女性の働き方に関して様々な提案をしている21世紀職業財団に講師派遣を依頼してリーダーシップ研修を実施し、45名の方にご参加いただきました。
この研修は研究者・事務職員にかかわらず上位職・管理職に昇進することに抵抗があったり、自信を持てなかったりする女性を主な対象として受講者を募りましたが、一方で同僚として、部下-上司として女性と共に働く男性の参加も歓迎し、若干名の男性にもご参加いただくことができました。
講師の小林洋子氏は、1978年に当時まだ「電電公社」であった現在のNTTに入社した方です。当時は完全な男社会で、新卒採用300人の内、女性は3名のみという状況だったそうです。法律部門の仕事をずっと続けたいと考えておられましたが、出向を命じられた先はサントリーの広告部門と、法律とは無縁の世界でした。ところが、仕事を始めると、これが非常に面白く、「実はこれが自分の天職だったんだ」と悟ったのだそうです。後に電電公社に戻ると、民営化準備が始まり、広報部に配属され、広告畑で培った経験を活かしてNTTのマークを生み出すこととなります。しばらく広報部課長を務めた後、支店営業部長就任を命じられ、営業、マルチメディア、OCNなど再び畑違いの世界に投げ出されます。しかし、ここでも小林氏は新しい世界に面白みを見出し、持ち前の柔軟性とポジティブな思考により、見事に責務を果たしていきます。その後は本社部長を経て、2008年にNTT初の女性取締役に就任に至ります。
この間に結婚・出産も経験しておられます。結婚した当時は「共働き」が珍しく、そういう家庭に対する一般の考えは「かわいそうに、○○さんのところはそんなに貧乏なの?」だったといいます。そんな中でも小林氏は長いキャリアの中で実感したことをモティベーションにして仕事を続けてきました。それは
1. いろいろな仕事をする中で、自分では気づかなかった潜在能力が発揮され、自分に自信が持てるようになる。
2. 自分の考えを持って毎日の仕事に取り組めば、仕事が楽しくなる。出世することで自分の裁量でできる業務の範囲が広がり、更に仕事の楽しさは増す。
3. 仕事を通して世界が広がる。肩書きがつけば、山に登ったときのように更に視野は広がる。
4. 所得が増えれば、家事や育児と仕事の両立はしやすくなる。
現在も、介護をしながら仕事もこなしているそうです。
研修では、この実感をベースに、将来の管理職候補である受講者たちに向けて、管理職になることのメリットや、「リーダーシップ」についてお話していただきました。小林氏は「管理職は簡単、誰でもできる」ものであり、管理職になることによって失うものはない。むしろ、上に挙げたようなメリットの方が大きく、人の下で働いていたときよりもスケジュールの自由があるとおっしゃいます。もちろん、女性が働き続けるための制度が整ったところで、女性側の意識変革も必要で、何よりも周囲の期待を裏切らないように努力することは大切だと強調されました。どんな難しい仕事を与えられても返事はいつでも「ハイ、喜んで!」であるべきで、「自信がない」、「私よりふさわしい人がいる」などと辞退するのは、後に続く女性たちのチャンスをつぶすことなる...など、研修は終始ポジティブな雰囲気の中で行われました。
参加者からは「私なんて...と自信がない...でしたが、自分にもできるかな?と思えました。自分の人生をプロデュース、考えてみたいと思いました。」といったポジティブな感想が寄せられました。