物理学と生物学

 

ゲノム研究においては8割程度説明できるルールが見つかれば十分という話をしたので、それについて少し話をひろげてみる。


物理系(素粒子とか宇宙物理)の研究者なら理論値との0.2%のずれに悩んだりするが、バイオ研究者はそんなことでは全く悩まない。0.2%どころか20%のずれがあっても作った理論にケチはつかない(40%だとさすがに気になる、が気にしない人も)。理論というものが見つかっただけでもありがたく思うのがバイオ研究者である。両者の違いを例えていうなら、建築系と土木系(念のためにいうと前者が物理で後者がバイオ)。あるいは板取川(長良川の支流で岐阜が誇る清流のひとつ、アマゴが身を隠すのに苦労するほど)とジャムナ川(岐阜大が提携しているインド工科大学グワハティ校の近くを流れる巨大な茶色の濁流河川、水面しか見えない)。同じサイエンスといっても見える景色は相当違う。


物理学の美しさは理論である数式のシンプルさにあるが、生物学の美しさは物理学とは違うところにある。個人的には遠目に見ると美しいと思う。生物で見られる個々の制御系は「非常によくできている」というレベルであっても、数百数千の制御系が組み合わされて複雑な総体を形成しており、それがたかだか数センチの個体として表現されていたり、ということになるともう魔法である。制御系は変化することもあり、その結果が生態上の変化に現れる点も味わい深い。変化がある、ということは固定されていないということで、長期的にはすべての形状が「消えもの」であるのもよい。儚いものは美しい。









(夕暮れのジャムナ川)


スパコンを駆使するコンピューター解析といえば大昔は素粒子や宇宙物理、近年は気象学が主要な研究分野であったが、そこへゲノム研究が参入した。スパコンtop500にゲノム解析用途のもの(専用機)が初めて現れたのは2003年で、その後は毎年ランクインしている。同時にスパコンを扱う人材が物理系からバイオへ流入してきたが、ジンクリアな清流から濁流渦巻くジャムナ川へ越して来た魚のようなのものである。当時のスパコンエキスパート達の戸惑いと苦労はいかほどのものであったであろうか。



  1. 2020.5. 21


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