研究内容

木質バイオマスからの液体燃料製造(BTL)プロセスに関する研究


ここ10年で電気自動車が発売され,時々街中でも見かけるようになってきた.また,自動車や発電用燃料電池の研究開発が行われており,その燃料である水素の製造に関する研究開発も行われている.一方,国内だけでなく世界においても20年後を目途に純ガソリン車の販売禁止が検討されており,ハイブリッドカーの増加および電気自動車や燃料電池自動車への移行が求められている.しかしながら,ハイブリッドカーでさえまだコスト高であり,さらに電気自動車や燃料電池自動車はコスト高だけでなく,充電・水素スタンドの少なさ,さらには充電・水素充填に多大な時間がかかり,普及の見通しはたっていない.したがって,当研究室ではこれまでのガソリン・ディーゼルエンジン車で使用でき,且つCO2排出量を削減できる低コストなバイオ燃料製造に関する研究開発を企業さんとの共同研究や競争的研究助成金で行っている.

木質バイオマスガス化

建築廃木材の年間発生量は全国で約500万トンにもなる.しかし,1960年代から約40年間使用されてきた建築廃木材には防腐・防蟻剤として銅,クロム,ヒ素を含有するCCA(Chromated Copper Arsenate)薬剤での保存処理がなされている.特に,ヒ素は生体に悪影響を及ぼし,ガス化反応器や液体燃料合成に用いる触媒の腐食も懸念されるため,ガス化でのヒ素の挙動を明らかにする必要がある.
 本研究は,建築廃木材等木質バイオマスをガス化し,液体燃料合成に最適なガス化ガス中H2/COモル比になるガス化条件および廃木材中含有ヒ素のガス化での挙動を明らかにすることを目的としている.

木質バイオマスガス化残渣・炭化物を用いた乾式ガス精製

本研究では,建築廃木材等ガス化で生成するタールやヒ素,硫化水素等を除去するための炭化物を建築廃木材等から製造し,SEM観察,CHN分析,BET比表面積等分析により炭化物のキャラクタリゼーションを行っている.今後はその炭化物を用いた乾式ガスクリーニングを検討する予定である.

バイオ燃料製造を目的とした液体燃料合成

ガソリン前駆体としてのメタノール合成および灯油・軽油製造のためのFT合成に関する研究を行っている.最近では,FT合成触媒の低コスト化のために, エネルギー利用には不利なオレフィン生成が主のFe系FT合成触媒の改良を行い,エネルギー利用に有利なパラフィン生成が主となることを目指し,当該触媒を用いたFT合成のメカニズム解明を行っている.

バイオ燃料製造プロセスの環境性・経済性評価

本プロセスを実用化させるには実験的検討だけでなく,経済性や環境性の評価も行う必要がある.本研究では,プロセス設計を行い,液体燃料収率,投入エネルギー量,CO2排出量,固定費,運転費の観点から,環境性および経済性を評価している.

木質バイオマス熱分解タールおよびCFRP廃棄物を用いたリサイクルアスファルト製造



木質バイオマス熱分解タールを用いたリサイクルアスファルト製造

建築廃木材の年間発生量は約500万トンであり,ガス化発電やBTLに利用することで,リサイクルが促進される.一方,道路舗装は骨材フィラー,新アスファルト,劣化舗装に再生添加剤を加えることで再生舗装材として生まれ変わり,建設リサイクル法によって義務付けられている.再生添加剤には一般的にオイル分が使われているが,例えば,ウッドチップ舗装等への再生添加剤は低い動粘度,アスファルト舗装等への再生添加剤は高い動粘度であることから,建築廃木材ガス化における副生タールでの代用が可能と考えられる.
 しかし,建築廃木材には防腐・防蟻剤として銅,クロム,ヒ素を含有するCCA薬剤での保存処理がなされている.ヒ素は生体に悪影響を及ぼすため,ガス化でのヒ素の挙動を明らかにする必要がある.
 本研究ではガス化初期の熱分解に着目し,CCA防腐剤付着建築廃木材を模擬したヒ素含有木質ペレットの熱分解における温度や昇温速度の違いによる生成タール特性およびヒ素の挙動を明らかにすることを目的としている.今後は実際の使用済みアスファルトに生成タールを混合して,再生添加剤代替の検討を行う予定である

CFRP廃棄物を用いたリサイクルアスファルト製造

軽量,高強度などの利点を持つ炭素繊維複合材料(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)が自動車など様々なものに使用され,年々その使用量は増加している。そこで,CFRP廃材の大量発生に備え,低コスト・省エネなCFRP廃材リサイクルによるリサイクル炭素繊維回収技術の研究開発が行われているが,リサイクル回数の増加とともに性能が劣化すると言われており,劣化したリサイクルCFRPの有効活用が求められている.本研究では,炭化・焼成から成る二段階熱処理方法でのリサイクル回数の炭素繊維特性への影響を調査している.今後は熱可塑性樹脂リサイクルCFRPのリサイクルアスファルトへの利用に関する検討も行う予定である.

木質バイオマス廃棄物熱分解タールおよびCFRP廃棄物を用いたリサイクルアスファルト製造プロセスの環境性・経済性評価

本プロセスを実用化させるには実験的検討だけでなく,経済性や環境性の評価も行う必要がある.本研究では,プロセス設計を行い,収率,投入エネルギー量,CO2排出量,固定費,運転費の観点から,環境性および経済性を評価する.