■御挨拶

 2004年6月に岐阜大学地域科学部に着任してきました.大学院修了後,6年ほどポスドク(博士研究員)としてメシを食ってきましたが,ずっと魚類を対象に生態学や生物地理学に関する研究をしています.

 なぜ,そういった研究をしてきたのか? それは,やはり物心ついたときから身の回りのいきものが好きで,その姿・形・さまざまな生態に心惹かれてきたからだとしか言いようがありません.「社会生物学」という著書(および分野)で有名なE. O. Wilson氏は,そうした多様な生き物の存在を好むという人間の本能的なものがあると考え,それゆえに生物多様性を維持していくことが社会的にも望まれていると論じているようです.

 多くのヒトが花や樹木の姿を美しいと思い,動物番組がファミリー向けに常に人気を博すように,潜在的にはほとんどのヒトがさまざまな動植物の存在を良いことと感じ,そうした動植物の持つ性質や進化の歴史についての知識に対して,純粋に「おもしろい」と感じるものと思います.

 そうした,自然についての知識を集めて体系化する研究分野をナチュラルヒストリーと呼びますが,この研究室では,そのようなナチュラルヒストリーに関する研究をおこなっていきたいと考えています.

 しかし,現代社会ではさまざまな自然の動植物が絶滅の危機に瀕している現状があります.野生生物についての研究をおこなっていると,普通に社会生活をする以上に,さまざまな自然の姿を見て接する機会がありますが,そのような立場からは恐ろしいほどの危機感を感じずにはいられないときがあります.そのため,生物学者が多様な生物の保全に携わる機会は増しつつあるし,ぼく自身も積極的にそうした生物多様性の保全の問題についても研究し,関わっていきたいと思っています.

(2004.8.17記・2005.4.20改訂・2007.4.2再改訂)