植物分子生理学研究室
Lab for Plant Molecular Physiology, Fac Appl Biol Sci, Gifu University
機能を推定する3
3.複雑系
写真のようなものがあったとして、それぞれのヒモの形状とヒモ同士の繋がりを同定するという問題を設定してみる。機能推定というよりは構造推定である。表面的に形状を記載するのでは意味がなくて、ルール抽出のようなものが求められる。繋がりについてなら地道にヒモを引っぱってかたまりをバラしながら解析していくのであれば原理的には(時間をかければ)同定可能である。ただ、このミクロなアプローチはとても手間暇がかかる。パッとまとめて一括同定できればいいのだが、、、 形状の方は触ると変化してしまうのが難儀である。形状を変化させずに数本だけ取り出す方法論とか、取り出す前と後との関連を見つける研究とか、が必要かも。一本抜き出してヒモ自体の特性を調べてみるとか(いわゆる還元論的アプローチ)。
最近のゲノム解析系の問題は上記のような感じのものが多いようである。こういう複雑系は近似解で済ませるのが正解で、厳密に解こうとしてはいけない。8割程度説明できるルールが見つかれば十分であり、例外に対しては例外となるルールを後で探す。
最初の一歩としてざっくりとアプローチしてみる。例えば「黄色とオレンジのヒモはひっついている」という仮説を立てる。実測してランダムな分布より「ひっついている」側に偏っているようであれば「当たり」である。そうなれば2色ごとに総当たりで「ひっついている」仮説を検証し、統計的に有意差のある組み合わせはすべて採用、みたいな流れで構造問題に取り組むことができる。次にひっついている領域、ひっついていない領域をマッピングしてローカルな傾向を調べれば別の何かが見えてくるかも知れない。
もし「はずれ」ならこの話はなかったことにして他の仮説を考える。例えば、ヒモの曲がり方だけに注目するとまた別の特徴が見えるはずである。実験的手法としては一本つまんで少しだけ引っ張るという「非破壊アクティブ計測」が有効かも知れない。
見えている側をいろいろ計測してモデル化し、検証はひっくり返して裏側で行う、というのはゲノム解析ではよくやる。
こういう研究は斬新なアプローチを考え出すところがいちばんの醍醐味である。「二色法」とか名前がつけられたような誰かが確立した方法をなぞるのでは楽しさ半減である。が、そうはいっても仕事ならぶつくさ言わずに何でもやる。
追記:生物学には機能、生態、歴史(進化)というオーバーラップ少なめな3つの視点があるそうな。機能的にはしっくりこない対象物も歴史をたどると納得、みたいなこともある。行き詰まったときには視点を切り替える、という動作が有効になることも。
(啓蒙っぽい話になってしまった。。。ということは学生向けです。おわり:)
(といいつつただのひとりごとかも知れない)
(イントロはこちら)
2020. 5. 15
Highly Cited Researchers of Gifu University