非線形解析とは…

 非線形解析とは、鉄心の非線形特性を考慮した磁界解析のことを示します。それでは「鉄心の非線形特性」とはどのような特性かご存知ですか?
 まず磁界解析とは、有限要素法等の数値解析法を用いてその磁束の流れ方を求める解析手法のことです。そのため、磁界解析を行なう解析モデルには永久磁石やコイルなどの磁束を生じる源があります。(これが無いと磁界解析を行なう意味がありません) ここで、磁束の流れ方にはその材質によって色々な特徴があります。例えば、空気よりも鉄心の方が磁束が流れやすいことは皆さんご存知だと思いますが、はたして鉄心はどのような場合でも空気より磁束が流れやすいのでしょうか?
 鉄心は磁束が流れ過ぎた場合に「飽和」という現象を起こします。この現象は、ちょうど自動車の「交通渋滞」のような現象で、鉄心中に磁束が集中し過ぎると鉄心中をそれ以上磁束が通れなくなって外側の空気中等に漏れてしまいす。この現象のことを「鉄心の飽和」と呼び、この現象を生じる「鉄心の非線形特性」を各鉄心ごとに考慮して計算することを、磁界解析では鉄心の「非線形解析」と呼んでいます。
 追加ですが、線形解析では当然「鉄心の非線形特性」は考慮していませんので、鉄心中に幾らでも磁束が流れる結果が得られます。当然これは「自然現象」に反した結果ですが、鉄心が飽和領域に達していない場合(鉄心が飽和していない場合)には、線形解析でも充分正しい値を得ることが出来ます。また、本プログラムの鉄心の非線形反復計算には「ニュートン・ラプソン法」を採用しています。

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 積分路とは…

 回転機の磁界解析において重要な解析結果となるのが「トルク」です。「トルク」とは、自動車のそれと同じ様に「その回転機(モータ)でどれだけの回転力を得ることができるか?」というものであり、回転機の回転子全体に働く電磁吸引力[N]の中から回転方向成分を取り出して合計した値[Nm]で表します。この「トルク」の計算方法には様々な手法がありますが、本プログラムでは「マクスウェルの応力法」を採用しており、そこで必要になるのが「積分路」です。すなわち「マクスウェルの応力法」とは、「積分路」で囲まれた領域内からの磁束の出入りから、その領域に働く電磁吸引力及びトルクを求める手法のことで、精度良く「トルク」を求めるためには「積分路」が重要になってくるわけです。
 一般的に「一次三角要素を用いた有限要素法」では、分割図の三角形要素(メッシュ)が正三角形に近いほど精度良く計算できるため、特に計算精度が必要とされる「積分路」周辺のメッシュは均等に分割することが要求されるわけです。

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 コギングトルクとは…

 みなさんの中には「コギングトルク」という言葉を初めて聞いたという人も少なくないかと思いますが、この「コギングトルク」とはどのようなものなのでしょうか?
 「コギングトルク」とは、一般的に「超低速で回転子を回転させた場合に生じる保持トルク」と言われています。すなわち、回転機(モータ)を無励磁状態(電源を入れない状態)で外力により回転させた場合に生じるトルクのことです。例えば、子供の頃に遊んだ「ラジコン」の動力として用いられているのはDCモータですが、そのモータの軸をゆっくりと手で回してみた経験はありませんか? その時に手に「カクカク」と伝わってきた微振動こそが、「コギングトルク」の正体なのです。
 この「コギングトルク」は永久磁石型回転機の形状により生じるトルクで、一般的には「嫌がられる」トルクです。例えば、コギングトルクが大きい回転機は、高速で回転すると振動・騒音を生じてしまいモータ効率もかなり悪くなります。このように、回転機の形状とコギングトルクには密接な関係があるので、皆さんも解析モデルの形状を色々と変化させて「コギングトルクの小さい回転機の設計」に挑戦してみてはどうでしょうか?

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 電流入力解析とは…

 「電流入力解析」とは、その名の通り回転機のコイルに電流を投入した場合の磁界解析のことです。3.1章で「コギングトルク解析」について説明しましたが、その時には無励磁状態(電源を入れない状態)で回転子を回転させた場合のトルクを計算しました。そこで、次のステップとして「電流入力解析」では励磁状態(各コイルに3相交流電流を同期させて投入した状態)で回転機を回転させた場合のトルクを求めます。
 回転機は電流もしくは電圧を制御することて回転動作を行ないます。回転機の起動状態(回転子が回り初めてすぐの状態)では時間と共に回転速度が上昇していきますが、定速状態(充分時間が過ぎて一定速度で回転している状態)では回転速度は一定なので、入力電流が回転速度に同期して安定した運転をしています。この状態を解析したのが「電流入力解析」であり、「定常解析」とも呼ばれます。
 この解析で求まる重要な結果のひとつに「平均トルク」が挙げられます。コギングトルク波形はゼロクロス波形(平均はゼロになる)ですが、電流入力解析の平均トルクは必ず正の値となります。(ならない場合は解析が間違っています!) 当然モータの性能としては平均トルクが大きい方が良い(出力が大きい)ので、ここでは解析モデルの形状を色々と変化させて「平均トルクの大きい回転機の設計」に挑戦してみてはどうでしょうか?

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