作物栽培学分野Agronomy

投稿:
研究紹介
研究紹介技術シーズ

田中貴_写真 作物栽培学分野において、近年、人工衛星・ドローンを用いたリモートセンシングや土壌センサ、収量コンバインから取得される膨大な時空間データをどのように営農現場における意思決定に活用するのかが課題となっています。古典的な最小二乗法や最尤法による統計モデリングでは、農家の意思決定に貢献できるような最適解を導き出すことが困難な場合も多く、深層学習やベイズ推定を始めとする機械学習の解析手法を応用した研究を行っています。

(1)リモートセンシングにおける機械学習の応用

ドローンや人工衛星から取得される画像データから物体検知や作物の収量・品質の予測を行う技術の開発を行っています。例えば、深層学習を用いてドローンによる空撮画像からダイズなどの畑作物の苗立ちを自動検出する技術を開発しました。

深層学習によるダイズの自動検出

畑作物の苗立ち率は収量に直結するのですが、この技術を応用することで、苗立ちが不安定になりやすい地域を特定し、その制限要因に応じた播種技術の開発に発展させようとしています。また、機械学習を用いることで、ドローン等に搭載されているマルチスペクトルセンサから取得できる複数バンドの反射率から、作物の収量・品質を高精度に推定する技術を開発しています。

ランダムフォレスト等による小麦の収量・品質の空間分布の可視化

既存の経験則から作物の生育状況をよく反映する植生指数を求める方法よりも、収量・品質の推定精度を向上させることができました。現在は、CNNなどを用いて、高頻度かつ高解像度な衛星画像から、作物の収量・品質をより高精度に推定できないか検証しています。

(2)ベイズ推定による農家を主体とする栽培試験の解析

近年、スマート農業や圃場整備を伴う新技術を、農家圃場レベルで実証する試験研究が急増していますが、その効果を正確に評価する手法が確立していないことが問題となっています。公的研究機関などの試験圃場における従来の実験計画法に基づく圃場試験は、試験区配置の無作為化や栽培条件の均一化(地力ムラの除去など)に多大な労力を要するため、この方法論を実際の農家圃場に適用することは現実的ではありません。そこで、農家が主体的に参画できるシンプルな現地実証試験の計画・実施・評価手法の確立に向けた研究を行っています。現在は、人工衛星・ドローンによるリモートセンシングや収量コンバインから収集される膨大な空間データを対象に、ベイズ推定(ガウス過程回帰)を用いることで、施肥等の効果を検証する試みを農家圃場で実施しています。

農家が実施するシンプルな施肥試験の例

CONTACT

人工知能研究推進センターに関するお問い合わせは、下記アドレス宛にメールにてお願い致します。