深層学習によるカメラトラップ画像の動物検出および獣種判別
応用生物科学部 応用生物科学科 環境生態科学コース
准教授 安藤 正規
野生動物と生息地の自然環境との関係や野生動物の保護管理について研究しています。現在は、ニホンジカの個体数増加・分布拡大と生息地の森林が受ける影響、同じ草食動物であるニホンジカとカモシカの種間関係、カメラトラップや痕跡を用いた野生動物のモニタリング手法の開発などを主たる研究テーマとしており、中でもG-AIに関連する研究課題としては、深層学習を用いたカメラトラップ画像の判別や、統計モデリングによる野生動物の個体数推定等に関する研究を進めています。
研究内容
赤外線カメラトラップを用いた野生動物のモニタリングは、現在ではかなり一般的な手法として全国で実施されています。 一方で、大量に取得される画像データの獣種判別にはある程度の練度と目視に係る時間が必要なため、カメラトラップを用いた調査の実施やその規模には技術的・コスト的な制約が存在します。深層学習による画像判別技術を活用することで、この技術的・コスト的な制約を取り払うことが可能となります。
研究の方法とその利点
約10万枚のカメラトラップ画像を用いて構築された獣種判別モデルにより、見落とし率1%程度で動物が撮影された画像を抽出することに成功しました。またこのケースでが、調査者が抽出された画像を目視する場合、すべての画像を目視するのと比較して作業コストを47%まで削減することができました。さらに、主要な動物種における獣種判別では、8割程度の正答率を達成しました。
社会での応用
技術的・コスト的な制約に縛られることなく、任意の規模・台数でカメラトラップを用いた調査を実施することが可能となります。
また、携帯電話回線を用いて画像転送が可能なカメラトラップと本技術を組み合わせることで、カメラトラップを設置した調査地点の野生動物出没状況データを逐次蓄積することが可能となります。
学会発表履歴と特許
論文
安藤正規, 中塚俊介, 相澤宏旭, 中森さつき, 池田敬, 森部絢嗣, 寺田和憲, 加藤邦人. 2019. 深層学習(Deep Learning)によるカメラトラップ画像の判別. 哺乳類科学 59(1) 49 - 60.
学会発表
安藤正規,中塚俊介,相澤宏旭,中森さつき,池田敬,森部絢嗣,寺田和憲,加藤邦人. 2018. 機械学習による自動撮影カメラ画像からの獣種自動判別技術の開発. 日本哺乳類学会2018年度大会プログラム・講演要旨集 40. (伊那)
画像判別の結果(シカ1頭)