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タ イ ト ル 更新年月日 タ イ ト ル 更新年月日
 スナックとカラオケ 2001/12/11  知識・技術と「こころ」 2001/05/12
 海外生産のすすめ 2001/12/05  農産物のセーフガードについて【トマト】 2001/05/02
 種苗会社と育種ニーズ 2001/11/06  後継者に対する技術教育と意識教育 2001/04/26
 中国からのバラの輸出 2001/10/23  韓国からの切りバラの輸入 2001/04/12
 園芸店に対する企画 2001/09/04  園芸店と住宅展示場 2001/02/15
 園芸店の戦略 2001/07/31  岐阜県の柿産地の将来 2001/02/06
 ガーデニングを楽しむ消費者 2001/06/27  富有柿の干し柿 2001/02/01
 輸入野菜の現状調査 2001/05/22  中山間地の早い秋 2001/01/15
 観葉シンビジウム 2001/05/16  新世紀を迎えて 2001/01/05


★スナックとカラオケ(2001/12/11)

 年末ともなると忘年会で賑わしくなってきます。岐阜市の「柳ヶ瀬」は美川憲一の柳ヶ瀬ブルースでも有名な繁華街です。しかし、ここ数年は閑古鳥が鳴くような衰退ぶりです。近年の不況も手伝って、毎月いくつかの店が閉店しています。しかし、すべてのお店が衰退しているわけではありません。いつも客が一杯の店もあります。では、この違いは何が原因でしょうか。
 バブル期に現れたカラオケは、スナックの必需品となっています。しかし、この功罪は大きいようです。はやらないスナックでは、素人のお姉さんが相手をしてくれるのですが、お客が座るなり「カラオケでもどうぞ」とばかりに分厚い本とマイクを渡してくれます。経営者にしてみれば、安い賃金で雇えるアルバイト女性はコスト削減にピッタリで、カラオケさえあれば時間をこなせるし、「素人っぽいところがお客に受けるだろう」と勝手に信じ込んでいるようです。しかし、スナックに行くお客さんはカラオケを歌いたくて行くのでしょうか。これに対してよくはやっているお店では、お客さんの顔を見ながら話し相手をし、お客さんに合わせて話題を選んで楽しませてくれます。カラオケを持たないお店もあります。当然、お客が多いので金額も安くできます。
 客のニーズを無視し、経営者の都合でお店を運営していくことがどのような事態をもたらすかは自明の理です。このことは飲食店だけにとどまらず、園芸業界にもいえることでしょう。生産農家が「作りたいものを作って出荷する」のではなく、「消費者が欲しがっているものを生産する」気持ちがなくては、はやらないスナックの経営者と同じことになるのではないでしょうか。消費者の本当の気持ちを無視して、「カラオケ」ならぬ「ガーデニングブーム」や「有機栽培ブーム」に頼って自分の都合で生産を行い、本当は「信頼できる商品を買いたい」という消費者の真意を見過ごして、「消費者のワガママには付きあいきれない」と愚痴を言う。もう一度自分の経営を考えてみてください。


★海外生産のすすめ(2001/12/05)

 大阪市上海事務所長 中河省三氏のコメントを引用します。「中国から日本に輸入されている農産物の多くは、日本の商社や食品会社が種子と共に栽培技術を中国に持ち込んで農家に生産させたもので、「開発輸入」と呼ばれているものです。日本へ輸出しているネギの一大生産地である山東省安丘市では、98年ごろから日本の商社マンが現地に現れては農家にネギ栽培を勧め、種子も日本から持ち込んできて「まっすぐ、太さをそろえて」育てるよう指導したという。今では緩やかな起伏の丘一面見渡すばかりにネギが栽培されており、厳冬期を除きほぼ通年収穫ができるそうである。その結果このあたりのネギ栽培農家は、中国の平均的農家の2倍の収入を稼いでいるといわれている。このケースは、日本企業の指導により中国在来の品種や栽培方法を変えてできあがったものを輸出しているのであり、中国で栽培した「MADE IN CHINA」に変わりはないが、実質は中国ネギから日本ネギへ大きく変化しているのである。したがって、現在中国から輸入されているネギの多くは、実質を日本が変えた「MADE IN CHINA」BY JAPANだといえよう。」
 ここで問題となることは「BY JAPAN」は誰かという点です。現状では「BY JAPAN」は日本の商社であり、「農業生産に対して専門知識を持たない日本の商社でも農産物の開発輸入ができる」ことではないでしょうか。当然、日本の商社は輸入利ざやが稼げれば、「消費者に安い農産物を提供できる」という錦の御旗を掲げて、日本の農業が衰退することを考慮する必要はありません。
 本来、開発輸入をするべきは「農業生産者」であると考えます。日本の生産農家(農業法人)が中国に行き、自分の目で最適生産地を見つけ、日本で生産しているものと同じ品種を持っていき、現地で自分が(あるいは従業員が)生産し、日本と同じ出荷基準で選別し、自社のパッケージに詰めて輸入した場合には、自社ブランドの農産物として販売することが可能です。例えば【(有)福井バラ園の「クイーンローズ」】(ただし、どこかに小さく中国産と記載する必要はありますが)。日本の農場で生産したものと品質、規格など全く同じですし、生産者も明記してあるので、日本の販売価格と同じで取り扱われることになるでしょう。(誰がどこでつくったか判らない中国製品とは違います)
 家電製品やコンピュータは、既にこの方法で製造販売していますよね?


★種苗会社と育種ニーズ(2001/11/06)

 日本では、育種は種苗会社が行っています。種苗会社にとって「お客さん」は生産農家です。新しく品種改良した植物を種苗会社から購入してくれるのは消費者ではなく、生産農家だからです。したがって、生産農家が栽培しやすく、収量が多く、品質の高い商品を育種しています。しかし、本当の「お客さん」は誰でしょう。生産農家が栽培したものはエンドユーザーである消費者が購入してくれて初めて商品としての価値を持つことになります。「消費者が買いたいと思うものがよい品種」ではないでしょうか。
 消費者のニーズを把握して商品開発をしている種苗会社がどれだけあるでしょう。本当の「お客さん」を見ることなく、目の前の購入者を「お客さん」として考える風潮は、特に農業界では頻繁に見られます。例えば、生産農家は「市場をお客さん」と考えて、総会の来賓として招待しますし、市場は「買参人をお客さん」として扱います。したがって、種苗会社だけが批判されるものではありませんが、最も川上にいる種苗会社が、消費者のニーズを把握しないで育種をしている状況は問題があると考えます。種苗会社のカタログは生産農家向けに作られていて、消費者や園芸店、生花店が種苗会社のカタログを見る機会はほとんどありません。
 私自身、タキイ種苗やサカタのタネの会員冊子を見る機会がありますが、消費者の目から見て楽しい新品種がいっぱい出ています。しかし、生産者向けのカタログを見るともっと楽しい気持ちになり、1時間でも見とれてしまうことがあります。本来、新品種は消費者に「新しいもの」を提供するためにあるのであり、新しい作物を栽培したい生産者のためのあるのではないと思います。
 種苗会社の営業の皆さん、園芸店や花店に種苗カタログを配布してみませんか?


★中国からのバラの輸出(2001/10/23)

 10月7−13日にかけて北京を中心とした花きの生産・流通の調査に出かけました。6年前に調査したときのバラの価格は、店頭で平均31円、市場で20円程度でした。3年前でもほぼ同様な価格で維持されていました。今回の調査結果では11〜15円/本と価格が急落していました。これは雲南省昆明での大規模な切りバラ生産が行われたことによるものと考えます。すなわち雲南省での切りバラ生産は、現状の中国国内のバラ消費需要を大きく上回る規模で行われており、需給バランスが大きく崩れ始めていることを示しています。雲南省での切りバラ生産面積は現在でも増加しているとのことからみて、2005年には供給過剰をむかえ、切りバラ価格が暴落すると予想されます。このことは、オランダ式時計ゼリを行っている「北京菜太拍売中心」でバラの価格が既に5円以下で取り引きされたことがあるという話から見ても間違いないことであろうと考えます。
 国内価格が暴落した時の流通変化は、必ずといって良いほど高価格を維持している地域への輸出が行われます。現在の日本の切りバラ価格をみると、韓国の輸入バラが40円程度といわれており、中国の国内価格が5円を下回ったときには輸出経費などを加えても充分採算が合い、必ず日本への輸出が始まるのではないかと考えます。
 これまで「中国のバラの価格は高いため、中国のバラ生産農家が日本に輸出するメリットはない」と述べてきましたが、今回中国を訪問して、「このまま切りバラ価格の暴落が続けば、必ず近い将来中国からの輸出が行われる」との考え方に変わりました。
 日本国内の切りバラ生産者の皆様、早急に中国に対する対応策を考えないと、アメリカの切りバラ生産がコロンビアやエクアドルに駆逐されてしまったように、壊滅的な影響を受けかねないと思います。
 詳細な解説は、こちらを参照にしてください。


★園芸店に対する企画(2001/09/04)

 岐阜大学農学部4年生の千田久仁子さんが提案してくれた「園芸店に対する企画」です。私が考えるのとはチョット違った斬新な考え方を紹介します。

(1)生活感のあるフラワーディスプレイ
 凝ったアレンジではなく誰にでもすぐにできる花の活け方の提案を、店舗内での展示、またはショーウィンドーやショールーム、モデルルームなどでの展示、さらにファッション誌やインテリア誌で掲載することで、出来るだけ多くの人に生活の中に花がある風景に接し、花を利用する機会を増やしてもらおうというねらいです。ターゲットは庭のないマンション住まいの人、特にひとり暮らしの中で生活にゆとりや癒しを求める20〜30代、または生活に余裕がある中高年の夫婦を考えています。それら世代の違いは、展示する場所の客層によって展示内容を変えることで、対応できると思います。店内の展示は店舗スタッフが行います。ショーウィンドーやショールームでの展示は、ビジネスとして成り立つかどうかが問題です。植物が部屋の中にあることで得られる効能をもっとアピールすることも必要かと思います。また、インテリア雑誌やファッション誌においても、コーディネートによってどれほどの花が利用されるのか掴みにくいのが問題点としてあげられると思います。雑誌の中でちょっと注目してもらえるように、アレンジ方法などを添えると良いと思いますが、そのためにはインテリア業界と雑誌の編集・印刷業者の協力も必要です。
(2)男性顧客の獲得のために
 郊外の園芸店には50〜70代の夫婦がたくさんみえましたが、まだまだ花を利用する男性は少ないように思います。先日、試しに日比谷花壇のホームページで花を購入してみました。女性へ送るギフトとしてはいろいろありますが、男性への提案は観葉植物のサボテン2種と鉢物1種程度でした。男性でも利用しやすい花屋ができたら・・・と考えたのは、都市部で1件の花屋を見てからです。ターゲットが比較的若い世代になると、観葉植物が多くなりますが、その理由を考えてみると、@部屋にそのまま飾れる手軽さ、A管理が簡単、Bインテリアになる、C花の明るくかわいらしい色より葉のグリーンの方が受け入れやすい、などではないかと思います。これらをふまえ、花もシックな色を多く取り入れたり、包装や紙袋などをオシャレにして持ち運びやすくするなどの工夫をすると良いと思いました。また、男性客向けのサイトを作ることも方法の1つかと思います。花屋を見て感じたことですが、年輩の男性は商品の質と共に価格についてシビアに見ているようです。店舗の雰囲気よりも、どれが安く質がよいものかで購入するお店を決めているように思われました。男性をターゲットにするといっても、年代を絞らなければならないようです。
(3)情報のパイプとして
 生産者に消費者の嗜好や流行の情報を公開して、同時に商品の管理やケアの方法を獲得し、また消費者へ商品の管理やケアの方法を公開するという、生産者と消費者との情報のパイプとしてのシステムを作るという案です。しかし、これには情報という目に見えないものにどれだけ信用してもらえるかに加え、店舗レベルでは展開しにくく、大きなネットワーク組織が必要であると思いますが、既存のネットワークを活用することでも可能ではないかと考えます。


★園芸店の戦略(2001/07/31)

 岐阜県岐阜市長良の「長良園芸」安藤正彦氏の話を紹介します。安藤社長は園芸植物に関する豊富な知識を持ち備え、生産から消費までの状況を的確に指摘していただきました。
 1.ガーデニングブームの影響 ●一瞬にして消えたような感想を持っている。この理由として、見るには楽しいが一般消費者がとても「出来そうにない」提案が多すぎて、試みた人々に失望を抱かせたことが原因ではないか。「プロの目線」で最先端のガーデニングを提案し、これを資材業者が煽り立てた結果、一般消費者は失望してブームが去ったと見ている。とはいえ、従来からの真面目な園芸愛好家はそのまま残っており、その方々を中心として園芸愛好家の底辺がいくらか広がった効果は見られる。またその延長線として、家庭菜園、ハーブ、家庭果樹は根強い人気を維持している。全体として、ガーデニングを試みる人が楽しむ植物は、【1年草→宿根草(多年草)→コニファー→花木→庭木】のように変化しているようだ。
 2.園芸店、ガーデンセンターの現状 ●ホームセンターで園芸商品(資材、花苗、観葉植物、植木、球根)を目玉商品としてチラシを作り、客寄せをして大量販売を行った結果、園芸店でも値下げ競争が始まり、売上が確実に減少している。花は生鮮商品なので、小さいロットで売れた商品を仕入れ・補充する努力が必要になっている(ロス率の減少と適正量の仕入れ)。また広い品揃えを行うのではなく、各々の園芸店が特徴を全面に出した品揃えが必要である。
 3.今後の消費動向 ●景気の低迷、デフレ、少子化、高齢化など明るい未来が目の前にはない状況である。また消費力の減退で、低価格であっても余分なものを購入しない現状から、的確な商品提供力が大切だ。このような状況から判断して、今後1年草の消費が低下し、宿根草(多年草)や花木の消費が増加する。毎年楽しむ園芸、殖やす楽しみを提供できるようにしたい。ガーデニングブームの結果、大量生産、大量販売が主流となり、消費者との対話不足や店頭での管理不足による老化苗の販売などの園芸不信を招いてしまい、「心を込めて丁寧に売る」ことが重要となる。文化の違いはあるかもしれないが、日本の園芸の目標は「イギリス」であるかもしれない。
 4.一般家庭でかかえている問題点 ●鉢物が室内で長持ちしない。消費者は鉢物を消耗品という感覚にはならない。しかし、知識がなく管理方法が判らないまま、ただ単に「きれい」という感覚で購入している。園芸の楽しみ方やカラーコーディネートなどの知識を教育・アドバイスするシステムを早急に構築するべきである。岐阜県が3年前より実施している「寄せ植え華道講座」は初・中・上級あわせて1000人を越える会員がいるが、このようなことは今後重要になる。ただ、寄せ植えが「戸外での楽しみ」に限定される傾向があるが、「室内で楽しむ寄せ植え」がもっと認知されるように期待したい。また、購入した花が枯れると鉢(プラスチック)や土などが不燃ゴミとして残ってきているが、環境対策も含めて対応が望まれる。
 5.花き生産農家に求められること ●「花を楽しむお客様」を育てる。地域の花飾りなどのボランティアに積極的に参加して欲しい。例えば、@町内会や老人会の花飾り講習会の講師を務める、A花苗が余ったらPTAに寄付する、B子供達と花を育てるコンテストを主催する、C母の日や敬老の日に地元の小中学校の生徒に花を配布して家庭に持ち帰らせるなど、できるところから始める。
 6.園芸店が生産農家に望むこと ●@わい化剤の過剰使用を避ける。例えば、わい化剤(商品名:ボンザイ)を使ったパンジーは春になっても生長しない「ボンザイパンジー」は消費者の期待を裏切ることになる。A生産農家にとって都合の良い商品、儲かる商品、リスクの少ない商品を求めない。例えば、大鉢仕立てや長尺物、作り込んだ商品生産などのように、消費量は少ないけれども望んでいる消費者が必ずいる物も生産して欲しい。B露地栽培を積極的に活用して、鉢上げした後に出荷する商品の生産。例えば、宿根草や日本自生の山野草、低木や花木の鉢物化。C消費者の手に渡ってから良くなっていく商品の生産。例えば、11月のシクラメンは花も多くて立派だけれども、2週間もすると次第に花が少なくなっていく。5月の連休まで楽しめるシクラメンの生産・出荷
 7.新たな鉢物生産の企画 ●@鮮魚料理店の「いけすのタイやヒラメ」。生花店が鉢物として購入し、ブライダル需要に応じて切花として消費する。1mのヘデラ(ツタの一種)の鉢物は、販売用ではなく生花店の切花用として消費されている。A鉢花に合った独自のデザイン容器(鉢)の開発。素材としての花だけではなく、商品としての花の消費を拡大する。専門のデザイナーにデザインしてもらうことは当然ですが・・・。


★ガーデニングを楽しむ消費者(サントリー・ガーデニングレポート2001より)(2001/06/27)

 サントリーがガーデニングを楽しむ消費者アンケートからみた今後のガーデニングの将来を考えてみましょう。
 園芸を楽しんでいる世帯数は2000年で1,500万世帯に達し、この数字は80%の世帯がガーデニングを楽しんでいることを意味します。ガーデニングを楽しんでいる世帯の変化を見ると、1998年までは着実に増加していましたが、2000年以降ほぼ横這いとなっています。すなわち1988年までのガーデニング人口の増加は、園芸を楽しむ人の新規開拓によって行われてきたのに対して、1999年以降はほぼ一通りガーデニングが行き渡ったことを意味し、これからの園芸の方向として、リピーターの確保と新たな楽しみ方の展開を行っていく必要があると考えます。
 ガーデニングを楽しんでいる年齢層を見ると、30歳代から60歳代まで万遍なく普及しています。園芸用品購入額は、60歳代:32,172円、50歳代:26,151円、40歳代:15,248円、30歳代:10,072円と年齢が下がるに従って減少しますが、30歳代の過去5年間の購入額伸び率は124%と高く、50歳代以上が中心と考えられてきたガーデニングに大きな構造変化が見られ始めています。30歳代のガーデニングの経験年数は、3〜5年が43%、2年以下が38%と80%以上が5年未満ですが、子育ての真っ最中の年代がガーデニングを親しんでいることを大いに評価するべきでしょう。また、ガーデニングに支出する費用が今後増えると考える人は、30歳代で28.5%、2年以下の経験者では39.7%いることを考えると、30〜40歳代をターゲットにした戦略が必要ではないでしょうか。当然、新たに30歳に達する人々(現在20歳代)に対する戦略が必要なことは当然です。
 ガーデニングを楽しむ場所としては、集合住宅ではベランダ、1戸建てでは庭と玄関であったことは当然でしょう。また、1戸建てでは「家の外から見える場所に飾りたい」が70.8%を占めており、「見せる園芸」が大きな位置を占めています。これに対して集合住宅では「部屋においてインテリア気分」が41.4%を占め、今後室内装飾としてのガーデニング(日陰でも育つ植物)が注目を浴びることでしょう。
http://www.suntory.co.jp/news/2001/7879.html


★輸入野菜の現状調査(2001/05/22)

 園芸栽培汎論の講義で、輸入野菜の調査を行いました。自宅の周辺のスーパーマーケットなどで野菜の原産国と価格を調査し、比較を行いました。輸入・国産野菜価格一覧表で見ると、価格の変わらないものもありますが、ほとんどのものが国内産より低価格で、1/2〜2/3程度の価格であることが判ります。輸入国は18カ国にのぼり、輸入品目は44品目にわたっていました。輸入国別の品目数を見ると(輸入国別品目一覧)、中国が17品目と最も種類が多く、次いでニュージーランドとアメリカの8品目で、韓国は5品目、タイ及びフィリピンが4品目、台湾、オーストラリア、メキシコが3品目、インドが2品目でした。品目ごとに見ると(品目別輸入国一覧)、アスパラガスは5カ国から輸入され、オクラ、ゴボウ、ニンジン、バナナ、パプリカは3カ国から輸入されており、オレンジ、カボチャ、エダマメ、キャベツ、タマネギ、ニンニク、モヤシは2カ国から輸入されていました。
 以上の状況は、岐阜、愛知の一部のスーパーの状況ですが、首都圏や関西圏ではこれがさらに多くなっている可能性があります。品目が最も多いのは中国で、日本までの距離が近いことや広大な耕作面積を持つこと、低人件費、外貨獲得意欲などが関係しているのでしょう。今話題の「ネギ」を見ると、国内産185円に対して輸入が125円で両者の価格差は1.48倍であったが、他の野菜の価格差(平均1.72倍)と比較して低かったことは、セーフガードの効果が現れて輸入価格が上昇したのではないかと推定されます(良いかどうかは別として)。岐阜県が誇る野菜として、トマト、ホウレンソウ、エダマメ、キュウリなどがありますが(岐阜県の園芸紹介を参照)、ホウレンソウは中国から輸入されており価格差は2.63倍、エダマメは台湾と中国からで価格差は2.14倍、キュウリはインドからで2.08倍の価格差であり、他の野菜と比較しても国内外の平均価格差を大きく超えている品目であったことは、価格差を小さくするための生産や流通コストの見直しや品質を含めた差別化など、今後の生産体系を大きく考え直す必要に迫られていることを示しています。トマトについては、ミニトマトが韓国から輸入されていますが、普通系トマトではまだ輸入がありませんでした。しかし、「農産物のセーフガードについて(2001/05/02)」でも述べましたが、輸入が始まる可能性は否定できず、対応が必要と考えます。
 同様な調査を1999年に行っています。輸入国は14カ国(2001年:18カ国)、輸入品目は39品目(2001年:44品目)、価格差は平均1.37倍(2001年:1.72倍)であったことを見ると、明らかに輸入国、品目数が増加し、価格差は大きくなっています。1999年と2001年の主な輸入国と品目数を比較すると、中国が14→17品目、アメリカが11→8品目、ニュージーランドが5→8品目、フィリピンが9→4品目、メキシコが5→3品目、オーストラリアが3→3品目、台湾が2→3品目となっており、中国、ニュージーランドからの品目増加がみられます。このように、農産物の輸入は大きな流れとなっているようで、これを食い止めることは極めて難しいことでしょう。ただし、1999年と2001年の価格差を見ると(1999年と2001年の国内外価格差)、アスパラガスでは1999年には国内外の価格差がなかったのが2001年では1.34倍と広がり、エダマメでは1.34→2.14倍、オクラでは1.42→1.66倍、カリフラワーでは0.81→1.64倍、パプリカでは0.55→1.23倍などのように増加しています。特に1999年では輸入農産物が必ずしも低価格であるという状況ではなかったものが、2001年ではキウイーフルーツとカットカボチャ以外は軒並み輸入農産物の方が低価格で、「輸入農産物は安い」という考え方が浸透してしまったことが大きな変化です。極端な例として、パプリカでは1999年の国内産は輸入品より安かったのに対して、2001年では国内産が輸入品の1.23倍と高くなっていました。
 中国や韓国などのように船便での輸入が可能である国はともかく、アメリカやニュージーランドからの農産物などのように航空便で輸入される野菜と比較しても、「国内で生産される野菜が高い」という現象は何か大きな疑問を感じざるを得ません。ブロッコリーのように収穫の機械化ができない品目で、人件費が特に安いとはいえないアメリカで生産され、航空便で輸入されるものが、国内価格の半額で売られているのは不思議な現象です。生産コストや流通コストなどをもう一度しっかり見直す必要があると思います。特に、地域農協→県農協→市場→卸売り会社→仲卸会社→小売店のように複雑な流通経路を経由し、各々で中間手数料を数%〜10%かけていくシステムが果たして正常であるかどうかは充分検討する必要があるでしょう。今回の調査は地域と季節を限定した調査でしたが、思ったより大きな変化が訪れているのだということが判りました。生産農家の方々はこの事実をどのように受け止めておられるのでしょうか。


★観葉シンビジウム(2001/05/16)

 シンビジウムの価格が低迷しています。1鉢400円の市場価格のものもみられ、スーパーやホームセンターでは1鉢980円のものも見受けられます。今頃の園芸店では花が終わった観葉シンビジウムが隅の方にゴロゴロと転がっています。生産農家のなかにはシンビジウムを見限って他のランに転向する人も出てきています。何故このような現象になったのでしょうか。シンビジウムが市場に豊富に出回るようになって20数年が経ちます。多くの家庭に必ずと言ってよいほど「花の咲かないシンビジウム(観葉シンビジウム)」が転がっているのを見かけます。昔はシンビジウムの鉢をもらうと、「オッ!豪華だねえ」と感じたものです。最近は「シンビジウムか!やれやれ困ったねえ」と感じるようになってしまいました。何が困るといって、花が咲いた後、枯れもしないし、翌年花は咲かないし、植え替えも大変だし・・・。出荷されるシンビジウムは既に「根づまり」していて、春にはすぐ植え替えをしないといけない状態です。たとえ植え替えてもなかなか花が咲くようにはならないし・・・。
 シンビジウムは組織培養(バイオテクノロジー)の技術が大きく貢献した園芸植物の1つで、私が学生だった頃は結構高い植物でした。しかし、バイオテクノロジーによる大量増殖のお陰で急激に生産量が増加し、一般家庭に広く普及することとなりました。一回り各家庭に浸透するまではそこそこの評価が得られましたが、結局リピーターを獲得することができなかったと思います。いや、リピーターを獲得する努力を怠った結果、現状を招いたのではないでしょうか。冬のシンビジウムの花持ちは他の追随を許さないほど長く、かなりの寒さにも耐えられます。株の大きさも大小様々で、花色も豊富、最近は香りのあるものもあり、贈り物としても豪華で・・・と良い所を挙げると将来性のある園芸植物の1つでしょう。では、なぜ衰退し始めているのでしょうか?
 バブルがはじける前は贈答品として大きく生産が伸びてきましたが、家庭で育てる楽しみを浸透させることに失敗した事例の1つと考えます。10年前、NHKの趣味の園芸では必ずといって良いほど「シンビジウムの育て方、植え替え方法」が放送されていました。NHKの趣味の園芸の視聴者の年齢層は50歳代以上が多く、贈答品としてシンビジウムをもらった人々の対象としては適当であったかもしれません。しかし、自分のために購入する人達の年齢層は30〜40歳代で、これらの人々が情報収集をしている園芸雑誌でシンビジウムの管理が載っているのを見た記憶がありません。生産農家は贈答品としてのシンビジウムを生産することしか考えず、豪華で大きなものを追求しました。
 園芸植物も商品です。時代の流れと共にハッキリとは見えないものの少しずつ変化しています。購入する消費者(ターゲット)の選択を間違えると、折角の商品の持つ長所を生かすことなく衰退させてしまう例の1つといえるのではないでしょうか。
 鉢花では「コチョウラン」や「シクラメン」、切花では「バラ」や「ユリ」がシンビジウムの後を追っているような気がして仕方がありません。


★知識・技術と「こころ」(2001/05/12)

 生産者の方との話の中で、各種の講演会で「ついつい居眠りをしてしまう」ことについて話題になりました。「お金を払って聞きに行っているのだから、受け取る側の意欲の問題で、何か1つでも吸収しようという気持ちが欠けているからではないか」との指摘がありました。これも原因の1つだとは思いますが、話をする側にも問題があるのではないでしょうか。すなわち、それなりの報酬をもらって講演をするのですから、聴衆のレベルを把握して内容を吟味する必要があると思います。学会で講演する場合には、聴衆は専門家ですから、専門用語を頻繁に使っても構いません。しかし一般の方を対象にする場合には、いかに判りやすく内容を噛み砕いて説明するか、専門用語を使わないで内容を説明する努力をするべきだと思います。
 このことは農業指導においても同様です。知識や技術が豊富であることは農業技術指導員にとって不可欠であると思います。しかし、「相手を思いやるこころ」が通じ合うことは最も重要だと考えます。農業技術指導員にとって知識や技術を知っていることは当然のことですが、その知識や技術を「いかに判りやすく伝えるか」ということが重要であり、そのためには伝える相手の立場になって考えることが出来るかにかかっていると思います。相手が何を知りたがっているかを考える基本は、相手の心を読みとることと、相手と自分との間に障壁がない状況を作り出すことだと思います。よく言われることですが、「あの人の言うことはもっともだけれども、理解しにくい」という反応は「相手を思いやる心」の繋がりがないことに起因することが多いように思います。農業技術指導員の方々はもっと現場に出て、生産者との心の繋がりを太くすることに労力を使ってみてはいかがでしょうか。


★農産物のセーフガードについて【トマト】(2001/05/02)

 2001年4月23日よりネギ、生シイタケ、畳表についてセーフガード暫定措置が発動されました。園芸関係では、さらにトマト、ピーマン、タマネギが緊急監視対象品目に挙げられており、ニンニク、ナスも監視対象品目として取り上げられています。
 これらの野菜の主な輸出国は中国です。しかし、中国が日本の市場を目指して生産しているわけではなく、日本国内の商社(なかには大規模農家も?)が生産指導を行って、輸入を行っている事例がほとんどです。これは何を意味しているのでしょうか?すなわち、商社にとって日本国内の農産物市場は農協が独占しており、閉鎖的で、生産効率が悪く、商業ベ−スで考えた場合に「国際競争力が低い」と判断していることを意味します。したがって、日本の生産方式を指導し、日本専用の品種の種子を提供し、日本方式で出荷調整を行い輸入すれば、商社にとって、たちまち国産の生産物を上回る価値が出てくることになります。
 これまで、生産農家は消費者の「目」を見ることなく生産し、農協や市場だけを見つめて生産を行ってきました。「消費者が望んでいるから」という口実を作って、消費者が望んでもいない規格・等級を設定し、高い規格・等級の農産物の価格を上げることに努力してきました。私見ですが、「明らかな戦略ミス」と考えます。
 緊急監視対象品目に「トマト」が挙げられていますが、現在のような生産・出荷を行っている限り、商社は間違いなくトマトを輸入し始めるでしょう。以前「桃太郎」というトマトの品種が栽培され始めた頃、【完熟】という「ラベル」が貼られていました。それ以前のトマトは「果頂部が十円玉程度の大きさでピンク色」になったら収穫し、流通過程で「赤く着色する」ことを想定する「早穫り」をしていました。新品種の桃太郎は始めの2〜3年間は「赤く完熟」してから収穫し、出荷されていましたが現在はどうでしょう。いつの間にか【甘熟】という「ラベル」に変化し、昔どおりの「早穫り」に戻っています。このお陰で間違いなく日持ちするようになっていますが、この「日持ち」が中国からの輸入の可能性を作り出しているのです。
 もし、【完熟】で収穫・出荷すれば、糖度は高くなり、味も良くなりますが、日持ちは悪くなります。しかし、中国で【完熟】果実を生産する場合には、日本の市場に到着するまでに1週間以上を要することから、とても無理でしょう。中国産の「早穫りトマト」は輸入過程で着色が進みますから、見た目は「国産の完熟トマト」と変わりませんが、味は明らかに違います。消費者は的確に「国内産トマト」と「中国産トマト」を判別できることでしょう。
 生産農家の皆さん! 自分たちの都合で栽培方法を考えるのもよいですが、もっと消費者のためを考えて生産しませんか?自分たちの都合が「自分の首を絞めている」ことに早く気が付いて下さい。セーフガードに頼る前に、自分の生産物に自信を持てる農業を進めませんか!


★後継者に対する技術教育と意識教育(2001/04/26)

 この12年間、岐阜市の花き生産者の研究会に参加させていただいています。ここ数年、研究会を開催した場合に40歳後半以降の生産者の参加が少ない現象が見られます。私も含めて40歳後半になると新たな技術を追い求めるよりも、現在持っている技術を最大限発揮させる方向に向いてきます。この生産者の研究会も、会員の主体が40歳代以上になってきた結果、最近そのような傾向が顕著に見えてきたように思います。30歳代の頃は技術習得に対して貪欲であり、誰かが新しい物を作り始めたといえば必ず温室に顔を出して品定めをし、新しい設備を導入したといえばその能力を見に行くことがあったと思います。しかし、40歳後半になると次第に自分自身の施設の中で出来る技術を追求し始めるようになり、作目についても固定し始めるようになってきます。その結果、技術研修会から次第に足が遠ざかっていきます。40歳代後半以上の方は充分な技術を持ち、必要な情報入手方法も各々で持っておられますので、それでも良いかと思います。。
 では、このような生産者の研究会のような組織を維持する意味は何かということを考えてみましょう。それは後継者育成ではないかと考えます。必要な情報収集能力を持ち備えている「豊富な経験を持つ」メンバーの参加が少なくなることは、研究会の活動が低下し、情報、知識を望んでいる若い人だけの会になってきてしまいます。若い人だけが集まっても技術研修にはならないのではないでしょうか。
 例えば、私が講演をした場合に、反対意見を唱える方がいて、賛成意見を述べる方がおり、その質問とその解答を聞くことで、若い人は「こういう考え方もあるのか」と理解が深まるのではないかと思います。あるいは、資材メーカーや種苗会社の方から話を聞いたときには、「以前自分はこうやってみたけれども、その場合とどう違うのか」といった意見を聞いて、「植物を生産するということは色々と試してみる必要があるんだなあ」ということを理解するようになるのではないでしょうか。
 したがって、40歳後半以上の生産者の研究会での役割は、一種の「やらせ」かもしれませんが、参加して色々と考えを述べることに意義があるのであって、必ずしも自分の役に立つことがあるから参加するのではないと考えます。恐らく、その方が若かった頃には、敢えてそれをやってくれた方がいたからこそ、現在の自分があるということを是非理解していただけないかと思います。


★韓国からの切りバラの輸入(2001/04/12)

 韓国からの切りバラの輸入が増えています。1997年の6万8000本が1998年には1100万本に増加し、1999年は2500万本に増え、昨年はこれを上回る輸入量となる見込みです。この結果、国内の切りバラ価格は一気に下がり、平均150〜180円/本から70〜80円/本に低下しています。将来予測として40〜50円程度まで下がるという報告もあり、バラ生産者は大きな転機を迎えています。最近、「今後の韓国や中国の輸出状況の予想」を聞かれます。まず、韓国について考えてみましょう。
 韓国が日本に対して輸出攻勢がかけられる原因として、@人件費が1/3以下であること、A施設設備に対して国庫補助が得られたこと、B韓国通貨のウォンが暴落したこと、C韓国国内の景気が低迷していたこと、D日本の切りバラ価格が高いこと、が挙げられます。しかし、韓国の気候は日本の東北地方に匹敵し、原油産出国でないことなど、日本と比較してバラ生産に適しているとはいえません。現在、補助金が期待できなくなり、韓国内の景気が徐々に回復し始めたことや日本の切りバラ価格が低迷していることなどを考えると、日本に輸出することが韓国にとって大きなメリットになるとは到底考えられません。したがって近い将来、韓国からのバラの輸出は減少すると予想されます。同様に中国についても、中国国内のバラ需要が著しく高いことを考えると中国からの輸出が増加することも考えられません。
 日本にとって脅威を感じるべき国は中国や韓国ではなく、年中20〜25℃の気候条件を持つ熱帯高地のミャンマー、カンボジア、ラオス、インドネシアでしょう。これらの国々は、アメリカに対するコロンビアであり、ヨーロッパに対するケニアに相当します。幸いこれらの諸国は政治的に不安定であり、10年間は輸出をする能力を持たないと考えます。
 切りバラ生産者の皆さん、これからの10年間で「生産コストを考え、国内の消費者に対して購入価値のある切りバラを提供する」ことを考えましょう。ただし価値のある切りバラとは「80p以上のバラ」でないことは明らかで、「家庭でも充分楽しめる鮮度の良い、花持ちの良いバラ」であり、「リーズナブルな価格」で提供できることを意味します。恐らく韓国からの輸入に端を発したバラの価格破壊は、多くの生産者がバラ生産を断念せざるを得ない状況を引き起こすと思いますが、この低価格の危機を乗り越えた生産者だけが「おいしいバラの世界」を味わえると考えます。頑張って乗り切ってみませんか?
 私は60p以下で鮮度の良いバラの需要は結構高いことを感じています。


★園芸店と住宅展示場(2001/02/15)

 農学部の3年生で花き販売店(園芸店、生花店)に就職を希望している学生と話をしていて出てきた提案です。
 洋服屋はショーウインドーに飾ったマネキンに服を着せて、色やデザインのコーディネートを消費者に提案して、商品を販売しています。単品のジャケットやパンツ、ブラウス、ベルトをコーディネートして着こなしを提案しています。消費者はマネキンのイメージを自分の持っている洋服に置き換えてイメージし、購入していきます。
 それに対して、なぜ園芸店はシクラメンを床一面に並べたり、生花店は切花をバケツに投げ込んで売るのでしょうか。洋服屋のショーウインドーのマネキンのように、消費者が自分の家に花を飾った場合の状況や雰囲気を提案することを、なぜ花き販売店はしないのでしょうか。花は消費者が各々の好みで勝手に楽しむものなのでしょうか。生産者や種苗会社は当然、「こういう風に飾ってもらえたら花が引き立つだろう」と考えているはずですし、花き販売店も仕入れるときには同じようなイメージを持って仕入れていると思います。しかし現状の販売方法では、スーパーの野菜と同じように素材を提供するだけで、購入後については消費者の好みにおまかせ状態です。
 住宅展示場には色々なタイプの家が展示されています。園芸店の皆さん!例えば住宅展示場と提携して、住居に花を飾る場合の提案する発想はいかがでしょうか。家の雰囲気を考えながら、「この玄関アプローチにはこの寄せ植えを」、「この雰囲気の居間にはこの鉢植えやアレンジを」、「寝室にはこの花を」、「日の当たらないトイレや廊下にはこの植物を」といったように、各々のモデルハウス毎に一つ一つ違った寄せ植え、アレンジ、鉢花、観葉植物を、あたかもマネキンに着せた洋服のようにコーディネートして提案する。
 新築や改築を考えている人々は、間違いなくこれから花を楽しむ人々です。少々の金額をつぎ込んでも新築した家を飾りたいと考えている人達です。大阪東住吉区のタマトメ花遊館の竹中弘繁氏が「花を楽しむ提案が出来る園芸店を目指したい」といって店内の構成に工夫を凝らし、消費者のお宅に直接伺ってフラワーコーディネートを試みておられたことを思い出します。何も提案しなければ売れない時代になってきています。花は服飾と同じファッション業界だと思います。売れない売れないと嘆く前に、消費者に積極的な提案をしませんか?


★岐阜県の柿産地の将来(2001/02/06)

 私が柿の研究を始めたのは、今から15年ほど前のことです。その当時、岐阜県○○町は富有柿の大産地として全国に名前が知られる所でした。5年程たったとき(10年前)に農協の担当者と話をしていて、「最近、柿農家に後継者が就いていないようですねえ。私の知る限りこの10年間で3名程度ではないでしょうか」と聞いたところ、予想外に「いやいや数十名の後継者が就農しています」との答えが返ってきて、「私の知らない若者が結構柿栽培を目指しているのだ」とビックリしました。しかし良く話を聞いてみると、内情は「70歳を越えた老夫婦が体をこわして柿園の管理が出来なくなり、定年退職した50歳代の息子(?)が後継者となった」とのことで、定年退職した方の再就職を後継者と数える考え方にビックリし、情けない思いをしたと同時に、岐阜県の柿生産の将来に疑念を感じた記憶があります。
 先日、○○町職員と話をしていて、「10年前と比べて○○町の柿生産量が半減している」とのことでした。色々な要素を含んでいるとは思いますが、「とうとう予想された事態が来始めた」という感想です。後継者対策はボディーブローのようにジワジワとやってきます。目の前の現象を追っている限り、後継者対策はそれ程緊急性を持たないような事業であるかもしれません。しかし、その影響が表面化してきたときには「既に時遅し!改善不可能な事態」という事になりかねません。産地を維持・発展させる気持ちがあるのであれば、定年退職者を後継者として数えるような「自転車操業」的な考え方を今すぐにも改めて、生産農家の子供が通う中学校や高等学校の生徒達に農業生産の面白さや夢を伝える企画を考えてはいかがでしょう。いや、それ以前に子供の前で「農業はつらい、儲からない」といった感想を堂々とのたまう生産農家の意識改革の方が先でしょうか・・・。
 園芸生産の面白さを話して欲しいという企画を立てられる方がおられましたら、御一報下さい。農業について「楽しく夢を語れる話」を提供させていただきます。講演料についてはご心配なく。新年の抱負に書いたように、「園芸業界が低落することは大学に園芸学研究室が不要になることを意味しており、私にとっても死活問題」なのです。
岐阜県の柿統計(単位 戸,t)
  1989 1999 1999/1989の比
農家戸数(柿) 5,836 3,799 65.1
柿出荷量 21,500 14,900 69.3


★富有柿の干し柿(2001/02/01)

 岐阜県には堂上蜂屋や伊自良大実などといった全国的に有名な干し柿の産地があります。ひょんなことから「甘柿はなぜ干し柿にしないのでしょうか?」といった質問を受け、色々と調べてみましたが理由が判りません。「甘柿は干し柿にしなくても食べられるから、特に干し柿にする必要はない」とか、「干しているうちに成熟が進んで、熟柿になってしまう」といった意見もいただきました。そこで、2000年11月に成熟した富有柿と富士柿を使って早速干し柿にしてみました。結果は、全く問題なく富有柿の干し柿が出来ました。
 味は富士柿の「コッテリした甘み(黒砂糖の甘み)」に対して、富有柿は「アッサリした甘み(白砂糖の甘み)」でした。1月中旬まで干しておいたところ富士柿は硬くなってしまったのですが、富有柿では軟度を維持しており、素人が作ったものとしては結構良質な干し柿が出来ました。
 富有柿の価格は12月になると急速に低下し、市場価格では農家の利益に疑問が出るような価格になってきます。「富有柿は生食するもの」といった固定観念を捨てて、12月上旬に収穫される富有柿を干し柿に加工することで付加価値を付けることはできないものかと考えています。富有柿はネームバリューもあり、柿の中では上等品としての位置を保っています。何か良い名前を付けて商品化できないものでしょうか。
 世の中には結構こういった発想の転換で(非常識の発想?)商品化できるものがあるのではないかと感じた次第です。


★中山間地の早い秋(2001/01/15)

 中山間地農業を継続することが難しい状況に陥っています。春が遅くて、夏はいくらか涼しいものの、冬が早くて寒い。平地のような広い面積の耕地を確保することが難しく、地理的にも不利である。
 春から夏までに収穫する農作物は、いずれも平野部(暖地)に比べて収穫期が遅くなり、価格が低迷しやすいことは確かですし、施設栽培を行うとコストの面からさらに不利になります。しかし、晩夏から初秋にかけての植物、特に宿根性花きは、平野部(暖地)より早く開花期をむかえます。季節感の先取り商品は消費量自体は少ないのですが、確実に必要な商品といえます。
 中山間地農業は平野部と同じような大量生産を目指すのではなく、大量生産が難しい栄養繁殖性の宿根性植物や球根植物、あるいは早い秋を感じさせる野生植物(都会では感じることができない郷愁を感じるような自生植物)を生産してみてはいかがでしょう。できれば、ある程度まとまった休耕田を利用した「季節の宿根草の花摘み体験」と「宿根草の苗の販売」は、夏休みの終わりから9月にかけての都会の家族のレジャーとして注目に値すると思います。地元の人にとってはとても売れるとは思えないものが、都会で暮らしている人間にとっては欲しくなる商品ではないでしょうか?中山間地の堆肥置き場にゴロゴロしているカブトムシなどは典型例ではないでしょうか・・・。
 中山間地の皆さん、もう一度自分の周りを見回してみませんか?お宝が結構転がっているように思います。


★新世紀を迎えて(2001/01/05)

 1990年代に顕著になった「価格下落」と「景気低迷」に象徴されるように、産業としての園芸は危機的な状況に陥っています。「打開策が見いだせない」との声も聞かれますが、果たしてそうでしょうか?ホームページの「いろいろなリンク」を開設して感じることですが、園芸業界関連のホームページの数が圧倒的に少ないことに気が付きます。例えば食品業界のホームページは極めて多く、多岐にわたっています。これは食品業界が「消費者の声をインターネットで集める。あるいは直接消費者に商品を提案する」といった姿勢を意味しています。
 園芸業界のホームページを見ると、関連業者のホームページの対象は農家であって一般消費者ではありません(実際のお客が農家であるから当然と思いますが)。では一般消費者に発信するべき対象はだれでしょうか?製造者である農家でしょうか?農協でしょうか?種苗会社でしょうか?市場でしょうか?販売店でしょうか?
 この点が園芸業界において「あいまい」なまま業界が発展してきたことに原因があるように思います。このことは極めて重要な問題をはらんでいます。すなわち、消費者ニーズを把握する手段を持たないまま製造・販売していることであり、消費者ニーズを無視した製造者の勝手な判断で商品が生産されていることが「価格下落」を招いていると考えます。昨年末に「21世紀を展望する」といった会が生産農家主催で多々開催されましたが、そこに来賓として呼ばれた方々は市場、種苗会社、輸入業者などでした。園芸店や生花店、ホームセンターやスーパーなどの消費者と直接対応している方々を招いた会が開かれる機会はほとんどありませんでした。当然、消費者の声を代表する方々を招いた会は皆無でした。
 21世紀を迎えて、これからの園芸業界が目指すべき方向は、エンドユーザー(消費者)のニーズを的確に把握することであると考えます。消費者が花に対して「日持ち」を望んでいるのであれば、これを保証できる商品を生産することだと考えます。最初は、見かけが同じであれば価格に差が出てこないかもしれません。しかし、消費者が本当に「日持ち」を望んでいるのであれば、日持ち保証ができる商品は必ず評価されるはずです。
 生産者の皆さん、まず消費者のニーズを把握する努力をして下さい。園芸業界が低落することは「大学に園芸学研究室が不要になる」ことを意味し、私にとっても死活問題なのです。実際「米あまり」の時代を経て農学部から米の研究室が姿を消していった過去があります。私に出来ることがあれば何なりと相談下さい。