大気中微粒子の観測 -
カルシウム(Ca)を含む土壌粒子の動向と黄砂
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黄砂
カルシウム(Ca)を含む土壌粒子の動向と黄砂
2002年〜2004年・採取された土壌粒子に含まれるCa・Sの割合の動向
2006年〜2015年 大気浮遊土壌粒子の観測と中国の黄砂発生状況
2006年〜2015年 大気浮遊土壌粒子の観測と中国の黄砂発生状況
Ca存在率(1週間毎と1ヶ月毎)と黄砂観測日数
図1はCaを含む土壌粒子数の1週間毎の割合(黒線),1か月毎の割合(灰色線)です。
季節的な変化があまり明瞭ではありません。
棒グラフ(黒)は、気象庁の黄砂情報で中国で黄砂が確認された1週間毎の日数です。
白色の棒グラフは日本で黄砂が観測された日数、灰色の棒グラフは岐阜で黄砂が観測された日数です。
後方流跡線による解析
中国で黄砂が観測されていても、観測地点の付近を空気塊が通過していないケースもあります。
そこで、アメリカ海洋大気庁(NOAA)で開示されている流跡線解析モデル(HYSPLIT)を用い、中国で黄砂が観測された日にその地点付近を空気塊が通過してきた日数のみを数えました(図2)。
また、気象庁がホームページで開示している実況図の範囲外にも砂漠域は存在しており、その領域で発生した黄砂が飛来している可能性もあります。
そこで、図3の赤線の砂漠域の範囲(35-50°N,70-110°E)を空気塊が通過した日数も数えました。
また、夏季にCa存在率が高くなるケースもあるため、東シナ海域(15〜30°N,105°〜135°E)と太平洋域(15°〜30°N,135°〜170°E)を空気塊が通過している日数も数えました (図3)。
図1. Ca存在率(1週間毎と1ヶ月毎)と黄砂観測日数
図2. 気象庁のwebサイトの黄砂観測地点とHYSPLITによる流跡線解析の例.
黄砂観測地点を同じ日に空気塊が通過した日数のみを数えた.
図3. 本研究で定義した気象庁の黄砂観測地点が表示されている領域より外の砂漠域.
東シナ海域及び太平洋域.
画像 ©2017 Landsat/Copernicus, Data SIO, NOAA, U.S.Navy, NGA, GEBCO, 地図データ ©2017 Google, SK telecom, ZENRIN.
2週間ごとのCa存在率と空気塊が通過した領域
図4はCa存在率の二週間ごとの平均値(黒線)と空気塊が通過した領域ごとの日数を示しています。
棒グラフはそれぞれ、気象庁が開示している範囲において
・中国で黄砂が観測された地点付近を空気塊が通過した日数(茶色)
・気象庁が開示している範囲外の砂漠域を空気塊が通過した日数(黄緑)
・東シナ海域を空気塊が通過した日数(黄色)
・太平洋域を空気塊が通過した日数(ピンク色)
・日本での黄砂観測日数(細い白色)
・岐阜での黄砂観測日(●)
を示しています。
秋と冬に日本で黄砂飛来が報告されていない時にもCa存在率が高くなっているのは、図4の気象庁の黄砂報告実況図の範囲より西側の砂漠域からの空気塊の流入とともに、視程を低下させるほどではない拡散された黄砂が飛来しているためだと考えられます。
また、夏季には東シナ海や太平洋から流入する空気塊が東シナ海付近に漂っていた黄砂粒子や激しい黄砂活動のあと太平洋まで達した黄砂を運んできている可能性が示唆されました。
図4. 2週間ごとのCa存在率(黒線)及び黄砂観測地点付近を通過した日数、砂漠域を通過した日数、 東シナ海域を通過した日数、太平洋域を通過した日数、日本での黄砂観測日数、岐阜での黄砂観測日数.
謝辞 本研究は平成18年11月の遠藤斉治朗記念化学技術振興財団の研究助成と、平成25年から平成28年に至るJSPS科研費25350196の助成を受けたものである。ここに謝意を表します。
参考文献: 香川雅子,横山貴普,澤龍,陶山俊輔,松井一樹,長谷川博一,中村周平,市川陽介,荒井綾香,堀井真奈,上原純,棚瀬敏哉,石垣智,永田晃大,小野木航,今井茜,水野貴仁,篠田佳奈子,壁谷春菜,辻一海,中西亮太,佐藤節子: 2016年度 岐阜大学教育学部研究報告=自然科学=, 第41巻, 2017)