さて当日、登壇された方々の話をすこし紹介したいと思います。
長良川の川漁師として有名な大橋兄弟のお兄さんの大橋亮一さん。
お父様の大橋定夫さんも又川漁師で、長良川河口堰の裁判では証言台にも立って見えます。
今回お話しして下さった事は、殊長良川下流域に限定すれば、長良川は死んでしまっているという事です。
河口堰が出来る前、長良川は「宝の川」であったと言われます。アユは、大橋さん達の住居のある羽島あたり、河口から36km地点でも産卵をしていたということ。それが今では、50km地点あたり(岐阜市忠節橋下流附近)で産卵するようになった。
それは、36km附近では、流速が急速に失われていて、川と言うよりはただの溜池状態で、川底の石にアユの餌になるような苔がつかなくなってしまったからということです。
そのため鮎は少しでも環境の良い場所を選んだ結果、以前よりも10km以上、上流で産卵することになりました。
そこで生まれた仔アユは、海へ下るのに10km余分に泳がなくてはなりませんし、その先には河口堰があり魚道があるといえども、そこを越していくのは、他からの言葉を借りれば万に一匹ということです。
反対に春になれば、長良川が黒くなるほど、川岸には鮎独特のスイカに香りを漂わせながら稚アユが遡上していったそうです。その頃、大橋さんはワンシーズンで、アユは1~1.5tの漁獲高があったと言われました。
昔お父さんは「山に雪がある時は遡上率がいい」と言われ、本当にその通りだったとのことです。山-川-海までが一つの生態系としてしっかり繋がっていたのでしょう。
河口堰ができて二年間はあまり変化がなく、兄弟で大丈夫じゃないのか?と話していたところ、3年目から激減した。その頃川底が石ころではなくて砂地になってしまったとのことです。
長良川を代表するもう一つの魚 それは「サツキマス」です。今一番状態のいい「サツキマス」はアクアトトで見られるそうです。
サツキマスは漁期は約一カ月間、その間に昔は1000匹獲れたそうですが、今年はわずか70匹しかとれなくなったそうです。サツキマスはこの地方では他の川にもいるのですが、ここのサツキマスはいくらでも料亭が買い上げてくれた。長良川の御姫様だったと言われました。
アユやサツキマス以外に、ウグイもいなくなったと言われました。ウグイと言えば、ありふれた魚ですが、そんな魚まで河口堰の影響をうけているのでしょうか?他にも当然のことながら、ウナギの稚魚シラスウオも見たことがないと言われました。昔は長良川だけでなく、支流でも結構な数のウナギがとれていました。個人的にも、十年以上前に、武儀川でとれた天然ウナギをごちそうになったことがあります。
こういった長良川の状況に危機感を頂いた漁協では、現在秋に忠節橋付近で産卵した卵を車で河口堰まで運んで行って、そこの産卵池で孵化させるということを行っているそうです。
もはや人の手を借りなければ、長良川の天然鮎(海と川を行き来する鮎)は存続しないのでしょうか?岐阜市が独自にレッドリストにアユを上げたののもうなずける話です。
大橋さん御兄弟の話は「長良川漁師口伝」人間★社(2010年刊)にさらに詳しく語られています。
次いで話されたのは、平工顕太郎さん。若くして長良川の再生を願い、鵜飼いシーズンには鵜舟の船頭をしながら、川漁師を営み、又打ち捨てられた漁船を「結の船」として復活させ、自身の漁船として、又長良川のエコツアーにも使用し、次世代に長良川の伝統を伝えると言う活動に取り組んで見えます。
学生の頃、川漁師を志して、先の大橋さんのところを訪ねられたのですが、「やめておけ」と諭され、一度は他の道に進まれたそうですが、夢をあきらめられず、今の仕事に就かれたとのことです。
河口堰建設差止の反対運動を知らない世代の方が、長良川の良さをより若い世代に繋いで行こうと考えられたこと、その為にはまず、御自身が川で生きていくことができるようになること、一つ一つの段階を踏みながら、着実にその思いを実行に移してみえるようでした。
今長良川にいる魚たちで何がおいしいですかという質問にも、アジメドジョウ、カワヒガイ、アユの稚魚の踊り食いなど、実際に漁をされる方でなければわからない答えが返ってきました。
大橋さん、平工さんどちらの方のお話なのか記憶があいまいなのですが、
サツキマスにも言及されて、サツキマスはアマゴが海に下って、上ってくるものですが、長良川では伊勢湾に下り、伊勢湾の水温が20℃くらいになると遡上を始めるそうです。だいたい伊勢湾から50km(岐阜市辺り)まででとれるものが脂がのっていておいしいとのことでした。それ以上遡上したものは、体力を消耗して脂が落ちてしまって美味しくないそうです。
モクズガニ 川にいる大きなカニなのですが、大橋さんも平工さんもカニ漁をされてみえます。
モクズガニは、海で産卵して、川を歩いて上って来ます。大体大橋さんの見える36km地点では1円玉くらいの大きさだそうです。そして5年位川で暮らしたあと、再び産卵の為海まで下って行きます。
秋のカニが大変おいしいそうです。来場者の方の話では冬のものと仰ってみえました。
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