html> 製鉄排熱を利用した水素製造装置
Miyasaka・Asahara Laboratory
Aerospace Propulsion Laboratory

ターコイズ水素の製造




■ 水素のエネルギー利用 ■

持続可能な開発目標(SDGs)に基づく日本の国家エネルギー戦略として水素のエネルギーキャリア利用が注目されています。水素はロケットの燃料に使われているほど、単位質量当たりのパワーが大きい気体です。水素価格が低下すると、ロケット燃料の水素も安価に入手できるようになり、宇宙開発の促進が期待できます!

グリーン水素、ブルー水素、イエロー水素、ホワイト水素・・・・
水素は製造方法と環境負荷により、色にちなむ呼び名で分類されています。

・グリーン水素: 再生可能エネルギー由来電気の水電解により、CO2を排出せずに生成される水素
・ブルー水素:  化石燃料である天然ガスの水蒸気改質により生成される水素
・ターコイズ水素:化石燃料である天然ガスの主成分であるメタンの熱分解により、CO2を排出せずに生成される水素

私たちは、都市ガスの主成分であるメタンの熱分解で生成されるターコイズ水素に注目し、オンサイト型の水素製造機の実現を目指しています。

グリーン水素イメージ


■ メタン熱分解水素製造システムの社会実装イメージ ■

 メタン熱分解により、CO2を排出せずに水素を生成するターコイズ水素が注目されています。近年では、マイクロソフト社や三菱重工がターコイズ水素製造プラントの研究開発をおこなっているモノリス社(アメリカ))に出資し、話題となっています。私たちの研究室では、小型のターコイズ水素製造装置を開発を目指しております。

メタン熱分解による水素製造システムの社会実装イメージ



■ メタン熱分解反応による水素生成の基礎研究 ■


本研究は以下の補助を受けて実施しました。詳細はNEDO成果報告書をご覧ください。

[1] 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業
「水素利用等先導研究開発事業/炭化水素等を活用した二酸化炭素を排出しない水素製造技術開発/メタン直接分解による水素製造に関する技術調査」(2019年4月~2021年2月)

実験概要
 40Lサイズのメタン熱分解反応炉を製作し、基礎的な反応特性を調査しました。下の図は実験装置の概略図です。電気ヒーターによって加熱される反応炉にメタンを流入し、メタンを水素と炭素に分解します。


メタン熱分解水素製造システム [1]


 下の図は製作した40L級のメタン熱分解反応炉です。自分たちで設計し、金属部材から製作しました。電気ヒーターで感熱すると、赤熱するほど高温になります。


メタン熱分解反応炉 [1]



メタンにより生成した炭素
 メタン熱分解により、大量の炭素が生成されます。価値のある炭素が生成されると、水素価格を抑えることができます。
 生成された炭素を走査電子顕微鏡(SEM)で観察しました。観察結果から生成された炭素はファイバー状や球状炭素の凝集構造をもつことがわかりました。また、金属触媒を用いたメタン熱分解では写真のように薄い炭素膜を形成しており、表面は炭素で覆われていることがわかりました。


粉末状炭素[1]


触媒表面上に生成された炭素 [1]

生成炭素の光学顕微鏡像(温度比較、流量0.2Nm3/h)[1]

生成炭素の光学顕微鏡像(流量比較、温度800℃)[1]


■ メタン熱分解による大型水素製造装置の性能予測シミュレーション ■

シミュレーション概要

 シミュレーションによる水素大量製造装置の性能予測を目指しました。まずは、触媒によるメタン熱分解の詳細反応モデルを構築し、反応シミュレーションにより、反応炉のサイズ、メタン流量、温度等をパラメータとした場合における水素生成量やエネルギー効率を取得しました。下の図は構築した詳細反応モデルの触媒反応イメージです。

    

詳細反応モデルにおける触媒表面反応のイメージ[1]     シミュレーションにおける反応器モデル

シミュレーション結果
 シミュレーションの結果、炉内温度と流入メタン流量における大型水素製造装置の効率を予測することができました。このマップにより、ある反応温度において、エネルギー効率が最大となる流入メタン流量が存在することがわかりました。


シミュレーションから得られた効率マップ [1]
※ 縦軸下方:大流量、上方:小流量



■ 水素燃焼加熱による大型水素製造装置の性能予測シミュレーション

 メタン熱分解の基礎研究から電気加熱による水素の製造過程において電気コストが膨大であるという データを取得しました。そのため新たな装置として生成した水素の一部を燃焼利用した、水素燃焼加熱型メタン熱分解装置を考案しました。下の図は考案したシステム構成図です。




 この装置により金銭的なコストダウンが見込まれ、また、自己完結のシステムとなることから外部の影響を受けずに水素を製造することができます。



シミュレーション概要

 熱交換器を単純化した単純化モデルによりシステムの成立条件を絞り、3次元連成解析を行い、システムの成立性と特性を調査しました。 下図はそれぞれの解析方法を示し、詳細モデルでは反応性熱流体と固体伝熱を考慮しています。



シミュレーション結果
 下の図にシミュレーションの結果を示します。生成した水素の一部を燃焼に用いた燃焼加熱型水素製造装置のシステムの成立条件を得ることができました。また、図から火炎の特徴を取られることができ、さらなる装置の改良の可能性があることがわかりました。








■ 水浄化利用

 ターコイズ水素製造装置では、多くの炭素が副生されるため、炭素の新しい用途の開拓が必要です。そこで本研究では、ターコイズ水素製造装によって副生される炭素の水浄化性能を調査し、気環境と水環境に優しいエネルギー利用技術の確立を目指しています。メタン熱分解の反応温度と触媒等の生成条件を変え、水質汚染の主要原因であるリンを除去する能力を定量的に示し,市販の活性炭を比較対象とし、本研究で得られる炭素の吸着剤としての価値を相対的に評価します。



CO2フリー水素製造装置と水処理装置の社会実装イメージ


 生成炭素がメチルレッドを吸着するかを実験を行いました。beforeに比べてafterはほぼ透明になっており、生成炭素の吸着能力が明らかになりました。



炭素による水浄化


 
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