Miyasaka・Asahara Laboratory
Aerospace Propulsion Laboratory
ホールスラスタ(Hall Thruster)研究

ホールスラスタ(Hall Thruster)研究


1. ホールスラスタの仕組み

ホールスラスタはイオンエンジンと同じく、ヘッドにより推進剤を電離し、イオンを電場によって排出することで推力を得る電気推進機である。イオンエンジンと同様に中和器によりイオンビームを中和するが、イオンエンジンとは異なりホールスラスタでは電離も加速も「加速チャネル」と呼ばれるヘッド内の同じ場所で行われることで高い推力密度を得ることができる。




2. ホールスラスタの適用

これらの特徴を生かして人工衛星の軌道維持だけでなく、探査機のメインエンジンや軌道間遷移ミッションにも適用が期待されている。日本の技術試験衛星9号機(ETS-9)では軌道間遷移ミッションを含めたエンジンをすべてホールスラスタで行う「オール電化」の試みが計画されている。



☆大電力化研究

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宇宙探査や軌道間遷移ミッションへの適用にはホールスラスタの大電力化が必要であり、様々な開発が行われている。 日本では大学等が連携し、ホールスラスタヘッドを複数有するクラスタシステム開発プロジェクト「RAIJIN」が行われている。

3. 研究室における研究開発

☆SBSシステム

このようなクラスタシステムでは、ヘッドから排出されるプルーム間の干渉による作動や性能への影響が予想される。そこで研究室では、この干渉による影響を評価し最適化することで、単体よりも優れたシステムとなるように研究開発を進めている。具体的には2基ヘッドと1基の中和器からなるSBSシステムを開発し評価を進めている。



☆SBSシステムの実験研究

SBSシステムには2倍の流量を必要とするため、より大型で大規模な真空排気装置を必要とする。そこで、単体作動試験及び予備試験は研究室の所有するスペースチェンバー内で実施し、SNSシステムの定量試験はJAXA宇宙科学研究所のスペースサイエンスチェンバーで実験を行っている。



☆SBSシステムの解析研究

SBSシステムにおけるプルーム干渉効果の物理の導出を通じた現象の理解を目的に粒子法を用いたプルーム解析を進めている。





☆Racetrack形アノードレイヤスラスタの研究開発

通常ホールスラスタで採用されているCircular形状よりも強いプルーム干渉効果を得る目的でRacetrack形状のヘッド開発を行っている。Racetrack形状のホールスラスタは過去にBusek社がマグネチックレイヤスラスタを開発しているが、スラスタとしてのアノードレイヤは初めての挑戦となる。2020年度のJAXA宇宙科学研究所の実験において初めてのSBS作動を達成している。




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