しかし、企業間の取引が従来のクローズな関係からオープンな関係へと変化するなかで、これまで1社の下請けでしかなかった部品メーカーも、複数の企業と取引を行うことが可能になっています。複数の企業と取引が可能になれば、技術力・商品力の高いメーカーの競争力はますます高くなり、取引の集中へとつながります。こうした流れの中で、付加価値(=利益率)は最終組立業者から部品メーカーへと移りつつあります(パワー・インタラクティブHPより)
花き業界でこの考え方を当てはめると、どうなるのでしょうか?生産者はどの工程に属するのでしょうか。園芸店や生花店は儲からないと言われますが果たしてどの工程に属しているのでしょうか。花き市場や仲卸売り業者の利益率が下がっていると聞きますが、どうなんでしょうか?いずれにおいても製品開発・企画やサービスを業務としている場合には利益率は高いはずです。
生産者:生産者は切り花や鉢物・苗物を生産しています。従来の産業構造のままに、特定の市場にしか出荷しない系列化されたクローズドな出荷体系をとっている限り、素材産業は買いたたかれる構図です。育種会社の新品種を生産して出荷するという立場であれば、製品開発・企画の役割は育種会社が果たしているため「部品生産・製品組み立て」業の生産者の利益率が低いのは当然です。生産面積の拡大以外には充分な利益を出すことは難しいでしょう。まさに生産コストとの戦いで、大規模生産者だけが生き残れる業界であり、切り花の場合には輸入切り花とまともに立ち向かうことになります。これを打開するためには、開発・企画にシフトするか、販売・サービスにシフトすることが不可欠です。前者では、高い生産技術力を前面に出して「同じ新品種であっても福井園芸のバラは違うねぇ」といわれるものを生産する、あるいはオリジナル品種あるいは独占品種を確保することが該当します。同様に、後者では営業に力を入れ情報を的確に提供することで、販売店が信頼して仕入れたいと思う仕組みを作り上げることが該当します。
販売店:本来は販売・サービス業に該当するため利益率は高いはずです。しかし、儲からないということはサービスが行われていないことを示します。ヒョッとして「製品組み立て業」になっているのではありませんか?顧客に充分な情報提供をしていますか?顧客管理が的確になされていますか?サービス業としての花の魅力を伝えたり、購入者のフォローアップをしていますか?水揚げ処理や花保ち付加技術、花束加工技術を最大限に駆使すると共に、その情報を的確に伝えることで、「あそこの生花店で買った花は最後まで咲き切ってお値打ちだった」、「花の組み合わせや配色が抜群だった」などの口コミが広がりリピーターが付くことを目指しましょう。「あの園芸店に行けば私好みの花が必ずある」とか、「管理方法に困った時の園芸アドバイザーになっていただいています」などの評価は、まさにサービス業の神髄だと思います。
花き市場:果たしてどの工程に属しているのでしょうか?販売でもないですよね?本来は「サービス業そのもの」と思いますが、市場が果たす「サービス」の意味が理解されていないために工程のどこにも属さない業態となり、利益率が低下しているのではないでしょうか。市場が果たすべき「サービス」とは何ですか?市場手数料を0.5%あげることすら猛反発を受けている状況は、まさにそれに見合うサービスがなされていないと言われているように思います。昔ながらの「大卸」といわれた立場で、出荷生産者にも買参人に対しても「売ってやっている」という姿勢が時々気になる市場があります。この点に気が付いた市場には自然と商品が集まり始めますし、買参人の欲しいと思う商品が集まれば高値が確保されます。出荷生産者に対しても買参人に対しても、きめ細やかな情報提供に努めることで利益率が向上するのではありませんか?
生産者、花き市場、仲卸、専門店、このいずれにおいても「製品開発・企画」ができるはずですし、「サービス」ができるはずです。
今一度、生産者がすべき「開発・企画とサービス」とは何か、花き市場や仲卸会社がすべき「開発・企画とサービス」とは何か、専門店がすべき「開発・企画とサービス」とは何かを考えてみてください。
★ヒートポンプ除湿による病害の抑制 (2012/04/02)
ヒートポンプの基本的機能は家庭用エアコンと同じです。一般家庭ではエアコンを暖房のみで利用することはなく、むしろ除湿や冷房での使用が主体で使われています。このことから考えて、バラ生産におけるヒートポンプの暖房利用は特殊な利用方法といえ、除湿や夜間冷房での利用拡大が今後の重要な鍵となります。
バラ生産においてウドンコ病、灰色カビ病、ベト病などの病害の防除は栽培管理上の重要な課題となっています。灰色カビ病の発生は夜間湿度と大きな関係があり、湿度90%以上で濡れ時間が1時間を超えたり、80%で濡れ時間が3時間以上経過したりすると多発します。同様に、ベト病の発生は夜間湿度が90%を超えると多発し、夜間湿度を90%以下に制御して濡れ時間を小さくすることでその発生は抑制される。また、ウドンコ病の発生は昼間に高温乾燥、夜間に多湿条件になると多発します。このようにバラの病害の多くは夜間の多湿条件によって助長されることから、ヒートポンプを用いた夜間の除湿は病害の抑制に著しい効果を発揮します。
国内で生産されるバラ品種の80%はヨーロッパの育種会社で育成された品種であり、それらの品種の多くは日本への輸出国であるインド、東アフリカ、南米諸国でも生産されています。日本の気候は夏季の高温多湿、冬季の日照不足など必ずしもバラの生産に適していないのに対して、熱帯高地の輸出国は年間の日平均気温が18℃前後で高い日射量があり、バラの生育に最適な気候であるため、同じ品種であっても日本で生産されるバラに比べて花径が大きく、花色も鮮やかとなります。これらの国々で生産される切りバラは、輸出のための航空輸送中に花傷みが発生しやすいため、花弁の厚い高芯剣弁のバラ品種が生産される傾向にあり、さらに花保ち性の観点から芳香の無い品種が選択されています。花弁の厚いこれらの品種は灰色カビ病やウドンコ病にも強く、ヒートポンプを設置していない日本の生産施設でも比較的生産が容易な品種といえます。しかし、同じ品種を生産した場合には見栄えは圧倒的に輸入切りバラの方が優れており、国内産のバラの国際価格競争力は強くありません。
このような観点から、輸入の切りバラに対抗するためには輸入バラに対する差別化が重要な課題であり、長時間の輸送に耐えられない花弁の柔らかいバラ品種や芳香性の高いバラ品種の生産が今後重要となってきます。これらの品種は灰色カビ病、ウドンコ病、ベト病にも弱く、ヒートポンプによる除湿機能を活用した環境制御が不可欠です。例えば、ラ・カンパネラは花弁が傷つきやすく灰色カビ病に弱いため、国際的にはほとんど評価を受けていませんが、日本国内では高い評価を受けている品種の1つであり、この品種の生産にはヒートポンプによる除湿が不可欠です。
国内産のバラの国際競争力を高めるためにも、ヒートポンプを暖房だけに使用するのではなく、除湿や夜間冷房にも積極的に取り組むと共に、国際的な品種ではなく、日本での除湿や夜間冷房に適した品種への改植を行っていただきたいと思います。
これからの春から初夏にかけてのシーズンと初秋から晩秋にかけてのシーズンは、暖房施設として導入したヒートポンプを大活躍させることが、これからの日本のバラ生産を大きく変える契機になるものと思います。
役職柄、様々な農業経営審査を依頼されて審査委員として担当する機会があります。素晴らしい生産技術を持っておられ、地域のリーダーとして活躍されておられる農家の経営状況を見ると、経営者の時間あたりの労働収益が1,000円以下の場合をよく見かけます。日本の最低賃金が750円前後で、パートタイマーの時間給が800〜1,000円の時代に、経営者の労働収益がそれと同等、ある場合にはそれ以下の事例が見受けられます。
農業後継者対策についての意見を良く問われますが、私の答えは一つです。「サラリーマンをするよりも儲かる農業を実践していれば必ず後継者問題は解決できます」。
確かに農業には時間を自分の都合で有効に使えるとか、家族との時間を十分に確保できるなど、一見時間に拘束されないようにみえますが、実際には収穫や出荷調整の作業は毎日課せられますし、植物には土日祝日がありませんので、サラリーマンのように定期的な休日や長期休暇を取ることも困難です。
農業は自由業なので人間関係のストレスが少ないという方がおられますが、そんなことはありません。資材の購入には業者との折衝が必要ですし、生産物を出荷する場合も農協職員や市場関係者などとの人間関係で取引価格が決まりますので、人間関係の構築は極めて重要です。ましてやパート従業員の管理や、地域のコミュニティーの参加など、サラリーマン以上に人間関係のストレスは多いように思われます。自然を感じながら心豊かな生活ができるという意見についてはその通りかもしれません。
いずれにしても、農業が産業として認知され、後継者が継続して就農し、新規参入も活発に行われるためには、少なくともサラリーマンの給与に匹敵する収入の保証は必要と考えます。大学卒業者の年収は300万円程度かと思います。年間労働時間を2,000時間として時間給を計算すると1,500円の労働収益になりますが、経営者であれば2,000円以上の労働収入が基準になるのではないでしょうか。
確かに「心豊かな生活」は何物にも代えられない価値を持っていますが、産業人として農業者が認知されるためには最低の給与所得が保障されることも重要です。
今一度、年間所得ではなく時間あたりの所得という観点から経営を見直してみてください。
今年で2年目になるフラワーバレンタイン。関係者の努力もあって、ポスターやのぼりなどを生花店や園芸店でよく見かけましたし、フェイスブックなどでは毎日のように情報が発信され、結構盛り上がっていたように思います。実際の効果に関してみると、首都圏では売り上げが増加したとの報告や男性客の購入率が大幅にアップなどの効果が出てきているようですが、地方では思ったような効果が出てきていないようです。私の住む岐阜でも「・・・」という反応でした。ちまたでは「東京で勝手に盛り上がって、本当に花き業界として経済効果があがるのだろうか?」という声も聞かれます。
流行を考えてみましょう。アパレルなどでは当然のことといわれていますが、まずは東京で仕掛ける!それが定着し始めると札幌や福岡などの「地方の東京」に相当する都市に飛び火し、その後ようやく「なんか東京ではこれが流行っているんだって!」という形で地方に浸透していくようです。この点から考えると、フラワーバレンタインは着実に第一歩を歩み始めたと言って良いと考えます。来年はもっと首都圏で大きな動きにさせる必要があります。岐阜までその効果が及んで来るには最低でも3年はかかるかもしれませんが、流行とはそういうものと理解しなければいけないと思います。
流行が広がる法則には、イノベーター(2.5%)→ アーリーアダプター(13.5%)→ アーリーマジョリティ(34.0%)→ フォロワーズ(34.0%)→ ラガード(16.0%)という考え方があります。イノベーターは革新者といわれ、新しもの好きでとりあえずやってみようというパイオニアの人達です。アーリーアダプターは初期採用者といわれ、流行に敏感で、情報収集力があり、オピニオンリーダーとなって大きな影響力を発揮する人達です。アーリーマジョリティは前期追随者とも呼ばれ、ある程度評価が高まった段階で採用する人達です。ここまで来ると流行しているんだということが実感できるようになり、地方に住む人達の間でもフラワーバレンタインが流行っているんだと実感できるようになります。
恐らくフラワーバレンタインを進めた関係者の所には、地方の方々から「地方との較差が大きいので活動方針を考え直して欲しい」などの声が寄せられているものと推測しますが、私は今年の進め方で問題ないのではないかと考えています。地方にいる人間としては少々寂しい気持ちもしますが、もっともっと東京で盛り上がってください!新しい取り組みはマスコミも取り上げやすいので、全国放送のテレビや全国紙などでドンドン取り上げてもらってください。地方のアーリーマジョリティにとって、「テレビでやっていた」という情報は行動を始める大きな力になります。
伝え聞いた話ですが、チョコレート業界から「本当のバレンタイン」という表現に対してクレームが寄せられたそうです。序ノ口の力士が横綱から稽古をいただいたようなもので、「将来有望なので今のうちに圧力をかけておかなければ」といったところでしょうか。ありがたいお話だと思いましたし、大きな流れになる可能性を評価いただいたものと思います。
来年のフラワーバレンタインは今年以上にもっと盛り上がりましょう!
市場での売買情報は販売委託した生産者にとって貴重なマーケティング基礎情報です。どの様な買受人が商品を購入してくれたのか。どの様な価格で購入してくれたのか。定期的に購入してくれている買受人は誰か。卸売市場法の中には規定されていませんが、一般論として販売を委託された市場は委託者(生産者)に対してこれらの情報を提供する責務を負っているものと考えますし、多くの市場では請求されれば提供していただけるようになってきています。
最近物流システムが発達し、花き市場で生産者を見かけることが少なくなりました。20年前には、花き市場を訪問すると思わぬ生産者とお会いすることもあったのですが、最近はさっぱりです。花生産者にとって「花を生産する」ことは最も大切な仕事ですが、近年は「花を売る」ことや「ニーズをつかむ」ことも大きな仕事になってきています。
市場で「どの買受人が自分の花を購入してくれているのか」は情報として入手することができますが、「他の生産者が生産した花の評価」や「需要の高い花のトレンド」は直接市場に出かけて出荷されたものを見たり、ウェブ販売情報を入手したりしないと判りません。あるいは、買参人席で競売に参加している買受人との会話も重要な情報になります。
自分が生産している商品だけを見ていると改善点や課題はなかなか見つかりませんが、他の生産者の出荷商品と価格を比較することで、買受人のニーズを理解することができます。(「カーネーションの価格」参照)
花生産者の皆さん。もっと積極的に時間を作って花き市場を見に行きませんか?
バラを生産しておられる生産者は何のためにバラを生産しているのでしょうか?「バラ生産者だからバラを作っている」のではないですよね?「バラで生計を立てるため」ですか?
「バラを欲しいと思う人がいるから」ではないですか?
「重油が高いから暖房を控える」という発想の根源には、「暖房しても暖房費が回収できるほど高く売れないから」という考え方があると思います。しかし消費者からみると、「重油代を上乗せして支払うほど欲しいと思わない」から高値が付かないのであって、『欲しいと思うバラであれば高くても買いたい』のではないでしょうか。
バラを買ってくれるお客さんは、どんなバラが欲しいのか?自分が作っているバラは、その要求を満たしているのか?を考え直す必要があります。「農地があるから」、「温室があるから」、「苗が植わっているから」。これはバラを生産する理由とはならないと思います。現状を考えると、バラを生産するよりも野菜を生産した方が収益性は高いのではないでしょうか。実際に、バラ生産からホウレンソウなどの葉菜類に転向した生産者を何人も知っています。韓国の亀尾園芸輸出公社(KMC)はスプレーギクの生産・輸出で有名な生産会社ですが、3年前からキクの生産温室をパプリカの生産温室に転換したとのことです。
すべての生産業は消費者による評価を受けて変化するのは経済の法則です。経済の法則に従わない生産業としては工芸品がありますが、その工芸品業界も様々な努力をしています。バラは工芸品ではありません。誰のためにバラを作っているのかをよく考えましょう。
当然のことながら、需要に応じた技術力と供給能力は要求されます。
農水省花き産業振興室の佐分利応貴前室長が講演で「日本の花はArtといわれています」と言っておられました。愛知県のバラ生産者の三輪真太郎氏から聞いた話ですが、イングリッシュローズのDavid Austin Jr.とケニアから輸入したイングリッシュローズの切花品質について論議をした時に、David Austin Jr.は『ケニアの花は大きくて最高品質』と主張したのに対して、三輪氏は『花弁の傷や茶色の変色があり、とても販売価値はない』と意見が一致することがなかったそうです。
日本は季節の変化がはっきりしており、自然も豊富で、植物に求める価値観がヨーロッパと大きく異なります(ヨーロッパと日本の植物感の違いは氷河期が関係しています)。ヨーロッパに切花を輸出しているケニアやインドの切りバラを見ていると「物としてのバラ」という印象を受けるのに対して、優秀な日本の生産者のバラはその品種の特性を最大限引き出した「Art」かもしれません。
Artはそれを評価する人がいて成り立ちます。私は朴念仁ですので、美術品や芸術品の価値があまり判りません。美術館で解説なしに感動できる物もなかにはありますが、多くは解説を読んでしかその価値が理解できません。同様に、テレビの「何でも鑑定団」をみていて中島誠之助氏の解説を聞いても何故これが数百万円の価値があるのか判りませんし、結構多くの人が「ザ〜ンネ〜ン!」といわれているのをみると美術品・工芸品は難しい世界だなぁと思ってしまいます。
国産のバラを愛する日本の切花消費者はArtを理解できる人達だと思います。もし、バラの消費マーケットを広げようと考えるなら、国産のバラを愛してくれている消費者の感性をできるだけ多くの人達に解説して理解してもらう努力をする必要があるのだと思います。バラの消費構造の上位に位置する「バラ好き」や「バラマニア」がバラを愛してくれている理由は様々です。バラの香りが好きな人、バラ品種の歴史が好きな人、庭でバラを栽培している人、色や形の変化が好きな人、プレゼントした時に喜んでもらえた人・・・。
バラの消費構造の底辺に位置する「バラを買ったことのない消費者」にバラの魅力を伝えながらバラを買っていただくことが大切です。朴念仁の私でも美術館で解説書を読みながら鑑賞すると、納得してその良さが理解できるのと同じかもしれません。
★生産者は花専門店の御用聞きになるべき (2012/02/07)
生産団体から依頼を受けて講演する時に、最近は必ず質問するようにしています。「皆さんが市場出荷した品物の競売率は何%ですか?毎回のように商品を買ってくれている買参人がおられると思いますが、誰か知っていますか?その販売店を訪問したことがありますか?」
多くの生産者が市場での取り扱い状況を把握しておらず、誰が買ってくれているかも知りません。果たしてこれでよいのでしょうか。
多くの花き市場では30%の競売率を維持するのが難しく、多くの商品が予約相対、市場ネット販売、注文取引で販売されています。競売前取引が主流になってきている現状では競売に出てくる商品は引き取り手のなかった残り物という状況になり、競売価格は下がる一方です。競売価格は生産者として経営が成り立つ価格ではなく、出来る限り競売前取引される商品を生産して出荷することが重要です。
愛知県の米村浩次氏が2010年の日本花き生産者大会の講演で「予約相対価格は競売価格の1.5倍」と言っておられました。買参人は安い花を買おうとしているのではなく、確実に売れる花であれば少々高くても買いたいと考えています。不確定要素のある競売ではなく、確実に希望数量を確保できる予約相対や市場ネット販売で購入することを選択しています。
生産者は競売で販売される商品と市場ネット取引で販売される商品の違いを認識しておられるでしょうか?また、市場で売れている商品と買参人が本当に欲しいと思う商品が異なることを知っておられるでしょうか。本当に欲しい商品がないので、代替商品を購入している事例は意外と多いです。
自分が出荷した商品を定期的に購入してくれているりリピーターの買参人とお話ししたことがありますか?「最近は市場のシステム化が進んで買参人番号が記載されなくなったので判らない」といわれますが、いずれの花き市場でも「経費削減で致し方ない状況ですが、聞かれれば教えます」といっています。
少なくとも、自分の商品を定期的に購入してくれている買参人を認識してください。そしてその要望を聞きましょう。出来れば販売店を訪問して、自分の花を購入してくれた消費者の声を聞きましょう。もし可能であれば、バラ生産者なら50本のバラの花束を持って、良く買ってくれるお客さんのご自宅を訪問してお話を伺いましょう。
量の販売を目指す4,000坪の大生産者や共販組織に所属する生産者はそのようなことをする必要はないかもしれませんが、1,000坪前後の家族経営で少量多品種の生産者だからこそ、時間を有効に使うことが出来るはずですし、少しでも販売価格を確保するためにも販売店の要望を積極的に伺いましょう。
販売の原点は「御用聞き」だと思います。
小規模生産者が一般的な売れ筋品種を生産し続けている限り、平均以上の収入を上げることは出来ません。一般の産業界では当然のことですが、ターゲットを絞ってビジネス展開を行うことは重要です。赤いバラを生産する生産者は誰をターゲットにしているのでしょうか。
1,000坪前後の生産者が3,000坪以上の生産者と同じ品種を生産している限り、生産規模=収入の図式が成り立ってしまいます。むしろ、3000坪以上の大規模生産の方が収穫や選別作業での効率が高まって、収益率は高くなるでしょう。小面積で高収入を上げるためには大規模生産者とは異なる品種構成を考える必要があるでしょうし、販売戦略も当然異なってくるはずです。
バラの消費者はピラミッド構造を取っています。ピラミッド構造の一番底辺には「バラになじみの低い消費者」がおり、その上にはバラの魅力を理解し始めた「バラ好きの初心者」がおり、その上には「品種を区別できるバラ好き」がいて、さらにその上には「バラマニア」がいます。当然、底辺の「バラになじみの低い消費者」の数は圧倒的に多く、上の階層に行くほど人数は少なくなってきます。しかし、購入金額は上の方が高く、下の階層ほどバラに支払う金額は低くなってきます。3,000坪以上の大規模生産者は生産コストを削減できており、出荷できる切花本数も多いため、「バラ好きの初心者」をターゲットとした販売戦略に対応することが可能です。一番底辺に位置する「バラになじみの低い消費者」に対しては、低価格で年中一定価格に対応できる輸入のバラが適しているのかもしれません。
1,000坪未満の小規模生産者が収益を上げるためには、当然のことですが「品種を区別できるバラ好き」や「バラマニア」をターゲットとした販売戦略を選択する必要があると考えます。これらのピラミッドの上位に位置する消費者は人数が少なく、需要も大きくありませんが、1本あたりの購入金額が大きく、大量に出荷できない小規模生産者にとってはマーケット規模も丁度良いのではないでしょうか。これらの消費者は高品質なバラを希望していますが、生産面積が小さいために充分に手をかけて生産することが可能です。
ただし、大きな課題は「バラ好き」や「バラマニア」の人口割合が低いことです。恐らく1%未満ではないでしょうか。人口40万人の岐阜市では、女性人口の0.5%は1000人です。1000人の女性が年間5回「バラらしくないバラ」を購入したとして、岐阜市の需要は年間5000本で、年間50週として1週間では100本、週3回のセリ日あたりでは30本と1ケース以下の需要しかありません。当然好みの品種が異なるため、岐阜市での1品種の需要は週10本未満ということになります。200万人の名古屋市になると50本程度の需要に達し、ようやく1品種1ケースの出荷が可能になるでしょう。
このように考えると、地方の花き市場に対しては「複数の品種のミックス出荷」が不可欠ですし、首都圏でもせいぜい数ケースまでの需要なため、全国の市場に広く出荷する対応が不可欠です。生産規模が小さいからこそできることがあります。ターゲットを絞ってビジネス展開を行いましょう。
来年の2012年4月5日から10月7日にかけてオランダ・フェンローでフロリアード2012が開催されます。フロリアードは国際博覧会協会AA級の博覧会で、10年に一度オランダで開催され、私自身は果樹から花に研究を変え始めた頃の1992年のズーテルメア会場、そしてバラに研究の主体を移し始めた2002年のハーレマーメア会場に出掛けました。
今回のフロリアード2012にも是非とも参加したいと思っていますが、今回はフロリアード基本計画検討委員とコンテスト部会委員を引き受ける立場になり、これまでの単純な楽しい参加ではなくなるかもしれません。フロリアードの企画立案を受託しているのはJTBコミュニケーションズで、委員会では「フロリアードに日本の花を出品して、日本の花をヨーロッパに広げよう!」と全国の花生産者への盛り上げを図っています。
この数年気になっていることがあります。我が家では新聞は全国紙と地方紙の2紙をとっていますが、そのいずれでも毎日必ず海外旅行と国内旅行の全面広告をみかけます。不景気とか暗黒の時代といわれる割には二十数万円前後のツアーが必ずといって良いほど企画されています。
花生産者がフロリアードを盛り上げるのは、業界人として当然のことかもしれませんが、国内の花き業界の発展を考えると、日本国内の多くの消費者がフロリアードに出掛けて、日本から出品された花が金賞を受賞しているのを見ていただくことも重要ではないかと思います。
フロリアードの企画立案を受託しているJTBコミュニケーションズさん、是非ともフロリアード見学ツアー企画を立案して大々的に宣伝していただけませんでしょうか。そして、花き業界の皆さん。フロリアードツアーに積極的に協力して頂けませんでしょうか。今回の会場はドイツとの国境に近いフェンローです。「ドイツ・ロマンチック街道と世界の花の祭典フロリアードツアー」、「イングリッシュガーデンを見ながら世界の花を体験するフロリアードツアー」、「スイスアルプスとフロリアード」など・・・。
世界旅行ができる消費者層と花の主要な購買層は限りなく重なります。出来る限り多くの日本の花の消費者がフロリアードでの日本の花の素晴らしさと世界で高く評価される活躍を目の当たりにしていただきたいと思います。
2012年の正月気分がさめやらぬ1月7日の神戸新聞で兵庫県生花と大阪鶴見花きの経営統合の話題が報道され、Facebookでも様々な意見が交わされていました。
報道によれば、少子高齢化による花き需要の減少に対応するため、規模拡大で集荷力を高め、システムの高度化でコスト低減を図る。全国4位の兵庫県生花と7位の鶴見花きが経営統合し、全国2位の花き市場が誕生するとのことです。
統合による取扱数量の増加について考えてみましょう。取扱数量が大きくなることは取扱金額が増加して手数料収入が大きくなることですので、システムの効率化が図れれば当然経営収支は向上します。しかし、消費が年々縮小している現状では経営統合による売り上げの増加は一時的なもので、どこかで再び他社と新たな経営統合を図る必要に迫られます。このような経営統合が繰り返されることで、全国に150社あるとされる花き市場が数社に再編整備されることになり、これ自体は大きな意味を持ちます。しかし、花の消費の減少に歯止めが掛かる起爆剤になるとは思えません。数の論理での一人勝ちを目指す経営統合は成長社会での戦略であり、少子高齢化に伴う需要減少期での戦略としては適切な戦略とは言えないかもしれませんが、大きな流れとしては致し方のないものと思います。
選択と集中によるシステムの効率化について考えてみましょう。多くの花き市場は切花と鉢物を取り扱っており、月水金の表日では切花を、火木土の裏日では鉢物を取り扱っています。切花生産者の感覚からすると、木曜日の午後に収穫した切花は金曜日の競売に間に合わないため月曜日の競売にかけられ、概ね火曜日に販売されることになり、収穫後4日以上経過して消費者の手に渡ります。これが切花の採花日表示ができない大きな理由であり、花保ち保証に踏み切れない大きな理由にもなっています。経営統合によって切花と鉢物を取り扱う市場を分離できれば1市場で両者を取り扱う必要がなくなり、毎日競売を行うことも出来、採花日表示も鮮度保証も可能になってきます。鮮度を前面に出した販売戦略も容易になってくるでしょう。当然、商品管理システムも1つにできるため、それぞれの市場がソフト会社に支払っていたソフト使用料も一括でき、ソフト管理業務者も削減できるので、システムの効率化の効果は大きいと思います。また、市場の取扱量のうちネット市場取引が大きくなっている現状で、販売店にとっては同じネット取引システム画像で切花も鉢物も毎日購入できることは極めて利便性が高く、買参人の登録が増加する効果も期待できます。
規模拡大を武器として集荷力を高めることについて考えてみましょう。生産業界は現在大きな転機をむかえており、いわゆる国内有数の生産量を誇る大産地が新たな方向を模索し始めています。大量に生産して消費される品目はキク・バラ・カーネーションに代表される上位数品目に限られ、それは海外の熱帯高地の生産国からの輸入切花品目と重なります。海外の輸出国の生産面積は国内の大産地の比ではなく、品質・ロット・価格で勝負しようとしても到底勝ち目がなく、大生産地ほど生産方針の転換を迫られています。このことは流通業界でも同じで、輸入商社と花き市場が競合することになります。日本の花き産業の特徴として品目数と品種数の多さがあります。季節感を感じさせる多様な種類の切花を提供するために出来る限り多くの品目を取り扱う必要があり、さらに販売店のニーズに応じて多様な品種を確保する必要があります。しかし、これを目指せば目指すほど集荷・分荷業務が増大し、システムの効率化を図りづらくなります。これを解消するためには、出来る限り注文・ネット市場取引、予約相対などの事前取引を増やし、宅配業界などでは一般的になっている小口荷物の分荷システムを導入することが必要になりますが、取扱数量が少ないとこのシステムを導入する意味が薄れてしまいます。選択と集中による取扱数量と品目数の増大と事前取引の重点化によって、小口であっても効率よく分化できるシステムが完備できるでしょうし、その効果として集荷力が高まることが予想されます。
集荷力の強化でもう一つの課題があります。品質です。同じバラの切花であっても生産者によって品質が大きく異なります。そこそこの品質で大量に欲しいという需要と、たくさんは要らないけれども一級品が欲しいという需要があります。第三者の目から花き市場を見るとそれぞれに特性があり、「ピン」の切花を生産するトップクラスの生産者とそれを評価して販売できるトップクラスの販売店が集まっている市場と、そこそこの品質の切花を大量に生産する生産者とそれを大量に販売したいという販売店が集まる市場、そしてそのどちらも欲しい地方市場があるように感じます。両者の販売店はターゲットとする消費構造三角形の顧客ジャンルが異なり、出荷する生産者も意識や技術・こだわり・生産規模が異なるため、必ずしも両者が両立することはないように思います。ターゲットとする相手が異なる花き市場が経営統合した場合に、その結果として特徴がなくなってしまうと、集荷力が低下することに繋がりかねません。選択と集中も重要な課題です。自動車業界では、何でもそこそこの品質で大量に販売する企業と、こだわりの技術や特化したジャンルで生き残りをかける企業に分かれ始めていますし、ハイブリッドカーや電気自動車が注目されるなかで新たな再編も始まりそうな気配です。性格の異なる市場が統合した時に、どのような方針で経営を進めていくかが大きな課題となります。
もう一点、私自身が花き市場の大きな課題と感じる項目として従業員教育があります。「企業は人」とよく言われますが、会社の方針が定まらないと教育方針も決まりません。これが明確に定まった時には経営統合の効果はより明確に出てくるものと思います。一定以上の従業員を保有できれば、教育に投資を行うことが可能になってきます。現状の150ある経営規模が小さい市場では充分な従業員教育が行われておらず、様々な問題が発生している状況が統合によって解消できるものと考えます。
受験生人口が減少しているなかで大学の再編整備が想定されています。
受験生人口が増加する時代には、いかに多くの学生を対象に魅力ある教育を提供できるかが問われ、総合大学化が進みました。いわゆる百貨店のように質の高い商品を品揃え豊富に提供することが重要で、私立大学などでは次々と新たな学部を新設し、キャンパス面積を拡大するために広い敷地を求めて郊外に移転する大学が相次ぎました。多くの学生を卒業させることで知名度を上げ、医学から工学、理学、経済、文学、商学とたくさんの学部があることで受験生の心を捉え、学生の確保に繋がりました。
さて、受験生人口が減少するなかでは同じ戦略が通用しないことは当然です。戦略としては、小さくなっていくパイを他大学から奪い取れる魅力を作って生き残る「淘汰の強者の論理」戦略か、あるいはターゲットを絞り込んで特定の分野に特化して安定した受験生人口を確保する戦略のいずれかを選択することになります。
他大学に比べて特筆できる魅力を作り出す「淘汰の強者の戦略」を成し遂げることは至難の業です。例えば、教育の質を高めて優良企業への安定した就職を保証することなどがありますが、一朝一夕にできることではありません。この魅力を完成させるためには最低でも10年を必要としますが、その間に大学経営が難しくなってしまうかもしれません。ましてや、この時代に「一人勝ち」という状況を作ることは極めて難しく、優秀な教授陣を揃えるなどの大きな投資を伴いますが、現状の学部数や学生数の増加を伴わずに(収入を増やさずに)この戦略を取る場合には、経営効率がどうしても低下せざるを得なくなります。また、複数の大学の再編統合も話題に上がりますが、統合によって一時的には学生数が増加して収入が確保され、同時に事務などの効率化が図られるため、一時的には経営改善に貢献できるかもしれませんが、キャンパスが異なるなどの要因もあって、結局大胆な効率化を図ることは難しいでしょう。
特定分野に特化する場合には、特化すればするほど対象の受験生が限定されて少なくなります。例えば、工学や農学、理学などの理系に特化すると、中部圏の受験生だけでは定員を満たすことができなくなるかもしれません。当然、関西圏や首都圏に対象地域を拡大して受験生を集める必要が出てきます。しかし、ターゲットが限定されているために受験生対策もやりやすいでしょうし、学部の枠を超えた教育連携も可能です。また、学生の就職対策も対応しやすく、意外と短期間で成果が出る可能性があります。しかし、この戦略では必ずリストラ分野が発生します。総合大学を目指した方針を転換するわけですから当然でしょう。
この両方の中間戦略としては、地域に特化した地域一番校という戦略もあります。
東大や京大とは違って、岐阜大学のような地方大学では今後どのような戦略を選択するのかが重要な時期に来ています。名古屋大学との統合?地方大学間の再編統合?岐阜大学だけでの再編?今後の行方を左右する大きな方針の選択時期が着々と近づいています。
さて、年明けに花き市場の統合の話題が出てきました。国立大学と同じようなことが花き業界でも始まりつつあることを実感しています。
生花店との話題の中で、「最近の消費者の意識レベルの低下は目に余ります。フラワーアレンジを買ってくれた方から、レジで『この花は水をやらなければいけませんか?』」と聞かれたそうです。「生花だから水が切れたら補充するのは当然なのに、それが面倒くさいと感じられることが情けない」と嘆いておられました。
人が物事を面倒くさいと思うことと楽しいと思うことは紙一重です。「水をやらなければいけないから面倒だ」と思うことに対して、「水をやると元気になるから楽しい」の違いは、自分の行為によって何がしかの変化が見られてそれを実感できるかできないかの違いだと思います。「私が水をやることで元気に花が開いてくれる」と感じられれば喜んで水をやりますが、「現状を維持するために水をやるのはむなしい」と思えば面倒くさいと感じます。
私は教育者です。学生が知識を持たないのは当然で、知らない学生に「何で知らないんだ!」といったところで何も変わりませんし、知らないことに対して「なぜ知らない」と言われても学生は答えようがありません。知らない事を恥ずかしいと思い、知識を得たことを褒められて楽しいと思えば勉強するでしょう。小学生が「どうして分からないんだ」と叱られると勉強するのが嫌になるのと同じではないでしょうか。
フラワーアレンジを買ったお客さんに「花は水をやるのが当たり前ではありませんか」と答えるのか、「水をあげると花が次々と開きますから、楽しんでみてください」と答えるのかでお客さんの気持ちは大きく変わります。
花に水をやることが大切だというのは常識かもしれませんが、嘆いても何も始まりません。むしろ業界人としては、お客さんの花に対する気持ちが一人一人高くなることによって花業界にとって大切な第一歩が始まると考えましょう。
辰年の年頭に当たって、メール年賀状を作成いたしました。ご覧下さい
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昨年は東日本大震災から始まって、終わりがみえない福島原発、ユーロ危機と不思議な円高など、大変な年でした。
しかし、今年は昨年に増して盛り上がりそうなフラワーバレンタイン、フロリアード2012と、少しは先が明るくなりそうな予兆もみえています。
昨年にも増して、「教授の一言コラム」の掲載に励みます。
よろしくお願いいたします。