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タ イ ト ル 更新年月日
ヒートポンプによる夜間冷房の注意点 2009/07/15
重油価格の低落とヒートポンプ 2009/07/13
日本花き生産協会の危機 2009/07/12
バレンタインデーの不思議 2009/05/06
遺伝子組み換え植物とPA(Pablic Acceptance:社会認知) 2009/03/16
花き市場の行く末 2009/03/03
卸売市場法改正と品質管理の高度化 2009/02/24
手軽に花を買える社会は花き生産者にとって良い社会か? 2009/02/23
北海道でのバラ生産 2009/02/19
花き産業界発展のための基金構想 2009/01/31
任天堂のWiiとDSの2008年クリスマス商戦 2009/01/30
花育事業 2009/01/05
2009年を迎えて 2009/01/01

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★ヒートポンプによる夜間冷房の注意点 (2009/07/15)

 現段階では、ヒートポンプを用いた夏季の夜間冷房については実施事例が少なく、制御方法が確立されているとは言えない状況です。しかし80%近いヒートポンプの普及率からみて、早急に夜間冷房技術を習得する必要があります。夜間冷房における留意点を解説します。 【pdf file】
(1) 昼間の太陽からの赤外線の除去
 太陽光はバラの光合成に必要な可視光線に加えて赤外線(熱線)を持っています。この昼間の太陽光の赤外線によって、温室の骨材や資材、土壌が熱せられて高温になり、夜間にこれらの高温になった資材からの熱放出が始まります。夕方にヒートポンプを作動させて夜間冷房を開始しても、設定温度の20℃に下がるのに数時間を要する状況がみられますが、その原因の多くはこの高温の資材からの熱放出です。昼間の温室の骨材や資材などの温度上昇を防ぐことで、ヒートポンプの作動開始から設定温度に達するまでの時間が短縮され、ヒートポンプの効率が高まって電気代が節約できます。
 昼間の太陽光からの赤外線を取り除くための塗布遮光資材が2年前から販売されています。オランダ・ウェブ社「トランスパー:TransPAR」マルデンクロージャパン社の「レディヒート:ReduHeat」です。普通の遮光剤でも赤外線を除去することはできますが、同時に可視光線もカットしてしまうため、光合成ができなくなってしまいます。これに対して「トランスパー」は、バラの光合成に必要な可視光線はほとんど遮ることなく、赤外線だけを50%除去することができます。赤外線遮光剤を温室のガラスやフィルムに塗布することによって太陽光の赤外線が除去されて温室の骨材や資材、土壌などの温度上昇が抑えられ、夜間の熱放出が小さくなってヒートポンプの作動効率が高まります。
(2) 日没直後の温室内の熱の放出
 赤外線遮光剤を塗布しても、いくらかは赤外線が温室内に入って温室の空気が暖められます。暖まった空気は温室の上部に滞留するため、ヒートポンプ作動前に上部に滞留した熱い空気を換気扇などで温室外に排気することが重要です。屋根の上部に換気扇を設置して天窓から排気する方法や、側窓を閉めて天窓を開け、て換気扇で外部の空気を取り込むことで熱せられた空気を天窓から排気する方法などがあります。
(3) 冷房中の断熱
 暖房を行っている時には二重被覆など断熱に細心の注意を払っていますが、冷房では断熱への注意がおろそかになる傾向があります。一般住宅でも暖房の際には窓に厚めのカーテンをするなどしますが、冷房の時には何も行っていない家庭が多いようです。暖房と比較して冷房には多くの電気エネルギーを必要とします。夜間冷房では二重被覆での遮光による光合成抑制の影響はありませんので、暖房以上に二重被覆などの断熱に注意を払いましょう。


★重油価格の低落とヒートポンプ (2009/07/13)

 国際原油価格は2003年まではほぼ一定で推移していましたが、2004年から次第に上昇し、2006年9月には72$/Bまで達しました。その後やや落ち着いたものの、2007年9月以降に急騰して2008年8月には135$/Bに達っする異常な状態となりました。これを受けて国内A重油価格も大きく変化して、2004年3月の1リットル46円から2005年3月には51円、2006年11月には72円、2007年11月には82円、2008年8月には126円に高騰しました。加えて国際原油価格の上昇は肥料や農薬、ビニルなどの農業資材の高騰も招き、バラ生産農家は可能な限りの生産コストの削減を図らざるを得ない状況に追い込まれていきました。このような状況の中で、バラ生産者は暖房経費の節減対策を図らざるを得なくなり、新たな暖房手段としてヒートポンプが注目され始めました。【pdf】
 2005年以降の国内バラ生産施設でのヒートポンプの導入台数(8馬力換算)は、2005年800台、2006年2,000台、2007年3,000台、2008年6,700台と推定されており、8馬力/100坪として換算した12,500台の推定導入面積は1,250,000坪(412ha)となり、国内バラ生産施設の78%にヒートポンプが導入されていると推定できます。
 しかし2008年8月以降、世界金融危機の影響を受けて急速に原油価格が低落し、8月の1バーレル135$から2009年1月には43$まで低下しました。バラ生産におけるヒートポンプの導入の最も大きな契機は2005年以降の重油の高騰でしたが、2009年1月以降の8KL以上の大型ローリーでの重油販売価格は50円前後で安定しました。ヒートポンプによる暖房と重油燃焼による暖房を比較した場合、重油価格に基づく損益分岐点は60〜65円/リットル程度といわれていることから、重油販売価格50円台ではヒートポンプを用いた暖房のメリットは極めて低いといえます。
 バラ生産におけるヒートポンプの導入は、他の花き品目や野菜などと比べると突出しており、NEDOや都道府県などの補助事業への申請件数もバラ生産者が多くを占めています。この理由として、国内のバラ産業の状況が関係しています。日本のバラ生産量は輸入切りバラの増加の影響を受けて年々減少しており、1997年の4億8,800万本をピークに2006年には3億6,900万本となり、今後も減少すると予測されています。まさに淘汰の時代をむかえているといっても過言ではありません。バラ生産者の後継者就農率は他の品目に比べて高く、推定で6割近くの生産者に後継者が就いているといわれていますが、国内バラ生産施設の78%にヒートポンプが導入されていることからみて、これが後継者のいるバラ生産者の生産面積にかなり近い値となっていると考えられます。後継者の就いているバラ生産者にとって、20年後のバラ生産業界の将来を考えた時、経営の安定と海外からの輸入に対抗する手段の1つとしてヒートポンプが注目されたと考えられます。
 現実問題としては、重油の高騰という異常事態に対する対応策としてヒートポンプが導入されたことは事実ですが、今後、ヒートポンプの暖房以外での活用が重要な課題となってくると考えます。言い換えれば、暖房以外でのヒートポンプの活用が出来ないバラ生産者はヒートポンプ設置による経営リスクが増大し、淘汰の渦の中に取り込まれてしまうことになりかねない状況といえます。
 日本のバラ産業をさらに発展させるためには、バラ生産者組織である日本ばら切花協会やアーチング栽培研究会、ヒートポンプ製造販売会社、農業資材販売会社、農業改良普及センターなどの生産者支援組織が一致協力して、ヒートポンプを用いた除湿や夜間冷房などの技術提供を積極的に行わなければいけない状況です。加えて、ヒートポンプを用いた除湿、夜間冷房に適した輸入バラに対抗するための品種の開発も望まれます。


★日本花き生産協会の危機 (2009/07/12)

 社団法人日本花き生産協会(花き生産協)が危機的状況をむかえ始めています。花き生産協洋ラン部会デンドロビウム研修会で先日訪問した岡山県では、県組織として協会から脱退したとのことでしたし、徳島県からの参加者からは「協会への加盟が難しくなってきている」との意見が出るなど、協会に対する後ろ向きな状況が起きています。
 花き生産協は1963年に設立された花き生産者による唯一の全国組織で、その中には輪ぎく部会、スプレーぎく部会、ばら切花部会(日本ばら切り花協会)、カーネーション部会、鉢物部会、洋ラン部会、球根・切花部会があり、それぞれ活動を行うと共に、品評会など様々な活動を行っています。その設立目的では「花きに関する生産技術の向上、並びに経営及び流通の改善により、花き産業の近代的企業たらしめて、農業経営の安定に資すると共に、我が国花き産業の発展を図り、合わせて国民情操の向上に寄与することを目的としています」と記載されており、花き生産業界の発展を目的とした組織です。花き生産協を脱退する理由は個々に違うと思いますが、花き生産協に求心力がなくなっている現れではないかとも考えられます。実際に、花き消費が右肩上がりで増加していた20年前のように、花き生産者が団体で活動するメリットが小さくなってきており、護送船団方式の時代が終わったともいえます。高度経済成長からバブル景気にかけての花き消費が増大した時代では「とにかく作れば売れた時代」であり、切り花産地では共選共販組織を作って「数は力なり」の論理が通る時代でした。現在は、景気の低迷に伴って消費が低迷すると共に、花き消費も個性化の時代をむかえ、量を出荷することが必ずしも有利性をもたらさない時代となってきています。
 景気の良かった時代には、全国から集まった花き生産者が懇親の場で様々な情報交換をすることが重要でしたし、様々な成功例を見聞きすることで経営の方向性が見いだされるといった意味を持っていました。しかし個性化の時代をむかえ、大規模生産を目指すことが必ずしも良いとはいえない状況ですし、かといって小規模で個性的な商品生産をすることが良いともいえません。経営状況、マーケット規模、消費者ニーズなどが様々に組み合わさった中で、それぞれの生産者が自らの経営目的、方針を見つけ出して生産を行っていく必要が出てきています。このように考えると、20〜30年前の協会としての活動の進め方を、時代の変化に対応せずそのままズルズルと継続してきた協会自体にも大きな問題があったのではないでしょうか。例えば、大きなイベントの一つである全国花き品評会についてみると、品評会の選考基準が必ずしも消費ニーズと一致していないことや、品評会で入賞することが以前のように生産者のメリットとなっていないことなどがあり、生産者からも「わざわざ品評会に出品する意義を感じない」といった声すら聞かれるようになっています。
 もう一点は生産者の意識の問題も重要な点の一つです。経営が悪化し始めると、すぐに後ろ向きな意識になりがちです。自分の陰は人に知られたくないといった意識で内に閉じこもりがちになるのですが、経営に問題が生じた時こそ、正確な情報を豊富に入手して経営方針の判断材料とするべきと考えます。農家から経営者に意識が転換できていない証拠かもしれません。
 全国組織である花き生産協会のメリットを的確に花き生産者に提供すること。花き生産協の会員であることを自覚して自身のメリットを追求し、他の会員に対してメリットを提供すること。このことこそが日本花き生産協会の本来の意味であり、役割ではないでしょうか。
 いずれにしても、このままでは日本花き生産協会は名ばかりの全国組織になる可能性があります。しかし、国際化への対応や花の消費文化の高揚、適切な生産技術の開発・普及など、日本の花き生産者組織としての必要性はますます高まるばかりです。日本の花き生産者の皆さんは一人一人の意見としてどのようにお考えなのでしょうか? 花き生産協の役員の方々はこれまでの活動に対して、どのようなお考えを持っておられるのでしょうか?


★バレンタインデーの不思議 (2009/05/07)

 今年のバレンタインデーは,これまでとは異なり高級チョコレートが大変好調だったようです。昨年バレンタインデー期間中に7億3000万円を売り上げた大阪阪急梅田店では,今年は4%増の売り上げを記録したとのことです。世間では世界金融危機の影響を受けて昨年の今頃には鼻息の荒かった自動車産業も未曾有の経営状況となり,個人消費が落ち込んでいます。しかし,バレンタインデーのこの売り上げは何を意味しているのでしょうか。
 昨年までのバレンタインデート大きく異なった動きとして「自分へのご褒美として高級チョコレートを購入し,義理チョコが大きく売り上げを減らした」そうです。確かに,これまで義理チョコを有難くいただいていた私も今年は2個でした。大きく売り上げを伸ばした高級チョコレートは数センチの大きさの一口サイズで400〜600円で,9個入りの箱が5000円です。
 前回のコラムの「納得しなければ安くても買わない。高くても,なるほどと思えば買う。」を思い出して下さい。バレンタインデーで自分のためにチョコレートを購入する彼女たちにとって,1箱5000円の高級チョコレートはまさに納得できる商品だったのだと思います。同様に,ホンダのインサイトやトヨタのプリウスは200万円という価格にもかかわらず,昨年のガソリン高騰で燃費に注目していた消費者にとって「なるほど!」という感動が受注台数の大幅上昇を招いています。
 生花店や園芸店では,不景気の影響を受けて5000円の贈答用の花が売れなくなったと言われます。贈答用花束の価格が3000円に下がってきていると言われます。本当にそうなのでしょうか?5000円の花束が納得できる商品性を持っていないと言うことではないのでしょうか。5000円の価格に対して花の量が少ないという問題でもないと思います。「なるほど!」と感ずるものがないからではないですか?例えば「香りのバラの花束」と題したイブピアッチェなどが入った鮮度保証付きの贈答用花束は売れると思います。
 生産者からは「景気が悪いから売れない」といった言葉が聞かれますが,では景気が良くなったら売れるのでしょうか?そうではありません。売れ行きが悪い理由を不景気のせいにして思考を停止することなく,その原因を積極的に探ることをしませんか?
 浜松PCガーベラ販売部会では,クレーム情報も含めた情報収集から商品の企画を進めています。


★遺伝子組み換え植物とPA(Pablic Acceptance:社会認知)

 私が担当している講義の一つ植物育種学の試験で「遺伝子組み換え植物の社会への普及についてPA(Pablic Acceptance:社会認知)の観点」を問題として課したところ、受講生から素晴らしい内容の答案が多くあり、今後の遺伝子組み換え植物に関する研究の方向性に重要な指針を提案してくれていました。
 遺伝子組み換えについては、研究者の観点において2つの方向があり、これが問題となっています。1つは遺伝子組み換えを学問・研究として捉える基礎研究者であり、もう1つは社会貢献・普及を目的として捉える応用研究者です。
 遺伝子組み換え技術(分子生物学)は植物の成長、代謝などの植物の基礎生理機構を解明する上で極めて大きな貢献をしています。例えば、赤色の花が突然変異で白色になった植物の遺伝子(DNA)を元の植物の遺伝子と比較することで花の色素の合成・代謝の生理機構が明らかとなり、実際にこの遺伝子(DNA)を赤色のペチュニアに組み換えることで花色素の生合成酵素反応に関わる遺伝子の働きを実証することができるようになりました。このように、これまで詳しい生理機構が判らなかったこと(ブラックボックス)が遺伝子組み換え技術を使うことで解明されてきました。大学教員として感じることですが、これまで判らなかったことを明らかにすることは基礎研究者として非常に楽しいことであり、それが実用的であるかどうかは二の次です。現在、分子生物学研究は植物基礎研究の主流となってきており、DNAを扱わない研究者は劣った研究者といった評価がされる傾向にあります。
 しかし、遺伝子組み換え技術(分子生物学)を学問として捉える基礎研究者が、社会貢献・普及を考え始めた時に大きな問題が生じてきます。応用研究は、単純な基礎研究の応用といった学問分野ではありません。的確なマーケティングに基づいて社会のニーズを判断して研究課題を選択します。的確な時期に的確な分野で技術開発を行い、社会に提供する意識が必要です。
 現在、スーパーマーケットで販売されている豆腐や納豆の原材料欄に「遺伝子組み換え大豆を使用していません」といった記載を見ることができます。除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆は何故消費者の理解が得られないのでしょうか。その理由の一つには、消費者にとって大豆が除草剤耐性であろうがなかろうが何も関係がないことにあります。「関係がないのであれば、普通の大豆が良い!」のであって、「敢えて除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆を選ぶ必要がない」からだと思います。
 この遺伝子組み換え大豆は大規模生産農家にとっては極めて有利な作物であり、この大豆を開発した除草剤製造企業にとっても除草剤の販売戦略として極めて有効です。しかし消費者にとって除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆は何もメリットがなく、社会認知(PA)が得られなかったと考えます。
 そうですね!除草剤製造企業にとって直接の顧客は生産農家であったのですが、遺伝子組み換え大豆の顧客が一般消費者であることを見落とし、社会認知(PA)への対応を怠ったことが最大の失敗であったといえます。遺伝子組み換え技術(分子生物学)を学問として捉える基礎研究者が主導で開発を行い、応用研究者の関与が少なかったのではないでしょうか。
 さて、日本では既に遺伝子組み換え植物が10年以上にわたって流通しているのをご存じでしょうか。そうです。サントリーが開発した青いカーネーション「ムーンダスト」です。サントリーはムーンダストの販売にあたって綿密な社会認知調査を行い、当初は首都圏の特定の生花店に限って販売を開始し、手順を踏んで販売先を拡大してきました。そして、最終的な目標である遺伝子組み換えによる青いバラの販売にあたって、ムーンダストの全国販売を通じて社会認知(PA)の確保に努めてきています。
 確かに遺伝子組み換えの青いバラは食べ物ではありませんので、遺伝子組み換え大豆のような拒否反応がなかったことも事実ですが、サントリーは消費者に対する充分な調査の下に配慮を徹底して行っています。青いバラの開発自体は基礎研究者の主導でしたが、その公開と販売・普及に関しては応用研究者が主体となって行ってきています。
 大学の研究は基礎研究が重要視される傾向がありますが、大学法人となって5年目を終わって、これからは基礎研究者と応用研究者が相互に密接に連携して社会にその成果を還元することが重要になってくると考えます。私は応用研究者としてこれからも頑張っていきたいと考えています。


★花き市場の行く末 (2009/03/03)

 全国には150の花き卸売市場があります。花き生産・流通先進国のオランダは2007年にアルスメール市場とオランダ花市場が合併して実質上1つの市場しか存在しません。日本にこれだけ多くの花き卸売市場が必要なのでしょうか?
 一般に、花き卸売市場ではセリ(競売)で花を販売していると考えられていますが、実際には競売率(セリ取引率)は47.5%で、流通量の半分程度でセリ取引が行われているにすぎません。時期によっては80%がセリ以外で取引されています。セリ以外の取引には、買参人(生花店や園芸店、量販店、仲卸など)から生産者を指名して花を購入する注文取引、市場に出荷された花をセリ前に購入する予約相対取引、出荷された花を市場がインターネットを介して注文を取って販売するネット取引などがあります。当然、これらのセリ以外の取引価格はセリ取引より価格が高いことが多く、生産者にとっても有利販売に繋がり、出荷する生産もセリ外取引を積極的に進める傾向にあります。
 また、大手の量販店などでは仕入れる花の量が多いため、複数の花き卸売市場で花を購入しますが、携帯電話の発達でセリの最中に相互に価格を確認しあって、より安い価格の卸売市場で花を購入するため全国的にセリ価格が統一される傾向にあり、セリを行う意味が次第に薄れ始めています。
 これまでの花き卸売市場の役割として商品の安定供給と適正価格の形成がありましたが、情報化社会が進んだ結果として、今後の花き市場の役割は出荷される花の生産情報を正確に把握し、需要情報とマッチングさせる機能がより求められていくと考えます。
 今後の花き市場の将来像としては、私見ではありますが、全国150の花き卸売市場の中で資本力のある大消費地の大手数社が中核情報センターとして機能を強化していくことになると考えます。これに対して生産地と地方消費地をバックに持つ地方市場は、正確な生産出荷情報を把握して中核情報センターに提供すると共に、地域の消費需要情報を中核情報センターに提供します。中核情報センター機能を持つ拠点市場は、全国から寄せられる生産出荷情報と消費需要情報をマッチングさせ、生産情報を提供した地方市場に対して出荷された花の分荷・配送を指示します。
 このような生産需要情報と商品物流を分離する考え方は10年以上前から商物分離としていわれていたことですが、当時200社以上の花き卸売市場が乱立していた時代では実現が困難であったと考えられます。商物分離ができない現状では、生産物は需要者の多い大都市圏の大手花き卸売市場に集中する傾向が進んでおり、需要の少ない地方市場には花が集まりにくくなっています。その結果として、地方の生花店や園芸店は品揃えが難しくなり、地方の消費者の花の購買意欲が一層低下する悪循環が進んでいます。また、岐阜県で生産された花が東京の大手花き卸売市場に出荷された後、岐阜県の花き市場からの注文で再び岐阜県に転送されて生花店や園芸店に届くというおかしな事態も頻繁に起きています。
このような問題が生じている中で卸売市場法が改正され、花き卸売市場のグループ化が始まっており、ようやく中核情報センターと地方市場の役割分化が進み始めて、まさに商物分離が実現しようとしています。
 卸売市場法の改正は市場の再編統合を進めることを大きな目標としており、今後の地方卸売市場のあり方に大きな変化をもたらすことになると考えます。全国のどこに住んでいる消費者も豊かな花文化を享受する権利があります。大都市に住んでいる消費者だけが豊富に花を購入でき、地方の消費者はそれを味わえないというのは、日本の花文化の発展を大きく阻害することに繋がります。大都市だけの一極集中ではなく、地方の時代をむかえようとしている現在、地方の花き市場こそが重要な役割を果たす時代が目の前に来ていると考えます。
 しかし現状では、地方の花き卸売市場は既に物流機能が低下し始めているにも関わらず、依然として従来のセリを中心とした取引を継続しようとしており、近い将来地方の花き卸売市場が崩壊する危険性をはらんでいます。本来果たすべき地方市場の役割を明確に認識し、商物分離を基本とする将来の花き流通に向けて方向転換を図る必要が出てきていると考えます。


★卸売市場法改正と品質管理の高度化 (2009/02/24)

 2006年4月に卸売市場法が改正されました。花き生産業界ではもっぱら「手数料の自由化」だけが話題となっているようですが、「卸売市場における品質管理の高度化」が重要な改正点の1つとなっています。農水省の卸売市場法改正の要点のなかでも「品質管理が徹底した安心できる生鮮食料品流通の確保を図るため、農林水産大臣が卸売市場整備基本方針等において品質管理の高度化のための措置を定める」とあり、品質管理の高度化は重点項目となっています。しかし、花き卸売市場協会は「花は生鮮食料品ではない」との考えから品質管理の高度化には積極的ではありません。本当にそれで良いのでしょうか?
 花は誰が見ても食料品ではありませんが、花は間違いなく生鮮品であり、品質管理の高度化は同じように求められるべきであると思います。例えば、生鮮品として必須であるコールドチェーンは花き市場で途切れることが多く、生産段階で立て箱輸送(湿式輸送)に取り組んだとしても、花き市場でコールドチェーンが途切れると急速に鮮度が低下してしまいます。また、近年のネット取引が増加する中で花き市場への商品の到着が早くなる傾向があり、高温期に温度管理が行われていない場合には品質の低下が生じ、ネットの画像と購入した商品との違いによるクレームも発生してきています。
 市場における品質管理とは何を指すのでしょうか?鮮度管理(荷受場・保管庫 ・競売場・輸送中の温度管理や中間品質検査など)、製品の品質管理(入荷商品の品質チェックや最終出荷商品の品質チェックなど)、在庫管理(バッチ毎の在庫管理や受領日・競売日・出荷日の管理など)、トレーサビリティー(バッチ毎に出荷者・担当者名の記録のほかに管理データの保管など)があるかと思います。卸売市場でこれらのことを遵守していることを証明する手段としては、例えばISO19001や2001などがあると思いますが、ISO基準は工業界なども含めた基準であるため、なかなか対応が難しいところがあります。
 以前のこのコラムで解説したMPS花き流通認証(MPS花き市場認証:MPS GPA)が2008年から始まり、全国の複数の花き市場が既に認証を取得しました。MPS花き市場認証は花き流通市場に特化した認証制度で、まさに花き市場が取り組もうとしている品質管理の高度化を第三者として認証・評価してもらえる有利な制度ということができます。認証評価項目には、製品品質、鮮度、品質規格、物流、プロセスマネジメント、受入れ検査、保管、在庫管理、中間品質検査、配送、加工と処理、出荷、輸送、トレーサビリティー、サプライチェーンにおける協力体制、苦情処理、顧客満足度調査、社内組織・倫理・環境、従業員規定・研修・衛生・安全管理、職務・責任・権限および条件、改善マネジメント、文書管理と保管など多岐にわたります。
卸売市場法の改正に対応すべく多くの花き市場がこれまでの業務内容の見直しを始めていますが、一度、花き流通における品質管理の認証制度としてのMPSを検討してみてはいかがでしょうか。


★手軽に花を買える社会は花き生産者にとって良い社会か? (2009/02/23)

 以前、農水省がカジュアルフラワーの生産を進めたことがありました。JFMA(日本フラワーマーケティング協会)でも花の消費拡大を推進するためにスーパーマーケットなどでも手軽に買える花を進めています。これらの話題の中で必ず出てくるのがイギリスの事例です。テスコなどのスーパーマーケットが花保ち保証をして切り花を販売したことで花の消費が急増し、イギリスの花き産業が急成長しました。このイギリスの事例を日本に導入することで、日本の花き生産業界はさらに発展できるのでしょうか?
 イギリスの花き生産は極めて貧弱で、消費される切り花のほとんどは海外からの輸入に頼っています。スーパーマーケットのテスコなどで販売される切り花もその多くがケニアなどで生産された輸入切り花で、25本パックで1000円という低価格で販売されています。実は、イギリスでの花の消費拡大はイギリスの切り花生産の発展にまったくといって良いほど貢献していないのが現実です。
 スーパーマーケットは店舗数が多く、店舗ごとの販売数量も多いのが特徴です。例えばイオンのジャスコは全国に300店舗があります。各店舗でバラを100本/日販売した場合、毎日3万本のバラの供給が必要となりますが、この本数を定期的に出荷できるバラ生産者は国内にはありません。3万本のバラを毎日生産するためには30,000坪(約10ha)の生産面積が必要で、日本で最大のバラ生産会社のメルヘンローズでも9,000坪(3ha)です。しかし、ケニアの100haのバラ生産会社であれば、1日の生産本数は40万本に達するため、3万本の需要には充分応えられることになります。
 このようにスーパーマーケットで販売される切り花は、安定供給体制の観点から、おのずとケニアやエクアドルなどの赤道直下の高地にある大規模生産会社からの輸入切り花が主体となってしまいます。現実にウォルマートやテスコ、セインズベリなどのアメリカやヨーロッパのスーパーマーケットではこれらの生産国からの輸入切り花が積極的に販売されています。日本国内でも日常的に消費される仏花はスーパーマーケットで販売され、そのほとんどが中国産で占められています。
 スーパーマーケットで花を購入する消費者について考えてみると、スーパーマーケットで花を購入する人は大きく2種類に大別できると思います。第1のグループは日常的に花を購入する消費者層で、いわゆる花好きの人達です。毎週のように花束を買って室内に飾りたいので、スーパーで売っている値段の安いパックの花束はとてもお気に入りです。この人達は友人の誕生日のプレゼントには花束を贈る人達で、贈る花束はスーパーマーケットではなく生花店で特別な花を買ってくれます。この花好きの人達が増えれば増えるほど生花店での花束の販売量は増加することになり、国産の特別な花が売れることになります。
 スーパーマーケットで花を買う第2のグループは、いつもは花を買わないけれどもパックの花束の値段が安ければ衝動買いで花を買ってしまう人達です。この人達は花は高いと常々感じている人達で、生花店で花を買うことはほとんどありません。しかし衝動買いであっても一度花を買って室内に飾ると、花の虜になり始め、次第に花好きになってくるのは間違いありません。花好きになれば第一のグループに限りなく近づき始め、国産の特別な花を贈り物に使い始めます。
 このように考えると、海外から大量に切り花が輸入されてスーパーマーケットで大量に販売されることによって花好きの消費者が増加し、贈り物などに国産の花を購入する人達が増えて国内の切花生産が活性化してきます。
 ただし、ここには落とし穴もあります。海外から安い切花が輸入されることによって花消費量全体の海外依存度が高まります。海外の切り花と差別化ができない切り花を生産している生産者は価格競争の渦に巻き込まれて廃業せざるを得なくなります。バラであれば、普通のバラを生産している限り価格は海外からの輸入切り花に引きずられて低下するため、生産者所得が下がり経営は行き詰まってしまいます。
 そうです。日本の切り花生産者が目指すべき道は海外の輸入切り花と差別化、区別化できる切り花を生産することしか道はないのです。差別化、区別化には色々あります。バラでいえば、海外では生産できない品種で国際商品ではない「バラらしくないバラ」、花弁が薄く長距離輸送に向かない柔らかい雰囲気のバラ、輸送性の悪い半八重のバラ、切り前を早く収穫すると花保ちが悪い香りの高いバラ、高湿度で灰色カビ病が発生しやすいバラなどがあります。産地直送のバラやその日に収穫したバラなども差別化に役立ちます。栽培方法や栽培環境を明示した生産者の顔が見える思い入れの強いバラも有利性があります。バラの消費構造の三角形の上部に位置する「花好き・バラ好き」の消費者層をターゲットにした「バラらしくないバラ」を投入することで、輸入バラと差別化できる高品質なバラの消費を増加させる「新製品投入戦略」が重要です。
 これと同時に、バラの消費構造の三角形の底辺に位置する普段使いのバラ(カジュアルフラワー)や初心者向きの低価格の「バラらしいバラ」を海外からの輸入バラに明け渡し、三角形の底辺を大きくすることによって、三角形の上部の国産の特別なバラの購入量を増加させる戦略を進めます(市場の拡大戦略)。バラの流通本数からみると、海外のバラが全体の60%程度を占めることになるかもしれませんが、三角形の上部の国産の特別なバラは価格が高いため、販売金額としては国産のバラが60%を占めることになるのではないでしょうか。
 是非、ジャスコやイトーヨーカドーでは輸入のバラ3本パックの花束を480円でどんどん売っていただきましょう。レストランでもテーブルごとに単価の安いバラを飾ってもらいましょう。バラに囲まれた生活を日常的に感じることで、バラの魅力を消費者に味わってもらいましょう。こうして日本国内に「花好き・バラ好き」をたくさん増やして、特別な日の花飾りや贈り物に国産の特別なバラを買ってもらう機会を増やすことで、国内のバラ生産者の生き残り戦略を図ることができるのではないでしょうか。
 既に切り花は国際流通の渦の中に突入してしまっています。日本で消費される切り花すべてを国産が供給できる状況ではありません。国際流通の中で、日本の切り花がどの位置を確保するのかが問われていると考えます。


★北海道でのバラ生産 (2009/02/19)

 2月18日に北海道花き生産流通セミナーバラ部会での講演のために札幌を訪問しました。北海道は冬の過酷な環境にも関わらず30名近くのバラ生産者がいます。特に旭川の北に位置する当麻町は、最低気温がマイナス20℃に達する環境条件にも関わらず多くの生産者が切りバラを生産しています。「何もそんなところでバラを作らなくても」と当初は思いましたが、話を聞いているうちに考えが変わりました。
 北海道でのバラ生産の主な作型は、5月から11月まで切りバラを出荷し、12〜4月までは5℃程度の暖房をしてバラを休眠させます。特に5〜6月と10〜11月は夜温が10℃まで下がるものの温室内の昼温は30℃近くまで上昇し、まさにエクアドルの環境とほとんど同じ条件になります。バラの花の大きさは最低気温と最高気温の較差が大きければ大きいほど巨大になることから、この5〜6月と10〜11月のバラはエクアドルのバラに匹敵する巨大輪になります。7〜9月の温室内の環境は最低気温が15℃、最高気温が30℃で、まさにインドのバラ生産地バンガロールの気候です。
 そうです。北海道は冬を除けばバラの生産に最も適した地域ということができます。そして、東京の流行を全国に先駆けていち早く取り込む札幌を消費市場に持っています。北海道で生産された高品質なバラは主に札幌の花き市場で販売され、年間平均単価は110円程度とのことです。全国のバラ平均単価の78円と比べても1.4倍という高値で販売されています。当然切花を生産する時期には暖房を必要としませんので、生産コストは低く抑えられます。
問題点といえば、切花生産できる期間が7ヶ月程度しかなく、冬の期間にも5℃とはいいながら暖房費が必要です。出荷市場が札幌の花き市場に限られているため、特定の品種の出荷が重なると価格が暴落することがあります。

北海道でのバラ生産の提案を以下に述べたいと思います。
◎ヒートポンプを使って、夜間温度を10℃に制御する
 7〜9月にヒートポンプで夜間温度を10℃まで下げることによって、5〜11月の全期間でエクアドルのような巨大輪を生産することが可能です。ただし、エクアドルのバラと区別性を持つことが重要で、エクアドルと同じような品種を同じように生産する限りエクアドルの価格には対抗できません。切り前を遅らせて最後まで開ききることをアピールする、あるいはイブ・ピアッチェに代表される香りのバラ品種を生産する。最も良いのは、芳香性が最も強い開花し始めの時期まで切り前を遅らせて香りのバラを収穫して出荷することです。

◎昼夜の湿度コントロールをする
 夜温が低下すると湿度が上昇します。また、昼間の高温乾燥状態と夜間の多湿状態が重なることでうどん粉病とダニが多発します。夜間の湿度をヒートポンプや除湿機で80%程度まで下げる。あるいは午前10〜11時に折り曲げ枝に葉水をかけて昼間の湿度を上げる。この両方あるいはいずれかを行うことでうどん粉病とダニはかなり防ぐことができます。

◎低コストのパイプハウスでの雨除け栽培によるガーデンローズ品種の切花生産
 オールドローズタイプや香りが特徴のガーデンローズを雨除け栽培で切花生産する。特に5〜6月に生産できる最初の切花は、芽出しの時期に低温ストレスがかかっているため花色も鮮やかで、花も大きく見事な切花を生産できます。また9〜10月の切花は昼温が下がりながら開花するため、切花の花保ち性も良く、巨大輪を出荷することができます。

◎豊富な土地を活用した露地での実バラ切り枝の生産
 実バラの切り枝の生産は以前から行われていますが、種類は多くありません。バラの果実の形は細ヒョウタン型、太ヒョウタン型、紡錘形、球形、扁平球形など様々で、色も黄色、オレンジ、朱色、赤など多様です。すべての種類をセットで出荷できる産地は全国ではまだありません。

◎北海道のバラのイメージ戦略を前面に出して販売
 私が感じたように、多くの人々は北海道でバラが生産されているとは思っていません。しかし、「北海道だからできる環境にやさしい最高品質のバラ」というイメージは多くの消費者に受け入れられるでしょう。特に東京と大阪のチョットリッチな消費者にとって、北海道のイメージは大変良いイメージです。このイメージ戦略を最大限に活用しない手はありません。「北の大地のおおらかさ」、「環境にやさしい」、「最高品質のバラ」をイメージさせるキャッチコピーを作ることは効果的です。

◎地域ごとに連携した出荷時期の調整
 北海道のバラ生産者の生産規模は小さく、さらに春の訪れと共に切花生産を行うために切り花周期に大きな波ができてしまいます。数人の生産者が連携して切り花周期の波をずらしながら連続して生産出荷できる体制を整えることが重要です。


★花き産業界発展のための基金構想 (2009/01/31)

 近年の花き消費量の低迷は,花き販売業界にとって大きな影を落としており,その影響を受けて花き流通業界は取扱額が年々低下し,さらに商品の単価の低下は生産者に大きな影響を及ぼしています。市場価格の低下による生産者の経営の悪化は,新たな生産施設の増設や老朽化した施設の改築の抑制や設備備品等の買い控えに繋がり,農業資材や種苗関連業界にも大きな影響を及ぼし始めています。このように花き産業の不況は末端の花き消費の低迷に基づいており,生花店,園芸店はもとより,量販店における花き商品の販売低迷は花き産業界の長期低落傾向を感じさせるものとなってきています。
 しかし,本当にそうでしょうか。高齢化社会をむかえたと言われる中,これからの日本において最も必要とされるのは心の豊かさであり,企業戦士と言われて高度経済成長期を支えてきた団塊の世代が50歳代を超えた段階で求めるものは経済的な豊かさではなく心の豊かさではないかと考えます。
 日本の先を歩んでいたヨーロッパやアメリカは今から20年前には花き産業斜陽期をむかえていたと思われていましたが,現在のヨーロッパ,アメリカ諸国の花き産業界の高揚はまさにこれからの日本の将来を予言させる現象ではないかと考えます。
 成熟期をむかえた社会では様々な心の豊かさを供給できる産業が発達しており,様々な産業界が心の豊かさを満足させるための将来展望を目指しています。
 さて,他の産業界と花き産業界を比較すると,消費者に対するPR活動の低調さは明らかです。花は視覚的にも大きなインパクトを持ちながらも、テレビなどの視覚報道業界でコマーシャルを見ることはほとんどありません。直接消費者に対するPR活動は多額な広報費が必要であるため,これを支出することができないためです。オランダでは花き園芸協会が市場手数料の0.2%を広報宣伝費に計上して,活発な消費宣伝活動を行っているのと対照的な現状です。
 このような現状を打開するために,花き業界挙げて花き産業界の発展を考えるための基金の拠出を行い,花き産業を発展させたいと考えます。
 本来は日本の花き業界あげての活動にしたいとは思いますが,私の力量もあり,愛知県,静岡県,岐阜県の花き業界が力を合わせた広報活動の拠点作りを立ち上げたいと考えています。愛知県,静岡県,岐阜県は全国に誇る花き生産中心地域であり,同時に中京圏として1,330万人の消費者を擁する花き消費圏です。この地域から花き業界の将来の発展に繋がる一歩を踏み出してみませんか?

もし差し支えがなければ、この「花き産業界発展のための中京圏基金構想」へのご意見をお聞かせ下さい。 fukui@gifu-u.ac.jp 


★任天堂のWiiとDSの2008年クリスマス商戦 (2009/01/30)

 任天堂が1月29日に2008年第3四半期決算短信を発表していました。世界金融危機の影響を受けて、世界中の景気が冷え込んでいますが、Wii、DSシリーズ共に2007年クリスマス期と比べて110%前後の売上増となっています。2008年12月といえば国内を含めて世界中が真っ暗な経済状況に突入していたにも関わらず、2007年より売上が増加したということは驚くべきことです。
 国内の花き業界の販売状況はこの数年間長期低落傾向で、一向に先の読めない状況です。「これだけ景気が悪くなると、必需品ではない花が売れないのは当然だよねぇ・・」と愚痴とも嘆きともいえない言葉が至るところで聞こえます。しかし本当にそうでしょうか?
 WiiやDSは必需品ですか?家計のやりくりの中では、花と同じように真っ先に削減されるはずの商品ではないでしょうか。新聞やTVのニュースでは、「派遣切り」や「正社員の解雇」などの報道が踊る中で、確かに厳しい経済情勢であるとは思いますが、本当に一般国民の家計は生活できないほどの状況になっているのでしょうか?20,000円前後の高額ゲーム機が着実に売れている理由を考えてみましょう。
 第一に、WiiのTVコマーシャル効果があります。WiiのTVコマーシャルのイメージは「家族で楽しく団らん」です。景気を含めて暗い気持ちになりがちな中で、家族が楽しく団らんすることこそ心の支えであり、心の安らぎだと思います。花も同じジャンルのアイテムであると思います。家族の誕生日や記念日に家の中に花を飾ることは、まさに心の安らぎと幸福感を提供できるのではないでしょうか。花き業界にはTVコマーシャルを打つ能力が欠けていることが最大の弱点です。花の持つ商品の魅力を消費者に充分伝え切れていないため、消費が向上しないのだと思います。
 第二にソフトの充実です。WiiにしてもDSにしても豊富なソフトがハードの売上を支えています。WiiやDSがあってもソフトが1つしかなければ興味は湧いてきません。様々な価値観を持つ消費者に対して、個々が満足感を味わえるような様々なソフトが開発されていることで広く消費者に受け入れられています。花はどうでしょうか?花き業界において「ソフト」とは何でしょうか?生花店でのブーケの提案であり、パーティーや式場での花飾り、喫茶店やレストランのテーブル花飾りなど、身近に花に接する機会を豊富にすることも1つです。園芸店での個別の花の育て方相談、テレビのガーデニング番組、インテリアショップや住宅展示場での花飾りなども「ソフト」の1つだと思います。まさに生産と販売が一体となった花き業界のプロモーションこそが「ソフト」にあたると思いますが、このことが行われていません。
 花き業界が何も取り組んでいないとは言いませんが、花き生産業界(個々の生産者?)、流通業界(個々の花き市場?)、販売業界(個々の園芸店や生花店?)が勝手に思い思いに方向を定めないで取り組んでみてもベクトルが収束しない限り大きな力にはなっていきません。2007年2月22日のコラム「何故日本には花の消費拡大CMがないのか?」でも書きましたが、オランダ花き協会(Bloemenbureau Holland:BBH)のように花き業界全体から広く浅く基金を拠出して「花の消費プロモーション」が行えないのでしょうか?
 今こそ、花き産業界の関係者が一致団結して花き消費プロモーションに取り組むことが必要なのだと思います。


★花育事業 (2009/01/05)

 2008/12/13のコラム「花育事業は自己満足に陥っていないか?」に対する様々な反響が寄せられています。
 私は「花育事業」反対論者ではありません。花に触れ、親しむことは情操教育として極めて価値の高い事業であり、曲がりなりにも岐阜大学教育学部生物学科を卒業した者として、小中学校における情操教育活動の観点から積極的に取り組むべき事業であることは良く理解しています。
 花育事業は、農林水産省、国土交通省、文部科学省が取り組んでいる事業で、各々の省の考え方が微妙に異なりながら全国花育活動推進協議会が設立されて事業として行われています。文部科学省は「花育」を情操教育として捉えており、幼児・児童の成長期において、花と緑に親しみ・育てる機会を提供し、やさしさや美しさを感じる情操面の向上を目的としています。また、国土交通省では、地域活動において花や緑を介した世代交流等により、地域のつながりを深めることで地域社会の連携を深めることを目的としています。一方農水省の観点からみると、「花育」の素材・技術、あるいは人や場を提供する役割を担っているものの、農水省の立場で「花育」の目的を考えた時、いじましいと言われるかもしれませんが、花き生産・流通・販売という産業の観点から「花育」を通じて将来の顧客確保の観点は捨てきれないのではないかと考える次第です。
 「花育」に携わっておられる花き生産業界や販売・流通業界の方々が、花の持つ心を豊かにさせる力をもって社会に広く貢献したいという心暖かいボランティア精神であるのであれば、何も異を唱える気持ちはありませんし、産業界におけるCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の考えからみても正常な行為であると思います。
 一方で、本来の「花育」とは異なる観点ではありますが、子供達の花に触れあう機会を増やして将来の花の消費確保・拡大を目指そうという考え方が一方ではあることも事実です。これは本来、花き消費のマーケティング戦略の一環として行われるべき事業ですが、「花育」と混同されていることも事実ではないかと思います。実際に、同様な取組でもある「食育」が地産地消という産業的な観点と結びついているように、花の消費拡大を「目的の一部」にあげている花育活動もあるのではないかと思います。
 私は、本来の「花育」事業が花を通じて子供達の情操教育に貢献する大きな役割が果たせる花き産業界のCSR的な事業であり、見返りを求める事業ではないと理解しています。しかし、2008/12/13のコラムの内容は誤解を招きかねない内容ではありましたが、花の消費拡大を「目的の一部」にあげて活動している方々に対して、その効果は必ずしも高いとは言えないことを留意していただきたいと考えました。そして、正面から取り組むべき「花育」事業と、マーケティング戦略の観点から取り組むべき事業を区別して考えるべきではないかと考える次第です。花の消費拡大を「一部」であっても目的として「花育」に取り組むのであれば、効果のほどは正当に検証されるべきではないでしょうか。


★2009年を迎えて (2009/01/01)

 丑年の年頭に当たって、メール年賀状を作成いたしました。ご覧下さい
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 昨年は、花き業界も世界金融危機の影響を受けて低迷しました。また、原油価格に翻弄された一年でした。
 今年は丑年ですので、ジックリと構えて将来の構想を練り上げたいと思います。よろしくお願いいたします。



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