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気になることば 第38集   バックナンバー索引   同分類目次   最新    

*「気になることば」があるというより、「ことば」全体が気になるのです。
*ことばやことばをめぐることがらについて、思いつくままに記していきます。
*「ことばとがめ」に見えるものもあるかもしれませんが、その背後にある、 人間が言語にどうかかわっているか、に力点を置いているつもりです。

19971221
■「見はじめ」

 土曜日、NHKの『光の祭典』という番組で、進行役の桂文珍が「これは見はじめです」と言っていた。 「見はじめ」という語が使われたのをはじめて聞いた。 実は、このことばに悩まされたことがあるのである。

 ある辞書の原稿を依頼されたなかに、この語があったのだが、使ったことはおろか、見たことも聞いたこともなかった。 意味は「初めて見ること」以外にないことは、あちこちの辞書をながめればわかるのだが、どうも使ったことのない語に語釈を与えるのは、落ちつかないものである。
 まぁ、使ったことのあることばだって、ちゃんと意味が分かっているかというと、そうでもないのだが。

 とくに、挨拶ことばというのはそうだろう。
 「ごめんなさい」「すみません」「ありがとう」「こんにちは」‥‥
 意味を「分かっている」とはちょっと言いにくい。もちろん、使い方は分かっているが。

 語彙論の初歩に、「理解語彙」と「使用語彙」というのを教わり、また教える。 理解はできるが使うことのないことばの集まりと、使うことのあることばの集まりである。 普通、「使用語彙」は「理解語彙」につつみこまれる関係にある、という風になる。 使うことばは意味が理解できているのが普通だから。 でも、要注意ということ。

19971222
■「察しる」
 おかめの面をつけたのが舞台の上で踊っていたが、矢をひろいあげると、それを股間にはさんでエロチックな動作をした。おとなたちがどっと笑ったが、子供はそういう笑いに敏感なもので、ほぼその意味を察しることができた。
戸井田道三「祖父」『狂言 落魄した神々の変貌』平凡社ライブラリー
 戸井田の『観阿弥と世阿弥』は歴史背景の叙述が長いので読みさしだが、『狂言』はおもしろく読んでいる。 典型的な登場人物の由来なり位置づけなりを、謎ときのように記していくのが性にあっているのだろう。

 そんななかで出てきたのが挙例の部分。 最近はあまり話題にならないようだが、サ変動詞の上一段活用化というやつである。 「活用」と聞いただけで「あたし、ダメ」と思う方は、コトに続くのに「察する」じゃない、とだけ見てください。

 gooでもさすがに「察しる」は2件しかない。 一つは樋口一葉の『十三夜』、夏目漱石の『野分』であった。手元のテキストでは、二葉亭四迷『其面影』『片恋』、菊池寛『時勢は移る』など、古めのものがあったくらい。

 戸井田は1909年に東京に生まれ、早稲田を出ている。 高学歴だから、早く生まれたから、変化が遅いというわけではない。 一時、はやりかけた変化だった、というくらいに見ておきましょう。ひとまず。
 だれかがどこかで詳しく書いていたような気もしますが、とりあえず。
19971223
■Dell疑惑?

 研究室のマシンのWindows95が立ち上がらなくなった。
 再セットアップだが、95はOSR2なのでwindows\options\cabsに必要なファイルが納まっている。 よしっとばかりにdosをたちあげ、コマンドラインに記述するのだが、「コンベンショナル・メモリの空きが足りない」攻撃を受け、スキャンディスク(ディスク検査と修正)ができない。 やむなく、/isオプションでスキャンディスクを回避してインストール。最後まで行くことは行く。 が、改めてウィンドウズを立ち上げると、こんどは「C:\windows\system\VMM32のVKD.VXDがない」攻撃で起動が完了しない。 インストールをもう一度やってもだめ。

 こりゃ、やっぱりディスクにエラーがあるらしい。dosでスキャンディスクをするしかない。 しかし、起動ディスクのconfig.sysを編集するのはめんどう。 元愛機の起動ディスクでやってみる。 と、「ベータバージョンのdrivespaceが使われているのでバージョンアップせよ」攻撃。

 やっぱり、正規の起動ディスクじゃないとだめなのだろうか。 こうなったら正しいconfig.sysの書法を聞かなくちゃ。 24時間サポートに電話してファックスで送ってもらうことになった。 また明日、しきりなおしである。

 それにしても「ベータバージョンのdrivespaceが使われているのでバージョンアップせよ」攻撃は気になるなぁ。 ディスク容量4.3GBを歌っているのだが、ひそかに圧縮をかけてたりしませんよね、Dellさん。
 こういう状態になったのはなぜだかよくわからない。 前日、XTR(32ビットに移植されたxtrnt.exe。WindowsNT用だが95でも動くとのこと)をdos窓で実行したのがまずかったのだろうか。今日はdos窓すら立ち上がらなかった。

 でも速いですね。秀丸で埒があかないときにはこれに限ります。 でも、毎度こんな状態になっては‥‥‥ ま、まだXTRが原因だとは決まってないのですが。
19971224
■トラブルの注目点

 愛機がどうやらこうやら立ち直ってくれた。

 正規のconfig.sysの書法を送ってもらってdosでscandiskを実行した。 で、95のセットアップだが、やはりCDROM経由だと、CDROMドライバが大きすぎるのか、どうしてもコンベンショナルメモリー不足になって、セットアッププログラムが実行できない。 しかたがないので、内容をハードディスクにコピーし、そこからセットアップ。 が、何回やってみても初期の段階で「原因不明のエラーが発生」攻撃を受ける。 セットアップが進行しないとは、昨日より悪い状態ではないか。

 しようがないので、バックアップしてあったウィンドウズディレクトリから、これはと思うファイルを転写。 なんとかセーフモードで立ちあげてみる。 何もすることがないので、システム(のプロパティ)を開けてあちこちクリックしていると、ディプレードライバが二重に登録されていることに気づいた。 前日、ウィンドウズを2回セットアップしたときに、ちょっとだけバージョンの違うドライバを入れてしまったのだろう。

 というわけで、一方のドライバを削除して再起動したら、あれよあれよという間に、いつもどおりにウィンドウズが起動した。あぁあぁ、ご苦労さんでした。

 今日の教訓。再セットアップ後、挙動不審なら迷わずシステム(のプロパティ)を開け。
19971225
■「抗生物質」

 愛機のトラブルは、細かいものを残して収束したようである。 残った「細かい」ものとは、Windows95の再セットアップが途中で終了する、という点である。 全然細かくないのだが、一応、作業はできる。

 で、年賀状を書きながら、環境を復元しているのだが、そういうときには、いろいろ変な現象が起こる。宛て名を、差出人のところに書いたりするのである。 そのうえ「抗生物質」って、どういう語構成なのだろうと、気になったりする。

 アクセント(コウセイブッシツ)からは[抗生+物質]のようだ。 「二酸化炭素固定物質」でもブまで高い部分が続くので。『新明解』でも「こうせい」と「ぶっしつ」のあいだに空白を設けている。なんだ、やっぱりそれでいいのか。

 でも、抗生物質は細菌を破壊したり、増殖を押さえたりするのだから、[[抗+生物]+質]かもしれないな、と思ったのである。 ならば、アクセント・発音はウ、セイブツシツとなる。

 由来を『日本大百科全書』でみると次のようだった。
 ストレプトマイシンの発見者で微生物学者であるワックスマンは、1941年に「微生物によってつくられる化学物質で、低濃度でほかの微生物の発育を抑制したり、破壊したりするもの」をantibioseからとってantibioticsと名づけようと提案し、45年発行の彼の著書『Antibiotics and Antagonism』によりこの用語が普及した。この訳語が抗生物質である。
[抗生+物質][[抗+生物]+質]、どっちも可能のような訳語ではある。
19971226
■「御用おさめ」

 今日は御用おさめである。 以前なら、午前中で業務終了だったのが、昨年あたりからだったか、終日勤務することになったそうだ。 しかも、私の研究室のフロアの事務員はバイト格なのにもかかわらず、一般職員同様、午後も勤務している。 問題は勤務時間じゃないんじゃないかな。

 それにしても公務員の職務を「御用」というの、よく残っているよなァ(法令で決まってるのか?)。 時代劇でおなじみの「御用!御用! 神妙にしろいっ!」の「御用」と一緒だろう。 「用」のあるのが絶対者である「お上(=幕府)」なので「御」がつくのだろう。

 現代なら、主権者は国民であるから、それをうやまって「御」がつく、と解釈はできる。 しかしですね、本当にそう思っている公務員っていうのはどれだけいるもんですかね。 勤務時間の延長くらいで、辻褄があうものかどうか。  あ、私も公務員だ(一応)。

 一方では、「御用」を使っているせいか、どうも「御」のつく由来を、何か特別な偉いものにあるように思ってしまうことがあるような気もする。

 なんだか、天声人語的になってきたのでこれにて。
 一連のトラブルはほぼ解消。起動時に「ドライブスペース3のリアルモードドライバと仮想ドライバが一致しません。インストールし直してください」と表示される攻撃も回避した。 本来なら、ウィンドウズの再セットアップをするところだが、それができない状況(昨日分参照)。 やむなく、もう一台の愛機(自宅用)から該当するファイルをコピーしたのである。 それで、直ってしまった。再セットアップにどれだけ時間がかかるか、マイクロソフトはわかっているのだろうか。

 いいたいのは、「もっと親切に」ということ。ま、ころばぬ先の杖。 dosにもどってそっくりバックアップしておこう。

 今日の教訓。バックアップはこまめに。‥‥‥あたりまえか。少しひねって、
 今日の教訓2。同じシステムを二つ持とう!‥‥‥メーカーの策略にはまるだけだってば。
19971227
■「荒ムース」

 昨日は、富山から友人がやってきた。 富山に行ったときに歓待され、「ブリのすし」と見損なったドラマのビデオをもってきてもらっては(まあ、もってきてくれと頼んだのですが)、こちらも歓待。 とあるホテルのレストランへ。

 コースメニューをみると前菜が選べる。 牛舌の冷製、小エビの唐揚げ、そして「茄子の荒ムース」。 ほかのは味が想像できそうだが、「荒ムース」はそうもいかない。 こわいもの見たさ、話のタネにもなりそうだ(タネにしてる!)。

 実は、もうひとつ、下心があって注文した。 ひょっとして「荒」は「a´ la」の誤記か、洒落かもしれない。 それを確認したかったのである。 「気になることば」をはじめてから、どうもこういう回路が開かれてしまったようだ。
 ボーイさんに聞いてみたが、「分かりかねます」とのこと。残念。

 で、正体は、賽の目切りの茄子を湯がいたものとツナフレークを、酢の抜けたマヨネーズ(すみません、正式名称しりません)であえたもの。 匂い消しに軽くいためたガーリックがわずかに入っている。 薄切りのフランスパンをトーストしたものにのせていただく。

 何だか情けないので、もう一話。
 富山には、「コラ(ー)レ黒部」(だったかな)というホール(だったっけ?)ができたとのこと。 この「コラ(ー)レ」、「来なさい、お出でなさい」の富山語だと。
 「芳名帳」に、小矢野哲夫さんのメールを追加しました。 テレビを見ていたら、愛知県庁の「仕事おさめ」の模様をやってました。 地方公務員と国家公務員の給料の差のことなどに思いをはせてしまいました。

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