第2回応用気象シンポジウム2024【終了】
●目的:
テーマ:「社会や産業における気象データ活用と人材育成」
SDGsやSociety5.0の実現に向けて社会や産業において気象データ利活用が広がりつつあります。令和3年度より気象庁・気象データアナリスト育成講座が開始され、気象データを利用した新規ビジネス創出が期待されています。今後、さらなる気象データ利活用の推進のためには「産」「官」「学」の垣根を超えた連携が必要となります。このシンポジウムでは、様々な産業界における気象データ利活用の先進的な事例と人材育成について知見を共有し、今後の気象データ利活用の発展と人材育成のあり方について議論します。
日時 :令和6年3月22日(金)13:00~16:00(受付:12:30~)
場所 :じゅうろくプラザ5F大会議室(JR岐阜駅隣接)
〒500-8856 岐阜市橋本町1丁目10番地11
http://plaza-gifu.jp/access.html
対面のみ。オンライン聴講には対応いたしません。
参加費:無料(事前申込制)
申込み:令和6年3月17日(日)23:59まで
専用の申込みサイトでお申し込みください。
定員を超えた場合は、申込期日前に締め切ることがございます。
申込サイトはこのページの下部にあります。
●プログラム:
- 開会
- 第1部:特別講演
- 特別講演1「航空気象分野における気象データを用いた研究及び事例紹介」
慶應義塾大学・宮本佳明氏 - 特別講演2「農業現場における気象測器と気象データの利用(凍霜害を例にして)」
圃場診断システム推進機構・鳥谷均氏 - 特別講演3「大学初の気象データアナリスト養成プログラムの紹介と実施報告」
岐阜大学・吉野純氏 - 第2部:パネルディスカッション
- 「社会や産業における気象データ利活用と人材育成のあり方」
ファシリテータ:吉野純氏
パネリスト:宮本佳明氏、鳥谷均氏、小林智尚氏、玉川一郎氏 - 閉会
「航空気象分野における気象データを用いた研究及び事例紹介 」
慶應義塾大学・宮本佳明氏
講演概要
- 航空業界では、日々の予測結果をはじめとして様々な気象データが不可欠である共に、気象の影響に関する深い理解が求められる。本発表では、航空機に影響を与える様々な気象現象、それらによる具体的な影響、そして、これまでに講演者らが行った航空気象に関わる研究を幾つか紹介する。具体的には、乗員・乗客の安全性や燃料消費量に大きな影響を与える乱気流の統計解析、及び、航路上の風の予測精度を検証した研究を紹介する。
講師略歴
- 2006年 慶應義塾大学理工学部学部卒
2008年 日本学術振興会特別研究員
2008年 University of Oklahoma, Visiting Scientist
2011年 National Center for Atmospheric Research, Visiting Scientist
2011年 京都大学大学院理学研究科博士課程修了
2011年 理化学研究所計算科学研究機構 特別研究員・基礎科学特別研究員
2016年 日本学術振興会海外特別研究員
2016年 University of Miami, Visiting Scientist
2018年 慶應義塾大学環境情報学部 専任講師(有期)
2021年 慶應義塾大学環境情報学部 准教授
★特別講演2
「農業現場における気象測器と気象データの利用(凍霜害を例にして)」
圃場診断システム推進機構・鳥谷均氏
講演概要
- ここでは、農業現場における気象測器と気象データの利用に関して、凍霜害リスク軽減のための利用を例にしてお話をする。凍霜害は作物の生理現象であり、大気現象ではない。そして、凍霜害が発生するときの大気現象のスケールは1kmより小さい。そのため、現在、利用できる気象測器と気象データで、凍霜害リスクを軽減のためには限界がある。このような中で、どの様なことを考慮すれば、凍霜害リスクを少しでも軽減することができるのかに関して、その私見を述べる。
講師略歴
- 1981年 筑波大学第一学群自然学類卒業
1987年 筑波大学水理実験センター - 筑波大学アイソトープ環境動態研究センター環境動態予測部門 文部技官
1989年 防衛大学校地球科学科(防衛大学校地球海洋学科)助手 - その間、スイス連邦工科大学チューリッヒ校地理学科 客員研究員
- グリーンランドの氷床観測に参加(1990年11月から1992年3月まで)
1994年 農業環境技術研究所(現在食品産業技術総合研究機構農業環境研究部門)研究員 - その後、主任研究員、上席研究員、グループ長、領域長
2022年 定年退職 - 現 在 特定非営利活動法人 圃場診断システム推進機構副理事長
- 新潟食料農業大学非常勤講師
その他情報
「大学初の気象データアナリスト養成プログラムの紹介と実施報告」
岐阜大学・吉野純氏
講演概要
- 国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学では、全国の社会人を対象に、産業界が期待する気象データに基づきビジネス課題の解決ができるデジタル人材「気象データアナリスト」を2023年度より育成しています。その講座内容を紹介するとともに、2023年度の実施報告をします。1年間の講座を通して、受講者の皆さんが得た気づきとは?
講師略歴
- 1999年3月 筑波大学第一学群自然学類 卒業
2004年3月 京都大学理学研究科地球惑星科学専攻博士後期課程 修了
2004年4月 岐阜大学工学部社会基盤工学科 助手
2011年3月 英レディング大学 客員研究員(平成24年3月まで)
2012年7月 岐阜大学工学部社会基盤工学科環境コース 准教授
2017年4月 岐阜大学工学部附属応用気象研究センター センター長
2022年4月 岐阜大学工学部社会基盤工学科環境コース 教授
★パネルディスカッション
「社会や産業における気象データ利活用と人材育成のあり方」
- ファシリテータ:
- 吉野純氏 (岐阜大学)
- パネリスト:
- 宮本佳明氏(慶應義塾大学)
- 鳥谷均氏 (圃場診断システム推進機構)
- 小林智尚氏(岐阜大学)
- 玉川一郎氏(岐阜大学)
★ 閉会後イベント1
「気象データアナリスト養成プログラム2023修了式」
- シンポジウム閉会後に同じ会場で,気象データアナリスト養成プログラム2023の修了生に
修了証を授与します。お時間がございましたらご臨席ください。
★ 閉会後イベント2
「意見交換会」
- シンポジウム閉会後18:00ごろから,JR岐阜駅周辺の別会場にて意見交換会を開催します。
事前申込制です。金額や場所は後日ご連絡します。
意見交換会に出席希望の方は、シンポジウム参加申込の際にチェックを入れてください。
●お申し込み
参加を希望される方は,以下のサイトにアクセスし,1.氏名,2.氏名フリガナ,3.E-mailアドレス,4.所属先,5.意見交換会(会費制)への参加希望,6.講師への質問,7.事務局への連絡事項をご記入の上,以下の期日までにお申し込みください.
申込み期日 :令和6年3月17日(日)23:59まで
申込みサイト:お申込みはこちらをクリックしてください(外部サイト)
●主催・共催
主催: 国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学工学部附属応用気象研究センター
後援: 気象ビジネス推進コンソーシアム
●お問い合わせ
岐阜大学工学部附属応用気象研究センター事務局 (〒501-1193 岐阜市柳戸1-1)
TEL&FAX: 058-293-2431
E-mail: amet@t.gifu-u.ac.jp
開催報告
2024年3月22日(金)13:00-16:00に岐阜市じゅうろくプラザ5階大会議室にて応用気象シンポジウムに開催しました.北海道から九州まで全国各地から50名を超える皆様に岐阜市(じゅうろくプラザ)にご出席いただきました.
第1部の特別講演では,3名より産業界における気象データ利活用の先進的な研究教育事例をご紹介いただきました.
まず,慶應義塾大学の宮本佳明先生より,航空気象分野における気象データ利活用の研究事例をご報告いただきました.乱気流の統計的解析においては膨大なフライトデータの分析によりその実態を調査し,時系列特性や地域特性について興味深い知見をいただきました.また,航路上の風予測の精度検証では,予測誤差が必ずしもリードタイムに依存しないことなど新たな知見をいただきました.
また,圃場診断システム推進機構の鳥谷均先生より,農業分野における気象データ利活用の研究事例をご報告いただきました.大気現象ではなく作物の生理現象に着目することの重要性をご指摘いただきました.単に機械学習で予測をすればいいのではなく,現象の本質や素過程に着目することの重要さを改めて認識させていただきました.気象予測データと現地観測データとの組み合わせによる農家個別の予報に関する興味深い提案をいただきました.
また,岐阜大学の吉野純より,大学発となる気象データアナリスト養成プログラムの実施報告をいただきました.気象データアナリストとして必要となるスキルとそれを習得するためのカリキュラムを紹介いただきました.また,2023年度の気象データアナリスト養成プログラムの受講生による分析例や感想などが説明され,第1期のプログラムが無事に修了したことが報告されました.また,同時にプログラムが抱える複数の課題についても示されました.
第1部の特別講演の内容をベースとして,第2部では岐阜大学の小林智尚にも加わっていただきまして,「社会や産業における気象データ利活用と人材育成のあり方」というテーマでパネルディスカッションを実施しました.現状の気象データ利活用は,データは十分にあるにもかかわらず十分には活用されておらず,その背景には,データビジネスの背後にある閉鎖的な環境があることが指摘されました.現状の気象ビジネスにおいては,気象データの流れは一方向的であり,そのような環境では新たなビジネスの発想は生まれにくいと指摘されました.現場の個別のニーズに応えるためには,ニーズ側とシーズ側のデータを双方向的にやり取りしながら,“個別解”を得られる人材が必要となってくるとの指摘がなされました.そして,ニーズ側とシーズ側を縦横無尽に駆け巡り,現場を見ながら,“一般解”から“個別解”へとつなぐことができる気象データアナリストが今後増えてくる必要があり,そのようなコミュニティー作りが重要になってくるとの結論に達しました.
今回の応用気象シンポジウムに参加した皆さんが,新たな気づきを得て,未来の気象ビジネスを切り開くきっかけになれば幸いです.
このシンポジウムを開催するにあたり,気象ビジネス推進コンソーシアムより後援を頂いきました.この場をお借りしましてご支援に厚く御礼申し上げます.
E-mail : amet@t.gifu-u.ac.jp