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昨年出版されました 教養ブックレット「岐阜をもっと知ろう!」に続き、岐阜をテーマにした「リブロ岐阜学」が発刊されました。教育学部の先生がそれぞれの研究分野のテーマを書かれたもので、ざっとなら1~2時間で読めてしまいますが、一つのテーマを深く掘り下げてあって、興味深い本です。

 『岐阜の植物誌-「ぎふのみどり」を学び伝える(須山知香著)』

 植物誌:全国で記録されている被子植物5016種の内半分弱の2380種が岐阜 県では確認されているという事実に まず驚かされます。
  内容的には、植物誌というものは何かという事と、その歴史、その中で東海地方出身の伊藤圭介(日本近代植物学の祖 名古屋大学の開設に携わる)、飯沼慾斎(大垣で蘭方医を開業する一方で、植物研究を精力的に行い、『草木図説』を著します。これは日本で最初にリンネ分類法に基づいて構成された日本の植物を紹介した図鑑です。  大垣市にはこの飯沼慾斎の研究会があり、その資料がわずかですが、当センターにも所蔵しています)などの功績を紹介しています。

 『岐阜県の方言-岐阜を知る(山田敏弘著)』

 岐阜の方言を学問的にきちんと解説しています。
 読んでいて初めて知ったのは、昔から使われている方言には、全国共通語として使われなくなった、平安時代や鎌倉・室町時代からあることばも残っているということでした。
例えば「ほうたがい」という言葉、子供の頃はよく「ほうたがいしてまった」という言い方を聞いたことがありますが、これは平安時代の陰陽道「方違え」(縁起の悪い方角に行かなければならないときは、一端別の方角に行ってから、良い方角に変えて出かけること)からきているということで、なるほどとその語源に納得しました。
 岐阜という場所は、昔は都(京都)からの距離も近く、言葉の伝播も早かったということ、又飛騨には飛騨の独特の言葉ももこっているということす。
 こういった岐阜県の方言の特徴は、アクセントや文法、漢字にもあらわれているということ、最近になって出て来た方言「かド」(漢字ドリル)「けド」(計算ドリル)もあることなどをわかりやすく解説してあります。

 『柳田民俗学と岐阜県(田澤晴子著)』

 個人的には一番おもしろかった章です。
 民俗学に興味のある方なら、その名前を知らない人はいないという柳田國男。
 その柳田國男と岐阜県の関係が書かれています。柳田氏が岐阜県を訪れたのは生涯で4回、うち2回は内閣法制局参事官時代の視察旅行、後の2回は講演旅行ということです。
 この本では、後に民俗学者としての柳田氏の思想や学問の形成に重要な意味を持つこの視察旅行について解説しています。
 柳田氏はこの山深き岐阜県で、「山人」-農業民である日本人とは異なる先住民族の実態を捉えたかったようです。柳田氏は後にこの考えを自ら否定するようになりますが、この検証・調査の過程で岐阜県の郷土の研究の多大な影響を与えていくことになります。
 この章の中で、「サンカ」について述べられていますが、きちんとその実態の捉えられることがなく、興味半分の著作等も多い中、柳田氏や宮本常一氏らが、「サンカ」を民俗学の研究テーマにしていたことは、考えてみれば当然のことなのでしょうけれど、何故そうであったのかが解説してあります。

『岐阜の仏像-奈良から江戸まで(野村幸弘著)』

 岐阜と言う場所を、昔にタイムスリップして考えてみると、京都・奈良の文化圏の東端に位置しているということで、奈良時代からの仏像が時代ごとにあちこちの残っているということで、同時代の同じような仏像で有名なものと比較してその芸術的価値を解説しています。
 読んでみると実際にこの本を片手に実物を見に行きたくなります。
 又、岐阜県の位置的なものからくる歴史的な地位というものを納得することができます。


以上、簡単に事務員の勝手な感想を並べてしまいましたが、こういった類の本は前の「岐阜をもっと知ろう」でも書いたかもしれませんが、あくまでその道への扉に位置する本にすぎません。
 4人の先生方は丁寧に、興味深く書くことで、その扉の奥へどうぞといざなって下さっている様に思いました。