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Henk van Os & Zn, Rozenkwekerij
   Burgerweg
   2678NV Westland (De Lier)
   Netherlands

 2005年現在のオランダで最も未来を担っている切りバラ生産システムといわれるムービングベンチシステムを導入しているHenk van Os & Zn, Rozenkwekerij社を視察しました。オランダにおける切りバラ生産を象徴する生産システムといえます。経営はRonald van Os氏とその息子2名で行われています。
 総面積は2.3haで,労働者は12名です。このうち9名は採花のための労働者で,3.5時間の3交代制で切花が行われています。品種はToreroの1品種のみです。右の写真をみても判るように,長方形1枚の温室は暖房効率,作業効率の何を取ってもベストの状況に羨ましさを感じます。日本でも7000坪の温室でバラを作ってみたいと思います。
 現在オランダでは収穫・選花作業や養液管理・温度制御の効率化を図るために,1.5〜2.0haで1品種を栽培する事が一般的となりつつあります。しかし,品種の選択を間違えると経営状態が一気に悪くなる可能性をはらんでおり,経営者の資質が問われているともいえます。。
 鉢物生産ではKwekerij W. van Diemen社などでムービングベンチシステムをみてきましたが,養液供給ラインを持つロックウール栽培でムービングベンチシステムを可能とするオランダの技術レベルの素晴らしさに感慨を覚えました。システムの設計施工はHawe社が担当していました。
 栽培温室内には通路1つなく,ビッシリとバラが植わっています。天井には14000luxの補光ランプが並んでおり,ウドンコ病防除のための赤いイオウ薫蒸装置と循環扇が多数並んでいます。当然のことですが,栽培ヤードには人の姿は一人も見えませんでした。

  

   

ベンチが奥から手前に次々とせり出してきて,横に移動するコンベアラインに乗って移動して再び奥に戻っていきます。施設を3.5時間で1周します。
バラがベンチごと移動してくるため採花作業のために人間が歩いて移動する必要がなく,「人間に優しい労働環境」と勝手に理解していました。しかし,現実を見てビックリ。ベンチの移動速度が速く,採花作業労働者はベンチの移動に追いつくためにベンチを小走りで追いかけながら採花作業をしていました。当然のことですが,従業員同士が会話をする余裕はみられませんでした。ムム・・・!!

採花した切りバラは,ハンギングコンベアとでも呼べる装置に花首を引っかけていきます。

   

 ハンギングコンベアは温室から選花場へと繋がっており,選花場では大型自動選花機が稼働しています。選花を担当している労働者は1名で,ハンギングコンベアから全自動選花機へ切りバラを付け替えていきます。
全自動選花機で長さ別に選花されたバラは50本ごとに束ねられて,パッキングされた後,出荷されていきます。

  

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 ムービングシステムは5年前に一度導入された経緯があり,2002年に開催されたFloriade2002でもそのプロトタイプが展示されていました。しかし,システムの不備などもあって一度下火になりましたが,再度システムの再検討が行われて実用化が始まりました。
 オランダでの一般的な採花労働効率は2000〜2500u/人といわれているそうです。Henk van Os & Zn, Rozenkwekerij社では23000uの栽培面積に9人の採花労働者がいることから,採花労働効率は2555u/人となっており,ムービングシステムの導入による採花労働効率の向上効果が低いようにみえます。しかし,平米当たりの採花本数が通路をなくしたことで1.7倍となっていることから,総合的にみて2倍程度の切花効率を上げていることになります。

Floriade 2002で展示されていたプロトタイプのムービングシステム

 このシステムがうまく稼働することが判り次第,採花ロボットの導入を考えているとのことでした。このことは,2002年にDe Ruiter's New Roses International B.V.社を視察した時に,採花された切りバラの運搬ロボットが導入されており驚いた記憶がありましたが,ムービングベンチでの切りバラ生産と採花ロボットの導入はオランダが目指す「高額人件費削減のための高効率生産性の追求」をみる思いがしました。
 ロボットの導入によるメリットとして,(1) 採花をしながら殺虫剤や殺菌剤の消毒が可能,(2) 14000luxでの補光と組み合わせて24時間の採花作業が可能,を挙げていました。
 オランダの課題として,エネルギー問題,品種,労働者を挙げることができます。オランダにおける切りバラ生産コストは,1/3が暖房・補光,1/3が人件費,1/3がその他となっています。暖房・補光は,天然ガス価格の高騰(2000年からの5年間で2倍)や補光光度の強化(3000luxから14000lux)などでコスト上昇の方向性であり,人件費の圧縮が不可欠の状況となっています。
 オランダは,日本と異なりパートタイマーの女性労働者という制度がありません。男女の区別なく労働者は全て正従業員であり,ワークシェアリング制度が徹底されています。当然人件費は高く3500円/時間で,人件費の削減が大きな課題となっています。15年前に訪問した時にはモロッコなどからの安価な外国人労働者が雇用されていましたが,近年ヨーロッパに吹き荒れている外国人労働者排斥運動の影響を受けて,これも不可能となっています。したがって,自動化,省力化が命題となっています。とはいえ,EUの東欧統合によってポーランド人労働者の導入も検討され始めていました。
 エネルギー問題としては,Co-Generation Systemから地下水を活用したHeat pumpへの転換が図られていました。

 14000luxの補光に加えて,CO2施与も生産効率を上げるための大きな課題です。CO2濃度を1500ppmに上げることで収量は50%増加するといわれています。しかし,そのためには天側窓を閉鎖するシステムを導入する必要があります。現状では,夏季には天窓を解放せざるを得ないため800ppmが限度となっているとのことでした。
 もう一つ今回のオランダ訪問で気が付いたことは「ブランド戦略」です。海外,特にケニアからの高品質な切りバラの大量輸出に対抗して,オランダでは生産者が組織化して「ブランド」を構築し始めていました。いずれのブランドも,流通業者を巻き込んで花保ち保証を含めた「高品質のバラを消費者に供給する」ことを目指しています。
バラのブランド化の動き
Holland Rose Partners (http://www.arcornet.net/hrp/
Holland Conbi Roses (http://www.hollandcombiroses.nl/
Florence (http://www.florence.nl/
Rosa Plaza (http://www.rosaplaza.nl/
Dutch United (http://www.dutchunitedgroup.nl/