TOP >センター資料TOPICS>「岐阜市長良郷土史概説」



平成27年度末に、当センターで郷土資料を購入する機会がありました。
その際に、「岐阜市長良郷土史概説」吉岡勲著 を手に入れました。 この本は、タイトル通り 岐阜市長良の歴史について書かれた本です。吉岡氏は、長い教員生活で、長良小学校に籍を置いた年数が多く、斯く言う事務員も小学校の折、校長先生として赴任しておられました。それ故 以後吉岡先生と書かせて頂きます。

 出版年月日は、昭和21年11月です。出版と言いましても、本書は謄写版印刷で出来ており、おそらく吉岡先生自らが、150枚余の原稿をロウ引原紙に鉄筆で書かれたものと思われます。その爲経年劣化と相俟って大変読みづらく、普通に書棚に配架することは困難なコンディションとなっています。
しかし 長良についてのまとまった郷土史は、現在のところ他には見当たらない爲、時間に暇を見つけては、WORDへの入力作業を進めてまいりました。昨年末、漸く本編と年表等で304頁に及ぶ作業が完了しました。
 判読しかねる文字も多々あり、なかなか思うように作業は進みませんでしたが、反対にそれを読むために、きちんと読んでいけたという利点もありました。

 この本は昭和21年11月に発行されていると書きましたが、この時期、日本は敗戦の混乱から抜け出せない時期であったかと思います。 吉岡先生は、戦時中 皇国史観の平泉澄氏を師と仰いで歴史研究に勤しんでみえましたので、本書は、その皇国史観を拠り所にして書かれたものかもしれません。暦に皇紀を使用して見える事などからも窺えます。
戦後70年以上経って、当時の事は分かりませんが、話しに聞く、教科書を黒く塗った時代、昨日まで正しかった事が、今日は間違っていると教えなければいけない教育現場にあって、教師としての苦悩も多かったのではなかろうかと察します。

ただこの「岐阜市長良郷土史概説」は、皇国史観というフィルターを取り除いて読んでも、郷土史として、興味深いものです。長良に東山道が通っていたこと、鵜飼の始めは長良ではなかったこと、物部氏と美濃の関係、渡来人の事等、多くの文献を比較検討して、 立証的に書かれたものではないかと思います。

出版時期は約70年前の事で、今はもう検証できないこともあるのかと思われますが、 この本を読むと、例えば古津から加野に抜ける山道、古い東山道の跡等、これらの現在を確かめて見たくなりました。
当初HP上で、全てをPDF公開する予定で準備を進めておりましたが、吉岡先生の御遺族様の承諾が得られておりませんので、当面は書庫に閲覧用として保管することと致します。 了承が取れ次第、HP上にてPDF公開を致します。