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ここ数カ月、長良川河口堰の旧訴裁判の資料の整理の一環として、裁判記録のPDF化の作業をしておりました。
今回は、鑑定人であられた日野幹雄氏・南部祥一氏の証言及び鑑定書、海津在住でガマについて個人的に研究をしてみえた森島輝雄氏の証言をアップすることができました。
裁判の記録は、当時の原告側代理人の弁護士小出良熙氏より寄贈をうけたものを中心に進めていますが、全てが網羅されている訳ではありませんので、最終的に裁判の流れを再現できるかどうかは、今後別の資料から探して来る必要があると考えています。
 さて、今回の鑑定人の方々の証言を読んでみますと、これまでアップして来た公団側の証人の方のものとは随分と趣が違うということがわかります。科学者としての眼というものをきちんとお持ちになっていることがわかります。
 日野鑑定人は、塩水遡上等の鑑定を行われたのですが、証言は、鑑定人と言う立場から、第三者的な観点から鑑定事項に関して真摯に取り組まれ、公団側の設計等の根拠について、足りないと思われる部分を適切に指摘している場面が何度も見受けられます。
 一方で、弁護士の質問に対して、例えば前提条件とことなる事についてどうなるのかと言った類の質問には、「あくまで前提条件によって計算・鑑定するのであって、その条件が適切なのかという事には言及しない」という立場を強調されます。それでもという問いには、一応の私見は述べられますが、これはあくまで私見であり、他の鑑定なりを待つ必要があることを述べられます。この鑑定書で設計の段階でもう少し綿密に計算を行った方が良いといわれた部分について、その後公団はどのように対応したのかを、また検証していかなければならないと思いました。
 南部鑑定人は、川の底質の水質の鑑定を行っています。鑑定当時の長良川の岐阜市より下流というのは、あまりきれいな状態ではなかったことが伺えます。

 環境アセスメントの「生活環境の保全に関する環境基準」の河川には、長良川の中流域は、環境基準Bと定められています。

  環境基準Bとは


 この件に関して、南部鑑定人は、行政が「環境基準はBとする」というコンセンサスがとれており、行政がその目標を達成するために努力をするのであろうからということで、この環境基準Bを満たすか否かは鑑定していません。
 初夏にあった「長良川河口堰閉門20周年」のシンポジウムのパネルディスカッションで、「科学者と言うのは、与えられた前提に対して真摯に研究をするけれど、その前提がどうなのかという行政的な判断には、首を突っ込まない」ということが話されていて、私にはすごく印象に残りました。そういう観点からこの答弁と読んで行くと納得できる部分もあります。
 もう一点南部鑑定書で気に掛かったのは、鑑定を進めていた時期が、S51.9.12の長良川の安八決壊のあった時期と重なっているのですが、鑑定書を読んでも、その影響があまり反映されていない様に感じました(後に証言にたった小瀬洋喜氏もそう指摘しています)。鑑定人には、その時の洪水量等が知らされておらず、ヘドロ等の流下にこの洪水が影響を与えたのかどうかも言及されていないように見受けられます。この水害は、当時の長良川としては未曽有のものであったので、素人考えですが、底質を一掃するような作用があったのではないだろうかと思うのです。ところが、鑑定人は二度目の見分で10/3~11/4について鑑定をしていて、それは意図的にその時期の資料が出されてなかった様にも見受けられました。

   当センターでは今後とも、鑑定書・裁判記録を引き続きホームページにアップして行く予定です