
気象学は,自然現象を解明するという意味ではもともと地学の分野の一つですから,他大学では理学部で学ぶことがほとんどです. しかし岐阜大学では,”工学部”の中に位置付けられています.気象情報をどう社会や産業で活用するのか,より工学的に考えるのが研究の基盤となっているのです.私たちの研究室では,社会基盤工学分野の重要な課題である環境と防災の問題に加えて, 新エネルギー開発も合わせて考えていきます.よって,本研究室の研究コンセプトは「気象・波浪・海洋から森林・都市・流域までの把握〜私たちをとりまく環境を知り・予測し・活用する〜」となります.
岐阜大学では2005年4月21日に日本の大学初となる気象予報業務許可(許可第87号)を気象庁長官より取得し,「局地気象予報システム」を使って愛知、岐阜の局地的な天気や気温,
降水量,風向などを専用サイトで公開し,毎日更新しています.→局地予報サイトはこちら.
この「局地気象予報システム」は,米ペンシルベニア州立大学と米国大気研究センターが開発した「局地気象モデルMM5」をベースとして,当研究室が開発した超高解像・高精度気象モデルです.高性能なコンピュータを使い,流体力学方程式や熱力学方程式,
放射方程式など多くの物理方程式を用いて風や雲などの大気の運動を計算し,2kmメッシュの高解像度で愛知県・岐阜県の日々の天気予報を行っているのです.今後も,このシステムの更新を進めていきます.
天気予報は「今日は暖かい」とか「今日は雨だ」など,生活に必要な情報だけではなく,様々な産業にも活用することができます.例えば,今日の日射量が分かれば,ソーラーパネルの太陽光発電量がどのくらいになるか,
また,風の強さが分かれば風力発電量はどのくらいになるか予測できます.そこで私たちは自分たちが開発した「局地気象予報システム」の予報結果を使って日射量を計算し,それを太陽光発電の利用に役立てる研究もしています.そして,この研究は「太陽光発電の年間発電量見積サイト」
の立ち上げへと繋がりました.→太陽光発電の年間発電量見積サイトはこちら.
私たちは各種の観測データを効果的に取り込むデータ同化技術を導入することで,台風・豪雨・突風などをより高精度で予測する数値予報モデルの開発にも取り組んでいます.
また,「渦位」と呼ばれる物理量の特性を利用して,台風の周囲の渦が台風の移動にどのような影響を与えるか解析するための技術「区分的渦位逆変換法」を開発しています.また,「局地気象予報システム」から「アンサンブル局地気象予報システム」へと
拡張するための特異ベクトル法を開発すると共に,アンサンブル予報の効果的な分析手法についても検討しています.このような技術開発により,台風予報の効果的な可視化法が提案できるようになりました.

渦位を用いた独自の台風初期値化手法を用いることで,日本のみならず海外の港湾を対象として,局地気象モデル内で多数の進路からなる台風を発生させて台風が沿岸地域に及ぼす影響を定量化します.これにより,
現在気候や将来気候の下で可能最大級台風による台風災害ポテンシャル(高潮・高波・強風・強雨)の信頼性の高い評価を実現することを目指しており,温暖化時代に則した適応策を講じることに貢献できると期待しています.
また,観測のない場所でも高精度に波浪を計算できる波浪推算モデルを用いて,沿岸域における波浪発電量ポテンシャルを推定しています.洋上風力発電の建設や維持管理には,波浪積算モデルによる波浪予想が不可欠です.波浪の中でも「風波」にくらべて波長が長く予測が難しい
と言われている「うねり」の成分予測に着目して,その高精度化に取り組んでいます.

岐阜大学では,気象データを正しく読み解き,気象リスクに応じて最適な意思決定できる人材育成プログラムとして『気象データアナリスト養成プログラム』を立ち上げました.当プログラムは,経済産業省,厚生労働省および
気象庁の認定を受けた大学初の履修証明プログラムであり,すでに多くの卒業生を輩出しております.気象や気候の影響を受けやすい様々な産業界の社会人を対象とするリスキリングとしても好評を得ています.
気象データアナリスト養成プログラムについては, 岐阜大学工学部附属応用気象研究センターのHP(こちら)をご参照ください.