Lansbergen Gerbera's社はガーベラの切花生産会社です。生産施設は5カ所あり、施設総面積は14.5haとオランダ最大のガーベラ切花生産会社で、年間6000万本の切花生産を行っています。360日休まず稼働したとして毎分350本のガーベラ切花が生産されていることになります。
会社は1953年に1haの野菜温室から出発し、1980年には5haの施設で野菜を生産していましたが、切花に転換したとのことです。
2000年に7haの生産施設を建設し、栽培ベンチが移動する「Moving Flowers System」を導入しました。この生産システムでは、栽培ベンチが温室を移動し、切花収穫は一定の場所で行うことができるため、人件費を40%削減できたとのことです。
「Moving Flowers System」は、Ebb & Flowのプールベンチにプランターのような栽培ベッドを並べ、ムービングベンチシステムでベンチが移動する方式です。栽培施設内には人はほとんど入ることはなく、夏には2週間、冬には6週間栽培施設を移動し、開花段階に達したベンチが切花出荷ヤードに移動してきます。切花出荷ヤードでは、次々と開花した切花が収穫され、切花が終わったベンチはコンプレッサ−を使って枯れた葉を取り除かれ、再度栽培施設内に戻っていきます。
収穫された切花は、ベルトコンベアーでパッキングヤードに運ばれ、長さを調整した後、切花保持剤の入ったバケットに入れられて冷蔵庫に搬入され、出荷されていきます。
切花出荷だけではなく、シダ類の葉とアレンジして花束も作られていました。
「Moving Flowers System」施設の隣にある従来型の固定ベンチによるガーベラ生産施設を見学しました。ちょうど品種を更新しているところで、定植前の処理が行われていました。株を処分した栽培ベンチは高圧スチームを使って殺菌されています。
下の写真左は、収穫した切花を運搬するハンガーです。紫外線ランプを設置した黄色のトラップ粘着テープが施設内の各所に設置されており、スリップスなどの発生予察が定期的に行われており、発生が見られた場合にはフォッグ撒布機で殺虫剤が散布されるシステムです。
収穫の際に発生する枯れ葉や商品化できない切花、あるいは出荷調整で出てくる茎の切り屑などは、地下に設置された移動水路(水路のなかをベルトコンベアーが動いている)を通じて残査処理施設に運ばれ、コンポストとして再利用されていました。ここでもオランダ農業の環境対策の先進性が感じられました。
案内していただいた担当者は急がしそうで、従業員の方々も精神的な余裕が無く働いておられたような気がしました。オランダでもガーベラ切花の価格は低く、これだけの設備投資を行った場合にはかなりの生産性を上げないと経営的に難しいのではないかと感じました。労働者の多くはオランダ人ではなく、人件費の節約が行われているようでした。
ただ、生産性だけで勝負した場合には、気候的な生産適地で人件費の安いコロンビアやケニアなどの熱帯高地に勝てないのではないかと感じた次第です。オランダのバラ戦略(「Cultra」参照)とは違う経営戦略をとっていると感じました。10年後、いや5年後のLansbergen Gerbera's社の姿が気になりました。