( 2013.10~2014.1 )
全学共通教育―スポーツ・健康科学―「太極拳」 : 火曜日の3時限 ; 第2体育館
担当教員:
非常勤講師 ; 清水宏晏 岐阜大学名誉教授 (工学部)
(日本武術太極拳連盟 公認指導員 公認審判員)
補助指導員 ; 清水宏子 (元太極拳非常勤講師 日本武術太極拳連盟 公認指導員)
「概況」
「太極拳」開講以来10年目を迎えました。今回平成25年度より3時限のみの実施に変更いたしました。これまで9年間の経験を踏まえて、今年度も太極拳の国際的スタンダードである「簡化24式太極拳」を全て教え終わることを主目的とせず、むしろこの「簡化24式太極拳」の基本を徹底することを最大の目標にしました。
履修の30名の学生諸君をそれぞれA, B, Cの3グループに分け、講師の清水宏晏と補助指導員清水宏子の二人が「太極拳」授業の指導・習熟に当りました。これは、「24式太極拳」の初期導入には、予想以上の手が掛かるからです。
今年度は、実質13回の(各90分)実技授業を実施し、最終回の学生表演では、各グループが太極拳の格好と雰囲気を漂わせ、相当満足できる演武を見せてくれました。その成果は十分得られたものと信じています。
今回から準備運動として「練功十八法」の前段を取り入れました。これは上海のラジオ体操とも呼ばれ、音楽にあわせて行う比較的簡単な動作なので、若人ばかりでなく中高年の方にも手軽におこなえる健康体操として人気があります。受講生諸君は、自然体で毎回楽しそうに、そして気持ち良さそうにやってくれました。来年度も継続します。
また、今回は10年目にして初めてのビッグなゲスト受講生を迎えました。岐阜大学教育学部・保健体育講座の熊谷佳代准教授、コンテンポラリーダンス(現在のダンスの枠組みに捉われないダンス)で知られた先生です。おそらく太極拳の動作とダンスの動き方を見極めようとの目的があったのでしょうか?
出張で1回休まれましたが、他は全て学生諸君に交じり受講していただきました。さすがは柔らかい身体をされており、すぐに太極拳の動きを体得されました。熊谷先生の太極拳の本質に迫る貴重な体験的報告文を後半に掲載しています。熊谷先生と一緒に太極拳をやれたこと、非常に貴重な機会であったとうれしく思っています。(熊谷佳代先生の印象に残る言葉;学ぶことって楽しいね!)
「受講者の学年別、学部別の分布数等」
総数30名 (男 ;11名、女 ;19名)
1年生;29名 4年生;1名。
教育学部;17名、地域科学部 ; 3名、応用生物科学部 ; 2名、工学部 ; 8名。
最終日集合写真2
「簡化24式太極拳への取組み; 目標と結果」
「簡化24式太極拳」は、57年余前の1956年に太極拳の普及のために中国で制定され、24組の動作からなる標準的な太極拳として世界で広く愛好されている。それに要する時間は、通常6-7分くらいで、一見短時間と思える24式太極拳であるが、これをマスターするのは、なかなか難しい。それは、ただ24組の動作の順番(套路;とうろ)を覚えるだけでなく、太極拳の本質である「肩を落とし胸を張らず、体をゆるめる」「体の中心軸を垂直に持続して、重心移動を行う」「体をねじらない」「顔、手足、胸腰部の動きを協調一致させる」「動作のスピードを均一に」など多くの要求を満たさなければ、自然で美しい太極拳はできず、ぎこちない太極拳になってしまう。したがって、授業の最初には、毎回ストレッチ運動と「練功十八法」で体を柔らかくし、太極拳の基本である手法(手の動き;例えば、体の前でボールをつくる(抱掌))や歩法(歩き方;足の出し方や重心移動の方法)の習得に時間をかけた。そして、授業の前半部分では総合練習により、平均すれば1回の授業で約1.4組の新しい動作(套路)を覚え、さらに後半部分では学生諸君の個々の動きを熟視し、各人に合った習得の徹底を試みた。
学生諸君は、当初、何をやっているのか判らない様な反応を示し、太極拳は予想以上にたいへんで、筋肉痛を訴える学生もいたようであった。しかし、回を重ねる度に、だんだんと太極拳らしい「ゆったりとした動作」を習得し、彼らの太極拳への順応性とイメージを体で表わす能力に驚いた。
最終回のグループ表演では、A, B, Cグループがそれぞれ選んだ音楽に合わせて、「簡化24式太極拳」をゆったりと演武してくれました:音楽は、A;桜坂(福山雅治) B;六等星の夜(エメ) C;しるし(Mr. Children)。見ていた他のグループと指導者は、それぞれの表演に大きな拍手をおくりました。冬季は厳しい寒さの第2体育館での練習であったが、当初の基本に重点を置いた「太極拳」習得の目的を達成してくれた学生諸君を見ながら、大きな喜びと充実感を覚えました。
なお、熊谷先生にはA, B, Cの3つのグループ全てと最終表演をしていただきました。短期間の練習にもかかわらず、非常に太極拳らしい演武でした。また、授業の最終日ということで、太極拳の長年の友である樋口幸子先生の応援を得ました。そして、最後に樋口、清水、宏子の3人で「32式太極剣」を皆さんに披露しました。学生諸君の中には、やってみたいと「剣」を触りに来る人もいました。
今年度から始めた準備運動「練功十八法」前段
全体練習「摟膝拗歩;ロウシアオブ」
最終日のグループAによる「簡化24式太極拳」の最終表演
「授業を終えて; 感想そしてお礼」
太極拳を短期間に初心者に教えることは容易ではありません。それは、心(頭で考えること)と体(イメージを動作で表わす)の協調一致と融合には、長い時間を必要とするからです。今年度は、受講者のほとんどが1年生で、フレッシュな若者達は、熱心に「太極拳」に挑戦してくれました。しかし、初めの頃はなんとなく静かで盛り上がらず、私達はその雰囲気を心配していました。しかし、回を重ねる内に、自主的に太極拳のそれぞれの動作を質問したり、また具体的に自分の動作のチェックを求めたり、やる気が十分見えてきました。そして、最終的には、最終回のグループ表演に向けて、みんなの気持がまとまりました。
今年度の授業でも「簡化24式太極拳」を全てマスターさせることをあきらめ、「太極拳」の基本をじっくり習得してもらうことに主眼を置きました。その結果、24組の内の17番目、右下勢独立(ヨオ・シアシドウリ)までで終わりました。それは期間的に十分な余裕がなく、また限られた時間内で行わなければならないためです。そして、学生諸君の習熟度を最も大切に考えた結果です。大切なことは、「太極拳」の真髄を知ってもらうことである、と信じています。
最後に、この「太極拳」の授業を実施することに協力いただいた教育学部保健体育の杉森主任教授をはじめスポーツ/健康科学のスタッフの皆様にお礼を申し上げます。また、岐阜大学教育学部・保健体育講座の熊谷佳代准教授の自主的な受講があり、この上なく充実した太極拳授業の日々でした。心から感謝し、厚くお礼を申し上げます。今年度も授業の最終日に応援に駆け付けていただいた太極拳の長年の友、樋口幸子先生には感謝!感謝!です。
太極拳授業に参加いただいた岐阜大学教育学部・保健体育講座の熊谷佳代准教授から寄せられた「太極拳」への体験的報告です。ダンスを長年仕事にされている先生ならではの太極拳の本質に迫る貴重な文章です。ここに先生の許しを得て、掲載いたします。
太極拳~芯、美、強、流~
岐阜大学 教育学部 熊谷佳代
授業を受けていくうちに、太極拳は生き方に繋がるものではないかと感じるようになり、毎回楽しみに参加させていただきました。私が初めて太極拳に出会ったのは大学院生の時です。中国の留学生にダンスの授業の中で1回だけ教えてもらったことがあります。でも、動きの形を真似ることだけで終わってしまい、動きを身につけることは出来ませんでした。「どうしてあんな風に動くのだろう?」「何を感じながら何を考えながら動いているのだろう?」太極拳を目にするたびに消化されなかったその思いが浮かんできます。今回、その謎を解く機会を得ることができました。
ダンスをする時は、私は表現したいイメージを意識して動きます。空の雲、昆虫の蜘蛛、川の流れや時の流れ、鳥や魚を題材にして踊った事もあります。つまり表現の対象があります。太極拳も動き自体は非常にダンスっぽいのですが、何かを表現しているわけではありません。しかし、その動きには芸術性を感じます。太極拳のベースは武術であるということ。戦う相手、動きが向かっていく所(方向性)を意識することで非常に動きやすくなりました。
授業のはじめの頃は、重心の移動や腰の向きとともに身体の軸を意識していました。ダンスにもスポーツにも共通することですが、軸をつくるということは非常に大切です。動きを無駄なくより合理的に行えるようになるばかりか傷害防止の意味でも非常に大切です。私はダンスの他にヨガも(自己流で)やっていますが、ゆっくり身体の内側を感じながら動くところはとても似ています。また、ダンスのジャンルで「舞踏」というものがあります。海外では「Butoh」と呼ばれていますが、日本人が日本人の身体で考えだしたダンスです。このダンスの動きに近いものも感じました。はじめの頃は身体の内側を感じながら動いていた気がします。
回が進むにつれて自分の動きの癖が見えてきました。先生にも注意していただいたことですが、動きが無駄に大きすぎることです。ダンスの時もヨガの時も身体を極限まで使うようにしています。それは可動域を広げるために行ってきたことです。しかし、太極拳で要求される動きは無駄のない動き、必要最小限の動きで敵を倒すこと。腕を大きく広げて伸ばしきるようなことはありません。「ゆるめる」ことの大切さ。「ゆるめる」ことで動きが生まれる。この考え方がとても新鮮でした。よく考えれば動きは緊張と弛緩の連続でその繰り返しが動きを生成しています。自分の動きに向かっていく時の新たな視点を得ることができました。
後半になると周りの学生の動きも目に入るようになってきました。それまでは先生の動きと自分の動きだけに集中しないと付いていけないので周りを見る余裕がありませんでしたが、少しずつ余裕が生まれ、みんながどのように動いているのか気になり始めました。やはり若い学生は吸収が早く、驚くほどのスピードで上達しています。集中力もかなりのもので感心しました。そして様になっていてカッコいいのです。
美しさとは何なのか?手足が長くて小顔であるとか単に体型の問題ではなく、動きに向かっていくその有様であると感じました。動きに集中して自分の内側に一つの芯をつくって、強すぎず弱すぎず、ゆるめて余裕を持たせる。それがしなやかさを備えた強さを生みだす。そして動きがよどみなく次々と流れていくと、心も動きはじめます。人の生き方に通ずるものがあると思いました。
最後となりましたが、教員の私の授業参加を快諾して下さり、太極拳体験の機会を与えてくださった清水宏晏先生、宏子先生に心から感謝いたします。また、ご一緒させて頂いた学生諸君にも感謝しております。自身の実技指導について見直す機会にもなり、教員のFDにも繋がる貴重な体験であったと思っております。
(FD; Faculty Development; より良い授業を目指す取組み)
終了後に寄せられた受講生の感想文の中から,彼らの承諾を得て,6編を載せました。
「太極拳」 応用生物科学部 応用生命科学課程 1年 今井康太
受講する前、私は太極拳について何も知らず、テレビでよく放映されている映像から中国のラジオ体操くらいに考えていた。まだ踏み込んだことのない分野として興味は持っていたが、本格的に太極拳をやるとは思っていなかった。大概の人は太極拳についてその程度の興味しか持っていないか、あるいは全く興味を持っていないと思う。実際に太極拳をやってみたとして面白いと感じる人と面白いと感じない人がいるのは当たり前のことであるが、少なくとも私は今回の講義を通じて太極拳の魅力を感じることができたと思う。魅力という表現を使うと少し大げさかもしれないが、単純に一回一回の講義を楽しんでいた自分がいた。
しかし、最初から太極拳を楽しめたかというとそうとも言えない。私は昔からスポーツをしていたが決まった動きをする競技はあまり好きではなかった。例えば、野球などでは決められたところしか走れないし、投げられたボールは打つしかない。私にとって太極拳はこれらのスポーツと同じくくりの中にあるのだ。具体的に例を挙げると「野馬分髪」の後には必ず「白鶴亮翅」がくる。この順序は変えられないし、自分の好きなように体を動かすことはできない。太極拳とはそういうものであり、受け入れるしかないのだが、慣れていないうちはどうしても体の自由が奪われているという感覚から逃れることはできなかった。しかし、講義の中で先生がおっしゃっていた「自然と体が動く」という言葉を聞いて、自分が今やっているのは本来の太極拳ではないと気付いた。自分は技を順番通りにただ並べているにすぎなかったのだ。技と技の間にもちゃんと関連性があり、技Aの後に技Bがくるのは体の動きから必然的に決まる。私はこのとき初めて太極拳の中にある「流れ」のようなものに触れることができたように思う。
太極拳は、たった十数回の講義では本当の意味で理解できない。何十年も太極拳を続けている先生方が太極拳から学ぶことと、数週間しかやっていない私が太極拳から学ぶことには比べ物にならないほどの差があるのだろう。しかし、少しでも同じことを共感できていたらうれしい、そう思いながら私は数週間太極拳に取り組んできた。実際のところどれほど太極拳の世界に踏み込むことができたのかはわからないが、少なくとも太極拳を始める前よりは、太極拳について知ることができたと思う。そして、もっと太極拳について深くまで知りたいと思うようになった。このように考えられるようになったのは一番大きな変化であると思う。
普段私たちは人それぞれに生活をしているが、姿勢やリラックスなど太極拳が活かせるような場面は多くあるだろう。これから太極拳に触れる機会は極端に少なると思うが、いざというときに太極拳の基本を思い出して実行できたら自分の力を最大限に引き出し、きっといい結果が出せると思う。これからの人生においてどんなことが起こるかわからないが太極拳で学んだことが味方してくれることを祈る。最後に太極拳を教えてくださった先生方にお礼を申し上げたい。数週間ありがとうございました。
「これが太極拳か…!」 地域科学部 1年 吉村さくら
私は今まで、太極拳のことを「中国版ラジオ体操」だと思っていた。イメージとしては、早朝になると、大きい広場にゆるめの寝間着姿のおじいさんやおばあさんが集まって、「今日も元気に太極拳するアルー!」なんて言いながら、みんなで取り組む健康運動、と言った風だ。しかし、実際にやってみると、本当にそうでありながらも、そうではなかった。
たしかに、想像していた通り、とてもゆっくりとしたテンポで動いているのだが、だからといって体まで緩めている訳ではないのだ。むしろ、筋肉を至極使いつつ、かつその耐久時間がとても長いスポーツだったのだ。
最初の起勢(チーシー)から、そのことがひしひしと分からされる。腰だけを落として上半身をぶれさせてはいけないこの動きは、太ももの筋肉を使う。慣れていないと、体が前後左右してしまう。そうすると、練習用の音楽よりもワンテンポ早く次の動作にいってしまう。それを防ごうとすると、つまり、なるべく長く耐久しようと筋肉に力を入れると、今度は全身がこわばって、肩が上がり、しかも次の左足を引き寄せる動きがたいへんぎこちないものとなり、一気に格好悪くなってしまうのだ。
このように、太極拳は静と動、耐える筋力となめらかさが求められる、とてもハードなスポーツだと知った。
このことが分かってからは、この授業を、自分の体軸を作る機会として活用しようと目標を立てた。そのほかにも、後半で先生から注意があった弓歩(ゴンブー)の前足の角度を気にすることで(膝が前に行き過ぎないことで)、より恰好の良い太極拳を目指した。
この二つの目標のもと授業に取り組んだ結果、自分なりに、これが体をぶれさせないコツかなと思ったのは主に二点だ。一つ目は、なんといっても腹筋に力を入れること、そしてお尻を引き締めることだ。24式太極拳には多くの技があり、その時々で必要になる腕、脚の力が微妙に違ったりしても、とにかく腹筋と大臀筋をしっかりしておけば、軸自体はぶれない。蹬脚(ドンジャオ)をする時にこの事を特に思った。ここでもう一つ大切なのは、肩の力を抜いて落としておくことである。二つ目は、これも後半で先生の指導にあったが、目線を水平に保つことである。水平にまっすぐ見ていると、自分の足元を凝視している時よりも、視界が大きくとれる。そうするとわずかな体のぶれもすぐに気付けるため、立て直しも早く行えると思った。あくまで私個人としての体験だが。
こんな風に、やればやるほど興味深く、挑みがいがある太極拳という科目を、もっと多くの学生に体験してほしいと思った。最後まで頑張ると、先生方の華麗な剣舞(32式太極剣)がお目にかかれるということも添えておきたい。
そして、太極拳の授業を終えた今思うことは、こんな太極拳を寝起きに近い朝からやってのける中国のみなさん、日本の太極拳愛好者の方々は本当にすごいなということだ。私もまた機会があれば、ぜひ挑戦したい。
「太極拳」 教育学部 社会科教育講座 1年 北村萌美
太極拳の授業が始まった10月の時点では、太極拳の「拳」という漢字も正確に書くことができないくらい太極拳についてほとんど何も知りませんでした。ただ、太極拳という言葉は耳にしたことがあり、中国で行われている体操という曖昧で、ぼんやりとしたイメージだけは持っていました。したがって、太極拳をもっと知りたい、そして実際に体験してみたいと考えこの授業を選択しました。
太極拳を実際に行ってみると、その他の今まで私が経験してきたスポーツとは全く異なる事を実感しました;激しい運動、たくさんの汗、息切れ、大きな掛け声、歓声、チームワークなどで表現されるこれまでのスポーツとは・・・。しかし、太極拳にはこれらの要素が全くといっていいほどありませんでした。それは悪い意味ではありません。意識を集中させて、自分と向き合い、背筋を伸ばし、腕の角度や、指の先、目線の方向、体の重心の置き方、呼吸のリズムなど、ありとあらゆるところに意識の糸を張りめぐらせることは私にとって至難の業でした。いかに、自分がこれまでぼんやりと生きて来たかが良く解りました。
しかし、先ほど太極拳は息切れするような激しい運動ではないと言っておきながら、太極拳の授業を終えた頃にはいつも全身から程好い体の疲れがやってきます。一定時間、同じ体勢を保つことで足の筋肉や腹筋がたくさん使われることによるものだと思います。全身の疲れはやはりスポーツならではのものであると感じます。そういう点では、太極拳も他のスポーツと通じる点があるのではないでしょうか。
回数を重ね、太極拳の動きに慣れてくると、だんだん体がリラックスしているような気持ちになります。新しい動作や技を教わった後や、音楽に合わせて行う練習の終盤になってくると、先生や周りの人についていくのが精一杯になることがあります。そのような状況では、頭はパニック状態ですが、なんだか身体が自然に動いているようで、とても気持ちが良かったです。
1月21日は太極拳の最後の授業でした。この授業の中での、「太極拳は背筋を伸ばし、真っ直ぐに前を向くところから始まる。」という先生の言葉が特に心に残りました。もちろん太極拳を通して、日常生活でも真っ直ぐ前を向いて美しい姿勢でいられることは素敵なことでしょう。しかし、それだけでなく、背筋を伸ばし、真っ直ぐに前を向くという姿勢は自分の人生の生き方にも活かしたいと思いました。自分に降りかかるさまざまな困難に正面から誠実に向き合うこと、つらいことや悲しいこと、逃げ出したくなるようなことが目の前にあっても、目を背けず、堂々としていられる心構え。太極拳で一番大切なことは、人生においても大事なことなのではないかと思います。
最後になりましたが、来年度もより多くの学生が太極拳というスポーツに触れられることを願っています。先生方、ありがとうございました。
「太極拳」 教育学部 英語教育講座 1年 熊崎未佳
私にとって、この授業が太極拳との出会いです。それまで私にとって太極拳とは名前は聞くことがあっても、具体的にどういったことをするのか、いったいどんなスポーツなのか、ほとんど知りませんでした。そこで後期授業を選択するとき、「太極拳とはどんなスポーツなのだろう?」と思い、履修を希望しました。
最初はあまり知らなかったスポーツということもあり、少し不安もありましたが生徒もほとんどが私と同じ初心者であるということを知り、安心しました。はじめの授業では、先生方が、私たちの目の前で太極拳を披露してくださったことが、特に印象に残っています。今まで、中国で盛んなスポーツというイメージしか無かったので、最初に披露していただけて良かったです。見ている分にはゆったりとした穏やかなスポーツ、という印象が強かったのですが、実際に太極拳を始めてみると思っていたよりも難しい体勢を取らなければいけなかったり、それぞれの動きの中で様々な気を付けるべきことがあり、こんなにも太極拳が複雑なものなのだ、と気づきました。自分では先生方に教えていただいたとおりに動いているつもりでも、実際に体育館の鏡を見てみると、なんだか恰好がよくなかったり、姿勢が良くなかったり、たくさんの問題点に気づき、直そうと意識することができました。先生方にも私が間違っているところなどは、いつも優しく丁寧に教えていただき、直そうと努力することができ、良かったと思います。
太極拳を始めたことによって、普段の生活からも姿勢を意識して過ごすことができるようになりました。太極拳は健康にも非常に良いスポーツだと思います。スポーツが苦手な人も音楽を流しながら、楽しんで曲に合わせて体を動かすことができるので、ぜひやってみてほしいな、と感じました。私も、運動は得意ではないのですが、この太極拳の授業は毎回楽しんで受講することができました。また、毎回の授業の初めに行う、ストレッチや練功十八法も、とても気持ち良かったです。特に練功十八法は体中がよく伸び、太極拳前に行うのが楽しみでした。体育の授業での太極拳にはもう出会えませんが、これから機会があったら、ぜひまたやってみたいと思います。
最後の授業では、先生方による、剣を用いて行う太極拳(三十二式太極剣)を拝見しました。とても恰好よくて、「あぁ、私もやってみたいな。」と思いました。難しそうだとは感じたのですが、私の他にも、あの太極拳をぜひやってみたいと感じる学生もいるかと思います。
太極拳を始め、太極拳にも様々な技や、その名前の由来などがあるということを先生方に教えていただき、非常に興味を持ちました。白鶴の美しい姿を表す体勢など、どの技にも意味や由来があって、太極拳は深いものだな、と改めて感じました。この太極拳という授業を受講したことで、今まで知らなかった中国の文化にも触れることができたし、自分のこれからの健康や普段の生活での姿勢、礼儀など本当に様々で大切なことについて学ぶことができました。この授業では素晴らしい時間を過ごすことができました。後期の授業で、いつも優しく丁寧に教えてくださった先生方、ともに太極拳を学んだ仲間たちに感謝したいです。
「太極拳」感想 工学部 機械工学科 1年 大口耀示
太極拳を受講したのは、体育系の部活、サークルに所属しておらず日々の運動不足は体力の低下を自覚させるほどだったので、少しでも体を動かさないと駄目だと思ったからです。前期に履修した「卓球・水泳」は、幸い厳しい運動を強いられるものではなかったので弱った体のリハビリにはうってつけでした。後期もこういった気楽にこなせそうな科目がないかと探していると、ハンドボールやテニスなどのカタカナに挟まれ一際異彩を放つ「太極拳」の文字が目に入りました。早速ホームページに飛び、授業の様子を閲覧したあと真っ先に履修申請しました。
授業はとても満足でした。その理由はいい意味での予想外が多かったことです。まず、あのゆったりとした動きからとても考えられないほど体に負担がかかることです。これが予想外だったのですが、もっと予想外だったのが授業を重ねるうちに慣れていくことと普段の生活においても体が軽くなったことです。「体に1本の筋を通す」という教えが上半身の重心をうまくコントロールできるようになったのだと思います。また体の隅々まで意識を届かせる動きは慣れてきた後半になると、とても心地よいものでした。歩く時もなるべく上半身の重心を意識しているうちに姿勢が良くなって、疲れない歩き方ができるようになりました。
「24式太極拳」の中で一番気に入っていたのは「雲手」でした。雲を意識して腰と手を動かす仕草がどこか中国音楽、特に笛の音に合いそうだと思ったからです。逆に一番苦手だったのが雲手の前後に組み込まれている「単鞭」でした。鞭を持つ手の位置に意識している内に右足の修正(弓歩になること)をよく忘れたものでした。
授業の中で、実は準備運動の「練功十八法」が一番好きでした。1週間の背中のコリが一気にほぐされるような感覚に非常に満足しました。冬の体育館は肌寒いですが、それも相まって精神統一しているような気分になれました。また、流れている中国音楽がとても良かったです。これを機に中国音楽に触れてみるのも良いと思いました。保健体操ということで疲れることも汗をかくこともなく体に良いので普段の生活に組み込むことができたらと思います。
冒頭でも述べた通り運動不足のための体育講義の受講でしたが、これからも時間があれば自宅でも取り組んでみようと思います。太極拳の授業は終了してしまいましたが、自分の中ではまだまだ授業は続きそうです。講師の先生方、最後まで丁寧に指導して下さってありがとうございました。
「太極拳」 工学部 化学生命工学科 1年 三宅里果
シラバスで太極拳を見つけた時、初めに思ったことが「これでジャッキー・チェンに近づける」でした。その安易な考えは一回目の講義で大きく変化しました。
一つ目の勘違いは機敏に動かないことです。どちらかと言えばゆっくりと常に動いている印象でした。今まで私が体験したことのあるスポーツは、早く動き素早く止まる動きばかりです。そのため既存のイメージは打ち壊れました。二つ目に体が伸びきらないことです。腕を前に伸ばす動作でも必ず緩い婉曲を描きます。さらに掌や指先など体すべてが気の流れとなるように自然な形を意識することが必要となりました。講義が終わる頃には腕は大木を抱くように、手は親指を外側に引きつつ大きめのボールを掴むように、と自分の中でイメージを作ることはできました。しかし、太極拳をするたびに体の動かし方や動くタイミングなど模倣しきれていないように感じ、試行錯誤の連続でした。
最後の全体発表でもう一度太極拳のイメージは変化しました。それは一人一人の体格によって重心の運びが少しずつ異なっていることです。太極拳のようにゆっくり動く競技だからこそ、一つ一つの動きをじっくり見ることで小さな動きに気づきやすいと思いました。特に先生方の演目では動きが揃っているからこそ、反対に小さな動きの違いを興味深く感じました。この違いは実際に体験してから全体を見渡すことで分かったように思います。
24式太極拳一通り体験してみて一番お気に入りの動きは、「蹬脚;ドンジャオ」と「下勢独立」です。その理由としてジャッキー・チェンのスローモーションをしている気分になれるからです。加えて一番、体の軸を気にする動きでもあるからです。ドンジャオは足を上げ数秒キープしていなければいけません。そこでふらつかずにいることが難題となりました。下勢独立は足を片側に大きく開き軸足を反対の足に移していく動きとなっています。素早く動けば簡単であるけれども、ゆっくり動いた時、体幹がぶれないように重心移動することに気を配りながら行いました。この2つの動作がしっかりとできた時は満足感が得られました。
太極拳はそれほど運動量が多くありません。無理なく体全体を動かしていくため健康にたいへん良いスポーツとなっています。私は普段、猫背になることが多いけれども太極拳をすることで一時的ではあるけれども改善されました。太極拳はどの年代の人でも無理せず行うことができる魅力的な運動となっています。太極拳を愛好する人口がさらに増えることを願いつつ、講義の振り返りを終わりたいと思います。楽しい授業をありがとうございました。