屋代グループの研究テーマ(Research topics of Yashiro's group)

局所格子不安定性解析によるナノスケールダイナミクスの解明

 カーボンナノチューブやナノワイヤなど,原子レベルまで制御される微小材料は,連続体近似が成立せず,従来の転位論や破壊力学が適用できません.巨視的な構造材料においても,結晶粒をナノオーダーまで微細化し高強度化するなど,ナノスケールの「欠陥」を積極的に制御し,新しい材料を創成する研究が活発になされていますが,結晶塑性論など従来の連続体近似に基づく理論では,逆ホールペッチの関係などを説明することができません.このように,ナノスケールオーダーで発現する現象について,そのメカニクス・ダイナミクスを,分子動力学シミュレーションを援用して解明することが本プロジェクトです.各原子位置におけるエネルギー曲面の曲率(2次微分)を第一近似的に評価する「局所格子不安定性解析」という独自の基準を提案し,それに基づいて各種プロジェクトを推進しています.
   
バルクアモルファス中の不安定原子(赤色)左:Nickel,右:Aluminum

各種材料の変形・破壊の分子動力学シミュレーション

 上記のプロジェクトでは,変形・破壊の物理を追究すべく,シミュレーションモデルや温度などの境界条件は出来る限り単純化(問題の切り分け)しました.一方,より大規模なシミュレーションにより,工業上興味のある具体的なターゲットを扱うのが本プロジェクトです.Ni基単結晶超合金の微細析出構造中における転位挙動,高分子のヒステリシス挙動,半導体の界面転位のシミュレーション,CNT林立構造の押し込み・スクラッチシミュレーションなどを実施・検討しています.いずれも,時間スケールの問題から分子シミュレーションの結果が直接,材料設計・開発に結びつくわけではありませんが,ボトムアップの視点からシミュレーションを行うことで,材料開発のヒントとなる事象を見出しています.すなわち,材料試験機(シミュレーション)のアウトプット(応力-ひずみなど)だけでひずみ速度依存性などを議論するのではなく,個々の原子・分子鎖挙動を徹底的に調べることで,変形・破壊の支配因子を見出します.汎用の分子動力学ソフトが広がりつつある現在でも,このような「実験技術」がなければシミュレーションから新しい事実を得ることは難しくなります.当研究グループは,そのノウハウに加え,金属・半導体・高分子・フラーレンと,様々な材料のシミュレーションを実施できる技術を有しています.  


メタルナノワイヤ表面(4つを並べて表示)からの転位発生

第一原理計算・格子不安定解析による合金強度予測・設計

 第一原理計算は,経験的な情報(実験データ)を必要とせず,原子種と原子核配置から原子間に働く力を精密に評価する「究極の」計算手法です.分子動力学シミュレーションのように原子間ポテンシャルの選択に苦労することなく,あらゆる組み合わせの元素の解析が可能であるため,試行錯誤的な実験によらず,新しい合金設計の柱になることが期待されています.しかしながら,計算量が膨大となるため扱える原子数が極めて少なく,引張強度など機械的特性の予測が難しいという難点があります.最近は第一原理計算による引張シミュレーションなども盛んに行われていますが,原子数が少ないと自由に運動できないため,得られる応力-ひずみ曲線は,変形経路を仮定した「静力学解析」のものとなります(下図着色平面上の黒線).一方,変形方向以外の自由度を考えた場合,実際にはよりエネルギーが低い経路が存在します(図中緑線).その分岐点を効率的に求めるのが,従来行われてきた(局所ではなく,理想均一結晶の)格子不安定性解析です.耐熱超合金の界面設計を視野に入れ,周期表に従って様々な元素の格子不安定マップを作成するプロジェクトを提案し,2005年度から連続して科学研究費補助金に採択されています.

        

内藤グループの研究テーマ(Research topics of Naito's group)

ウニ状炭素粒子の作製と複合材料化

参考資料(PDF)

短繊維強化プラスチックの強度上下限の予測

参考資料(PDF)

クリストバライト充填樹脂の力学特性

参考資料(PDF)

ウニ状炭素粒子の試作品