はじめに(1)

 

研究って何?


 植物生理学の知識が卒業後何の役に立つのか?というなかなかもっともな質問がありますが、植物バイオ系の研究・開発職につくのでなければ直接は役に立たないでしょう注1。しかし研究活動に参加することで、錯綜した情報環境の中で正しい情報を選抜し成功する戦略を立てるという技術が(ある程度)身に付きます。大学というのはそういう経験を積める場所であると私は思っています。研究経験は焼き直せばいろいろな場面で使えます。

 研究というのは誰も知らない新しい真理を発見することが目的です。それは今ある知識の上に新しい知識を積み上げることです。そのためには既存の知識を論理的な体系として持つことが必ず要求されます。

 知識を論理的な体系として持っていないとどうなるのでしょう?私のイメージではトリビア的な知識断片をサンタさんが持つような大きな袋にごっちゃにして入れている、というものです。中に何が入っているのか概観することは難しいですし、よくよく見てみると、「ダイエットには摂取するカロリーを制限するべき」というのと「カロリー計算して食事制限してもダイエットは出来ない」という矛盾するようなのが両方入っていたりします。テキトーにいろんなものを放り込むとこんなことになってしまいます。知識が体系になっていないので、これを使って真偽の判断をするのは難しいでしょう。

 研究活動というのはいろんな論文を読んで知識を整理し、その上で仮説を立て検証する、という一連の流れで行います。検証は実験によって行いますが、自然科学ですから多くの場合白黒はっきりします。間違った仮説は実験すればすぐにわかって棄却されてしまうというところが自然科学研究の醍醐味の一つです。自分の知識体系がどれくらいしっかりしているかが問われます。

 私の学生への希望は自然科学を修めた学生として知識を体系化する能力や未知の真理を推測(展望?)する能力を身に付けて大学を卒業して欲しい、ということです。私の役割はそのための「手助け」をすることです。おおざっぱに言うとそういうことを望んでいます。

 研究室では「研究活動」という抽象的なものを体験するのではなくて、植物の強光ストレス応答のしくみを調べる研究や、ゲノム配列から隠れた情報を取り出す技術についての研究を実践することが「研究経験を積む」ということになります。研究の各論では個々の細かな知識の取り扱いで勝負が決まることも多いです。また一方で基礎的な研究能力が十分備わっているなら、研究のクオリティーを高めるのは美意識や信仰心であるとする説もあります。

 

注1植物を理解する上で必須の知識を供給している分野ですから植物に関わる職業であれば末永く役に立つことは間違いありませんが、専門学校のように即戦力としてすぐに使える技術が習得できるかというとそれは別問題です。例えばどこかのビール会社に就職してビールやジュースの糖度を測るように指示を受けたとすると、やったことがないので方法は知らない、でも、一人で文献を調べて実際に測定することはできるし糖度が上下する要因も推測できる、というイメージでしょうか。



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