大都市大震災軽減化特別プロジェクト
地震被害情報の統合処理に基づく緊急対応支援システムの開発
リーフレット【2004.2, Ver.1.0】(両面印刷・三つ折用)
(低解像度 PDF 0.3MB)
(高解像度 PDF 1.2MB)
研究メンバー
- 研究代表者
- 能島暢呂(岐阜大学工学部社会基盤工学科・助教授)
HP
- 研究分担者
- 杉戸真太(岐阜大学流域圏科学研究センター・教授)
HP
- 古本吉倫(岐阜大学工学部社会基盤工学科・助手)
HP
- 松岡昌志(防災科学技術研究所 地震防災フロンティア研究センター・チームリーダー)
HP
- 研究協力者
- 久世益充(岐阜大学流域圏科学研究センター・非常勤研究員)
HP
研究目的
1995年兵庫県南部地震においては,迅速な被害把握と的確な緊急対応が地震後の重要課題であることが強く認識されました.以来,地震後のいわゆる「情報空白期」を埋めるため,地震動モニタリングによる早期被害推定,広域的な被害把握手段としてのリモートセンシング情報,および,巡回・目視・通報などによる実被害情報を主たる情報源とするリアルタイム地震防災システムが展開されてきました.こうした情報源には,迅速性・正確性・広域同時性の面からそれぞれ一長一短があるため,あわせて相互補完的に活用するのが適切と考えられます.ところが報告される被害情報を単に蓄積するだけでは情報の洪水を招くばかりで,いざというときの意思決定に効果的に役立てることができません.つまり,錯綜する情報を適切に処理して「情報氾濫期」をうまく乗り切る必要がでてきます.本研究課題は,情報を一元的に集約して統合処理することで,この問題に答えようとするものです.
システム開発コンセプト
本研究課題では「地震被害情報の統合処理」という基本理念のもとに,地震動モニタリングに基づく早期被害推定情報と,リモートセンシング情報,ならびに時々刻々入手される実被害情報を統合処理することによって,迅速かつ正確な被害把握を可能とし地震後の緊急対応を支援するシステムを開発します.
被害把握の手がかりとなる異種情報を統合処理するには,しっかりした理論的枠組みを整備する必要があります.これまで研究開発上の盲点となっていた領域だからです.まず,新しい情報を次々と取り込むために,ベイズ確率の方法に基礎を置いた逐次処理アルゴリズムを構築しました.さらに,被災状況に応じて適切な緊急対応を遂行するため,確率比検定を応用した逐次決定過程という統計的意思決定手法により,判断を支援できるようにしました.
ゴールに向けて
文部科学省「大都市震災軽減化特別プロジェクト」は平成14年度から平成18年度までの5ヶ年計画のプロジェクトです.本研究課題では最終年度までに,上記モジュール群のDiMSISへの組み込みを完了し,災害対応の実務で利用可能なシステムとする計画です.このシステムが完成すると,早期被害推定と実被害情報との間にある時間面・精度面でのギャップを埋めるのに効果的な役割を果たすものと考えられます.
地震防災に関する研究や技術は日進月歩ですから,近い将来,より早くより正確に被害把握できる方法が開発されるかも知れません.このシステムにおいても,そういった新技術を積極的に取り入れてゆきたいと考えています.個々の情報の精度が向上すれば,それだけ統合情報の精度も向上するからです.その上で,各情報を単独で利用するよりも効果的に被害を推定し,緊急対応の意思決定に有用な情報を提供できるようにすることを目指しています.
研究成果報告書
研究発表
-
平成14年度論文発表
-
能島暢呂・杉戸真太・鈴木康夫・石川 裕・奥村俊彦:震度情報に基づく供給系ライフラインの地震時機能リスクの二段階評価モデル,土木学会論文集,No.724/I-62,2003.1,pp.187-200.
-
能島暢呂・松岡昌志・杉戸真太・立石陽輝・金澤伸治:建物被災地域の早期把握のための震度分布と人工衛星SAR強度画像の統合処理手法,地域安全学会論文集,No.4,2002.11,pp.143-150.
-
能島暢呂・杉戸真太・金澤伸治:地震動情報と実被害情報の統合処理による緊急対応支援の数理モデル,土木学会論文集,No.724/I-62,2003.1,pp.225-238.
-
能島暢呂:被害情報の統合による早期被害把握の数理モデル,オペレーションズ・リサーチ,Vol.47,No.7,2002.7,pp.432-440.
-
松岡昌志・山崎文雄:人工衛星SAR強度画像を用いた被害地域検出手法の最近の地震への適用とその妥当性の検討,日本建築学会構造系論文集,No.558,pp.139-147,2002.
-
松岡昌志・山崎文雄:人工衛星SAR強度画像による建物被害地域の検出手法, 日本建築学会構造系論文集,No.551,pp.53-60,2002.
-
三冨創・松岡昌志・山崎文雄:最尤法を用いた空撮画像からの建物被害抽出とその早期被害把握への応用,土木学会論文集,No.717/I-61,pp.137-148,2002.
-
平成14年度口頭発表・その他
-
能島暢呂:ライフラインの地震防災システムについて,土木学会誌12月号,Vol.87,特集 大地震に備える,2002.12,pp.25-26.
-
能島暢呂:地震防災のためのGIS活用とその課題 −「統合型地震災害情報システム」のプロトタイピングを通じて−,第2回地盤防災GIS研究発表会特別講演,地盤工学会中部支部・中部地質調査業協会,2003.3,pp.1-1〜1-12.
-
小木曽裕介・能島暢呂・杉戸真太:総合情報処理による震後対応支援システムのプロトタイプ構築,土木学会中部支部平成14年度研究発表会,2003.3,I-20,pp.39-40.
-
鈴木康夫・能島暢呂・杉戸真太・小林希彰・佐藤寛泰:地中埋設管の脆弱性を考慮した地震時ライフライン機能の簡易評価モデル,土木学会中部支部平成14年度研究発表会,2003.3,I-21,pp.41-42.
-
小林希彰・能島暢呂・杉戸真太・鈴木康夫:想定東海・東南海地震による配水機能障害の評価と応急対策支援に関する考察,土木学会中部支部平成14年度研究発表会,2003.3,I-22,pp.43-44.
-
Nojima, N. and Sugito, M., "Empirical Estimation of Outage and Duration of Lifeline Disruption Due to Earthquake Disaster," Proc. of the Fourth China-Japan-U.S. Trilateral Symposium on Lifeline Earthquake Engineering, Quindao, China, Nov. 2002, pp.349-356.
-
鈴木康夫・能島暢呂・杉戸真太・石川 裕・奥村俊彦:震度情報に基づく供給系ライフラインの地震時機能性の二段階評価モデル,土木学会第57回年次学術講演会講演概要集,2002.9,I-040.
-
能島暢呂・杉戸真太・金澤伸治:地震動情報と実被害情報の統合処理に基づく広域被害分布の早期把握,土木学会第57回年次学術講演会講演概要集,2002.9,I-758.
-
能島暢呂・杉戸真太・久世益充・鈴木康夫:震災ポテンシャル評価のための震度曝露人口指標の提案, 第21回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,2002.9, pp.61-62.
-
久世益充・杉戸真太・能島暢呂:海洋型巨大地震による広域震度分布推定について, 第21回日本自然災害学会学術講演会講演概要集, 2002.9,pp.79-80.
-
古本吉倫・久世益充・能島暢呂・杉戸真太・谷口仁士:東海地方における強地震動推定のための広域地盤メッシュデータの統合,第14回地盤工学シンポジウム,地盤工学会中部支部,2002.7,pp.29-32.
-
平成15年度論文発表
-
Nojima, N. and Sugito, M., "Development of a Probabilistic Assessment Model for Post-Earthquake Residual Capacity of Utility Lifeline Systems, (Proc. of the 6th U.S. Conference on Lifeline Earthquake Engineering, August, 2003, TCLEE/ASCE Monograph No.25, eds. J. E. Beavers), Long Beach, CA, USA, pp.707-716.
-
平成15年度口頭発表・その他
-
濱本剛紀・能島暢呂・杉戸真太:被害情報の統合処理による震後対応支援システムのプロトタイプ構築,第58回土木学会年次学術講演会,2003.9,I-345.
-
能島暢呂・杉戸真太・久世益充・濱本剛紀:震度情報ネットワークを利用したリアルタイム震度曝露人口推計,第22回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,2003.9,pp.209-210.
-
能島暢呂・杉戸真太・鈴木康夫・佐藤寛泰:被災事例に基づく供給系ライフラインの地震時機能停止と復旧過程の予測 − 想定東海・東南海地震を対象として −,地域安全学会梗概集,No.13,2003.11,pp.101-104.
-
濱本剛紀・能島暢呂・杉戸真太:地震被害情報の統合処理に基づく緊急対応支援システムのプロトタイプ構築,第27回地震工学研究発表会,土木学会,論文番号117(報告),(CD-ROM),2003.12.
-
濱本剛紀・能島暢呂・杉戸真太:地震被害情報の統合処理に基づく緊急対応支援システムの構築,土木学会中部支部平成14年度研究発表会,2004.3,I-12,pp.23-24.
-
神谷涼介・能島暢呂・松岡昌志・杉戸真太・濱本剛紀:地震被害の早期把握と逐次推定更新のための人工衛星SAR強度画像の活用,土木学会中部支部平成14年度研究発表会,2004.3,I-16,pp.31-32.
-
能島暢呂:地震被害情報の統合処理に基づく緊急対応支援システムの開発,第5回地震災害マネジメントセミナー「GISを利用した地震防災情報管理の最前線」−事前予防・事後復旧における情報活用の現状と課題−,土木学会地震工学委員会地震防災技術普及小委員会,2004.3,pp.37-43.
関連リンク