工学部 化学・生命工学科 安藤研究室  

   

α-リボフラノシドの立体選択的合成法の開発

 リボフラノシドは、医薬品や化粧品、食品添加物などへの応用が考えられる多くの生物活性天然物に含まれる構造ですが、2つの立体異性体(α体、β体)が存在し、これらの作り分けが必要です。β体の合成は容易ですが、α体の合成は比較的難しく、従来法ではβ体の副生を完全に抑制するのは困難です(通常数%から20%程度のβ体が副生します)。また、従来法には、スズなどの重金属や爆発性の過塩素酸塩など、環境や人体の安全に悪影響がある試薬を必要とする問題点もあります。製造プロセスにおいて使用したスズなどの重金属を製品から完全に除去することは難しいため、従来法は医薬品などの人体に適用する化合物の製造法としては不適切と言えます。この様な問題点を踏まえ、当研究室では、下図に示す様に、ヨウ化糖1とアルコールとの反応による新しいα選択的リボフラノシル化反応を開発しました。ヨウ化糖1は反応性が高いため、重金属などの活性化剤を必要とせず、アミンを共存させるだけで容易にアルコールと反応します。また、この反応にトリフェニルホスフィンオキシドを添加すると反応のα選択性が劇的に向上し、α体のみが99:1以上の選択性で得られることを見出しました。この新しいα選択的リボフラノシル化反応は、β体の副生、重金属の使用という従来法の2つの問題点を共に解決する優れた手法であり、特に、重金属を使用しないため、従来法では困難であった医薬品や化粧品、食品添加物などの製造法への応用が期待されます1

1) Oka, N.; Kajino, R.; Takeuchi, K.; Nagakawa, H.; Ando, K. J. Org. Chem. 2014, 79, 76567664.

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