太極拳



( 2014.10〜2015.1 )


全学共通教育―スポーツ・健康科学―「太極拳」:火曜日の3時限 ;第2体育館
担当教員:
    非常勤講師;清水宏晏  岐阜大学名誉教授(工学部)
                                    (日本武術太極拳連盟 公認指導員 公認審判員)
    補助指導員;清水宏子(元太極拳非常勤講師  日本武術太極拳連盟 公認指導員)


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「概況」; 「簡化24式太極拳と目標」「練功十八法」「立ち姿」

  「太極拳」開講以来11年目を迎えました。これまでの10年間の経験を踏まえて、今年度も太極拳の国際的スタンダードである「簡化24式太極拳」の基本を徹底することを最大の目的にし、太極拳の真髄を学生諸君に体験して貰うことに努力しました。
  履修の26名の学生諸君をそれぞれA, B, Cの3グループに分け、講師の清水宏晏と補助指導員清水宏子の二人が「太極拳」授業の指導・習熟に当りました。これは、「24式太極拳」の初期導入には、予想以上の手が掛かるからです。
  今年度は、実質13回の(各90分)実技授業を実施し、最終回の学生表演では、各グループが太極拳の格好と雰囲気を漂わせ、相当満足できる演武を見せてくれました。当初目的とした成果は十分得られたものと信じています。
 昨年度から準備運動として「練功十八法」の前段を取り入れました。これは上海のラジオ体操とも呼ばれ、音楽にあわせて行う比較的簡単な動作なので、若人ばかりでなく中高年の方にも手軽におこなえる健康体操として人気があります。受講生諸君は、自然体で毎回楽しそうに、そして大変上手にやってくれました。来年度も継続します。

 今年度の授業から特に強調したことが一点あります。日常生活での「立ち姿」を意識すること。太極拳を習熟することにより得られることはいろいろありますが、その一つに姿勢があります、すなわち、肩の力を抜き、さらに目線を水平に保ち、頭の天辺を意識すること。これにより、緊張感のない、ゆったりとした立ち姿が現れます。学生諸君もだいぶこの事を意識するのに慣れ、日常生活での姿勢の重要性を学んでくれました。

 

「受講者の学年別、学部別の分布数等」

総数26名(男;9名、女;17名)
             1年生;25名 2年生;1名。
             教育学部;3名、地域科学部;7名、応用生物科学部;7名、工学部;9名。


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最終日集合写真1


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最終日集合写真2

 

「簡化24式太極拳への取組み;目標と結果」

  「簡化24式太極拳」は、58年余前の1956年に太極拳の普及のために中国で制定され、24組の動作からなる標準的な太極拳として世界で広く愛好されている。それに要する時間は、通常6−7分くらいで、一見短時間と思える24式太極拳であるが、これをマスターするのは、なかなか難しい。それは、ただ24組の動作の順番(套路;とうろ)を覚えるだけでなく、太極拳の本質である「肩を落とし胸を張らず、体をゆるめる」「体の中心軸を垂直に持続して、重心移動を行う」「体をねじらない」「顔、手足、胸腰部の動きを協調一致させる」「動作のスピードを均一に」など多くの要求を満たさねば、自然で美しい太極拳はできず、ぎこちない太極拳になってしまう。したがって、授業の最初には、毎回ストレッチ運動と「練功十八法」で体を柔らかくし、太極拳の基本である手法(手の動き;例えば、体の前でボールをつくる(抱掌))や歩法(歩き方;足の出し方や重心移動の方法)の習得に時間をかけた。そして授業の前半部分では総合練習により、平均すれば1回の授業で約1.4組の新しい動作(套路)を覚え、さらに後半部分では学生諸君の個々の動きを熟視し、各人に合った習得の徹底を試みた。
  学生諸君は、当初、何をやっているのか判らない様な反応を示し、太極拳は予想以上にたいへんで、筋肉痛を訴える学生もいたようであった。しかし、回を重ねる度に、だんだんと太極拳らしい「ゆったりとした動作」を習得し、彼らの太極拳への順応性とイメージを体で表わす能力に驚いた。
  最終回のグループ表演では、A, B, C各グループが、KOKIAさんの「ゼロからの始まり」の音楽に合わせて、「簡化24式太極拳」をゆったりと演武してくれました。見ていた他のグループと指導者は、それぞれの表演に大きな拍手をおくりました。冬季は厳しい寒さの第2体育館での練習であったが、当初の基本に重点を置いた「太極拳」習得の目的を達成してくれた学生諸君を見ながら、大きな喜びと充実感を覚えました。
 授業の最終日には、太極拳の長年の友である樋口幸子先生の応援を得ました。そして、最後に樋口、清水、宏子の3人で「32式太極剣」を、学生の皆さんに披露しました。学生諸君の中には、やってみたいと「剣」を触りに来る人もいました。


 

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全体練習「野馬分髪;イエマフェンゾン」


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最終日の「簡化24式太極拳」の最終表演のための全体練習;倒巻肱 タオジェンゴン 

 

「授業を終えて;感想そしてお礼」

  太極拳を短期間に初心者に教えることは、何度も経験していても容易ではありません。それは、心(頭で考えること)と体(イメージを動作で表わす)の協調一致と融合には、長い時間を必要とするからです。今年度は、受講者のほとんどが1年生で、フレッシュな若者達は、熱心に「太極拳」に挑戦してくれました。しかし、初めの頃はなんとなく静かで盛り上がらず、私達はその雰囲気を心配していました。しかし、回を重ねる内に、だんだんと太極拳に慣れその本質を意識し、また自分の動作のチェックをしたり、やる気が十分見えてきました。そして、最終的には、最終日のグループ表演に向けて、みんなの気持がまとまりました。
  今年度の授業でも「簡化24式太極拳」を全てマスターさせることをあきらめ、「太極拳」の基本をじっくり習得してもらうことに主眼を置きました。その結果、24組の内の17番目、右下勢独立(ヨオ・シアシドウリ)までで終わりました。それは期間的に十分な余裕がなく、また限られた時間内で行わなければならないためです。そして、学生諸君の習熟度を最も大切に考えた結果です。大切なことは、「太極拳」の真髄を体験してもらうことである、と信じています。
  最後に、この「太極拳」の授業を実施することに協力いただいた教育学部保健体育の主任である熊谷佳代先生をはじめ、スポーツ/健康科学のスタッフの皆様にお礼を申し上げます。今年度も授業の最初、中間、そして最終日に応援に駆け付けていただいた太極拳の長年の友、樋口幸子先生には感謝!感謝!です。また、授業の最初の模範表演に集まっていただいた「岐阜太極拳すこやか」グループの皆さんにも心からのお礼を申し上げたい。


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写真;左より、清水宏子、留学生 耿雲婷(コウウンテイ)、清水宏晏



終了後に寄せられた受講生の感想文の中から,彼らの承諾を得て,7編を載せました。


  「太極拳と弓道」    工学部 化学・生命工学科 2年 土屋有希

 

私の太極拳との出会いは、テレビで太極拳の世界大会を見たことです。まるで踊っているかのような、武術でありながら美しく、体に芯の通った動きに感動したのを覚えています。私は2年生ですが、「大学で太極拳が学べる!!」と知って迷わず履修を決めました。太極拳の授業では、初めて聞く中国式用語を学んだり、普段やらない動きをしたりと毎回多くの刺激がありました。初めはうまく動けない型もありましたが、先生方が丁寧に教えてくださったので練習を重ねるごとに動けるようになりました。

私は高校の時から弓道を続けていますが、「太極拳」と「弓道」には多くの共通点があることに気付きました。

1つ目は、太極拳も弓道も「体幹」が非常に重要だということです。弓を引いて的にあてるためには、しっかりとした体の土台ができている必要があります。太極拳も、何にも動じないしっかりとした土台が備わっていなければ相手と闘うことができません。基本ですが、綺麗な「弓歩」の形をつくるのは難しかったです。また、弓歩という言葉に弓道と太極拳のつながりのようなものを感じました。

2つ目は「呼吸」です。弓道では「息合い」と言いますが、心を落ち着かせ、丹田に力をこめるために呼吸が大切とされています。鋭く良い射を行うためには、一連の動作の中で「吸って、吐く」を上手く行うことが必要になります。授業で先生が「吸って、吐いて」と言われたのを聞いて、太極拳でも呼吸が大切だということが分かりました。呼吸について、もう少し詳しく知ることができたら良かったなあと思いました。

3つ目は「虎口(フーコー)」という言葉です。太極拳では虎口を丸く開く「生きた手」が重要だと学びました。弓道でも虎口という言葉を使います。弓を持つ手の虎口の皮を巻き込み、弓を押します。こうすることで正しく弓を握ることができて、良い射につながります。太極拳と弓道では虎口の使い方は異なりますが、同じ場所を意識して使っているところが興味深かったです。「生きた手」は意識しないとすぐに崩れてしまい、難しかった点の一つでもありました。

 太極拳と弓道は同じ武術ですが、こんなにも共通した部分があることが分かって、とても勉強になりました。

私はよく、何かをする時に肩に力が入ってしまうことが多いのですが、やはり太極拳でも力が入ってしまうことが多々ありました。また、重心の移動が難しかったです。いかに自分の身体の動きをコントロールするのが難しいかを再認識させられた瞬間でもありました。ゆっくりとした動作が多い太極拳ですが、決めるところは決める、体の軸を保つということが非常に大切でした。型をきめるのは難しかったけど、先生のお手本の形に近づけた時は達成感と喜びがありました。

そして、最後に見た先生方による剣を使った「32式太極剣」の演武に感動しました。本当に相手と闘っているような迫力があって、とてもかっこよかったです。また、太極拳の大会のルールについても興味があるので、調べてみたいです。ご指導いただき、ありがとうございました。


  「太極拳の授業、良かった」   応用生物科学部 1年 耿 雲婷 (コウ ウンテイ)

 

私は中国の出身だから、授業の履修案内に太極拳という科目を見たとき「あ、中国の太極拳だ」と自然に親しみを感じました。そのあと、清水先生の太極拳のホームページを開いて、授業を受けたみんなのとても楽しんでいる様子を見て、授業を受けるのが決まった。

 中国でテレビや公園など、太極拳をよくみかけるけれども、特に公園でする人はほとんどお年寄りなので、それは若者の領域ではないと思って、お父さんに誘われても自分は一回もしたこともなかった。しかし、この授業を通じて、そのイメージが変わった。

 はじめの授業で先生たちが太極拳の模範を示してくれた。太極拳を見るのは初めてではないけれど、何も考えずに真面目にみるのは初めてである。美しい音楽を聴きながら、先生たちのゆるくてもだるくない姿を見て、なぜかわからないけれど、なんか不思議に自分の心が落ち着いた。授業で実際にやってみると、心と体をリラックスさせる力を感じた。

 太極拳のゆるい動きを見るだけでは簡単だと思うけれど、ほんとに自分がするときその難しさがわかった。たとえば、流れの順番、足の動き方;いつが虚步、いつが実步なのか、腕の高さや足と腕の協調など様々ある。特に音楽に合わせるとき、そのゆるさこそ一番難しいところである。なぜかというと、太極拳の極意は「以静制動」「行雲流水」すなわち、静で動きを制する、雲と流水のように流暢に動くからである。最初は、体の動きが硬くて、流水のような動きが全く見えない。が、回数を重ね、流れと動きに慣れてくると、太極拳をするとき体がリラックスしているのを実感する。

 姿勢はよく違っていて(先生が怒るかも知れないと思うとき、先生は全く怒っていなくて)そんなとき、先生はいつも親切に正してくれ、ほんとに心から感謝した。また、授業の前後、先生たちはいつも親切に声をかけてくれて、寒いときにやさしく「風邪をひかないように気を付けて帰ってください」と関心を寄せてくれ、家族がそばにいない一人暮らしの私にとってとても暖かかった。

 この授業を通じて、太極拳に対して、新しい認識ができて、太極拳が好きになった。うちのお父さんも太極拳をしているので、この授業が終わっても、自分で続けていき、休みで国に帰るとき、お父さんと一緒にやりたいと思う。

 最後に、先生方、本当にありがとございました。この授業を受けてほんとうによかったです。



  「太極拳の授業を受けて」   教育学部 理科教育講座 1年 新井千春

私は好奇心から太極拳の授業を選択し「太極拳はただゆっくりと体を動かすだけだから簡単だろう…」と考えていました。しかし,実際に行ってみると,太極拳はただゆっくりと体を動かしているだけではないことを知り,授業の初めの方は難しく感じられました。授業では24式太極拳を練習したのですが,体の動き方を覚えるのは勿論のこと,どの動きのときに体のどの部分に体重をかけて体のどの部分の力を抜くのかを常に頭の中で考えて動くところが難しく感じられました。また,常に良い姿勢と肩の力を抜くことを意識しながら動くところも難しかったです。特に肩の力を抜くことは意識していないとなかなかできず,新しい動きを練習する際はいつも力が入りすぎることもありました。

しかし,一度動き方の基本的な様式を覚えると,新しく教わる動き方もすぐに理解して実行することができるので,基本的な動き方の様式を覚えてできるようになった後は太極拳をおもしろく感じるようになりました。肩の力を抜くことについては何回も意識し直すことで徐々に自然にできるようになりました。

さらに,KOKIAさんの「ゼロからの始まり」の音楽に合わせて,それまで練習した24式太極拳の動きをつなげていく段階に入ると、さらに太極拳をおもしろく感じるようになり,できなかったところを次回の授業までにできるようにしておきたいと思えるまでになりました。特に「白鶴亮翅」や「手揮琵琶」、そして「雲手」の部分の動き方がよく理解できなかったためインターネットのサイトを利用して24式太極拳の動画を参考にして覚えたりもしました。このことから,太極拳は音楽に合わせて行うことによって、さらに楽しくなると思いました。

 太極拳を通して学んだことは姿勢の大切さです。人の印象は立ち姿でかなり変わることが分かりました、私はよく猫背になることが多いのでこの授業を通して日頃から自分の姿勢を意識するようになりました。また,太極拳を中国の体操かインドのヨガのようなものだと思っていましたが,太極拳は武術であることを知りました。さらに,このことから太極拳は本当に武術として使うことが可能かどうかも調べてみたいと考えています。

また,太極拳の授業を行った後はいつも身体が快く精神的にすがすがしい気分になれたのでこの授業を選択してよかったと思います。日頃運動を全くしない私にとって太極拳は良い運動でした。太極拳は健康に良く,授業を受けて基本的なことを学んだので,どこかで続けられる機会があったら続けていきたいと思っています。

 今後の授業への提言としては,もう少し早い段階で音楽を取り入れた練習を行うと生徒の太極拳へのやる気が早い段階で上がるのではないかと思いました。私は音楽を取り入れた練習によって太極拳が大変楽しくなり,もっと上手にできるようになりたいと思いました。



  「太極拳」          地域科学部 1年 斎藤惇一

 

僕は最初、太極拳の履修を希望した時は、太極拳に対して「少林サッカー」や「カンフー・ハッスル」という映画で見た記憶ぐらいしか持っていませんでした。だから太極拳の講義を受ける前は(何かゆっくり動くよく分からない中国の武術)というイメージを持っていました。実際に講義を受けてみると、確かに見た目はゆっくりとしか動いていないけど、1つ1つの動作のつなぎ目を自然に流れるように行うのはとても大変で、むしろゆっくり動く方が辛いのではないかと感じるようになりました。

 僕は高校まで剣道をやっていて、大学でも居合道同好会に入りそれなりに体力はあるつもりだったのですが、いざやってみると意外と辛くて、終わった後に足とか手が痛くなる時もありました。特に、太極拳は動きがほとんど止まらず一定のリズムで動き続けているので難しかったです。目線のことや肩の力を抜くことは居合道でも言われていることだったので、やっぱり太極拳も相手がいることを想定しての動きなのだな、ということを感じました。ただ1つ、講義で習った動きの中でどうしても相手をどうしたいのかわからない動きがありました。それは7,8番目の左、右「攬雀尾」という動きです。この動きの中で、相手の手を引き込み、その後相手を押し、もう一度相手を引き込んで押し返す、という動きがあります。この動きは引いて押して、を2回繰り返しているので、相手が複数いるにしてもおかしいなと感じ、どういう動きが元になっているのか疑問に思いました。ほかの動きはある程度想像できたのでなるほど、と思いながら動くことが出来たように感じました。また、ほとんどの動きは機先を制し相手を倒す動きではなく、向かってくる相手をさばいて受け流す動きのように感じ、太極拳は相手を倒す、というよりむしろ自分の身を守る護身術のようなものなのかな、という感じがしました。

 最後の集団演武では、同じ動きをしているはずなのに皆違う動きのように見えて不思議でした。その中で先生方の動きはとてもかっこよく見えました。先生方と自分の動きのどこが違うのか考えてみると、弓歩等の基本的な定式が違うことに気が付きました。弓歩や虚歩等下半身がしっかりしているとかっこよく見えることに気が付き、どんな動きにも見た目にも下半身が重要なのだなと感じました。

 太極拳を習い始めてから、居合道でも少しずつ脱力した自然な動きが出来るようになってきたように感じます。太極拳を習うことで自分の体の動かし方が少しずつ分かってきたように感じました。15回の講義を受けただけではとても太極拳を出来るようになった、とは言えないのでしょうが、せっかく少しだけでも習うことが出来たのだから、機会があったら今回習うことが出来なかった動きや、最後に先生に見せていただいた「32式太極剣」も習うことが出来たらいいなと思いました。

半年間という短い時間で、とても多くの大切なことを、学ぶことが出来たように感じました。短い期間でしたがとても楽しく太極拳を学べました。本当にありがとうございました。



  「太極拳と体重移動」      地域科学部 1年 武藤克典

 太極拳の授業を取り、まず感じたことは「想像していたのと違った」ということでした。太極拳といえば映画でよく耳にするもので武術の一つだと考えており、まさか大学の授業で体験できるとは、とシラバスの説明もよく読まずに履修申請しました。最初の授業で先生方のお手本をひと通り見ての第一印象は、爽快感や格好良さは特になく、ゆっくりで簡単そうだからすぐに出来るようになるだろう、でした。また、てっきり速い動きで敵を倒すものばかりと思っていたせいで、実際のゆっくりな動きにがっかりしたのが本音でした。しかし、これらの考えは間違っていたと今は思えます。

 太極拳をやり始めてすぐに、太極拳は簡単だという間違いに気づきました。一番大変だったことはゆっくりを維持し続けることです。その原因は、動きの数が多く、流れるような動きなので今の動作と次の動作の2つを常に考えていた結果、完全に落ち着いて動けなかったことにあると思います。ただし、太極拳の動き自体には、1つ1つに意味があるので、それを考えると覚えるのは簡単でした。やはり練習時間が足りなかったんだと思います。ゆっくりした動きを完成させるために、そして24式全ての動きをやり切るためにもっと時間が欲しかったです。因みに、私の苦手だった動きは、「単鞭」から「雲手」への繋ぎ目でした。どうしても滑らかに繋げられず、先生の動きを見るたびにあんな風にやりたいと思っていました。

 また、太極拳の動きを1つずつできるようになるたびに達成感を味わえて楽しかったです。それに、ゆっくりな動きのなかに格好良さを感じることが出来るようになっていきました。最初はぎこちなく、片足に乗ってから体重移動に移ることが上手にできず、見ていて気持ちのいいものではなかったと思います。それが段々とコツを掴んだり、先生が分かりやすく、時にはすぐそばで丁寧に教えて頂いたりしたお陰で上手になっていくのが嬉しかったです。動きを上手にきめた自分の姿を鏡で見ると、自分ながらちょっと格好良いんじゃないかという気持ちになったりもしました。私は「左右倒巻肱」が一番好きな動きでした。太極拳唯一の後退動作で体重を前に残し続ける難しさがありましたが、それができた時は最後の締めへと最高に気持ちよくきめることができ、音楽も相まって本当に楽しかったです。正直に言って、この一連の動作を楽しむことが太極拳の授業に来ていた理由になっていたのかもしれません。

 太極拳をやって普段と変わったことというと、立ち方が綺麗になったこと、すなわち両足で立っている感覚をはっきり意識できるようになったことだと思います。 前足と後ろ足の体重の比率を6:4にしたり、片足だけにのったり体重移動したりし、両足にかかる体重をよく感じないといけないため普段でもその癖が残って立ち方が変えられたと思いました。以前は立っているだけなのにふらふらしていたのに、今はそのふらふらが減ったような気がします。立ち方は色々な場面で大切なことの1つになることもあるので治せたことはとてもよかったです。

 最後に、この太極拳の授業をとってよかったと思いました。そう思えたのは太極拳がそれだけ有意義なもので楽しかったことがあります。それ以上に先生方が1人1人の動きを確認し、丁寧に教えてくださったため、続けてやってみようという気持ちでいることができました。機会があれば太極拳を最後まで覚えてみたいと思います。半年という短い期間でしたが、本当にありがとうございました。



  「太極拳感想文」      応用生物科学部 1年 山下みずき

 

私が太極拳の授業を取った理由は、太極拳はテレビで見たことがあるくらいのほとんど未知のもので、新しいことに挑戦したい自分にぴったりだと思ったからです。また、シラバスやホームページを見ていて運動の苦手な私でも楽しくできそうで、さらに健康にもよいと知ってぜひやりたいと思いました。

初めて実際に太極拳を見たのは、1回目の授業で先生方が披露してくれたものでした。動作がとてもなめらかで気の流れが見えるような感じがしました。ゆったりとした音楽に乗って心地よさそうだと思いました。

しかし、実際に太極拳をやってみてまず思ったことは、太極拳は見た目以上にハードだということです。なぜなら、一つ一つの動作で気を付けることを頭で考えると同時に、流れや協調性を意識しながら全身を使うからです。さらに、体の軸がぶれないようにして重心移動を行う上に動きがゆっくりであるため、耐久的に筋肉を使い授業のとき何度も足がぶるぶる震えました。

中でも手と足で同時に違う動作をすることが難しかったです。どちらか片方だけで練習した時はできていても、手と足の動作を合わせると頭がこんがらがってしまいました。足を意識しすぎて手を動かすことを忘れてしまったり細かいところを間違えてしまったりしました。特に「雲手」という動作を習得するまでに時間がかかりました。なぜなら、気を付けることが他の動作以上にたくさんあるからです。例えば、体が正面を向いたときに左足と右足にかける重心を五分五分にすることや、右手と左手を入れ替えるときに一方のかかとを着地させること、足と足の幅を意識することなどです。何度か繰り返し練習してなんとなくできるようになってきても、細かいところまで気を配って完ぺきにやろうと思うと動きが硬くなってしまいました。しかし、授業を何度か重ねるうちに動きが硬くならずになめらかにできるようになりました。そして、手、足、腰、目線、それぞれにそれぞれの違った動きがあるけれど、だからといって別々ではなく、むしろ美しく見せるためには協調させることが大切で、お互いのつながりを意識しなければならないと分かりました。

後半から音楽に合わせて練習すると、上で述べたような流れや協調性を意識しやすく、とてもリラックスできました。頭と体がすっきりとし、太極拳が健康に良いということを深く実感することができました。実際、例年冬には風邪気味になるけれど、今年は風邪気味にならず例年よりも健康的だと思いました。毎週火曜日に授業で太極拳をすることで1週間の疲れをリセットできていたような気がするため、授業が終わってしまうのはさみしいです。一人でやると次はどんな動作であったか分からなくなるところもあるけれど、頭と体をすっきりさせたいと思ったときに今回習った太極拳を思い出してやってみようと思います。

最後に、これからももっと多くの人がこの授業を通して太極拳の魅力を感じてくれたらいいなと思います。これほど深く太極拳にふれる機会は、自分から習いに行く以外には生涯なかなか無いと思います。私は授業で太極拳を学ぶことができて本当に良かったです。大学の授業として太極拳を指導してくださった先生方に心から感謝しています。温かい雰囲気の中、優しく丁寧なご指導、本当にありがとうございました。


  「太極拳と立ち姿」   工学部 化学・生命工学科 1年 山川萌奈子

 

私は、この授業を通して初めて太極拳というものを知りました。正直なことを言うと、私は太極拳という言葉を聞いたことがありませんでした。シラバスに「中国伝統の武術」と書いてあるのを見ておもしろそうだな…と思い、この授業を選びました。聞いたことも見たこともなく、太極拳という漢字すら書くことができない状態から始め、たくさんのことを学びました。

 一回目の授業で先生方に太極拳を見せていただいたとき、皆さんがリラックスして気持ちよさそうに動いていたのが印象に残っています。武術という言葉から私が想像していたのと違って、動きがとてもゆっくりであることに驚きました。同時に、こんなにゆっくり動くなら簡単にできそう、とも思いました。しかし、実際に体験してみると動きが難しく、全身の筋肉と神経を使わなければならなくて大変でした。重心の位置はどこか、足の向きや手の角度はどのようなのか、いろいろと頭で考えないとついていけなくて、リラックスすることとは程遠かったです。激しい動きはないけれど、同じ姿勢を維持するためか、疲れを感じる点では他のスポーツと似ていて、決して楽ではないと感じました。

 太極拳に少しずつ慣れて、毎回行う動きが自然にできるようになったとき、太極拳を楽しめるようになりました。みんなで流れに乗って動くことで、なんとなく気持ちよさを感じることができたような気がします。音楽に合わせて動くとさらに気持ちよかったです。私は「野馬分髪」が一番気に入りました。基本となる「弓歩」と手の動きが、シンプルでかっこいいし、まさに太極拳という感じがします。

 目線をまっすぐ前に向けて、肩の力を抜き、スッと立つととても美しい「立ち姿」になりますね。太極拳を学んでから、普段も少しこの立ち姿を意識するようになりました。姿勢がきれいであることはとてもすばらしいことです。

バランスを取り全身を使って動くことと、力を抜いて楽に動くこと。それを同時に行っていることが不思議で、太極拳の難しさであり魅力であると思います。初めての太極拳は、私にとって初めての動き、感覚、知識となりました。

最後になりましたが、毎回優しくとても丁寧に教えてくださった先生方、ありがとうございました。すごく良い経験をさせていただきました。これからも多くの方が太極拳に触れられることを願っています。そして、私も機会があればまた太極拳に挑戦したいです。