画像処理による河床材料粒度分析
工学部社会基盤工学科 防災コース
助教 大橋 慶介
流域規模での土砂流出量の研究や、中山間地から沖積平野における河川表流水と地下水の交換現象の数値解析によるモデル化に取り組んでいます。河川の計算には、地形情報の他に河床材料の粒度分布も必要になるときがあります。その計測の効率化を計るために画像処理法の開発に着手しました。斜め写真を鉛直写真と同等の精度で粒度分析する光学的ひずみ補正式の提案や、画像による計測値を初期値として流砂の移動の再現計算も行いました。
研究内容
写真から河床を構成する体積土砂の粒径サイズを計測します。土砂の大きさは、河川の安定性を計算するために必要な情報ですが、その計測は砂や石を拾い上げて計測するか、重機ですくい上げるなどして大変な作業が伴いました、その作業量が画像処理で軽減されました。また、無人航空機と組み合わせることで広範囲の計測にも応用が容易です。
 
研究の方法とその利点
土砂を判別できる解像度を有した写真から、石の輪郭を自動検出して、円相当の直径に換算し、着目領域に存在する表層の土砂粒子の粒径分布情報を得ることができます。全ての土砂をひとつずつ計測する全数調査よる実測結果を参照して適切なパラメーターを導いた結果、JIS規格で定められたふるい分け試験方法に対して、同等以上の詳細な結果を得ることが可能になりました。人が立ち入ることが危険な場所や、地表面を荒らすことができない遺跡等の特殊な場所でも調査が可能です。
社会での応用
従来の調査に対してコストを下げることができます。従来不可能だった広範囲の粒度分布情報を河床変動計算に与える事が可能になり、将来予測が難しい河川の堆積、洗掘、蛇行といった洪水防御に関わる計算精度を上げることができます。
学会発表履歴と特許
論文
斜め画像を使った河床粒度分布調査における撮影俯角推定技術と精度検証:大橋慶介, 安田真悟, 伊原一樹、河川技術論文集 第17巻、47–52、2011年7月.
河床粒度分布調査における斜め画像の処理に伴う石礫輪郭の歪み補正:安田真悟,大橋 慶介、伊原一樹、土木学会水工学論文集55、S1159-S1164、2011年2月.
画像処理による河床粒度分布情報の高空間解像度化:大橋慶介, 伊原一樹,安田真悟、土木学会論文集F3、Vol.67、I_111-I_118、2011年.
OpenCVを用いた画像処理による河床粒度分布調査および石礫検出精度について:大橋慶介、安田真悟、伊原一樹、土木学会情報利用技術論文集19、115-124、2010年10月.