長良川河口堰閉門20年のシンポジウムに参加してきました。
平成7年7月6日は、長年にわたり、地元のみならず全国的にも反対運動が起こり、建設差止裁判も起こされた、長良川河口堰のゲートが下りた日です。
それからの20年間、ゲートが閉まってしまって以後も、運動に携わった方々は、ずっとその影響を見続けてきました。又、公共工事有り方、その後の運用について、国民の税金を投入することに対する費用対効果についてもずっと疑問の声が投げかけられてきました。
長良川河口堰反対運動は、結果としてゲートを降ろしてしまいましたが、その後の河川行政に大きな影響を与えたことは事実です。97年の改正河川法は、河川環境の整備と保全が目的に加えられています。
閉門から20年、長良川上・中流域を世界農業遺産にという声のある現在、長良川は河口堰によって変わったのでしょうか?
そのシンポジウムが7月5日に開催され、当センターも、資料出展等を行ったことより、参加して来ました。断片的なものにはなりますが、シンポジウムの様子とその感想等を書いてみたいと思います。
私がシンポジウムの準備をしている段階で、まず目がいったのが、大学の展示物の横におかれた、長良川と揖斐川を比較する、川底のヘドロと砂、葦原で捕まえて来た、アカテガニとバケツ一杯のベンケイガニでした。
ニュースの映像で、川底を採取する映像が流れて、見た方も多いかと思ますが、長良川はヘドロです。近くには、なんともいえない嫌な臭いが漂っていました。
揖斐川は砂地になっていて、シジミなどの貝類もいました。
河口堰ができる前はどちらもこの揖斐川のようだったはずです。
河口堰で水の流れを止めると、流速がなくなり、大きな物から沈殿していき、最終的にはシルトとよばれる粘土質ものが堰の上流に、オーバーフローして行った下流にも沈殿します。
そこには酸素が行き渡りませんから、何も住めなくなります。
葦原に住むカニも、揖斐川のほうは、バケツ一杯で、満員御礼状態でした。揖斐川のカニはアカベンケイとクロベンケイです。
一方少ししかいなかった長良川では、ベンケイガニではなく、かつてはいなかったアカテガニというカニが、僅かに生息していました。
これは今の長良川の状況を象徴的に表していると思いました。
1990年8月 財)日本自然保護協会の長良川河口堰専門員会は「長良川河口堰事業の問題点」中間報告を発表しています。
これには、この河口堰が最初に計画されたときの「KST報告」を検証しながら、将来堰が完成した時に起こり得る問題点について、専門家の先生があらゆる方面からの指摘を行っています。
今これをあらためて読むと、この時の指摘に対して、何ら方策を講じて来なかった結果がここにあることがわかります。
この中間報告に寄稿されている利根川河口堰の影響予測と実態には、当局側の見積もりがいかに甘かったかが如実に書かれています。
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