東海国立大学機構岐阜大学大学院医学系研究科

再生機能医学分野

「すべての人に再生医療を」

現在教授不在のため大学院生を受け入れできないため、学生研究員や選択配属実習で研究をしてもらっています。
また他学部・他大学の方に特別研究員の形で研究してもらっています。
(大学院入試に関する詳しい情報は岐阜大学医学系研究科・医学部のホームページをご覧下さい)


研究内容紹介

ヒト歯髄細胞コレクションを使った研究

再生医療をおこなうためには、良質な細胞資源が不可欠です。これまで長年にわたって、医療廃棄物である親知らずや乳歯から細胞を取り出して、再生医療に利用する研究をしてきました。たとえば、親知らずが生えてきても虫歯になってしまうことが多い上、前の歯とぶつかって炎症を起こしたりするので、若いうちに親知らずを抜く人が増えています。また、だれもが子供の頃に持っている二十本の乳歯も毎日のように捨てられています。これらの捨てられる歯の中にある歯髄細胞を利用して、脊髄損傷や歯周病などの再生医療に役立てる方法について研究を進めています(Yuta Shimizu et al. J.Periodontal Research, 57, 162-172, 2022; Ken Sugiyama et al. J.Bone Miner. Metabol, 37, 467-474, 2019)。

われわれの強みは、口腔外科学分野との共同研究で20年かけて集めた300人分の健常者歯髄細胞です。これだけの規模の日本人の細胞を集めたコレクションは世界を見渡してもあまりありません。その一部は、すでに理化学研究所のバイオリソース研究センターに寄託して国内外の研究者が自由に使えるようにしてあります。また、山中先生によるiPS細胞発見の直後から京都大学のiPS細胞研究所に送付して、HLAハプロタイプホモと呼ばれる拒絶されにくいiPS細胞作出の研究に貢献しました(Keisuke Okita et al. Nature Methods. 8, 409-412, 2011)。

歯髄細胞を集める中で、個人情報保護や倫理的な問題についても考える機会が増えました。再生医療実現のために、実際にドナーから供与された細胞を取り扱う場合、細胞を紛失したり、間違って送付したりといったミスは許されません。より安全・安心な細胞を患者さんに届けるために株式会社しずい細胞研究所をたちあげて、ブロックチェーンを使った細胞の追跡技術(トレーサビリティ)の研究を開始しました。精密なトレーサビリティは、歯髄細胞やiPS細胞の遺伝子を編集して、人工的にHLAハプロタイプホモ細胞を作製する研究にも役立ちます。世界中の患者に安全な細胞を届けるのが目標です(手塚建一, ILSI Japan vol.154, 1-9, 2023)。

色素細胞をモデルとした幹細胞研究

高齢化の進む日本おいて、健康寿命を延伸するために、成体で維持される組織幹細胞の維持や正常な機能の保持に注目しています。幹細胞維持因子と幹細胞を維持する微小環境であるニッシェの性質、その分子的実態が詳細に解析されている色素細胞に注目し(國貞隆弘 他, 日本皮膚科学会雑誌.129, 2145-2155, 2019)、動物モデルや細胞培養実験、遺伝子発現解析などを行い、組織幹細胞の加齢変化や幹細胞の老化を解明する研究に取り組んでいます。

幹細胞の維持に関わる因子やニッシェ機能に関与する因子などの中から、重要性が示されているが、その機能がまだあまりよくわかっていない遺伝子を、欠損あるいは発現させる遺伝子組換えマウスを作製しています。これにより、加齢性変化と重篤化する症状や変性疾患などでの、特定の遺伝子の重要性や関連する因子の変化を解析でき、遺伝子の未知の機能が解明できます。また、遺伝子組換えマウスの使用により、白髪化に関しては、発生原因の一端が色素幹細胞でなく、そのニッシェ環境の破綻によることを解明し、予防や抑制効果を証明しました(Aoki et al., J invest Dermatol. 133, 2143-2151, 2013)。遺伝子の発現に影響する天然由来成分にも注目し、企業との共同研究により、白髪化を予防・改善できる成分の探索を行い、有用な植物や有効な化合物の特定にも貢献しました(Taguchi et al., JID Innov. 2, 100121, 2022; Taguchi et al., Biol. Pharm. BPl. 43, 1451-1454)。

白髪化は、生理的な老化現象とされ、疾患として扱われないため、効果的な予防法や治療薬がありませんが、アンチエイジングや抗加齢医学の発展に伴い、老化現象は予防医学の扱う領域となりつつあります。白髪化に関する研究での取組みをもとに、さまざまな幹細胞やそのニッシェ、あるいはこれらの分子的な実態に基づいた予防法や改善法を確立することで、健康寿命の延伸に貢献したいと考えています(図中央、右;青木仁美, 毛髪科学.128, 17-21, 2022)。

お知らせ:

  • 新潟市朱鷺メッセでおこなわれた第23回日本再生医療学会に4つの演題を出しました。卒業生も来てくれて大変有意義な学会になりました。(学会ホームページ)
  • 朝日大学との共同研究で、歯髄細胞が作るエクソソームが、歯周病による骨破壊を防ぐ力があることを論文報告しました。
  • ブロックチェーン技術を使った細胞追跡システムShizuiNetの概要がILSI Japanで公開されました。
  • 大学全体のメールシステムが機構に統合され、メールアドレス等が変更になりました。下記の新しいメールアドレスをご利用ください。
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