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Takahashi Lab.

研究内容RESEARCH

高橋研で,現在取り組んでいる研究内容を紹介します.

宇宙火災 -微小重力環境燃焼-

宇宙火災

 宇宙ステーション内や月面基地など,地球上とは重力レベルが異なる環境下での火災安全性を研究しています.重力が小さくなると,火炎周りの自然対流が抑制されるため,地上とは異なった燃え広がり方をします.左の図のように,微小重力環境では,火炎周りの高温領域が,地上に比べてかなり大きくなることが分かっています.高橋研では,厚さが薄い固体試料上の燃え広がりががどのような因子によって影響を受けているのかを,スケール解析と航空機実験(パラボリックフライト)によって解析しています.このテーマは,国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟"きぼう"内での実験テーマとして,研究が進められています.

本研究の一部は,公益財団法人JKAの機械振興補助事業として競輪の補助を受けて実施しました.その研究成果はこちらをご覧ください.


エンジン筒内温度計測

エンジン筒内温度

 レシプロエンジン筒内は,ごく短い時間内に温度が大きく変化します.このような高速で変化する温度場を,赤外線ふく射エネルギーを測定して温度を求める技術を研究しています.エンジン筒内はCO2やH2Oといった,赤外線を発する媒質が比較的多く含まれています.これらのふく射スペクトル分布は,温度によって変化するので,赤外波長帯でふく射強度を測定することで,熱炎発生前の低温度場情報を捉えることができます.本手法は非接触で測定対象を乱さず,高応答性のディテクタを用いることで,筒内の温度履歴を追跡することができます.右の図は,急速圧縮機で圧縮したヘプタン-空気予混合気の圧縮直後から熱炎発生前の様子で,ピストン移動でできる渦輪による低温部分が捉えられています.


予冷ターボジェットアフターバーナー排気の温度測定

アフターバーナー温度

 現在,JAXAで開発がすすめられている予定ターボジェットエンジンは,静止状態から飛行マッハ数5まで対応することができる,次世代超音速航空機用エンジンです.サブスケールモデルの燃焼試験などのような,屋外での大規模試験において,光源が不要で離れた場所から観測でき,かつ超音速場を乱さない本手法が求められます.高橋研では,ふく射2色法を用いてこのエンジンのアフターバーナー排気ジェット内の温度分布測定を行っています.赤外線カメラをディテクターとすることで,比較的簡便に温度分布情報が得られ,流れ場の特徴を明らかにすることができます。


CT技術を利用した2次元火炎温度場測定

CT温度計測

 燃焼場には温度分布が存在することが多くあります.このような場を計測する際に,病院などの医療施設でよく用いられているCT技術を用いることで,温度場の高解像度分布情報を得ることができます.高橋研では,既燃ガスに含まれるCO2の吸収およびふく射特性を利用して,アレイセンサを対象物の周りに360度回転させて赤外線プロジェクションデータを測定し,これを再構成することで燃焼場の2次元温度分布を求めています.右は,家庭用の調理用バーナーの計測結果ですが,内側にある3つの小さな火口の存在が再現できています.


HCCI燃焼制御

HCCI燃焼制御

 HCCI(Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)エンジンは,高効率,低燃費,低排出の期待の高い次世代エンジンですが,点火プロセスが圧縮による自発点火であるため,制御が難しいエンジンとされています.また,運転条件によってはノッキングなどの異常燃焼も起きやすいエンジンです.高橋研では,エンジン筒内に温度分布,燃料濃度分布などを形成することで,ノッキング強度を下げ,運転範囲を拡大する研究に取り組んでいます.左の図は,濃度勾配を持たせたヘプタン-空気予混合気を急速圧縮機で圧縮した結果で,比熱比の高い上端部分から点火して,燃焼領域が下方に移動してくる様子が見えます.


マイクロコンバスター

マイクロコンバスター

 電子機器などが急速に小型化されたのに対し,熱機関は従来の大きさからほとんど変化していません.これは,非常に狭い空間においては,周囲への熱損失のため燃焼現象が維持できないことに由来します.しかしながら,周囲への熱損失を熱再循環によって低減したり,触媒燃焼を利用することで,従来では不可能であった微小空間において燃焼を維持することができることが分かってきました.高橋研では,サブミリサイズのセラミックス管内(外径1.2mm,内径0.8mm)に多孔質白金触媒層を形成することで,右の写真のような極めて小さなバーナーを作成することに成功しました.熱電モジュールと組み合わせての超小型電源の開発にも取り組んでいます。


金属アルミニウム連続燃焼

HCCI燃焼制御

 近年,再生可能エネルギーや自然エネルギーなどによる発電利用が期待されていますが,これらはエネルギー密度が小さく,また出力変動が大きいうえに,その予測が困難であることが課題として挙げられます.このため,一度発電されたエネルギーを別の形で一時的に蓄える“エネルギーバッファ”となる仕組みの構築が求められています.アルミニウムは,安定に存在できる一方で,非常に反応性が高いという性質も持っているため,エネルギーを一時的に蓄える物質の候補となっています.本研究は,金属アルミニウムとして蓄えられたエネルギーを,アルミニウムの直接酸化を通して取り出す研究です.左図は,アルミ粒子を空気と混合して噴出させ,燃焼室で保炎させて連続燃焼を行っている時の写真です.


表面機能改質バーナーの開発

表面改質バーナー

 接着や塗装を行う際には,密着性を高めるための下地処理が必要です.近年,揮発性有機化合物(VOC)等の化学物質の使用制限が厳しくなっており,プラスチックのような疎水性の表面に,水溶性の塗料や接着剤を塗布したいという要求が強まっています.高橋研では,シリコンやチタンの酸化物微粒子を火炎中で生成して表面に照射することにより,基材表面に親水性機能を持たせる酸化微粒子塗布用バーナーに関する研究を行っています.本研究は,岐阜県内の企業との共同研究によりはじまりました.


酸化チタン光励起触媒による排ガス処理

表面改質バーナー

 現在,自動車の排ガス処理や燃料電池などのオフガス処理には,貴金属系の触媒が利用されていますが,資源量の減少や価格の高騰により,より安価な触媒の活用が期待されています.本研究では,酸化チタンを触媒として用いることで,従来の貴金属系触媒に代わる新たな触媒の模索を行っています.酸化チタンは一般に光により活性化する光触媒機能を有することで知られていますが,本研究では熱エネルギーにより活性化させる熱励起を利用することで,応用範囲の拡大を目指し,一酸化炭素や未燃炭化水素の分解・酸化反応の特性を調べています.


ディーゼル多段噴霧による燃焼制御

多段噴霧

 ディーゼルエンジンは熱効率の高いエンジンですが,液体燃料を噴霧状にして燃焼させるため,ガソリンエンジンと比べて燃焼制御や排気対策が難しいエンジンです.最近ではインジェクターの電子制御技術により,より高度な噴霧制御を行うことが可能となっており,燃焼効率の改善や騒音低減,排気ガスのクリーン化に寄与する考えられています.ディーゼル燃焼室内を模擬した密閉容器内に,コモンレールシステムを用いて燃料を多段噴射した際に,燃料と周囲空気との混合の度合いをどのように評価すると適切なのか,また圧力履歴や最大上昇率とどのような相関があるのかを研究しています.(現在休止中)


エマルジョン燃料の燃焼

エマルジョン燃料

 水と油は,混ざり合わないものの例えとして挙げられますが,界面活性剤を用いることで乳化燃料(エマルジョン燃料)にすることができます.乳化燃料は液滴燃焼する際に,水という低沸点物質が存在するため,ミクロ爆発あるいはパフィングと呼ばれる水滴の突沸現象を生じます.このため,液滴の二次微粒化による空気との混合促進や,燃焼温度の低下による燃焼排出物の低減に寄与することが期待されています.高橋研では,ディーゼル機関に実際にエマルジョン燃料を利用した時の出力や排気組成に関する研究を行っています.(現在休止中)

超音速燃焼 -スクラムジェットエンジン-

スクラムジェット

 飛行速度がマッハ5を超えるような航空機では,スクラムジェットエンジンと呼ばれる燃焼室内で超音速燃焼を行う空気吸いこみ型次世代エンジンが有望視されています.このエンジン内では,噴射された燃料は1ms程度の極めて短い時間内に,吸い込んだ空気との混合および燃焼を完了させる必要があり,極限環境燃焼の典型的な例として挙げられます.高橋研では東京大学の超音速燃焼風洞を利用して,炭化水素燃料を使用した超音速燃焼試験を行っています.また,数値シミュレーションにより,燃焼器内の流れ場の解明を行っています.(現在休止中)


高橋研究室

〒501-1193
岐阜市柳戸1−1

comblab[at]gifu-u.ac.jp ([at]を@に変更)