碧南こどもスタディ 「学童における生活習慣と健康に関する前向き研究」



本研究は、小児期の生活習慣や環境が、その後の健康状態や生活習慣病のリスク要因にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的として、2011年に始まりました。愛知県碧南市の小中学生を対象として、小学1年生で生活習慣や環境を把握し、その後中学3年生に至るまで縦断的に追跡を行っています。小学4年生と中学1年生では、碧南市が行う生活習慣病の健診事業に合わせて調査を行い、生活習慣と健康状況をより詳しく評価しています。

NEWS
  • 2019.9.2
碧南こどもスタディ「学童における生活習慣と健康に関する前向き研究」のホームページを立ち上げました。
  
     
     

研究の目的
小児期に肥満、高血圧、高脂血症、高血糖等(生活習慣病のリスク要因とも言われます)があると、成人期の脳卒中、虚血性心疾患などの病気の発症につながることが知られています。また、胎児期、小児期における生活習慣や環境が、成人期における生活習慣病発症に直接影響を及ぼす可能性も示唆されています。しかしながら、具体的に小児期のどのような生活習慣や環境がその後の生活習慣病発症に関わるかは未だ明確ではありません。これを明らかにするには、人生の早い時期での生活習慣や環境の詳細な情報を得、その後、成人期・高齢期に至るまで追跡し、生活習慣病の発症を確認するという研究が必要ですが、そのような長期にわたる大規模な研究は実施が困難であり、行なわれていないのが現状です。
 そこで本研究では、小学校1年の時期から生活習慣・環境を把握し、その後中学3年に至るまでの縦断的調査を行うことにより、どのような生活習慣や環境が、その後の小児の健康状態や生活習慣病のリスク要因に影響を及ぼすかを明らかにし、将来の生活習慣病予防に役立つ望ましい生活習慣を見出すことを目指しています。

研究の方法
縦断調査

ベースライン調査(2011-2015年)
愛知県碧南市の小学校に通学する小学1 年生とその保護者の方々を対象に生活習慣や環境に関するアンケート調査を行ないました。アンケートでは、保護者の方に、児の発育状態、既往歴、健康状態(アレルギーなど)、生活リズム(食事、就寝、起床時刻など)、運動習慣、食習慣、携帯、パーソナルケア製品、日焼け止めなどの使用、家庭における喫煙環境等について回答を依頼しております。合わせて、環境への暴露や食品から摂取される微量元素やビタミン、イソフラボンの摂取やホルモン状態、抗酸化状態、免疫状態、生活リズムなどを反映するマーカーを測定するため、自宅で採取した早朝尿を提出してもらっています。また学校での身体測定や体力測定等の結果の利用も依頼しています。
小学校1年時におけるベースライン調査は5年間実施し、計3,141名の学童の参加を得ました(参加率87.4%)。

追跡調査(2014~)
1.小学4年、中学1年時
碧南市の小学校、中学校で、ベースライン時と同様に生活習慣や環境に関するアンケート調査、早朝尿採取、学校での身体測定や体力測定等の結果の利用を依頼しています。アンケートは、児童生徒本人と保護者の両方に記入してもらっています。同時期に市の事業として学校で健康診査が実施されている健康診査の結果利用と、診査時に採血した残血清をいただき各種マーカーを測定へ用いることをお願いしています。血圧、血中のコレスロール、脂質、血糖の値は生活習慣病のリスクマーカーと考えられます。
2.中学3年時
生活習慣、環境、健康状態に関するアンケート調査、学校での身体測定結果の利用を依頼します。


横断調査

2019年以降も、小学4年生の調査を続けています。学校健診受診者を対象としたアンケート調査を行い、市の事業による健康診査結果の利用と、診査時に採血した残血清の利用を依頼します。


解析
ベースライン時あるいは追跡時の生活習慣の情報とその後の学童の健康状態、生活習慣病リスクマーカー値との関連を計算することで、どのような生活習慣が健康影響を及ぼすかを評価します。

情報の取り扱いおよび倫理について
この研究は2011年8月に岐阜大学大学院医学計研究科倫理審査委員会からの承認を得ています。全ての情報は、岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野が管理をしておりますが、解析時は、個人識別情報を外した形で行うなど個人情報の保護を徹底します。研究結果も全体として集計、発表されるので、個人は特定することはできません。
ベースライン調査あるいは追跡調査に参加された方でも、中途で研究への利用を取りやめることは出来ます。その場合は、以下の事務局までご連絡下さい。

研究代表者
2011年〜  永田知里  疫学・予防医学分野教授

事務局
〒501-1194 岐阜市柳戸1−1
岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野
TEL: 058-230-6412 フリーダイヤル: 0120-67-2247
FAX: 058-230-6413      
担当: 准教授 和田恵子

協力機関
碧南市、碧南市医師会、碧南市健康を守る会

以上、詳しくは研究計画書(pdfファイル)をご覧ください。


碧南こどもスタディ業績



1.   The Hekinan Children's Study: Design and Profile of Participants at Baseline. J Epidemiol. 2019 Jul 5;29(7):272-277.
   碧南こどもスタディ:研究デザインと参加者の概要
<要約>2011年、小児期の生活習慣や環境と生活習慣病のリスク要因に関するコホート研究を開始した。ベースライン調査では、小学1年生を対象に、発育状態、病歴、食、運動、睡眠などの生活習慣、家庭環境などのアンケート調査と採尿を行い、3,141名(参加率87.4%)の参加を得た。
 2.  Associations of Cell Phone Use and Screen Viewing with Overweight in Children. Child Obes. 2019 Oct;15(7):417-425.