「岐阜花き流通センター農業協同組合」 

設立の経緯
 昭和30年代に、美濃、海津の観葉植物を中心に始まった岐阜県の鉢物生産も、鉢花、観葉植物、洋ランの多種生産が盛んになった昭和50年代後半になって、個別対応されていた市場への出荷を組織対応に切り替えようという機運が一部の生産者より持ち上がり、その後の幾多の困難を乗り越え、生産者自身による専門農業協同組合として昭和61年11月に岐阜県より認可を受け、発足しました。併せて花き産地総合整備事業により、花き集出荷場が建設されました。

 右の図のように、設立後より着実に出荷量、金額共に増加の一途を遂げています。組合員数も、設立当初の1988年では72名であったが、1990年には110名、1992年は152名となり、1999年の組合員数は180名余に達し、ほぼ全県下の花き鉢物生産者が加入している。

 1988年当初の生産量は、34万ケースで全国8位の位置であったが、1995年には100万ケースに達し、全国では第5位に成長した。1999年の出荷量は176万ケースで、全国4位に達し、日本一の生産地である「愛知県」に追いつこうと積極的な生産・販売活動が行われている。

 特に、バブル経済が崩壊した後、消費活動が低迷しているなか、一貫した右上がりの成長を遂げている生産地は全国でも例がなく、花き流通センター設立の意義が大いに発揮されているものと推定できる。岐阜花き流通センターに集荷された花は全国53市場に出荷されており、左図にみるように関東、関西、東海がほぼ均等に出荷されており、北海道、九州までも岐阜県の花き鉢物が出荷されていることが判る。
 2001年の新規事業として、花き情報ネットワーク整備を進めており、全組合員がコンピュータを持ち、コンピューターを利用した取引環境が整いつつあり、デジタルカメラを用いた画像による出荷予測情報を積極的に公開し、今後増加すると予想される予約相対取引に積極的に対応する体制が整いつつある。また、花き情報ネットワークを活用した電子商取引への対応も行っている。

 岐阜県の鉢物生産を大別すると、「鉢花」、「観葉植物」、「洋ラン」、「修景用花き(花壇苗・バラ苗など)」に分類することができ、以下にその詳細について解説する。

★鉢花

 鉢花は大正時代のシクラメン栽培に始まり、昭和40年代に各地で生産されるようになった。今では、県内全域でバラエティに富んだ種類が生産されている。
 平坦地では、省力化技術として移動ベンチ、プールかん水、ポッティングマシン、自動防除機などを導入したり、夏期の高温対策としてパッド・アンド・ファン冷房を導入するなどして、周年的な大規模生産を行う事例が多く見られる。中山間地では、シクラメンを中心とした経営の他に、夏期冷涼な気候を生かして数品目を組み合わせ、ガラス温室、ビニールハウス、露地を効率的に利用した経営も行われている。
ミニバラ セントポーリア サボテン カランコエ シクラメンポインセチア 

ハイビスカス ユリオプスデージー       【画像をクリックして下さい】


★観葉植物
生産の現状
 観葉植物生産は、昭和30年頃から岐阜市、美濃市、海津町などで始まり、これらの地域を中心に産地が拡大してきた。主な種類は、アナナス類、スパティフィラム、シェフレラ、ドラセナなどで、種類が多様化しており、その他観葉として分類されているものの割合が非常に大きい。
 県内産地は、アナナス類は海津町養老町、スパティフィラムは岐阜市、その他観葉植物は海津町、岐阜市、美濃市などである。近年、栽培面積は横ばい傾向だが、出荷数量は増加しており、小鉢化が進んでいる。
販売の現状
 観葉植物は、京阪神地域に32%、関東地域25%、東海地域に21%が出荷されている。多くは岐阜花き流通センターを通じて出荷されている。
産地紹介
 主要品目であるアナナス類は、5月〜7月を中心に出荷されており、スパティフィラムは5月〜11月、シェフレラは1月〜4月、ドラセナは4月〜6月、その他観葉植物は3月〜6月及び9月に出荷が多い。
 種苗の多くはオランダ、デンマークから導入されている。近年、スパティフィラム、シダ、プミラなどで移動ベンチによるプールかん水方式が導入され、省力化を図る動きが見られる。
 観葉植物は、寄せ植え・ガーデニングの材料として、また、室内の空気を浄化するエコプラントとして幅広い需要が期待されている。これらの新しい需要に応える新商品開発とともに、情報ネットワークを活用した販路拡大が望まれる。
グズマニア スパティフィラム ポトス シェフレラ(カポック)

★洋ラン
生産の現状
洋ランは垂井町でシンビジウム、大垣市でデンドロビウムの生産が昭和40年代から始まり、栽培面積が拡大してきた。種類はシンビジウム、デンドロビウム、コチョウラン、バンダのほか、最近ではオンシジウム、カトレア、ミルトニア、リカステなど種類の多様化が進んでいる。
 県内産地は、シンビジウムが垂井町、福岡町、瑞浪市、デンドロビウムが巣南町、大垣市などである。
販売の現状
 洋ランは、東海地域に39%、関東地域に31%、京阪神地域に21%が出荷されている。多くは岐阜花き流通センターを通じて出荷されており、総鉢数は16万鉢、その内デンドロビウムが6割を占め、次いでシンビジウム、コチョウラン、バンダの順となっている。一部で直販も行われている。
産地紹介
 主要品目であるデンドロビウムは12月〜3月出荷を中心に生産されており、12月出荷のものは8月下旬から10月上旬に高鷲村や清見村に山上げされている。
 品種は従来からの2倍体のほか4倍体・3倍体の大中輪種が増えており、4.5〜5号鉢を主体に生産されている。最近では、3号以下の小鉢生産も行われており、品種及び鉢の大きさが多様化している。シンビジウムも冷涼な高標高地を利用した12月出荷が行われており、コチョウランは山上げによる暮れ出しと、季咲きを組み合わせた周年的な生産が行われている。バンダはタイの農場から苗を導入することで、国際的なリレー農業を確立している。
 栽培期間の長い洋ラン栽培では、消費動向に即した種類や品種を、先を見通して導入するとともに、新たに導入した商品をいかに販売するかが極めて重要である。このため、情報ネットワークを活用して、情報収集を図るとともに販路拡大を図らなければならない。
シンビジウム デンドロビウム 胡蝶蘭 リカステ バンダ

★修景用花き
生産の現状
 修景用花きとしての花壇苗は、ガーデニングブームもあって近年急速に生産量が増えてきた。また、バラ苗は果樹苗木の生産者が契約栽培により生産拡大してきた歴史があり、現在も全国一の生産量を誇っている。
 県内産地は、花壇苗は美濃加茂市、大野町、恵那市、中津川市、岐阜市などであり、バラ苗は大野町、巣南町、北方町神戸町などである。
 平成11年度のバラ苗の栽培面積は20ha、生産額361百万円、花壇苗の栽培面積は16haである。
販売の現状
花壇苗は岐阜花き流通センター等を通じた市場出荷のほか、ホームセンター等との直接取引、種苗業者との契約販売などがあり、市場外流通の割合が高い。バラ苗は種苗会社との契約販売が多い。
産地紹介
 花壇苗は、苗を主体とした専作経営と鉢物と組み合わせた複合経営の2つのタイプで生産されている。専作経営では、パンジー、ペチュニアなど一般的な1・2年草のほか、ガーデニング用の宿根草を生産するなど種類が多様化している。複合経営では、シクラメンの組み合わせ品目として、東濃地域を中心に栄養繁殖系苗物を業者(サントリー)との受託契約により生産している事例がある。
 価格競争の激化もあって、生産流通コストの引き下げが進められており、安価で軽量な用土選定、播種機・土詰め機の導入、ローラー・台車による移動の省力化などが行われている。
 花壇苗は鉢花に比べ、ホームセンターなどとの直接取り引きや、公共事業での利用など市場外流通の割合が高い。このため、情報ネットワークの活用や提案型の商品開発により、積極的な市場開拓を行わなければならない。
パンジー