幼児の健康調査
- 研究の目的
- 研究の方法
1.アンケート調査
保護者の方にお子様の体格、健康状態、既往歴、食習慣、睡眠習慣、運動習慣、家庭における喫煙環境等について回答いただきました。2006年時の調査ではアンケートに加え、3日間食事記録、血圧測定、味覚調査、医師によるアレルギー評価を行いました。その後は、2009年より、アンケートを中心に毎年の調査に卒園されるまで継続的に参加していただきました。アンケートでは、食事記録の代わりに当教室で開発した食物摂取頻度調査票を含み、各種食品や栄養素の摂取量を定量的に推定しています。
2.早朝尿採取
普段の食品や大豆イソフラボン摂取、環境化学物質への暴露、ホルモン状態、抗酸化状態、免疫状態などを反映する生体指標の測定に用いるため、起床後初めての尿を自宅で採取してもらいました。
解析
生活習慣の各項目および各尿中生体指標値の関連を計算することで、どのような生活習慣が健康影響を及ばすか評価します。また、生活習慣や健康状態がどう経年的に変化するか評価します。
情報の取り扱いおよび倫理について
この研究は2006年に岐阜大学大学院医学計研究科倫理審査委員会からの承認を得て開始されました。全ての情報は、岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野が管理をしておりますが、解析時は、個人識別情報を外した形で行い、個人情報の保護に努めております。研究結果も全体として集計、発表されるので、個人は特定することはできません。
この調査に参加された方は、今後も解析、尿中生体指標の測定は行なわれるので、中途で研究への利用を取りやめることは出来ます。その場合は、以下の事務局までご連絡下さい。
研究代表者
永田知里 疫学・予防医学分野教授
事務局
〒501-1194 岐阜市柳戸1-1
岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野
TEL: 058-230-6412 フリーダイヤル: 0120-67-2247
FAX: 058-230-6413
担当: 准教授 和田恵子
苦情窓口
〒501-1194 岐阜市柳戸1-1
岐阜大学大学院医学系研究科 医学部 研究支援係
TEL:058-230-6059
E-mail:rinri@gifu-u.ac.jp
幼児の健康調査業績
- Associations between Exposure to Tobacco Smoke and Behavioral Problems
in Preschool Japanese Children. J Environ Public Health. 2020 May 14;2020:7591263.
日本人幼児における家庭内受動喫煙と子どもの情緒と行動
<要約>家庭内受動喫煙と子どもの情緒や行動(SDQ:Strengths and Difficulties Questionnaire)との関連を調べた。受動喫煙は、質問紙と尿中cotinine値を用いて評価された。両親の喫煙量、同居家族内での喫煙者数、家庭内でのたばこ煙曝露Pack-yearsが多い程、子供のSDQスコア(行動の総合的困難さ)が高かった。尿中cotinine値が高い児程、SDQスコアが高かった。家庭内受動喫煙と子どもの情緒や行動の正の関連に、性差はみられなかった。 - Association between exposure to household smoking and dental caries in
preschool children: a cross-sectional study. Environ Health Prev Med. 2019 Jan 26;24(1):9.
日本人幼児における家族内受動喫煙と齲歯
<要約>両親と同居家族者の喫煙量の質問から受動喫煙を評価した。園での歯科検診により齲歯の有無を確認した。父親または母親が喫煙しているとそうでない家庭に比べ齲歯がより認められた。また、たばこ煙曝露Pack-yearsが多い程、齲歯がみとめられた。 - Associations of acrylamide intake with urinary sex hormone levels among
preschool-age Japanese children.Am J Epidemiol. 2018 Jan 1;187(1):75-81.
日本人幼児におけるアクリルアミド摂取と尿中ホルモン
<要約>アクリルアミドは、炭水化物を多く含む原材料を高温で加熱調理した食品に含まれる。3日間食事記録から、このアクリルアミド摂取量を推定した。男児ではアクリルアミド摂取量が多いと尿中testosterone値、androstenediol値が高かった。女児ではアクリルアミド摂取量と尿中性ホルモン値との関連は認められなかった。 - Associations of intake of antioxidant vitamins and fatty acids with asthma in pre-school children.Public Health Nutr. 2013 Nov;16(11):2040-5.
日本人幼児における抗酸化ビタミン、脂肪摂取と喘息
<要約>3日間食事記録より抗酸化ビタミンや脂肪の摂取を推定し、喘息はアメリカ胸部学会が規定する質問票よって評価した。ビタミンC、ビタミンEの摂取量が高い児は摂取量の少ない児に比べ、喘息が少なかった。脂肪摂取と喘息の関連はなかった。 - Associations of endogenous melatonin and sleep-related factors with behavioral
problems in preschool Japanese children. Ann Epidemiol. 2013 Aug;23(8):469-74.
日本人幼児における内因性メラトニン、睡眠要因と情緒と行動
<要約>サーカディアンリズムの調節作用をもつメラトニンと睡眠、子どもの情緒や行動(SDQ:Strengths and Difficulties Questionnaire)との関連を調べた。いびき、夜間の覚醒、昼間の眠気は高SDQスコア(行動の総合的困難さ)と関連していた。就寝時間が早く、起床時間の早い児程、また尿中6-sulfatoxymelaton値が高い児程、SDQスコアは低かった。睡眠と尿中6-sulfatoxymelaton値の有意な関連はみられなかった。遅い就寝起床や睡眠の質の悪さ、メラトニン低値が子どもの情緒や行動の問題に関与する可能性が示唆された。 - Associations of urinary 6-sulfatoxymelatonin with demographics, body mass, sex steroids, and lifestyle factors in preschool Japanese children. Ann Epidemiol.2013 Feb;23(2):60-5.
日本人幼児における尿中6-sulfatoxymelatonと性、年齢、体格、性ホルモン、生活環境要因
<要約>メラトニンは松果体から分泌されるサーカディアンリズムの調節作用をもつホルモンである。尿中のメラトニン代謝物と年齢、性別、体格、性ホルモン、生活習慣との関連を調べた。尿中6-sulfatoxymelaton値は、男児より女児で高値であり、体重とBMIと負の関連を示した。性ホルモン、就寝時の部屋の明るさ、睡眠、座位時間、家庭内受動喫煙との有意な関連はみられなかった。 - Associations of birth weight and physical activity with sex steroids in
preschool Japanese children.Cancer Causes Control. 2012 Feb;23(2):231-8.
日本人幼児における出生時体重、身体活動と性ホルモン
<要約>幼児の性ホルモン(エストロゲンとアンドロゲン)と出生時体重、運動(外遊び)との関連を評価した。女児では、出生体重の低い程、尿中testosterone値、androst-5-ene-3β, 17β diol値が高く、高もしくは低出生体重で、尿中estrone値、estradiol値が高かった。身体的に活動的であるほど、女児では尿中estrone値が低く、男児では尿中testosterone値、androst-5-ene-3β, 17β diol値が低かった。 - Seaweed intake and urinary sex hormone levels in preschool Japanese children.
Cancer Causes Control. 2012 Feb;23(2):239-44.
日本人幼児における海藻摂取と性ホルモン
<要約>幼児の海藻摂取と性ホルモン(エストロゲンとアンドロゲン)との関連を評価した。男女ともに、海藻摂取量と尿中estrone 値に有意な負の関連(Spearman相関係数:男児-0.144、女児-0.147)が見られた。海藻摂取と尿中estradiol値、testosterone値、androst-5-ene-3β, 17β diol値との有意な関連はみられなかった。 - Relationship of intake of plant-based foods with 6-n-propylthiouracil sensitivity
and food neophobia in Japanese preschool children.Eur J Clin Nutr. 2012 Jan;66(1):47-52.
日本人幼児における植物由来の食品摂取と苦みへの感受性、新しい食品への抵抗
<要約>植物由来の食品として野菜、果物、大豆製品に着目した。苦み物質を用いて苦みを感じられるか否か、また、質問票により、今まで食べたことのない食品に恐れを感じるどうかを評価した。男児では野菜を多く摂取していると新しい食品への抵抗は少なかった。また、苦み感受性が低い男児では大豆摂取量が高く、苦み感受性が高い男児では大豆製品摂取が高いと新しい食品への恐れが低かった。女児ではこのような関連は認められなかった。 - Dietary intake of vitamin B12 and folic acid is associated with lower blood
pressure in Japanese preschool children.Am J Hypertens 2011 Nov;24(11):1215-21.
日本人幼児におけるビタミンB12、葉酸摂取と血圧
<要約>血中ホモシステイン値が高いと血圧上昇がみられ、その血中値をビタミンB6, ビタミンB12、葉酸が制御していると考えられている。日本人幼児においてビタミンB12摂取量が高いと拡張期血圧が低く、葉酸摂取量が高いと拡張期血圧が低いことが認められた。 - Seaweed intake and blood pressure levels in healthy pre-school Japanese
children. Nutr J. 2011 Aug 10;10:83.
日本人幼児における海藻摂取と血圧
<要約>幼児の海藻摂取と血圧値との関連を評価した。海藻摂取量が多い程、男児では拡張期血圧が低くなる傾向(海藻の低摂取、中摂取、高摂取群で62.8、59.3、59.6 mmHg)が、収縮期血圧が低くなる傾向(同様に102.4、99.2、96.9 mmHg)がみとめられた。海藻摂取が血圧値に好影響をもたらす可能性が示唆された。 - Soy intake and urinary sex hormone levels in preschool Japanese children.Am J Epidemiol. 2011 May 1;173(9):998-1003.
日本人幼児における大豆摂取と性ホルモン
<要約>幼児の大豆摂取と性ホルモン(エストロゲンとアンドロゲン)との関連を評価した。大豆摂取量が多い程、男児では尿中estrone値、estradiol値が低く、女児では尿中testosterone値、androst-5-ene-3β, 17β diol値が高かった。大豆摂取により幼児期の性ホルモン値が変動する可能性が示唆された。