Laboratory of Crop Production Science

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 イネは熱帯圏でもたくさん栽培されています.このため,イネは高温に強い作物と考えられがちですが,意外なことに,開花期のイネが高温に遭遇すると,実らない花が多くなります.このため,温暖化によって,世界中のイネの収量が大きく減少したり,不安定になったり,することが予想されます.
私たちの研究室では,なぜ高温でイネが実らなくなるのか,高温に強いとはどういうことなのか,そのメカニズムを明らかにしようとしています.
現時進行中の研究テーマは以下のとおりです.

1.イネの高温不稔の発生条件の解明
2.イネの高温耐性のメカニズム
3.イネ科作物の受粉生態に関する研究

問題解決のためには何が必要か,を出発点にしたいと考えています. 

開花期に37度の高温に遭遇した稲穂の登熟期の様子.あまりに不稔が多く(緑の籾),穂が軽いので,穂がたれてこない.

イネの葯の裂開の品種間差異.わずか0.1ミリの違いが,高温条件下での稔りに鋭く影響する.

2.イネの高温耐性に関する研究

 
高温に強いイネを作るためにはる強さのメカニズムを知る必要があります.高温不稔が発生する地域や,人工気象器の中で調査を行い,強さのメカニズムを探ります.
 葯の割れ方のほんの少しの違いが,高温に対する強さに大きく影響することを明らかにしました.  

IRRI(国際イネ研究所,フィリピン)で行った実験の風景.高CO2濃度が高温不稔の発生を助長することを明らかにした

1.イネの高温不稔の発生条件に関する研究

 どのような条件でイネの高温不稔が発生するかを明らかにすることは,地球温暖化が私たち人類への食糧供給に及ぼす影響を明らかにするためにも,対策技術を開発するためにも重要です.
 暑い稲作地帯に出向き,実際に高温不稔が発生する圃場で,気象条件やイネの状態を調査します.
 

イネの開花は,非常にデリケートなプロセスである.この時の高温は,イネの収量に重大な被害をもたす.

高温不稔の発生には気温だけでなく,湿度・風速・CO2濃度が強く関与することを明らかにしました.これらの情報に基づく,より正確な温暖化の影響評価が期待されます.

オーストラリアの水田における40度を超える暑さの中での調査.水田の深さは70cmを超えるところもあり,注意が必要.

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3.イネ科作物の受粉に関する研究

 人類の食糧の多くはイネ科の作物によって生産されています.しかしながら,イネやイネ科の作物の開花や受粉いついては意外と不明な点が多いのです.
 イネの花はどのようなメカニズムによって開くのか,イネの葯はなぜ開花と同時に割れることができるのか,など,イネ科の花の不思議な現象について調べています.
 イネ科作物の花は,おしべやめしべへの物理的な刺激を感知すること,葯の裂開は花粉の膨張によって引き起こされることを明らかにしました.