毒と薬
2007年は、捏造問題で始まり、偽装問題で暮れました。
今年、2008年は、どうも毒で
始まりそうです。
アメリカで始まったサブプライムローン問題という毒が、日本にも流れてきて、金融の信用問題に絡んでいろ
んなところに影響が出てきているようです。毒は弱いものでは、すぐに倒れてしまうことはないけれど、じわじわと確実に体力を削いでいきます。そして、体の
中のいろんな部分に影響が出てきます。
そしてさらに、先日から「毒冷凍餃子」問題が発生しています。
中国で作られて日本に輸出された冷凍餃子のパッケージに、殺
虫剤が入っていたとか。有機リン系殺虫剤「メタミドホス」というものらしい。サ
リンなみに危険なものらしい。テレビや新聞では、「絶対に食べないでください」と叫んでいます。今朝、家内と一緒に冷凍庫を探してみたら、新聞に
書いてあった番号も一致した、そのものがありました。未使用でしたが、そのまま、捨てました。こういう冷凍食品は、今や家庭の主婦の必需品でしょうから、
結構大きな影響がありそうです。
これを製造したのが、中国河北省にある、「天洋食品」というところらしい。中国でも、似たような食中毒は前からあったようです。
ちょうど今、河北省のCDCから僕の所に研究に来ているQinさんに 聞
いてみたら、よく知らない会社だという。中国の地元ではそれほど有名ではないようです。輸出専門の会社なら地元の人たちはほとんど食べない食品になるで
しょうから、知らないのも無理はありません。しかし、このような食中毒症状が出たらその会社に立ち入りするのは、まず河北省CDCだそうです。
(ちなみに、河北省の人口は約6800万人、面積は19万平方キロメートルで、その食品会社のある石家荘市(省都)の人口
は、約910万人、面積は1.5万平方キロメートル。つまり、この省都は広さは日本でいちばん大きな県である岩手県と同じくらいで、そこに東京23区と同
じくらいの人口がある、というところですから、地元と言ってもほとんどの人は「天洋食品」など聞いたことがなくても、不思議ではありません。まさに白髪三
千丈の世界。)
このような、事故なのか故意なのかどうかわかりませんが、食品への不安を払しょくしないと、中国政府も大変なことになりますね。
それから、昨年暮れからあったC型肝炎患者救済の報道も、血液製剤という「薬」にウィルスという「毒」が入っていたということで、血液製剤への不安に改
めて光があたっています。それでなくとも、薬はすぐ毒にもなる、というのは当然のことですから(毒薬っていってますから)、製造においても、使用の現場に
おいても、厳しい管理が必要なのは、食品も同じです。
人間の体における「毒」だけではなく、社会における毒、制度における毒、というのもあるのでしょう。
大学は、独法化されましたが、この制度は大学にとって、独じゃなくて毒だったのか、薬だっ
たのか?まだわかりません。
でもじわじわと大学の体力を奪っているように見えます。(学科長もへとへとです・・・)一部の大学には、大量の資金という
「薬」をだいぶ注入して、活性化しているように見えますが、今更ながら、新
聞にこんな記事がでていました。「東京大学の論文の「生産性」が国立大学の中で最低レベルにある」ということが、科学技術政策研究所の調査でわ
かった、というのです。今更ながらなことですが、僕も昔、指摘して いましたよ
うに、他の方もいろんなところで指摘していましたように、日本の大学への「薬の注入の仕方」が変なのです、もともと。
身の回りでも、普段やっていることや、普通の慣れている制度であっても、「弱毒」を含んでいて、いつのまにかうまくいかなくなっている、というようなこ
ともあるような気がします。こういうのは、気が付くのが困難ですが。
(2008.1.31)*57回目の誕生日に、またいやな話ですな。