室町時代の節用集(古本節用集)

 伝統的な節用集では、言葉の最初の仮名でイロハ順にし、イロハ47(44)字のそれぞれのなかを意味によって分類します。「白鷺」なら、シではじまる動物なので、シ部・気形門にあることになります。


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◆15世紀なかごろ、節用集は生まれました。先行した『下学集』(意義分類の用語集)や『聚分韻略』(韻で分類した漢字字典)などを参考にしたそうです。

→筑波大学の『下学集』(画像と解説)
→京都大学の『聚分韻略』清原宣賢筆、重文
  京都大学電子図書館で他のものも見られます。
 国会図書館の『聚分韻略』(画像と解説)

参考までに自作しました

◆節用集祖本は現存しませんが、本文の最初(イ部・天地門)の語が「伊勢」であるものが古い形態を伝えているそうです。

→国会図書館の広本(雑字類書)全画像
→竜門文庫の『節用集』奈女大。全画像
→早稲田大学の伊勢本『節用集』(全画像)
→筑波大学の饅頭屋本(別版解説 「饅頭」
→玉里文庫の『節用集』(画像と解説)
→国会図書館の饅頭屋本『節用集』
→早稲田大学の饅頭屋本『節用集』上巻(欠落あり)

参考までに自作しました

「伊勢本」では、天地門のはじめに旧国名がありました。これを一括して付録にまわしたら、イ部・天地門が「印度」で始まることになりました。「印度本」の誕生です。
→京都大学の経亮本(全画像)
→中之島図書館の永禄二年本(全画像)
→慶応義塾大学の永禄一一年本別本(寛永写)

○伊勢本も印度本も、イロハ47文字のうち、ヰヱオ部がなく44部立てでした。なお、伊勢本系と印度本系とが混じった本もありました。
→天正17年本など(未リンク)

〇室町時代には、節用集のほかにも、いくつかの用字集風のものが作られました。
→京都大学の『宣賢卿字書』
→京都大学の『塵芥』重要文化財

これは草書本といいます。下記参照。

慶長(1596〜1614)ごろ、定家仮名遣いによりヰヱオ部を立て、「印度」をヰ部に移動して「乾」が冒頭語になった木版本が登場します。あとがきに「易林誌」とあるので「易林本」と呼ばれています。

○原刻・平井版・平井別版・小山版などのバリエーションがありました。また、江戸時代の節用集が、この易林本から派生するなど、重要な位置を占める節用集です。
→茨城大学の平井版(全画像)

→国文学研究資料館の平井版(全画像)
→京都大学の平井別版(全画像)
→早稲田大学の小山版(全画像)
 筑波大学にも平井版・平井別版があります。検索後、利用。
 大阪府立中之島図書館にも平井別版があります。検索後、利用。

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○室町時代の節用集は、漢字を楷書で、振り仮名を片仮名で記すのが一般的です。が、末期には草書本『節用集』のように、草書・平仮名で記すものも現れました。これも易林本から派生しました。

草書本『節用集』(慶長年間版。初刻系)。
→ 八木書店の草書本(再刻系)
 【Q】初刻と再刻の違いはどこにありますか?
 筑波大学にも草書本(再刻系)があります。検索後、PDFファイルを利用。☆

○ただ、過渡期のためか、漢字を行草書にしても、振り仮名は片仮名のものもありました。
←寿閑本『節用集』(慶長15・1610年刊)
節用集小系寿閑本『節用集』下巻(全画像。一部欠)


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