工学部 化学・生命工学科 安藤研究室  

   

Z選択的HWE反応によるa,b-不飽和エステルの合成

 これらHWE試薬のa炭素にはアルキル基を導入することができます。得られたHWE試薬は、a位にアルキル基を有するa,b-不飽和エステルを高いZ選択性で与えます(式4)1

 また、エステル部位の構造と反応のZ選択性との関係を調べたところ、一般にエステル基が嵩高い程Z選択性の向上が見られました(式5)2

 HWE反応には一般にNaH等の強塩基が用いられます。一方、Masamune, Roushらは、通常のE選択的HWE反応について、Li+を共存させることで比較的塩基性が低いDBUやi-Pr2NEtを用いても反応が進行することを報告しています3。これは、HWE試薬のP=O、C=OとLi+とのキレート形成によりa水素の酸性度が上昇することによると考えられています。そこで、我々の手法においても金属塩と有機塩基について検討を行い、DBU、NaIの組み合わせが最も効果的であることを見出しました(式6)4。この反応条件を用いると、a位に窒素、酸素官能基を有するアルデヒド(1-3)でも、ラセミ化等の副反応を伴うことなく目的とするa,b-不飽和エステルを高いZ選択性を与えました。なお、アルデヒド1,3では、NaHを用いる条件に比べてZ選択性の大きな向上も見られました。

1) Ando, K. J. Org. Chem. 1998, 63, 8411-8416.

2) Ando, K. J. Org. Chem. 1999, 64, 8406-8408.

3) Blanchette, M. A.; Choy, W.; Davis, J. T.; Essenfeld, A. P.; Masamune, S.; Roush, W. R.; Sakai, T. Tetrahedron Lett. 1984, 25, 2183-2186.

4) Ando, K.; Oishi, T.; Hirama, M.; Ohno, H.; Ibuka, T. J. Org. Chem. 2000, 65, 4745-4749.

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