植物分子生理学研究室
Lab for Plant Molecular Physiology, Fac Appl Biol Sci, Gifu University
和牛風味
その昔、1997年頃のことであるが、池袋付近の激安スーパーで「和牛風味」と書かれた牛肉のパックを発見し、怖い思いをしたことがあった。
怖かったのはその和牛風味なる牛肉の正体が全く見当がつかなかったためであり、パックに入っている謎の牛肉だけでなく、予想もつかないモノを入手する経路を持ちかつ当然のように販売している激安スーパー、ひいてはそのような店舗が繁盛する池袋という街の奥行きの深さにも若干の恐怖を感じたのであった。
「和牛風味」という牛肉があるのなら、そのうち「牛肉味」と書かれた肉1*が出現するのではないか、と想像してしまったことでさらに恐怖を煽ってしまった。
和牛風味の謎は私の中で十数年間消化不良のまま残っていたが、数年前にようやく解決した。外国産牛肉に和牛の脂肪を注入し風味をつける、という技があるのである。
今となっては「甘さ増量」と書かれたメロン2*や、「うなぎ風蒲焼」と書かれたうなぎ風の蒲焼3*、「ネギトロ風味」と書かれたネギトロ風の巻き寿司4*にもし出会ったとしても、適切な推測ができるようになった。
注釈
1* 謎肉である。
2* 砂糖水を注射器で注入し糖度を上げる。メキシコでそのような技が稼働していると聞いたことがある。「高糖度」という表現になる場合もある。「高糖度メロン」である。こういう名称でアメリカへ出荷しているのだとか。
3*うなぎ風のものを蒲焼にした、という意味。「うなぎ蒲焼風」であるならば、うなぎを蒲焼風に調理したものか、あるいは「うなぎ蒲焼」のようなもの、のどちらかの意味になる。
4* ネギトロの風味がするネギトロのような外観の巻き寿司。巻き寿司であることは保証されている。ちなみに最近では「トロ」という表現では魚種は制限されていないことになっている。魚ではない可能性もある、豚トロとか。
5* ”Method Champagne”と書かれているシャンパン風の発泡ワインがあるが(よくある、安いのはたいがいこれ)、「シャンパンと同じ方法で作りました」という意味であり、シャンパンではないが「似てますよ」と言っているのである。
2017.9. 13
Highly Cited Researchers of Gifu University