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タ イ ト ル 更新年月日
生花店から種苗業界への要望 2006/11/27
観葉植物の規格化? 2006/11/17
農業協同組合の共選共販の限界と展望 2006/11/01
観葉植物開発普及協会が設立 2006/10/31
農業協同組合の限界 2006/10/27
輸入のバラを積極的に使ってください 2006/10/25
切花の賞味期限 2006/10/24
切花の製造年月日 2006/10/23
新品種の使い捨ては園芸業界の発展を阻害する! 2006/10/16
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【\】 2006/04/24
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【[】 2006/04/11
MPS-ABCの農薬の使用に対する考え方 2006/04/06
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【Z】 2006/04/03
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【Y】 2006/03/31
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【X】 2006/03/27
MPS認証制度(MPS-Florimark)の全体像 2006/03/25
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【W】 2006/03/24
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【V】 2006/03/19
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【U】 2006/03/14
花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは?【T】 2006/03/09
花きの国際流通の中でMPS認証制度が意味するもの 2006/03/08
MPS-ABC(花き産業総合認証プログラム)とは? 2006/02/16
花生産における環境対策の遅れ 2006/02/14
国際的な地産地消 2006/02/07
オランダの切りバラ産業が苦しんでいる 2006/02/08


★生花店から種苗業界への要望 (2006/11/27)

 花き種苗会社は毎年新品種を公表し,花き業界の発展に大きく寄与しています。グラビアのような綺麗な写真が豊富に掲載された種苗カタログが毎年発行され,生産農家に配布されています。また,意識の高い生産農家を対象に商品性の高さをPRするためのパックトライアルなども開催されています。種苗会社にとって種苗を購入してくれる顧客は生産農家であるため,カタログの配布やトライアルへの招待は生産農家に対してだけ行われており,生花店や園芸店などの販売店が新品種カタログを手に入れることは出来ません。また,販売店の方がトライアルに参加することも許されていません。しかし,種苗会社の顧客は本当に生産農家だけでしょうか?2006年11月13日に東京で開催された日本バラ切花協会50周年記念大会で(株)太田花き市場の磯村信夫社長が「花き業界とは生産から販売に携わるすべての業界を指す」と述べておられます。
 種苗会社から生産農家が購入した新品種は,最終的には花き市場→販売店を通じて消費者の手に渡り,その代金が再び販売店→花き市場→生産農家→種苗会社へと還元されます。種苗会社が育成した新品種を評価するのは生産農家ではなく消費者であり,消費者に新品種を勧めるのは生花店や園芸店などの販売店です。したがって,販売店が高く評価する新品種は「必ず売れる」品種であり,生産農家にとって安心して種苗を購入して生産に励むことができる品種です。販売に携わらない生産農家の感性は消費者の目線とは必ずしも一致して場合が多く,生産農家が「よい品種」と評価した新品種が必ずしも売れる品種ではないことはよく見られることです。
 生産農家にとって苗購入代金は大きな負担です。例えば,バラ生産農家が新品種を1,000株購入した場合の種苗代金は350,000円(苗代250円+パテント料100円)です。これに加えて,苗定植後の半年間は収穫ができないため1,000,000円の減収となり,購入した新品種が売れなかった場合には1,350,000円の損失となります。
 新品種を開発する者として,「新商品の市場調査の実施」は当然の義務であると考えます。本来は消費者対象ですが,せめて販売店に対する新品種市場調査を徹底して実施し,販売すべきではないでしょうか。その一環として,園芸店や生花店に「数ページの新品種カタログを配布して需要調査を行う」ことや,「新品種トライアルや新品種展示会に販売店を招待し評価を受ける」ことを是非お願いできないでしょうか。販売店から「来年販売される新品種」として高い評価を受けた新品種は,生産農家にとっても小さいリスクで安心して購入・生産できる新品種であり,無駄な投資を避ける意味でも重要であると考えます。
 販売店からは「トライアルに参加したい」という希望や,「新品種カタログを手に入れたい」という要望が数多く寄せられています。種苗会社の皆さん,是非とも御一考頂けることを期待しています。


★観葉植物の規格化? (2006/11/17)

 園芸店で販売されている観葉植物をみて思うことですが,全ての植物が規格化されて同じ形をしています。どこかのカタログ写真で見たことのある姿のものばかりです。植物の持つ多様な成長過程を感じることができません。例えば,ゴムの鉢物はいずれもスタンド仕立てで,まるで工業製品のようで面白味がありません。観葉植物生産者のイメージとして,「ゴムはスタンド仕立てが完成品」と思い込んでいることが原因であると思います。しかし,一般消費者の家庭で育てられているゴムは横枝が伸びて自由な成長をしています。
 観葉植物は購入した消費者が育てて楽しむ商品です。生産者は完成品を作って提供するものと思っているようですが,それはグリーンインテリア業界に対する商品性であって,個人の消費者を対象とした商品性とは大きく異なるものではないでしょうか。
 「これから成長していく姿が楽しみな観葉植物」や「一鉢一鉢が違う形をしていて選ぶ楽しみを感じさせる観葉植物」があっても良いと思います。消費者の感性は「植物だから同じものはないはず!」であり,「個性的なものを選びたい」という欲求を満たすことが園芸文化の発展には重要です。規格商品も必要ではあるとは思いますが,消費者のなかには「規格商品は面白くない」と感じている消費者も多くいることを理解する必要があります。
 生産者が完成品と思っているものは消費者の完成品ではありません。観葉植物は「育てて楽しむ商品」であることを忘れないで頂きたい。


★農業協同組合の共選共販の限界と展望 (2006/11/01)

 共選共販は農業協同組合の究極の生産出荷形態といわれ,産地の生産農家が生産技術などの格差を乗り越えて実現する生産出荷体制です。生産技術の高い組合員が積極的に技術指導を行うことで底辺の組合員の技術向上を図り,究極的には全組合員の技術の平準化が図られ,均一で高品質な出荷物を共同で販売していくものです。しかし現実はなかなか難しく,共選共販体制が順調に機能しているところは少ないものと思います。
 果樹での事例を紹介します。岐阜県は富有柿で有名です。高品質の富有柿を生産する有名な共選共販産地がありました。生産農家は1haを超える専業農家と30a以下の兼業農家で構成されていました。共選共販ですので,売上金額は農家の出荷量に応じて分配されていました。
 専業農家は毎年堆肥を投入して土作りに励み,樹勢を判断して整枝剪定すると共に,適宜追肥も行って高品質な富有柿を出荷しています。当然,産地を支えているという自負心を持っていました。これに対して,兼業農家は堆肥の施与も行わず,管理技術力も低く,品質は必ずしも良いとは言えない状況でした。次第に専業農家からの不満が高まり,「自分たちは堆肥や追肥など資材の投資をして高品質な柿を生産しているのに,何も投資をしていない兼業農家と同じ水準の売上金額であるのはおかしい。投資に見合うだけの差別化を考えてほしい。」 しかし,共選共販体制であるために専業農家の要望は聞き入れられませんでした。優秀な専業農家であればあるほど不満が大きくなり,専業農家が毎年数人ずつ共選共販組織から抜けていきました。
 共選共販から抜けた専業農家は,販売経路として宅配,直売を目指しました。この産地は岐阜県でも有数の高品質の富有柿産地として有名で,ゆうパックや宅配業者の注目の的となり,出荷の手間が足りなくなるほど注文が殺到し,共選共販時代とは比較にならないほどの売上をあげることが出来ました。しかし,専業農家が抜けた共選共販の富有柿の品質は極端に低下し,数年の内に青果市場での評価が下がり,同時に産地としての高い評価も失墜してしまいました。青果市場での評価が下がったことで産地ブランド力がなくなり,ゆうパックや宅配業者からの注文も激減してしまいました。
 産地ブランドを支えていたのは専業農家です。共選共販を離れたものの,短期的には自らが作り上げた産地ブランドの恩恵を最大限に享受できました。しかし,長期的には共選共販組織を離れたことで自らが産地ブランドを崩壊させ,自分の首を絞めることに繋がってしまったのではないでしょうか。
 色々なところで共選共販体制の課題を聞く機会がありますが,「産地とは何か?」を良く考えることが重要であり,大規模生産者と零細な生産者の共存で産地が形成されているという意味を理解することが重要です。


★観葉植物開発普及協会が設立 (2006/10/31)

 観葉植物は,高度経済成長に伴って1970年代にグリーンインテリアとして注目され,緑化レンタル(貸し鉢)業界が活気を帯びました。1980年代にはバブル景気の追い風を受けてグリーンインテリアが一世を風靡し,吊り鉢ブームやベンジャミンブームなどを経て最盛期をむかえました。しかし,バブル景気の崩壊の影響を真っ先に受け,この15年間は低価格にあえいでいます。時折サンスベリアなどの一時的なブームはあるものの,多くの観葉植物生産者は他の植物への転向を余儀なくされています。
 観葉植物はその需要がなくなったのでしょうか?いいえ!一人住まいの若い人達はミニ観葉が大好きです。最初に自分で育てた植物が観葉植物である人は結構多いと思いますし,苔玉仕立てにした癒し商品は根強い人気です。また,住まいに緑が欲しいと考えている人は多く,未だにグリーンインテリアは廃れていません。では何故観葉業界が低迷しているのでしょうか?
 この疑問に対する答えを探し,消費拡大の方策を講じることを目的に,2006年10月26日に観葉植物開発普及協会が設立されました。愛知県蒲郡市の記念講演会には北海道から沖縄までの観葉植物関係者211名が集まり,高知県牧野植物園長の小山鐵夫氏,沖縄海洋博記念管理財団の花城良廣氏,米村花きコンサルタント事務所の米村浩次氏,エクゾティックプランツの尾崎章氏,愛媛大学の仁科弘重氏,岐阜大学の福井博一が講演し,有意義な会となりました。
 観葉植物開発普及協会の活動は,生産者に対して新品種・新商品情報を提供すると共に商品性を向上するための技術情報を提供します。また,生産効率を高めるために沖縄,奄美大島,八丈島などの生産者と連携することで生産の効率化を図るなど,様々な提案を行うことを趣旨としています。さらに,販売業者との連携をとりながら消費者にむけての消費拡大活動をインターネットなどを通じて行うなどを掲げています(Green Amenityのホームページ)。観葉植物生産者は不況のなかで淘汰され意気消沈しているものと思っていましたが,いやドッコイ!なかなか元気な生産者が生き残っていました。
 会場には,鑑賞植物プラントハンターとしても有名な愛知県の明和園・山本勲氏や千葉県のエクゾティックプランツ・尾崎章氏らが提案する180種類にのぼる珍しい観葉植物が展示され,さらにプラネットの大林修一氏が提案する観葉植物の商品性向上プランなど,観葉植物の将来性を感じさせるワクワクとしたプランが提示されていました(pdfファイル:展示の写真)。園芸不況を生き残ってきた観葉植物生産者の皆さん!観葉植物開発普及協会に結集して日本のインテリアグリーン業界を再び活性化させましょう。インテリア業界,住宅建設業界,陶磁器業界など様々な業界とのコラボレーションなど,個人ではできない取り組みが組織化することで可能になってくると思います。


★農業協同組合の限界 (2006/10/27)

 農業協同組合は組合員が同等の権利を持って成長発展を目指すために形成されました。組合員は1票を行使する権利を持ち,農業協同組合の組織図は最上位に組合員による総会が位置しています。組合員は,大規模農家であっても零細兼業農家であっても平等に権利を行使することができ,全ての組合員が平等に発展するための組織です。高度経済成長期においては,皆が手を携えて一緒に成長することができ,農業協同組合は全盛期を迎えました。しかし淘汰の時代をむかえた今,農業協同組合は大きな転機をむかえています。
 また,農家の基盤が脆弱化し兼業農家がその主体を担うようになると,組合員の農協に対する考え方も大きく変化し始めました。組合組織を支える力が減退し,「産地を良くするために皆で力を合わせて頑張る」のではなく,「農協に出荷すれば販売は農協が何とかしてくれる」といった考え方が主流となり,農協の体質が大きく変化し始めました。農協が力を持てば持つほど組合員の農協依存性が高くなり,農協は組合員のためにあるのではなく,農協組織を維持するために力を入れ始めます。千葉大学の安藤敏夫教授が面白い例えを述べています。「羊の群れの中で,羊は羊飼いが羊を護ってくれると思っている。しかし,実は羊飼いは羊を毎年殺すことで生計を立てています。羊飼いは羊を護っているのではなく,羊飼いが生きていくために羊の群れを管理しているのです。」
 農協の理事会は株式会社の取締役会のような権限が与えられていません。取締役会は会社の運営に対して決定権を持ち,責任を持っています。これに対して理事会は農協の将来構想に対する決定権を持っておらず,総会での決定を待たなければ行動に移すことができません。変革の時代において機敏な方向転換ができない組織は機能が停止し,衰退していきます。農協が目指す方向には2つの指針があると思います。1つは農協の理事会の権限を強化し,株式会社の取締役会ような決定権を持たせることです。しかし,農業共同組合法の壁はそれを許すことはできません。2つ目は組合員の選別を行うことです。将来の農協の発展を担う組合員と現状を維持する組合員を選別し,組合員の権利を差別化することです。しかし,これについても組合員の権利を平等に扱うことを原則とする農業協同組合法が壁となります。すなわち,農業協同組合である限り現状を打開することは難しいといえるのではないでしょうか。
 相互扶助の助け合いの精神では淘汰の時代に対応することができず,農協組織と共に日本の農業が衰退しかねない状況になってきています。農業協同組合の設立時の原点に立ち返って協同組合とは何かをもう一度考え直し,「将来の夢を考えることができる組合員によって構成される組織」に再編成する時代が来ているのではないでしょうか。組合員数の拡大を求める協同組合の時代は終わりを告げ,高い意欲と志を持った者で新たな組織を再形成することが望まれています。


★輸入のバラを積極的に使ってください (2006/10/25)

 インドやケニアなどからの輸入量が急増しています。価格が安く,品質も高いことから日本国内のバラ生産者にとっては大きな驚異となっています。生産者からは「政治家を使ってでも何とか輸入を止められないだろうか?」といった声も聞かれます。
 以前のコラムでも書いたように,私は輸入バラと国産バラの棲み分けをするべきであると考えます。最近,祝賀会やパーティー会場の花飾りでバラを見かけなくなりました。以前は,花飾りにはバラは当然あるべきものと感じていましたが,近年の花飾りの主役はユリに置き換わってしまった感があります。
 パーティーでの花飾りは鮮度は要求されません。そこそこの価格で見映えが良ければ国産にこだわる必要もありません。この様な「晴れ」の会場で輸入のバラをふんだんに使ってもらい,参加した方々に「やはりバラが引き立つねぇ」と感じてもらうことで,自分が贈り物に使う時や自分自身へのプレゼント,家族の誕生日などにも「バラがないと寂しい」と感じてもらうことが重要ではないかと思います。
 テレビのニュース番組やホテルのロビー,結婚披露宴などの花飾りでのバラの占める割合の低下は,国内産のバラの需要を低下させることに繋がります。バラは花の女王です。日常的に目にする「晴れ」の場でのバラの使用量の減少は,ホームユースでの国産のバラの需要の低下を招く原因となっていると思います。ビジネスユース(仕事花)における輸入バラの積極的な利用拡大は,必ずホームユースでの国産のバラの需要拡大に繋がるのではないでしょうか?


★切花の賞味期限 (2006/10/24)

 食品では品質保持期限や賞味期限の表示が食品衛生法やJAS法によって定められています。多くの消費者は賞味期限の表示を見ながら品選びをしています。また,スーパーなどでは賞味期限が迫ってきている食品には「表示価格の200円引き」などのお値打ち価格で販売しています。
 切花においての「賞味期限」は「花保ち期間」に相当すると思います。切花業界では,ようやく花保ち保証や鮮度保証などの動きが始まり,消費者に1週間の花持ちを保証するなどの取り組みが注目され始めています。私の記憶が正しければ,この動きは2000年に幕張に開店したカルフールが最初であったと思います。しかし,実際にカルフールを訪問した時に感じたのは,鮮度保証ではなく切花保持剤を添付しているだけの花保ち保証でした。食品業界でいえば,酸化防止剤や防腐剤などの添加物で賞味期限を保証している食品といえるかと思います。しかし,これは本当の意味の賞味期限ではありません。賞味期限の意味は「作りたて」を保証し,「新鮮さ」を楽しんでいただける保証期限といえるのではないでしょうか。
 当然,切花の花保ち保証には生産段階での切花管理も重要ですが,切花生産者だけで保証できるものではありません。生産者が出荷した後の輸送中のコールドチェーンの整備や花き市場での取扱方法,生花店での管理方法,消費者の手に渡るまでの期間の短縮,消費者の鑑賞期間中の取扱方法など,様々な要素が関係しています。これらの1つが欠けたとしても切花の賞味期限を保証することは出来ません。花き業界が一丸となって取り組まなくては消費者が満足できる花保ち保証を提供することは不可能です。
 生産者だけでなく販売店も販売不況に悩まされている中で,食品業界が実現できた賞味期限表示を参考に,生産者・流通業者・販売店がともに手を携えて「花保ち保証」の表示を始める時期に来ているのではないでしょうか。輸入切花には出来ない本当の意味の花保ち保証を消費者に提供することこそ,消費者を満足させる国際化戦略であると思います。
 流通業界の皆さん。一過性の業務需要に依存して,本当の花き産業を支えている一般消費者をないがしろにする流通体制を維持しようとすればするほど,花き産業は縮小の方向に進んでいきます。もう一度原点に立ち返って,本当の需要者のための物流体制を考え直さなければ,中間物流業者不要論が頭をもたげ始めます。温度管理施設を持たない花き市場は,消費者を満足させるための切花の品質保証の流れに逆行していることを認識していただきたいと思います。
 生花店の皆さん。現状の物流体制容認し,誰がどのように花を扱ったのか判らないような流通制度に依存するのではなく,いっそのこと信頼できる宅配業者を仲介させて直接切花生産者と契約し,消費者が満足する「製造年月日」と「賞味期限」を明示して,少し高額で差別販売する戦略はいかがでしょうか?必ず消費者に認められるのではないかと思います。
 輸入切花を取り扱っている切花販売店の皆さん。単純な価格に左右されるのではなく,消費者が本当に満足する国内産の切花を提供することにも力を入れてみませんか?


★切花の製造年月日 (2006/10/23)

 食品では食品衛生法やJAS法でじは製造年月日の表示は義務付けられてはいませんが,多くの食品で表示が行われています。特に加工食品においては賞味期限と同等の価値を持っています。切花において「製造年月日」に相当するのは「収穫日」です。生鮮品のなかでも鮮度が重要視される切花であるにも関わらず,収穫日の表示がされていないことは大きな問題ではないかと考えます。
 切花生産者が出荷する切花に収穫日を表示しない理由は色々です。花き市場の切花のセリ日が毎日ではなく,例えば月・水・金のように開設されていることによります。金曜日のセリにかけるためには,遅くても木曜日の夕方には出荷しなくてはいけないため,木曜日の夕方に収穫した切花は月曜日のセリにかけられることになります。すなわち,花き市場での取引までに既に3日が経過しており,さらに花店の店頭に並んで消費者の手に渡るまでには最低でも1日を要することから,最短でも収穫から4日が経過してしまいます。ヒョッとすると,収穫から7日間という場合もあるのではないでしょうか。花店では切花の老化を防ぐために冷蔵ショーケースが用意されていますが,市場で入荷してから1週間が経っている切花も結構多く見られます。
 この様な状況で切花の収穫日を表示することは,販売側の観点から見ると生花店の評判を落とすことにも繋がりかねないといった危機感や抵抗感があり,大きな抵抗となっていることも事実です。一方生産者側から見ると,毎日収穫しているもののセリ日の影響で毎日出荷ができないため,収穫日を表示することは花き市場や流通業者が混乱する原因となるのではないかとの思いから,切花収穫日表示に躊躇している点もあります。
 切花は国際流通商品と化し,地球の裏側のアフリカのケニアや南米のコロンビアから輸出されてきています。当然のことながら,これらの国々から輸出されてくる切花は日本に到着するまでに,生産農場での出荷調整,農場から現地空港までの陸送,航空機での輸送,植物検疫など,平均して5〜7日程度が費やされています。国内産の切花はこの点において有利性を持っているはずであると思いますが,実際にはこの有利性を生かし切れていない現実が見えてきます。
 切花は収穫した時点で根からの養分の補給がなくなり,切花は「老化」の過程を経ることになります。輸入切花を取り扱っている業者から「輸入切花は結構品質がよいです。なかには国産の切花よりも高品質の切花もあります。」といった声を聞くことがあります。しかし,切花の品質とは一体なんでしょうか?長さ?花の大きさ?花色?・・・。私は最も重要な切花品質は鮮度だと思います。国産の切花が本質的な鮮度を重視せず見映えだけにとらわれることは,海外からの輸入切花を一層有利にさせることに繋がるのではないでしょうか。日本国内で生産される切花であるからこそ鮮度を重視し,自信を持って製造年月日(収穫日)を表示することこそ,輸入切花に対する対抗戦略であると考えます。
 花き市場の皆さん。本当に日本国内の切花生産者が大切であると考えておられるのであれば,毎日セリをしていただけませんか?海外からの輸入貨物便は毎日飛んでいるのです。
 生花店の皆さん。本当に日本国内の切花を愛しておられるのであれば,鮮度を売りにした販売を進めて頂けませんか?このままでは日本の切花はその良い所をアピールできないままに輸入切花に置き換わってしまいかねない状況です。
 切花生産者の皆さん。切花産業が崩壊してしまったアメリカで生き残っているCalifolnia Pajarosa Floral社のように,消費者の本当の声に耳を傾けませんか?自信を持って切花収穫日の表示をしてみませんか?本当に良いものを手に入れることができない日本国内の消費者が,実は本当の輸入切花の被害者であるのかもしれません。


★新品種の使い捨ては園芸業界の発展を阻害する! (2006/10/16)

 種苗法の整備に伴って新品種が次々と登録されています。バラでは1995年から2004年の10年間に1,026品種が登録されており,平均で毎年100品種が新品種として登録されていることになります。しかし,市場で生き残っている品種はごくわずかで,バラ生産者の間では「品種の寿命は2〜3年」というのが常識です。バラ以外でも,以前見かけたものが次々と市場からなくなり,良い形質を持っている品種であっても少し古くなると次々と使い捨てのように見捨てられています。
 花は人の心に訴えるものであり,流行の変遷の影響を受けるのは仕方がないとは思いますが,数年の内に見向きもされなくなるのはいかがなものでしょうか。花き園芸は心の文化を支えるものだと思います。使い捨て文化は「文化」と名前が付いているものの文化ではないと考えます。
 豊明花き市場のデータによれば,花の種類を統括しているJFCODEセンターにおける2006年6月30日までの総登録件数は65,968件で,このうち豊明花き市場が取扱品目として登録しているものが15,396件です。しかし,このうち2005年に豊明花き市場で使用されたコードは15,396件で全体の38.6%に過ぎません。JFCODEセンターに登録された花の内,ひいき目にみても半数近い品種は使い捨てられた品種である可能性があります。
 生産者も販売店も花の価値を充分引き出すことなく目新しい品種に飛びつき,高値で販売することだけに目の色を変える現状は,必ずしも花き業界の発展のためにはならないと考えます。消費者が気に入ったバラが「古い品種」という一言で店に並ばなくなることは,折角バラのユーザーとして定着しかけた消費者の心を踏みにじることに繋がりはしないでしょうか。
 「経営が成り立たないバラ生産は産業ではない」という考え方は賛成ですが,「文化を語れない産業も産業として定着しない」ことも事実です。バラ産業が崩壊したはずのアメリカでCalifolnia Pajarosa Floral社が消費者の心を大切にした経営をして生き残っていることを考えると,オランダを始めとするヨーロッパのバラ育種会社に踊らされて,新品種を次々と追い求めることが必ずしも得策ではないことに気が付くはずです。


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/04/24)
 【\】従業員の教育と意欲の向上

 ISO9000認証の項目の中に「不適合品の再発防止」があります。自動化,機械化が進んでも,そのどこかに人間が関与する限りミスが伴います。製品品質を維持するためには,必ずどこかで発生するミスをいかに回避するかが重要な鍵となります。作業ミスを回避する最も重要な方ことは同じミスを繰り返さないための検証活動であり,いわゆるQC活動に代表される従業員の意識向上が鍵となります。日常作業の検証を行うためには「作業工程の数値化」が重要であり,不適合品が発生した時に,その生産工程をさかのぼって検証できるトレーサビリティーの確立が課題となります。
 例えば「病気が発生した」場合に,何故病気が発生したかを検証できなければ対策を取ることも出来ません。温度は?湿度は?日射量は?風速・風向は?潅水は?肥料の量は?殺菌剤の使用状況は?・・・・。過去の病気の発生とこれらの条件を複合して検討することで,今後の病気の発生を予測することが出来,予め対応策をとることが出来ます。
 人間は最も優れたセンサーであるといわれています。従業員が「そういえばあの時こんな事があったなぁ」といった感覚は極めて重要な鍵となり,それを裏付けるデータがミスを回避する原動力となります。MPS-ABCやMPS-Qを導入することで,従業員の意識が「感覚」から「数値に基づいた経験則」へと変化し始めます。この積み重ねによってミスの発生を防ぐためのマニュアルが出来てきます。このマニュアルが完成すると,新入・中途採用の社員であってもスムーズに作業を行うことができ,製品品質を高く維持することが容易になります。また,マニュアルの徹底を検証するためのチェック制度の導入によって従業員の職務分担が明確となり,パートタイマー,従業員,職域長,管理職,経営者の各々が行うべき職務に対する責任が出てきます。
 MPS-ABCやMPS-Qの導入は「農家の経験と勘に基づいた花き生産」から「産業としての花き生産」への転換を進めます。消費者に対して生産履歴や品質保証を行うためには,経験や勘では対応できません。
 余談ですが,同じ内容の商品が店頭に並んでいた時,メーカー品と無名品とどちらを選びますか?商品に対する安心感はどちらが高いでしょうか?また,どちらもメーカー品ですが片方には保証書がついていません。どちらを選ぶでしょうか。MPS-ABCやMPS-Qの導入は,従業員を含めて「メーカーとしての高い意識を持つ」ことであり,自信を持って生産した花に保証書を付けることだと思います。


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/04/11)
 【[】MPS-ABCとMPS-Qの併用

 MPS-ABC認証システムの説明会で良く受ける質問に「農薬の使用を削減するのは良いけれども,品質の低下はどうなるのでしょうか?」があります。
 MPS-A認証を受けた生産者であっても,その生産された花の品質が低ければ市場で高い評価を受けることはありません。むしろ,そのような生産者が増えることはMPS-ABC認証の評価を低下させることにも繋がり,ヨーロッパでは「MPS-ABCに対する姿勢は評価できるけれども品質が悪くて流通過程での中間選別に経費がかかる」といった声が聞かれる場合もあるようです。厳しい表現をするならば,「商品性の低い花」を生産することは「生産すること自体が環境に悪い」ことであり,「品質の高い花を環境に配慮して生産する」ことが重要であると考えます。
 MPS-ABC認証システムには「品質」に対する評価基準がありませんが,MPS-Florimark-Productionの中にはMPS-Qという品質評価システムがあります。「花の品質」という概念には色々な評価項目があります。「豪華さ」や「品種特性の表現」,「ボリューム」,「バランス」なども品質評価項目の1つですが,最近注目されている評価項目として「鮮度」があります。MPS-Qは「鮮度保証」を義務付けています。地球の裏側から輸送された切花や暗黒の密閉された船便コンテナで輸送された鉢花は,コールドチェーンが完備されたバケット流通による国産切花や産地直送の鉢花に比べて「鮮度」が劣ることは明瞭です。MPS-Qを導入することで,海外からの花き商品に対する高品質な国産花き商品の正当な評価を高めることができると考えます。同様にMPS-ABCのエネルギー収支に輸送エネルギー項目を加えることで,海外からの輸入花きに対する国産花きの優位性を高めることにも繋がると考えます。
 これまで,切花では「日持ち保証」などの取り組みが個々に行われてきましたが,なかなか一般消費者まで浸透することはありませんでした。同様に鉢物でも,ホルモン処理をしていない自然咲きのシクラメンは実際に5月まで咲き続けるにも関わらず,購入時の見た目の違いが小さいことから正当な評価を受けることはありませんでした。
 このような鮮度保証に対する考え方は,国内の産地間競争に限定された市場では大きな価値を持たなかったのですが,数万kmにおよぶ国際流通市場では大きな評価項目に成長し始めています。ましてや近年の地産地消のブームも鮮度保証評価の大きな追い風の1つであるかもしれません。
 私は国粋主義者ではありませんが,日本の花き産業がアメリカの切花産業のような状況にはなって欲しくないと考えています。日本の花は国際的にも高い品質が評価されており,当然のことですが,国産の高品質の花が日本の消費者に高く評価されたいと願っています。前向きに花き産業を支えていきたいと考えておられる生産者は,是非ともMPS-Florimark-Production認証システムに参加して頂けることを期待しています。


★MPS-ABCの農薬の使用に対する考え方 (2006/04/06)

 MPS-ABC認証システムは農薬の使用を否定したものではありませんし,一律に農薬の使用量を制限するものでもありません。正常な生産活動を確保しながら,環境にも人体にも負荷をかけない適切な農薬の使用を勧める認証システムです。農薬の使用に関する考え方としては,IPM(Integrated Pest Management:総合的病害虫管理)に近いシステムということができます。
 IPMでは,生産環境の改善(湿度の低下や温室内の空気の循環),天敵などの生物的防除の活用,フェロモン剤や忌避剤の活用,発生予察による適期防除,物理的防除資材の導入(防我網による侵入防御やUVカットフィルムの使用など),抵抗性品種の導入などを総合的に組み合わせて病害虫の発生を管理し,農薬の使用を軽減することを目的としています。MPS-ABC認証システムでは,IPMに加えて使用農薬を分類することで,さらに環境に配慮した花き生産を目指しています。
 MPS-ABCでは農薬に対して独自の基準を持っています。環境に対する負荷や人体に対する毒性を基準に農薬を「赤・黄・緑」に区分し,それぞれの使用量に対する基準を設けています。人体毒性や環境負荷が大きい「赤」に区分された農薬の年間使用量の基準値は,人体毒性や環境負荷が小さい「緑」に区分された農薬の使用基準値より低く設定されており,環境や人体に負荷の高い「赤」の農薬の使用を制限し,安全な「緑」の農薬の使用を奨励しています。
 一般に,「赤」の農薬は即効性や残効性に優れるため,生産者にとって極めて使いやすい農薬です。これに対して環境や人体に対する毒性が低い「緑」の農薬は即効性や残効性が低く,生産者にとっては使いにくい農薬ということができます。しかし,様々な防除方法を組み合わせることで,効果の低い「緑」の農薬を使って効果的に病害虫を防除することが可能となります。防除が困難なヨトウの例を以下に示してみましょう。
 カーバメート系殺虫剤のメソミルの殺虫効果は著しく高く,ヨトウの老齢幼虫に対してもすぐれた効果を示すため,メソミルを散布することでヨトウの防除は極めて容易になります。しかし人体に対する毒性も強く,劇薬に指定されている殺虫剤です。これに対してルフェヌロンなどの脱皮阻害剤は人体毒性・魚毒性が低く普通物に属していますが,メソミルに比べると殺虫効果は低く,特効薬のような劇的な効果を示しません。しかし,4mm以下の防虫ネットを使って成虫の温室内への侵入を防いだり,成虫に対する行動抑制効果のある黄色蛍光灯を組み合わせることで,普通毒のルフェヌロンですらほとんど使用することなくヨトウを防除することが可能となります。
 MPS-ABCとIPMとの違いについてみると,IPMは「農薬だけに頼らない総合的防除」という考え方全体を指しているのに対して,MPS-ABC認証は「独自の農薬使用基準を持ち,目標値に対する達成度を評価する」認証システムであることです。従って,IPMは個人の考え方や取り組み方法ですので,IPMを実施していても誰かに認められることはありません。しかし,IPMに取り組んでいる生産者がMPS-ABCに登録することで,社会的にその姿勢が認められ,各自の達成すべき目標値がみえてきます。このように,既にIPMに取り組んでおられる方は,肥料やエネルギーの使用などにも配慮することで,MPS-ABCの認証を容易に受けることが可能です。


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/04/03)
 【Z】企業がISOを導入するメリット

 この数年良く耳にする言葉の一つにISOがあります。大企業から中小企業まで,いたるところで「ISO認証取得」の文字が躍っています。何故,産業界がISO認証を進めるのかを考えてみると,花き生産者がMPS-Florimark認証に取り組むメリットがみえてきます。
 ISO認証を導入するメリットについては,認証会社のホームページで詳細に紹介されているので,そのいくつかをまとめて紹介します。
 日本にはJISという国内だけで通用する規格がありますが,国際化が進んだ今となっては世界に通用する国際規格が必要となっています。ISO9000やISO14000を取得することで,その企業が品質または環境について真剣に取り組んでいる組織であることが国際的に認められます。認証登録を受けた会社には,登録マークの入った登録証が送られます。品質や環境に対する取り組みを顧客に示すために,これらの登録マークを広告や便箋,封筒などに使用することが出来ます。また,登録を受けた組織の名前は国際的に公表される登録者リストに掲載されます。このリストはさまざまな企業が取引先を決定する際の資料となるので,セールス拡張のために非常に有効な手段となり,同業他社との差別化と企業のイメージアップに繋がります。
 ISO9000,ISO14000は経費の節減や廃棄物の削減を目標としているので,認証を受けることで無駄をなくしたコスト低減による競争力の強化を図ることができます。
 ISO9000認証の項目の中に「不適合品の再発防止」があります。生産した製品に不良品が発生した場合に,2度と同じミスを起こさないようにシステムから見直しを行い,再発防止のためのマニュアル作りを実施します。このマニュアルが完成すると,新入・中途採用の社員がスムーズに作業を行うことができ,製品品質を高く維持することが容易になります。その結果,誰が作業を行っても取引先に適合品を提供することができます。
 社内的には,ムダの排除によるコストダウン,社員教育などによる社員のレベルアップやモラールアップが期待でき,社長のすべきこと,各職域の長がすべきこと,更に一般の社員がすべきことが明確になり,各々の役割分担がはっきりした組織が確立できます。
 大手企業では環境に配慮した部品や材料を優先して購入する「グリーン購入」を導入する所が多く,有利な取引に結びつきます。また,融資の際の企業評価項目や損保の保険料率などで優遇する金融機関もあります。
 全体をまとめると,(1) 企業イメージを上げて同業他社に勝つ,(2) 一流企業として国際的に認められる,(3) ビジネス上有利になる,(4) 経営の目標・計画を達成するツールにする,(5) 事業のリスク回避−事前の問題把握・対応策の構築,(6) 品質と環境活動と同時に経費削減に役立てる,(7) 企業の体質改善運動の一つとして位置付けることができます。
 このように述べてみると,ISO認証に対する考え方はMPS-Florimark認証と全く同じだということが判ります。まさにMPS-Florimark認証制度は,花き産業界におけるISO認証制度と言い換えることができると思います。


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/03/31)
 【Y】誰もが今すぐ取り組めるMPS

 MPS-ABCについて説明する時に生産者から必ず受ける質問があります。『農薬の使用にはそれなりに心掛けているつもりだけれど,私でもMPSの認証が取れるのだろうか?あまりにも厳しい規制があるようだと経営的にも対応できないし・・』
 一般に認証システムには設定された一定のハードルがあり,このハードルを越えられた生産者だけが認証を受けて,その恩恵を受けることができます。
 MPS-ABC認証システムの基本理念は「環境基準で生産者を規制する」ことではなく,「環境保全に取り組む姿勢を持とうとする生産者を一人でも多く育てたい」と考えることです。従って,一定の高いハードルを設けてそれを上回る生産者を区別して認証するというシステムではありません。平均的な農薬・肥料・エネルギー使用量や廃棄物量に基づいて一定の幅の平均基準を設けます。この平均基準に含まれる生産者に対しては基本的にMPS-Cの認証が与えられます。この平均基準を下回る農薬・肥料・エネルギー使用量や廃棄物量を達成した場合には,その値に応じてポイントが与えられ,MPS-BやMPS-Aの認証が与えられるシステムです。すなわち,平均的な生産者であれば問題なくMPS-Cの認証を受けることができる訳です。
 MPS-ABC認証システムは,人間の向上心を基本理念に考える認証システムです。仮に「MPS-C」の認証を受けた生産者は,それに満足することはなく,できれば「MPS-B」を目指したいと考え,いつかは「MPS-A」の認証を受けたいと考えることを想定したシステムです。言い換えるならば,人間の向上心を信用した「性善説のシステム」ということができます。MPS-ABC認証システムに登録する生産者が一人でも多くなり,かつ一人一人がMPS-C → B → Aと成長することで,花き生産を取り巻く生産環境が良くなり,その結果,日本の環境が向上することを期待した「性善説のシステム」です。認証に対する保証をするために厳しい監査は行われますが,「厳しいハードル」ではなく「環境に対する取り組み姿勢」を評価する認証システムです。
 環境に優しい花き生産を「目指したい」と考えておられる意欲のある平均的な生産者は,いつでもすぐに登録申請してみてください。MPS-ABCはその気持ちに応えてくれます。


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/03/27)
  【X】信頼性の評価と商品の差別化

 MPS-Florimark認証制度は生産から流通までの花き業界総合認証プログラムです。従って,花き流通業者もMPS-Florimark-Trade認証を受けることになります。
 MPS-Florimark-Trade認証を受けた花き流通業者は,物流過程での品質管理と取扱商品のトレーサビリティーを保証する必要があり,この保証が容易に可能となるMPS-ABCやMPS-Qの認証を受けた生産者の商品が優先的に取り扱われることになります。また大手流通業者は,野菜や果物の生産履歴保証に代表されるように,花き商品についても生産履歴の保証を強く志向しており,MPS-ABCやMPS-Qの認証を受けた生産者の商品は有利な取り扱いを受けられます。
 MPS-ABC認証制度は花き卸売市場協会も評価を表明していますので,オランダと同様にセリ市場でのMPS-ABC表示が行われると思いますし,花き流通業界が主体となって組織されているJFMA(日本フローラルマーケティング協会)がMPS-Japanの組織主体となっていますので,花き流通業界が積極的にMPS-ABC認証制度を評価することで商品の差別化に繋がるものと考えます。
 これまでの生産環境改善に対する取り組みとして有機栽培,エコファーマー,減農薬・減化学肥料など各種の認証制度がありますが,流通段階での評価が必ずしも伴っていなかったために生産段階へのしわ寄せが大きく,「一生懸命取り組んでも価格に反映されない」といった不満が聞かれました。
 MPS-Florimark認証制度は花き流通業界が高く評価しているため市場や流通過程で有利販売が行われ,花き商品の価格低迷の中で安定した価格の保証に繋がり,オリジナルブランドとしての地位を高めることができます。


★MPS認証制度(MPS-Florimark)の全体像 (2006/03/25)

 ヨーロッパにおける花き産業界での認証制度として,1995年に始まったMPS認証制度(花き園芸農業環境プログラム:MPS-P,MPS-GAP,MPS-Qを含む)と2000年に始まったFlorimark認証制度がありました。MPS認証制度は,「花き生産者」を対象とした花き生産における認証制度であるのに対して,Florimark認証制度は,鮮度保持を目的とした品質管理基準にISO認証を加えた「花き流通業者」を対象とした認証制度です。
 2004年に,生産と流通を統合した花き業界における認証基準として両者が合体して,花き業界総合認証プログラムである「MPS-Florimark認証制度」が立ち上がりました。【pdf file】
 花き生産者は,環境認証プログラムとして「MPS-ABC」,法規遵守・安全対策プログラムとして「MPS-GAP」,雇用管理プログラムとして「MPS-SQ」,品質管理プログラムとして「MPS-Q」を選択することができ,すべての認証を受けた生産者の最高認証として「MPS-Florimark-Production」が与えられます。
 一方花き流通業者は,物流過程での品質管理プログラムとして「Florimark-GTP(Good Trade Practice)」,取扱商品のトレーサビリティープログラムとして「Florimark-Trace Cert」を選択することができ,そのいずれもの認証を受けた花き流通業者の最高認証として「MPS-Florimark-Trade」が与えられます。また,MPS-Florimark-Tradeの認証を受けた花き流通業者は,さらにISO 9001:2000の認証を受けることで「Fair Flowers Fair Plants (FFP)」の認証を受けることができます。
 このように,MPS-Florimarkは,生産者から流通業者までを一括して統合した認証制度であり,生産者と流通業者がMPS-Florimark認証制度を通じて相互に商品と情報を交換することで業界の発展を目指した制度ということができます。
 花き生産に関係する「MPS-Florimark-Production」について,もう少し詳しく説明しましょう。
 「MPS-ABC」: これまでも説明したように,農薬,肥料,エネルギー,廃棄物などの使用にあたって環境に配慮した使用を心掛けていることをアピールできます。
 「MPS-GAP」: 生産にあたって,各種の法律(水質汚濁防止法,毒物および劇物取締法,廃棄物処理法など)を遵守した生産を行っていることを社会に対して保証することができ,最近よく言われるコンプライアンス(法令遵守)をアピールすることができます。
 「MPS-SQ」: 従業員の職場環境に配慮した職場作りと従業員の人権保護(給与体系,福利厚生,健康保険など)の制度を完備して生産を行っていることをアピールすることができます。
 「MPS-Q」: 商品の鮮度保証検査を行うなどの製品の品質保証をアピールすることができます。


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/03/24)
  【W】生産履歴の公開と保証

 MPS-ABC認証システムには監査制度があり,入力された報告データが正確であるかを抜き打ちで検証します。一見厳しい制度にみえますが,MPS-ABC認証システムにこの監査制度を導入したことで認証の信頼性がより高まり,国際的にもISOに匹敵する高い評価を受けている理由です。
 2002年の無登録農薬問題が起きた時には生産農家から申告された農薬使用履歴の信憑性が問われ,大きな問題となりました。今後,もし農薬問題や水質汚染問題などが発生した場合には,MPS-ABC認証登録している花き生産者は即座に生産履歴データを提出することができますし,MPS認証会社(MPS-Japan)が生産履歴データの提出を代行することもできます。また,提出された生産履歴データは厳しい監査制度に基づいて保証されていますので,高い信頼性が保証されています。
 この様に信頼性の高いMPS-ABC認証システムの導入は独自のブランド形成にも大きく役立ちます。MPS-ABC認証を受けてMPSロゴマークを商品に添付することで,工業界のISO認証マークのように社会的な認知を受けやすくなります。MPS認証ロゴマークが付いていることが保証の証ということができます。
 すなわち,MPS-ABC認証登録することは「環境にやさしい農業を進める」という意味ではなく,「環境に関心を持っている」ことを表明することであり,さらに消費者や流通業者に対して「積極的に生産履歴データを提出する用意がある」ことを表明することと言い換えることができます。また,MPS-Cを取得した後にMPS-BやMPS-Aを取得することは,「自社の環境に対する取り組みを公的に評価してもらう」ことを意味し,自己啓発の意味も持っています。
 「エコ」は日本国内でも高いブランドステータスがあり,自動車,電気製品,石油業界の例を出すまでもなく「地球に優しい環境対策」は今や商品ブランドを確立するためには不可欠なアイテムともいえます。切花の輸入を始めとする花き業界の国際化の中でオリジナルブランドを確立して有利販売を目指している生産者は,「難しいことをさせられる」という考え方ではなく,MPS-ABC認証制度を機会に「消費者や流通業者に対する商品保証」を伴う自社ブランド形成に一歩を踏み出すという積極的な姿勢で取り組んでみませんか?


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/03/19)
  【V】経営コンサルティングの活用

 経営者はいつも悩んでいます。「これで良いのか?」,「何かを改善しなくては!」,「将来を見越した戦略は何か?」
 農業分野以外の産業界ではコンサルタントやアドバイザーの需要が高まっています。しかし,個人経営の割合が高い農業界では経営者は孤独で,悩み多きハムレットのようです。最近でこそ,著名な大学教授や試験場長経験者が退職後にコンサルタント事務所を開設され,花き生産者の経営相談をされていますが,ほとんどの花き生産者は国際化の波の中で途方に暮れているのが現実です。
 各県には農業改良普及員制度がありますが,地方分権や行政の効率化の中で農業経営や技術指導などの業務を縮小して行政的な支援に移行しており,以前のような農業改良普及事業を期待することが難しくなっています。また,農協の営農指導員は生産技術力の高い花き生産者に対しては指導能力が問われており,花き生産者は孤独な経営者から脱却できない状況です。
 MPS-ABC認証システムにはコンサルティング制度があります。4週ごとの入力データを基に,さらに上位の認証を受けるためのコンサルティングを行う制度です。現在の生産管理での問題点や改善方法をアドバイスし,さらに環境対策を進める方策を提案してくれます。MPSコンサルタントは全国の生産者を訪問しており,知識も経験も豊富です。MPSコンサルタントの的確な指摘は経営改善にも大きく役立つはずです。
 第二次大戦後の日本は食糧増産が大きな課題であり,農業者の技術力の向上が命題であったため,農業改良普及員制度を導入しました。農業改良普及員は個別の生産農家の経営にも積極的に入り込み,的確な技術指導や経営指導を行ってきました。しかし,前述のように「小さな政府」の施策を受けて農業改良普及事業が縮小されています。農業改良普及事業の様な施策の恩恵を受けられなかった工業界では独自に経営コンサルティングを依頼したり,技術士の指導を受けたりしてきましたが,農業界ではそのような土壌が熟成されていないため,頼りにしていた農業改良普及事業が縮小された結果,経営診断や技術指導を受けられなくなってしまいました。
 MPS-ABC認証制度は今の花き生産業界が抱かえるコンサルティング問題を解消する手段を提供してくれる制度ということができると思います。是非この機会にMPSコンサルタントの活用を考えてみませんか?


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/03/14)
  【U】的確な資材の導入効果の把握

 山形県のバラ生産者は元気一杯です。昨年は補光ランプを取り付けて生産を始めた人もおられます。「効果のほどは?」と尋ねましたら,「とにかく芽吹きがよい!本数があがり,病気の発生も少ないように思います。」とのことでした。
 補光栽培を行うことは多額の電気料金がかかります。400Wのナトリウムランプで日照時間の短い半年4時間点灯すると,1灯あたり(1坪あたり)年間1万円程度の電気代がかかります。これに補光ランプ設置の設備投資に対する減価償却も考慮に入れての経営的な効果を考える必要があります。山形県の例では4000ルックスの補光で収量が最低でも20%増加したとのことですが,経営収支はどうでしょうか?
 補光ランプの導入効果としては,(1)萌芽促進による切花本数の増加,(2)光合成促進による品質向上,(3)夜間の湿度の低下に伴う病害の発生抑制,(4)補光ランプからの放熱による暖房経費の節約,(5)樹勢の増進などを挙げることができます。
 切花本数の増加や品質向上は出荷量からすぐに判断できるため判り易いのですが,病害の発生抑制や暖房経費の節減効果は実態を把握することが難しい導入効果といえ,さらに樹勢の増進効果は単年度では把握できない効果です。
 MPS-ABC認証システムでは,4週間ごとに肥料・農薬・重油・電気・水などの使用量を登録します。登録されたデータはMPS本部に蓄積され,登録生産者は入力データをグラフ化された集計結果としてみることができます。例えば,補光ランプを設置した月の前後のデータを比較したり,前年のデータと比べることで補光ランプの導入効果を多面的に検証することができます。当然のことながら,優秀な生産者は自社の経営分析システムで既にこの様なデータ解析ができる状況にあると思いますが,データ解析は多くの労力と能力を必要とします。MPS-ABC認証システムでは4週間ごとのデータ入力を行うことで容易に集計されたデータを入手でき,補光ランプなどの資材導入効果を,病害抑制効果や環境改善効果など多面的に検証することができ,経営改善に役立てることができます。「何となく良いような気がする」とか「効果があるのではないかなぁ」といった不確定な感覚で資材導入効果を判断することは,経営効率を考えると問題があると考えます。
 国際化の中の経営は,自動車産業や電機産業を例に出すまでもなく,理論的な経営を考えることが重要であり,感覚論での対応ではなく,論理的な対応を余儀なくされます。その点でMPS-ABC認証制度は,自分の経営を数値化して判断するための支援システムであると思います。
 混沌とした国際状況の中で,日本的なセンスを重視した経営は世界の中で高く評価されています。しかし,あくまでもそれは,トヨタの看板方式に代表されるようにデータに基づいたセンスが評価されているのであって,現在の農業のようにデータに基づかない感覚論では国際化に対応できないのではないでしょうか?


★花き生産者にとってMPSに取り組むメリットは? (2006/03/09)
  【T】生産者の特性データに基づいた経営分析

 切りバラの単価は,この10年間年々低下し,2005年の平均市場単価は60円を下回ったといわれています。一般に,バラの損益分岐点は55円といわれていますが,その内訳はどのようになっているのでしょうか。バラ1本の単価のうち,種苗費・肥料費・農薬費動力光熱費などの変動費,ハウス・施設設備・軽トラックなどの減価償却費,労働費などなどを明確に把握することは,年々低下する市場平均単価に対応して生産コストを下げるためには極めて重要なことです。また,秀・優・良・規格外品の割合,労働時間の作業内訳などについても同様に正確に把握することが大切であり,生産コストを下げる場合にどの経費が過剰で節約効果が高いかを把握したり,品質向上や作業効率を高める手段を考えるための基本的な情報となります。
 2004年に日本ばら切花協会研究大会で講演された千葉県農業改良課の白熊一郎氏は日本国内での切りバラ生産における経営内容を別紙の表(pdf-file)のように分析しておられます。
 この表をみて,自分の経営内容について正確に比較検討できる切りバラ生産者は何%おられるでしょうか?例えば,農薬費を考えた場合に自社の農薬費と比較して多いか少ないかを判断することはできると思います。しかし,自社の所在地が夏に高温多湿の岐阜県と冷涼な山形県では当然病害虫の発生状況が異なっており,恐らく岐阜県の生産者は「農薬費は多い」と感じ,山形県の生産者は「少ない」と感ずることになると思います。同様に,動力光熱費についても岐阜県より冬の気温が低い山形県の生産者の方が「多くの経費を使っている」と感ずるのではないでしょうか。
 MPS認証システムでは,生産者の所在地によって東北・北海道・高冷地,太平洋沿岸暖地,日本海沿岸地域などのように地域分類し,農薬や動力光熱費などの使用基準を別々に設定します。従って,MPS認証制度で標準より多くの農薬費や動力光熱費を使用していることは,「経費をもっと節約できる」と指摘されていることであり,生産費の経費節約の可能性を示唆してくれることになります。
 MPS認証制システムでは,品目,地域,生産形態などで生産者を分類し,その分類に所属する生産者の平均的な肥料代,農薬代,種苗費,光熱水量費を提示し,それとの比較からA・B・Cの認証を行います。従って,MPS-A認証を受けた生産者は,品目や地域などの分類からみて標準的な基準以上に努力している生産者であると認定されていることになります。また,総合判断ではMPS-A認定を受けていたとしても,個別項目で基準を下回っている項目がある場合には,さらにその項目について経費節約の余地が残っていることを示唆してくれます。
 したがって,日本の平均的な経営分析結果ではなく,地域特性に応じた農薬や肥料・重油などの平均使用量と各自の使用量とを比較することで個々の生産者は生産コスト低減の方策を見つけ出すことができるようになります。すなわち,「どんぶり勘定」の経営から「数値に基づいた経営」への転換の第一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか。
 個人的な見解ですが,日本は農業に対する官学のサポートが充実している国です。しかし縦割り社会の弊害から,農業経営の専門家と生産技術の専門家,あるいは病気や害虫の専門家が共同して生産者のための生産技術指針を作り上げることができませんでした。特に日本は南北に長く,標高差もあり,日本海側と太平洋側で大きく気候が異なります。これに加えて花き園芸が盛んであるために品目も多様であり,日本国内を総合的な観点から論ずることはあっても府県の区分を超えて気象学的に地域を分類して栽培基準を作る取り組みができなかったのではないかと思います。
 このような観点から,MPS認証システムの導入は数値に基づいた経営の効率化を図る上で有用なシステムではないかと考えます。
 MPS-ABC認証を受けて,このシステムをうまく活用することは,経営改善に直接効果があり,海外からの輸入切花とのコスト競争に打ち克つ体力を付けることに繋がるものと考えます。


★花きの国際流通の中でMPS認証制度が意味するもの (2006/03/08)

 MPSはオランダが国際花き流通戦略を進めるために始めた認証プログラムといっても過言ではありません。特に1995年当初は,ヨーロッパの中でも環境対策を重視するドイツに花を輸出するためには不可欠な認証プログラムであったと思います。今でこそ一般用語となっている“トレーサビリティ”は当時のドイツの消費者に対して花を販売するためには重要なプログラムであり,生産履歴の明示と保証はドイツの花き市場でのシェア争いで有意な立場を維持するために活用されました。事実,1990年代当時オランダと共にドイツ市場を争っていたスペインに対してMPS認証プログラムは大きな力を発揮し,現在のオランダの地位を揺るぎないものとすることに貢献しました。
 一方,MPS認証プログラムが始まった時期はケニアなどの東アフリカ諸国からヨーロッパ市場への輸出拡大が始まった時期でもあり,環境対策プログラムであるMPS-ABCに加えて,雇用管理プログラムであるMPS-SQ,品質管理プログラムMPS-Q,さらに生産プログラムが法律を遵守して行われていることを証明するMPS-GAPの導入など,MPS認証システムの高度化は,これら発展途上国の花き産業のヨーロッパ市場への参入障壁に大いに貢献しました。
 では日本で今,MPS認証プログラムを導入する意義として何があるのでしょうか?
 現在,日本への切花輸入が急増しています。バラでいえばインド,エクアドル,ケニアなどが輸入量を増加させており,それに伴って国内の切りバラ単価は年々低下しています。これらの主要切りバラ輸出国は,本来ヨーロッパ市場への輸出を主体に発展してきた国々であり,多くの輸出切花生産会社では既にMPSの認証を受けています。実際に大田花き市場などでみる輸入切りバラにはMPSロゴマークが添付されています。
 一方,4月に船橋に進出する大手スーパー「イケア」ではMPS認証商品の重視をうたっており,これに応じてAEON(ジャスコ)やイトーヨーカドーなどもこれに協調する姿勢を打ち出しています。今の日本では,MPS認証制度はまったく評価の対象にはなっていませんが,これらの花き国際流通の波が大きくなってくるに従って,MPS認証制度が大きくクローズアップされることになるものと思います。
 すなわちMPS認証制度は,日本が好むと好まざるとに関わらず,花き産業が国際化にむかっていくためには避けては通れない国際標準ということができるかと思います。日本の工業界が,それまで重要視していたJIS(日本工業規格)から,国際的な認証制度であるISO認証制度に雪崩を打って移行したことに似ているように思います。
 したがって,日本が今あらためてMPS-ABC認証制度を導入しても,1995年当時のオランダが得たメリットと同様なメリットを得られることはなく,むしろMPS-ABC認証制度を導入しないことによるデメリットが生じかねない状況であるということが出来ます。
 この様に書いてくると,MPS認証制度は日本の花き生産者が強制される制度といった感想を受ける方がおられます。「単価が安い今の御時世にさらにコストをかけてMPS認証登録をするメリットはあるのか?」,「オランダやケニアはともかく,家族経営で行われている国内切花産業には本質的に馴染まない制度!」,「日本の消費者はヨーロッパと違ってそれ程環境に敏感ではない」,「農薬取締法などの規制もあり,これ以上規制をかけられるのはたまらない!」,「MPS認証を受けたところで市場価格が高くなる訳ではなく,負担が大きくなり,むしろ国際競争力が低下するのでは?」,「農水省が推奨しているエコファーマーで充分ではないのか?」などの生産者からの意見は,その気持ちを代弁しているものと思います。
 また,一部の生産者からは「既にMPS認証を受けているケニアやコロンビア,インドに有利なMPS認証制度を日本に導入することは彼らを利する行為であり,その旗振り役である福井先生は信用できない!」とのお叱りもいただいています。
 しかし,これまでの経験から,輸入花きを政策的に止めることは難しく,水が高いところから低いところに向かって流れるように,国際的な生産・消費バランスの中で花が国際的に流通されています。一時的に水の流れを堰き止めたとしても,その堰が決壊した時の破壊力は一層大きくなります。輸入花きの流れを阻止するのではなく,「その流れをコントロールし,それを有効に活用する」という考え方が重要な時期に来ているのではないかと思います。
 私は,日本の花き生産農家が国際化対応を進めるにあたって,MPS認証制度の導入は大きな武器となるものと思います。たとえ日本から中国などへの海外輸出を想定していない国内市場のみを対象としている生産者にとっても同じメリットを享受できるものと思います。
 では,そのメリットとは何でしょうか?花き生産者がMPSに取り組むメリットを解説したいと思います。


★MPS-ABC(花き産業総合認証環境プログラムABC)とは? (2006/02/16)

 MPS-ABC認証制度はオランダが発祥の花き産業のための国際環境認証制度です。MPSは「Milieu Programma Sierteelt(ミリイェウ プログラマ シールテイルト)」の頭文字を取った略称で,日本語では「花き産業総合認証プログラム」と訳されています。
 1980年代後半からヨーロッパで高まった農業による地下水汚染問題を契機に,EUでは1991年から農業での窒素肥料の規制が始まりました。また,1992年に開催された地球環境会議(通称地球サミット)では人類の子孫に豊かで明るい地球環境を伝承するための環境問題が議論されたことが契機となり,環境を考えた花き生産にむけての意識が高まり,オランダの花き協会と花き市場が中心となって1995年にMPS-ABC認証制度が発足しました。
 MPS-ABC認証システムでの認証を希望する花生産者は,登録料を支払ってMPS参加登録をします。登録者はMPS認証会社の指示に従って,4週間毎に農薬,肥料,廃棄物,水,エネルギーの使用記録を報告します。MPS認証会社は提出された報告データを分析し,環境対策内容に応じて「C」・「B」・「A」のランクを認証し,MPS-ABC認証ロゴマークの使用を許可します。最高の「MPS-A」ランクは農薬や肥料の使用量が通常より50%程度低い生産者であることを示します
 ヨーロッパでは,このMPS-ABC認証制度は高く評価されており,MPS-ABC認証ロゴマークの付いた花は環境に優しい安全な製品であることを示す証しとなっています。現在,オランダ国内の70%以上の花き生産者が登録しており,2005年7月に訪問したアールスメール花市場では,出荷される花のほとんどにMPS-ABC認証ロゴマークが付けられており,セリ掲示でもMPS-ABCが表示されていました。また,世界22カ国以上の生産会社が登録・認証を受けており,今や花の国際流通を考えた場合には不可欠な認証資格となっています。
 現在,ケニア,エクアドル,インドなどから輸出されている切花の多くにMPS-ABC認証ロゴマークが付けられていますが,日本国内ではまだMPS-ABC認証制度が導入されていないため,全く評価されていません。しかし,2006年4月に船橋に進出するイケア(IKEA)はMPS-ABC認証を受けた花を積極的に扱うといわれており,これに対抗する形で国内の大手デパートやスーパーでもMPS-ABC認証を評価する動きが出始めています。キク,バラ,カーネーションを始めとする海外からの切花輸出攻勢を考えた場合,早急に日本でもMPS-ABC認証に積極的に取り組む必要があると思います。
 日本フローラルマーケティング協会(JFMA)はオランダのMPS本部と交渉し,契約及び本格的な事業化の検討に入りました。(法政大学小川孔輔コラム)  いよいよ日本の花き生産も国際基準で環境対策に取り組む時代が到来したようです。
 世界の花産業に正面から立ち向かおうとする花生産者の皆さん! 是非MPS-ABC認証プログラムに参加してください。花産業の国際化の始まりです!


★花生産における環境対策の遅れ (2006/02/14)

 エコファーマーは、平成11年7月に制定された「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」に基づき、各県で基準を設けて環境にやさしい農業を推進するための認証制度です。2005年3月時点で全国に75,699人のエコファーマー認定農業者がいます。しかし作目別の内訳を見ると(農水省環境保全型農業対策室2005年3月),水稲14.5%,野菜59.3%,果樹20.9%,で,花生産農家は0.3%と極端に少ない現状です。
 2002年1月に中国産冷凍ホウレンソウから基準を超える残留農薬が検出されたことに端を発した農薬問題は,その前年に発動されたネギなどのセーフガードと関連して海外からの農産物の輸出規制に繋がると期待されたものの,その後の国内での無登録農薬使用問題に発展し,消費者の農産物に対する不信感を助長し,農薬取締法の改正に繋がりました。この一連の経過は「食の安全」に対する大きな警鐘となったのですが,食べ物ではない花き生産においては対岸の火事のように捉えられています。エコファーマー認証制度に対する花き生産農家の取り組みの低さもこれを象徴した現象と考えられます。
 ヨーロッパでの農業と環境との関わりについての関心は1980年代後半から高まりました。ヨーロッパは冷涼な気候であることから窒素の自然分解速度が遅く,特に地下水への硝酸性窒素の流出が大きな問題となりました。硝酸イオンは,体内に取り込まれると赤血球と結合してメトヘモグロビン症を発症したり,アミン類と結合して発ガン物質であるニトロソアミンとなるなど人体への影響が大きいことから,1991年にはEUが硝酸規制を始めました。当然,施設花き生産においても施与肥料の施設外への流出防止が義務付けられることとなり,いわゆるクローズドシステムへの対応が不可欠となってきました。この規制は1998年のミネラル収支システム(Minera1 Accounting System: MINAS)の導入に繋がり,現在はさらに厳しい規制が課せられています。このような状況からオランダの花き生産は環境対策に正面から対応すべく1995年にはMPS認証システムの導入に踏み切りました。MPS認証システムは,肥料の過剰施肥に限らず,殺虫剤や殺菌剤などの農薬使用量,過剰エネルギー使用など全般的な環境対策に対する自主規制を制度化したもので,ヨーロッパでは広く普及しています。
 日本においても地下水への硝酸汚染は認められており,1987〜1991年に農水省が実施した地下水の硝酸分析結果では,平均4.8ppmに対して施設園芸地域では9.1ppmと高く,水質基準値の10ppmを超える地域がかなりあるものと推定されています。しかし,ヨーロッパでのように大きな問題とはなっておらず,農業と環境との関係では農薬問題が主体となっている状況です。
 日本とヨーロッパとの違いを考えると,ヨーロッパでは硝酸性窒素という過剰肥料による環境汚染から環境対策が始まったのに対して,日本では農薬の過剰使用による残留農薬問題から環境対策が始まったことが大きく異なっています。過剰な肥料の使用は,花産業も含めた農業全般に関わる問題であったために,ヨーロッパでは花き生産農家も環境対策に真剣に取り組まざるを得なかったのですが,残留農薬問題は食の安全に方向が変わったため花き生産農家は非難の対象からはずれてしまい,環境対策に対する取り組み姿勢が後ろ向きになってしまいました。
 しかし,花は野菜と違って必需品ではありません。野菜や穀物などのように日常的に購入しなければいけないものではないため,いったんイメージが低下すると不買運動のような大きな動きになりかねない危険性をはらんでいます。イメージ商品を生産している花き生産者であるからこそ,より強く環境対策に積極的に取り組み,消費者へのイメージアップに努力する必要があると考えます。


★オランダの切りバラ産業が苦しんでいる (2006/02/08)

 オランダは,この20年間を費やしてヨーロッパの切花生産国として揺るぎのない地位を築いてきました。高品質生産と生産効率向上,大量生産を追求し,消費国であるドイツやフランス,イギリスの切花生産を駆逐し,ヨーロッパ唯一の切花生産国になっています。しかしヨーロッパ市場を目指して,海外からの輸出攻勢が次第に厳しくなり始めました。当初はイスラエルが主な輸出国でしたが,これにインドが加わり,オランダの生産会社の経営は次第に厳しくなっていきました。オランダの人件費は世界有数の高額で3,500円/時間といわれており,さらに11月から3月にかけての低日照時間を回避するために14,000 luxの補光栽培に加えて環境対策の強化など,ますます生産環境は厳しくなる一方です。これに耐えかねた一部の生産会社はケニアなどの東アフリカ諸国に生産拠点を移し始めたことから,オランダ国内の生産会社は一層厳しい状況にさらされることとなりました。現在のオランダの花き市場におけるバラの取扱量をみると,小輪系は85.5%が輸入となっており,大輪系でも29.1%,全体では50.5%が海外依存となっています。【pdf file1】 アメリカが海外依存率40%を超えた時点で国内生産が一気に崩壊したことを考えると,良く耐え忍んでいるという表現が当てはまります。【pdf file2】
 現在,オランダは省力化と効率化を目指して,単品目大規模生産が始まっています。1980年から1998年の18年間で小規模生産会社は半減し,2.0ha以上の大規模生産会社の数は3倍に増加しています。【pdf file3】 この結果,1980年には1.0ha以上の生産会社が占める面積はオランダ全体の1/3程度であったものが1998年には2/3に達し,急速に零細な生産者が淘汰されていきました。最近のデータでは【pdf file1】,2000年から2004年の4年間で生産会社数は30.7%減少し,オランダ国内総面積も2000年までは増加していたのが2000年から20004年までの4年間で9.0%減少しています。しかし,小規模生産会社が淘汰された結果,1社あたりの平均面積は1.2haから1.6haに増加し,大規模化が一層進んでいることが判ります。
 多くの日本人がオランダを訪問すると,目を見張るばかりの重装備の高度化された大規模生産施設を見学しますが,その裏では陰の部分に相当する零細な個人経営の生産会社が喘いでいました。海外の産地紹介で紹介したMaron BV Kwekerij社Van Tol Rozen社は共に1.5haの小規模生産会社で(日本で4500坪の生産者は大規模ですが・・),将来の切りバラ生産の継続に対して消極的な立場に立っていました。
 中小規模生産会社の淘汰の嵐の中で生き残った大規模生産会社では,収穫・選花作業や養液管理・温度制御の効率化を図るために1.5〜2.0haで1品種を栽培する事が一般的となりつつあり,海外の産地紹介に掲載したHenk van Os & Zn, Rozenkwekerij社は2.3haで品種はToreroのみの生産を行い,ムービングベンチを導入することで12名の労働者で生産が行われていました(1人あたり575坪)。しかし,経営規模が大きくなればなるほど経営者の資質が問われることになり,品種の選択を間違えると経営状態が一気に悪くなる可能性をはらんでいるようで,大規模生産会社が倒産する事例も見られ始めています。
 オランダの大輪系切りバラの価格は2000年以降1本43円から40円に低下しており【pdf file1】,経営収支では赤字の生産会社も見られますが,輸入の23円に比べると高価格で取引されており,今後一層高品質生産を目指していくものと考えます。2004年以降の天然ガス高騰の中でさらに一層の生産の効率化を図り,まさに生き残りのための正念場をむかえている状況です。


★国際的な地産地消 (2006/02/07)

 地産地消が結構はやっています。郊外の農産物直売所は早朝から黒山の人だかりです。市価の30〜50%の価格で新鮮な野菜や加工品が買えるということで消費者の高い評価を得ています。しかし,それを支えているのは高齢者や零細兼業農家が主体で,専業農家の姿はありません。また,実際に直売所に行ってみると100円均一売り場の様相を呈しています。農産物直売所の活況を評して「農業は元気だ!」といった論評がされていますが,果たしてこれが農業を代表しているのでしょうか。
 私は農業は産業であると考えています。確かに農産物直売所の売り上げはとんでもなく大きく,年間数億円を売り上げている農産物直売所も多く見られます。しかし,産業としての農業を考える場合に専業農家の健全な経営を考えることが第一であると考えます。産業としての農業経営を考える場合,効率化の観点から単一作物生産が必然になってきました。愛知県のバラ生産者の一言です。「直売所も良いけれど,1日2000本のバラを生産している私たちは直売所に頼ることは出来ません。花束はバラ以外にカスミソウも入れて欲しいといわれても,そのために敢えてカスミソウを栽培することは出来ないんです。」
 これまでの農業は消費市場と生産地域の分離の基で,大都市住民に対する安定供給を使命としてきました。市場流通はその中で発達してものであり,鮮度を維持して効率よく生産地から大都市消費地への輸送・分配を行ってきました。国内だけを考えた場合には,この生産と消費の分離システムは効率よく機能し,国内で専業大生産地が形成されてきました。
 しかし,ケニアやコロンビアなどの世界的な大生産地が現れ,国際流通が機能し始めた時に大きな変化が現れました。国際的な分業化の始まりです。これまでの日本が目指してきた大都市と農村という国内の地域的な生産と消費の分離に対して,ケニアなどの生産国と消費国としての日本という国際間での生産と消費の分離です。
 観点を変えてみると,このような国際流通の時代において地産地消を考えると,日本国内で生産された農産物を国内で消費することは,まさに「地産地消」といえるのではないでしょうか。ここで重要なキーワードは「鮮度」と「オン・デマンドの供給体制」です。アメリカの切りバラ生産会社「カリフォルニアのPajarosa社」は,まさに「鮮度」と「オン・デマンドの供給体制」を追求した「バラのアメリカ版地産地消」といえると思います。「宅配会社と連携したコールドチェーンでの翌日配送」,「どのような品種でも要望があれば生産する体制」はエクアドルには出来ない地産地消のなせる技です。
 多品種大量生産(多品種少量生産ではありません)の追求は,国際的な地産地消という観点で,日本の切花産業が国際間競争の中で生き残っていくための一つの方向を示しているものと考えます。

宮崎県からの「教授の一頃コラム」へのクレームに少々めげてしまいました。
しばらく,コラムを更新する気力もなくて,一時休止状態でしたが,気を取り直して再開します。
ご期待ください。




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