研究内容紹介

研究内容一覧:

文部科学省都市エリア産学官連携促進事業(発展型)−岐阜県南部エリア
モノづくりとITを活用した高度医療機器の開発
敗血症モニタの開発

岐阜大学では,岐阜県が進める都市エリア産学官連携促進事業(発展型)−岐阜県南部エリア(平成21年6月〜平成24年3月末)に参加しています.本事業のテーマの一つ「敗血症モニタの開発」では,医学部付属病院高次救命治療センター,工学部応用情報学科横田研究室,医療機器メーカーがチームを組み,敗血症の発症を心電図など常時計測可能な手段によってモニタする装置の開発を目指しています.

ICUでは,せっかく命を救えた患者さんが,その後,敗血症などの感染症を発症し亡くなることがあります.敗血症の診断は発症を疑ってから血液検査により行いますが,発見が遅れがちになることが社会的問題となっており,早期発見のための常時モニタ可能な装置が必要とされています.

敗血症発症に伴って出現する生体情報(心電図,心拍数,SpO2,体温,血圧,呼吸数)などの特徴的パターンを特定することが目的です.そのために,生体情報モニタを用いて患者さんの生体データを収集し分析する,既存の生体情報モニタに技術的改良を加える,医師の主観的観測結果を知識データベース化する,生体データを知識データを関連づける,特定的パターンを特定し,抽出する,などの医用工学に関する技術的課題に取り組みます.


                                  システム構成と流れ

    2009年6月12日 岐阜県県民文化ホール未来会館ハイビジョンホールにて キックオフ・フォーラム「医療・福祉機器分野への発展を目指して」開催



ニホンザルの鳴き声検出・音源定位に関する研究開発

ニホンザルによる農作物被害が社会的に問題となっている.最も深刻なのは,ニホンザルが群れで襲来した場合である(他にはぐれオス単独による襲来もあるが被害規模は相対的に小さい).関市上之保の舟山森林生産加工販売協同組合,河合組合長らと過去4年間の共同研究により,ニホンザルが群れで襲来する際には,特有の鳴き声を発し合うことを明らかにし,そのパターンの特定,及び検出に成功している.今後は,屋外に設置した複数のマイクロフォンにより24時間,音を計測して分析することにより,ニホンザルの鳴き声を検出し,音源つまりニホンザルの位置を特定するシステムの実用化を試みる.
ニホンザルの鳴き声検出・音源定位システムの開発

研究内容が新聞記事などに掲載されました
毎日新聞2008年5月18日

    日本農業新聞2009年1月14日


人の拍子知覚方法に関する研究

音楽における拍子は、心理的に強く感じる拍(強拍)の周期を表し、近世の音楽では必須のものとされています。実際、拍子は、一部の現代音楽などを除いて、ほとんどの楽曲に存在します。心理的に強く感じる拍は、実際の音の強さではなく、音の長さにより作られることがあります。そのため、3拍子と4拍子であれば、音階などを持たない音の長短パターンのみからでも、人は高い割合で拍子を知覚することができます。こうした拍子を推定することは、自動採譜などにおいて必要です。また、聴音など音楽教育に役立つことが期待されます。
拍子と推定した評価値

ハシボソカラスの鳴き声のスペクトログラム解析,および検知に関する研究

近年,カラスによる農作物や家畜への被害が問題となっており,その対策が急がれている.こうしたカラスの鳴き声を検知できれば,カラスの生態・行動調査,あるいは直接的に追い払うことなどに役立てられる.本研究では,様々な環境音の中からハシボソガラスの鳴き声だけを検知する手法を提案した.

ハシボソガラスの鳴き声の場合,人の声とは異なり高調波構造を持たずにエネルギーが広い帯域に分散しているため,特に背景雑音の存在に弱い.そこで鳴き声のテンプレートの作成に際し,短区間ARモデルにより求められたAR係数を時間方向に平滑化補間することにより背景雑音の存在に強いスペクトログラム推定法を導入した.録音された多数のカラスの鳴き声を,DPマッチングにより得られるノルムを距離の尺度として,群間平均法により階層的クラスタリングする.これにより得られる鳴き方のパターンに依存したクラス毎に,時間軸を伸縮してクラス内平均することにより鳴き声のテンプレートを作成した.

ハシボソカラスの鳴き声の検出性能を最大にするテンプレート数は,おおよそ5個であることを示した.このことは,ハシボソガラスは,おおよそ5種類の鳴き方をすることを示唆している.提案法における検出性能を評価した結果,検出率95%,90%を達成する際の誤検出率は約1.66%,0.90%となることが示された.
ハシボソガラスの鳴き声検出システム

2チャンネルマイクロフォンと反射板を利用した音源定位に関する研究

人や多くの生物は音の到来方位を推定することができる。このとき,生物は両耳間の音源到達時間差や音圧差の他に耳介による音の反射を利用することで,より広範囲の音源方向の推定を行うことができると考えられている。

本研究では音源方位によって異なる周波数特性(下図左)を示す反射板と2個のマイクロフォンからなるマイクロフォンアレーを用いて,広範囲の音源方位定位を目的としている。
音源方位と振幅スペクトル比の変化 反射板

パワースペクトル推定を用いた背景雑音の推定

目的音を求める際に,背景雑音を推定することにより,より正確に目的音を求めることが可能となる。本研究では,目的音の存在しない区間,つまり背景雑音のみのパワースペクトルを推定する新たな手法を開発している.

左図は,実環境においてのスペクトログラムであり,右図は提案法により背景雑音を除去した結果を表している.
スペクトログラム(背景雑音除去前) スペクトログラム(提案法により背景雑音を除去)

インピーダンス脈波を利用した血管内皮機能測定装置の研究開発

文部科学省知的クラスタ創成事業(岐阜・大垣地域ロボティックス先端医療クラスター)の支援(平成17年〜20年)でスタートした,岐阜大学医学系研究科との共同研究です.

動脈硬化の初期段階に血管内皮細胞の機能異常が強く関係し,こうした血管内皮機能は阻血後反応性充血の程度に現れることが知られている.阻血後反応性充血は,一般的には超音波エコー画像を用いて阻血前後の血管径の比(%FMD)を測定することにより行われるが,検査に熟練を要し,計測誤差が大きく,超音波エコー装置が必要であることから簡便さに欠ける問題がある.

本研究では,上腕部のインピーダンスによる脈波計測により阻血後反応性充血を調べる手法を試みている.健常者と糖尿病患者のインピーダンス脈波を計測し,脈波波形の経時変化を解析する.
血管内皮機能測定装置 計測されたインピーダンス脈波の一例 一心拍波形の経時変化(上:健常者,下:糖尿病患者)

牛の採食音と反芻音の自動判別と回数カウント

本研究は,応用生物科学部,動物生産栄養学研究室との共同研究です.

放牧牛の栄養管理のためには,エサの摂取量の把握が不可欠です.本研究では,牛の角などに振動センサを取り付け,牛が飼料を食べる採食音と胃から内容物を戻して咀嚼する反芻音を区別して検出し,カウントすることを目的とする.
ある牛の約2時間30分間における採食音(青色:4113回)と反芻音(赤色:1122回)のカウント結果

物理的変形可能条件を満たす超音波エコー画像の動き推定

超音波エコー画像は,X線CTやMRIに比べ時間分解能が高いという特徴がある.そのため,超音波エコー画像を用いて生体組織の動きを追跡することがある.超音波エコー画像において,動きの推定の対象となる生体組織は,おおよそ粘弾性体であるため,複雑な変形をする.

本研究では,超音波エコー画像において,生体組織の動きを物理的変形可能条件を満たす条件下で,推定することを目的とする.
超音波エコー画像において,頸動脈(縦断面)の動きを推定した結果

超解像処理におけるシフト量推定精度の向上

超解像処理とは,デジタルカメラなどから得られる一枚または複数枚の連続した画像フレームを利用することにより,カメラなどの撮像素子によって決まる解像度の限界を超える,解像度を実現するものです.

超解像処理において,画像間のシフト量(距離)の推定は重要なものであり,本研究では,雑音影響下においても精度よくシフト量を推定することを目標としています.
超解像処理の流れ図