ダイヤモンド・アンビル・セル (DAC)

 DACは物質に超高圧力を印加する装置です。基本構造は下図のようにダイヤモンドの小さい面を互いに向かい合わせ、その間に試料(室)を含む金属ガスケットを挟み圧縮するといった、いたって簡単なものです。圧縮する部分の面積を 0.2(〜π×0.25^2) mm^2 以下と小さく取り、一番硬い物質といわれるダイヤモンドを用いることで、簡単に10万気圧以上の圧力を発生することができます。(調整次第で100万気圧以上の圧力を発生できる) また、ダイヤモンドは光・X線に対して透明なので、DACは超高圧力下における光散乱・吸収、X線回折測定にとって非常に有効な装置になっています。

  ここで、圧力の単位について説明しましょう。我々の生活している大気圧すなわち 1 atm(気圧)では1 cm^2 あたり約 1 kgw の力がかかっています。大きな力ですが、この環境で生活している我々はこの力を感じることはできません。実際に 1 atm 相当の圧力を感じるには海で 10 m ほどもぐると感じ取ることができます。MKSA単位系では圧力の単位は Pa(パスカル) = N/m^2を用います。1 atm の圧力を Pa で表すと、約 100,000 Pa = 1,000 hPa になります。1万気圧の場合は 10,000 atm = 1,000,000,000 Pa = 1 GPa(ギガパスカル) です。超高圧力では 1 GPa = 1万気圧 と覚えておくと便利でしょう。

DACの基本構造


 我々の研究室ではラマン・ブリュアン散乱分光測定、紫外可視光吸収分光測定を行っています。そこで、それぞれの目的に合った仕様のDACを開発して使用しています。下の写真は超高圧ブリュアン散乱測定用に開発した広開口角型DACです。


当研究室で開発したDAC


その他にレバーアーム型DACも使用しています。下の図はレバーアーム型DACの心臓部です。

レバーアーム型DACの心臓部