工学部電気電子・情報工学科

准教授志賀 元紀

機械学習による新たな発見を

機械学習:人工知能を支えるデータからの学習技術

昨今、人工知能による新しいサービス・システム運用に期待が高まっています。人工知能によるシステム構築には、大量データからコンピュータに学習させる技術「機械学習」が必要不可欠となります。

私は、人間がどのように世の中の出来事、目の前で観測したものから学習できるのかということに、学生の頃から興味をもって研究をしてきました。この技術を理解し実装するには、まず、理論的に問題を定式化して、コンピュータで動かすために具体的なアルゴリズムとして書き下す必要があります。運用されている人工知能システムは非常に曖昧な事例にも対処できるので内部的にも曖昧な記述がされていると思われがちですが、実はかなり厳密に設計されています。
この技術は多くの数理的な理論によって支えられているので、企業の方も関連した要素技術を理解したり、関連分野の先生と連携したりすることが益々重要になっていると考えています。
ところで、データサイエンスとは、統計学、機械学習、アルゴリズム論などのデータ解析に関わる分野のことを指します。人工知能のシステムを構築するためには、データサイエンスを広く深く理解する必要があることもあって、データサイエンティストの育成が重要となります。

新しい材料設計のための人工知能

AIの技術というと、携帯電話に搭載されている音声認識の機能、画像認識の機能を思い浮かべる方が多いかと思います。このように世の中で数多く使われていて、商業的な価値が高まっています。こうした分野にもまだまだ発展可能性があって研究する意味があるかもしれませんが、世界のトップ企業が投資できる研究開発費と人員と、日本の大学の投資できる費用と人員には大きな差があるため、こういった分野で競うのはとても難しいです。
こういったこともあり、私自身は、数年前から物質・材料科学における情報科学技術(マテリアルズ・インフォマティクス)という分野で主に研究に取り組んでいます。

蓄電池や太陽電池のための高性能材料、新しい機器(デバイス)に搭載する材料を選定したり、新しい材料を開発したりする際に、従来はエキスパートの知見に基づいて行われてきましたが、原子や分子の組み合わせ・合成条件は無数にあるため、これらを網羅的に探索するにはコストがかかりすぎますし、探索領域の漏れが生じやすいです。
また、顕微鏡などの計測機器は急速に発展して高精度な自動計測を可能にしているので、材料データもビッグデータ化しつつあります。また、高精密な動作を実現するロボティクス技術との連携により、材料の自動合成するロボットが作られたりしています。

こうした領域で新しい人工知能のシステムを構築し、優れた材料の発見、また、物理・化学の新しい法則に貢献できたらと考えています。

こういった新しく多くの人が取り組んでいない領域では、データの取り扱い方から考えなくてはいけませんが、それはそれで面白いと考えています。人工知能の新しい基礎技術とまでいかないまでも、システムの設計の仕方や方法論を蓄積してゆき、分野に合わせて改良していくが、私のこれからの大事な務めかなと感じています。

大学は民間企業と違いますので、すぐにお金を生み出せなくても、将来的に人類に貢献できるものを作り出したいと考えています。
私自身は工学部に在籍していますが、実用的な物を作るより、基本的な疑問を追求するサイエンス(科学)の方が好きだからということもあります。私の研究によって発見された新しい法則が、いつの日か世界を変える研究になる事を願っています。

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