太極拳

( 2011.10~2012.2 )

全学共通教育―スポーツ・健康科学―「太極拳」:火曜日の3時限、4時限;第2体育館

担当教員:
    非常勤講師;清水宏晏 岐阜大学名誉教授(工学部)
                                 (日本武術太極拳連盟 公認指導員 公認審判員)
    非常勤講師;清水宏子 (日本武術太極拳連盟 公認指導員)
    非常勤講師;馬場理恵 (日本武術太極拳連盟 公認指導員)
    補助指導員;樋口幸子 (日本武術太極拳連盟 公認指導員)

写真;左より、馬場理恵、清水宏晏、樋口幸子、清水宏子


「概況」

   「太極拳」開講以来8年目を迎えました。学生諸君の希望状況により「太極拳」の授業を2コマ実施しています。しかし、平成23年度は4時限目が定員を割り、初めて希望者の減をみました。(今後、平成24年度に注目していきます)
   ここでは3時限目と4時限目の2つの授業をまとめて報告いたします。これまで7年間の経験を踏まえて、今年度も太極拳の国際的スタンダードである「簡化24式太極拳」を全て教え終わることを主目的とせず、むしろこの「簡化24式太極拳」の基本を徹底することを最大の目標にしました。
   3時限目30名、そして4時限目21名の学生諸君をそれぞれA, B, Cの3グループに分け、3時限目を清水宏晏が主、4時限目を清水宏子と馬場理恵が主となり、また補助指導員として樋口幸子さんの好意による時々の参加を得て、2つの「太極拳」授業の指導・習熟に当りました。これは、「24式太極拳」の初期導入には、予想以上に手が掛かるからです。
   今年度は、実質13回の(各90分)実技授業を実施し、最終回の学生表演では、各グループが太極拳の格好と雰囲気を漂わせ、相当満足できる演武を見せてくれました。その成果は十分得られたものと信じています


「受講者の学年別、学部別の分布数等」

3時限目:総数30名(男;6名、女;24名
       1年生;29名 3年生;1名。
       教育学部;6名、地域科学部;3名、医学部;5名、
       応用生物科学部;9名、工学部;7名。

4時限目:総数21名(男;4名、女;17名)
       1年生;19名 2年生;1名 3年生;1名。
       教育学部;4名、地域科学部;4名、医学部;2名、
       応用生物科学部;6名、工学部;5名。



3時限目の最終日集合写真



4時限目の最終日集合写真


「簡化24式太極拳への取組み;目標と結果」

   「簡化24式太極拳」は、55年余前の1956年に太極拳の普及のために中国で制定され、24組の動作からなる標準的な太極拳として世界で広く愛好されている。それに要する時間は、通常6-7分くらいで、一見短時間と思える24式太極拳であるが、これをマスターするのは、なかなか難しい。それは、ただ24組の動作の順番(套路;とうろ)を覚えるだけでなく、太極拳の本質である「肩を落とし胸を張らず、体をゆるめる」「体の中心軸を垂直に持続して、重心移動を行う」「体をねじらない」「顔、手足、胸腰部の動きを協調一致させる」「動作のスピードを均一に」など多くの要求を満たさなけ れば、自然で美しい太極拳はできず、ぎこちない太極拳になってしまう。したがって、授業の最初には、毎回十分なストレッチで体を柔らかくし、そして太極拳の基本である手法(手の動き;例えば、体の前でボールをつくる(抱掌))や歩法(歩き方;足の出し方や重心移動の方法)の習得に時間をかけた。そして授業の前半部分では全員の総合練習により、平均すれば1回の授業で約1.5組の新しい動作(套路)を覚え、さらに後半部分ではA, B, Cの3グループに分かれ少人数でそれらの習得の徹底を図った。
   学生諸君は、当初、何をやっているのか判らない様な反応を示し、太極拳は予想以上にたいへんで、筋肉痛を訴える学生もいたようであった。しかし、回を重ねる度に、だんだんと太極拳らしい「ゆったりとした動作」を習得し、彼らの太極拳への順応性とイメージを体で表わす能力に驚いた。
   最終回のグループ表演では、A, B, Cグループがそれぞれ選んだ音楽に合わせて、「簡化24式太極拳」をゆったりと演武してくれました:音楽は、3時限A;SAKURA(いきものがかり)3B;月のしずく(RUI)3C;しるし(Mr. Children)。4時限A;小さな河の流れに(リチャード・クレイダーマン)4B;OCEAN(B’z)4C;アルマゲドン(サントラ版)。見ていた他のグループと指導者は、それぞれの表演に大きな拍手をおくりました。今年度は、特に厳しい冬のため、大きくて冷えきった第2体育館での練習であったが、当初の基本に重点を置いた「太極拳」習得の目的を達成してくれた学生諸君を見ながら、大きな喜びと充実感を感じました。







「2つの授業を終えて;感想そしてお礼」

   太極拳を短期間に初心者に教えることは容易ではありません。それは、心(頭で考えること)と体(イメージを動作で表わす)の協調一致と融合には、長い時間を必要とするからです。今年度は、受講者のほとんどが1年生で、フレッシュな若者達は、熱心に「太極拳」に挑戦してくれました。しかし、初めの頃はなんとなく静かで盛り上がらず、指導者達はその雰囲気を心配していました。しかし、回を重ねる内に、自主的に太極拳のそれぞれの動作を質問したり、また具体的に自分の動作のチェックを求めたり、やる気が十分見えてきました。そして、最終的には、最終回のグループ表演に向けて、みんなの気持がまとまりました。
   今年度の授業でも「簡化24式太極拳」を全てマスターさせることをあきらめ、「太極拳」の基本をじっくり習得してもらうことに主眼を置きました。その結果、24組の内の17番目、右下勢独立(ヨオ・シアシドウリ)までで終わりました。それは期間的に十分な余裕がなく、また限られた時間内で行わなければならないためです。そして、学生諸君の習熟度を最も大切に考えた結果です。受講生の授業終了後の感想文の中には、24式の最後までやりたかった、との意見も少しありますが、練習を走らないで、基本をじっくりやれて良かったとの意見も多くありました。大切なことは、「太極拳」の真髄を知ってもらうことである、と信じています。
   最後に、この「太極拳」の授業を実施することに協力いただいた教育学部保健体育の川岸教授、杉森教授をはじめ、スポーツ/健康科学のスタッフにお礼を申し上げます。今年度も2コマ(2回)の「太極拳」授業が出来たことは、より多くの学生諸君に太極拳を体験してもらったことを意味しており、4人の指導員は非常にうれしく思っています。ありがとうございました。また、今年度も、親しい太極拳友の樋口幸子さんが補助指導員として協力してくれたこと、ここに記して厚くお礼を申し上げる。



学生諸君との記念写真


授業終了後に寄せられた3時限目と4時限目の受講生の感想文の中から,彼らの承諾を得て,7編を以下に載せました。


「太極拳」         地域科学部 1年 栗田鈴音

   初めてシラバスで「太極拳」の名前を見た時は感動しました。何故なら私はアジア圏の文化が好きで、中国の太極拳にも興味があり、まさかそれが大学の体育の授業で実施されているとは思ってもみなかったからです。しかも太極拳の授業は大学では珍しいとの事で、この講義は岐阜大学に来て良かったと胸を張って言える要素の一つになりました。
   太極拳と聞くと、難しそうと思う人と簡単そうと思う人がいるでしょうが、私は後者でした。講義を受ける前は、ただゆっくり動くラジオ体操のようなものだとの認識しか無かったからです。しかし、実際はそんな甘いものではありませんでした。太極拳にはいろいろな種類があり、この講義で習うのは本来武術である太極拳を簡易化した「簡化二十四式太極拳」でしたが、それでも想像以上に難しいと感じました。難しいというよりは、深いとか重いという言い方がぴったりくるかもしれません。しっかり集中して、一つ一つの動作に全身を意識しなければなりません。それでいて、肩を落とし身体をゆるめなければならない点が、難しかったです。他のスポーツや私生活では経験することのない新鮮な動作ばかりで、そもそもゆっくり身体を動かすことだけでもあまり無い体験でした。
   最初の講義で驚いたのは太極拳用のシューズがあることでした。なぜ普通の靴ではなくわざわざ太極拳用のものがあるのかと不思議に思いましたが、安定した姿勢を取りやすくするためと、大地とつながることを意識するためであると分かりました。それから、先生の太極拳の表演を見て、非常になめらかな動きで綺麗だと思いました。最初の講義では「野馬分鬃」のあたりまでやりましたが、初めて皆んなで合わせて動き、片足に乗って両手でボールを持つような姿勢のまま鏡を見た瞬間が一番印象に残っています。それまで、ずっと自分の手や足ばかり見ていましたが、鏡に写った私達学生全体の構えた姿が、非常に格好良くて感動したからです。そこから片足を前に踏み出して弓歩の足になり、両手を大きく開けば野馬分鬃の完成です。私はこの姿勢が一番かっこよくて、安定している感じもするので好きです。一番難しいと感じたのは「雲手」です。両手を身体の左右へ何度も往復させますが、腕ではなく腰を動かすことによって手を払います。その手の動きと同時に、足を踏み出したり寄せたりを繰り返して身体の重心を移しながら横に移動していきます。それぞれの動作も少し複雑であるのに、この両方の動作を同時に行うというのが難しかったです。しかし、何度か練習をしているうちに流れを身体が覚えてきたようで、自然と手足が動くようになりました。また、「下勢独立」で片足のつま先を、もう片方の足のかかとの延長線上に置くのも苦労しました。自分の身体なのに距離感が分からず、慣れないうちは置く位置が前よりになる事が多かったです。これも、慣れてくると足の距離感が掴めるようになってきました。最後に太極拳の発表に使う音楽選びがあり、これは非常に迷いました。太極拳に合わせやすい曲となると、ゆったりとしたおとなしい曲が合うと思いますが、私はその中でも訴えかけるようなエネルギーや、芯の強さを感じる歌声が良いと思い、なるべくそのような曲をこれまでの記憶を頼りに探しました。うれしいことに最終表演の発表会に採用された柴咲コウさんの「月のしずくRUI」は、凛とした声で感情を込めて歌われているので心に響いたと思います。
   最後の発表会では緊張するかと思いましたが意外とそうでもなく、リラックスして楽しくできました。先生方が最後に見せてくれた「32式太極剣」は、とても美しかったです。珍しい経験ができたし、太極拳は楽しかったので、この講義を受講して本当に良かったと思います。動きを忘れてしまわないように、時々思い出したら家でやってみようと思います。丁寧で分かりやすいご指導ありがとうございました。


「太極拳を体感して」        医学部 看護学科 1年   小田 明  

   
岐阜大学は私にとって2度目の大学である。入学当初から、この大学では前とは違う新しいことに挑戦しようと心に決めていた。さぁ後学期、次は何に挑戦しようか、そう思いながらシラバスを見ていると、あった!、面白そうな授業。その名も、「太極拳」。
 以前、中国を旅した際、町のいたる処で見受けられたアレだ。その時は、朝~昼にかけてやられており、中高年の方々が多かった。皆同じ動きをしていたので、その時は「中高年向けの日本のラジオ体操の様なものかなぁ」くらいにしか思っていなかった。
   しかし、シラバス記載のHPを見てみると、雑伎団のように剣を構えている写真。まるで格闘技をやっているかのような構えの写真、写真、写真。それらは、昔はまった格闘ゲームを彷彿させる画だった。「…楽しそうだ!!」 ―― 即決だった。
   いざ授業が始まり、一番に感じたことは「ゆっくりの動作のほうがキツイ」ということである。姿勢や手足の軌道、目線に至るまで、注意を払いながらゆっくりと動くことは困難を極めた。中でも体の姿勢は、昔バレエをやっていた癖が抜けず、どうしても背中が反ってしまうため、緩んで真直ぐの意識をすることが大変だった。しかし、週を重ねるごとになんとなくだが形になってきていることがとても嬉しく、最初は姿勢で精一杯だった意識が、少しずつ呼吸や気の流れを意識できるようになった。特に「攬雀尾」は、今回教わった型の中で一番好きだった。肩を緩め手を落とし前に押し出す動作の際に、呼吸をしっかりすると非常に気持ちが良い。
   後半の授業からは音楽にあわせて行うようになり、最初は音に合わせるのが難しいのではないかと思っていたが、逆に音楽があったほうが気持ちも乗ってやり易かった。歌の呼吸と太極拳の動作の呼吸がピッタリと合った時は大変心地よい。中国の人々が朝に行っている気持ちが分かったような気がする。
   授業は終わってしまったが、実は今、私個人でも続けている。時間的に太極拳教室には通えないため、教えていただいた所までしかできないが、お風呂上りに行っている。気持ちが落ち着き、リラックスできるため、よく眠れる。せっかく太極拳という素晴らしいものに出会えたのでこれっきりにせず、これからも続けていきたいと思う。
   最後になるが、今回の授業では、太極拳だけでなく、多くの宝物を得た。太極拳で出会えた他学部の友人達は、学生生活の宝物である。また、先生方には大変熱心・丁寧にご指導を頂いた。あのご指導が無ければ、太極拳の奥深さを実感することはできなかったと思う。この場を借りて感謝を述べさせていただきたい。
   「先生方、熱心なご指導ありがとうございました。先生方の様に何年経っても元気でいられるように、これからも太極拳を続けていきたいと思います。これからも宜しくお願いします」  


「太極拳を終えて」       工学部 機能材料工学科 1年 真下小春

   2012年1月24日火曜日、平成23年度後学期開講の「太極拳」の授業は終わった。それぞれの学生チームの表演と先生方からの剣を使った難易度の高い演武を見せてもらったことがその日の内容であった。期間は10月の開始からたったの4か月間と本当に短かったが、充実した授業であった。
   そもそも私が太極拳を履修しようと考えたのは、祖父母が週に1度太極拳の練習のため教室に通っていたことと、5年前に訪れた中国・北京の朝の公園で、中国人が多数やっていたのを見たことが印象に残っていたからである。踊ることが昔から好きで、少しダンスを習っていたこともあり、体で何かを表現することには多少の自信があった。しかし、スローテンポである太極拳は、遅いだけに難しそうだとも思っていた。それと私は体が硬いので、あまり複雑な動きはできないかもしれないという不安もあった。
   しかし、いざ始めてみると太極拳ならではの独特な動きとテンポが、とても合っていて動きやすかった。授業でも一つ一つの動作の名前を漢字で書いて丁寧に教えてくださったこともあり、興味がどんどん湧いて毎週火曜日が楽しみに思えるようになった。「太極拳」と聞くと年配の人がやっているイメージが大きいからか、周りの友達からは驚かれ「どんな感じ?」と聞かれることも多く、恥ずかしながら授業以外の場所で、習った太極拳の動作を披露することもあった。他にも、岐阜大学に来ている中国人留学生と一緒に太極拳を楽しんだこともあった。
   授業も後半に入ると、音楽に合わせてやることが中心になっていった。これが本当に楽しかった。加えて、どんどん難しい動きも増えていったが、先生方の細かい手足の動きまで何度も見ることができたので、分からない部分も解決し修得していくことができた。動きが遅い上に、体育館での授業だったので、体があまり暖まらず震えながら受講することも数日あったが、それでも休まずに参加することができたのは、自分が太極拳の授業を楽しく思えたことが大きかったと思う。他の授業では座学ばかりで、担当の先生とのコミュニケーションをとることもなかなか難しいので、今回の様に各人が名札を付けて、自分の名前を呼んでくださることも新鮮であった。
   折り返し点を過ぎてからの授業はあっという間に終わってしまったように思う。最後の授業を終えて、無事にやれたとの充実感で満たされるとともに、まだまだやり足りないとも感じられた。私にとって太極拳は今まで何も知らなかった未知の世界であったが、この半年間で視野ががらりと変化した。今も一つ一つの動きが難しいと思うことは否定できないが、それよりも強く興味を持って太極拳を楽しむことが出来るようになった。この奥の深いスポーツをもっと知りたいし、年配の人がやるスポーツであると考えている友人に対してもぜひ勧めていきたい。まさか、自分が太極拳をやることになるとは思わなかったし、この太極拳との出会いは今後も大切にしていきたいと思う。最後に、それだけ強く思うことができた太極拳の授業をしてくださった先生方には、心から感謝したいと思う。先生方のおかげで新たな経験を積むことができた。これからも多くの後輩たちが、太極拳を受講して、新しいスポーツを体験してほしい。そして、私のように思える学生が増えてほしい。
   半年間の先生方の親切なご指導に感謝します。ありがとうございました。


「太極拳の授業を終えて」       医学部 医学科 1年  桑山信希 
 
   私は太極拳というものを、名前だけは随分と昔から知っておりましたが、実際にこの目で見てこの体で演武するという体験は生まれて初めてのことでした。最初に太極拳に対して持っていたイメージは、中国の朝の日常風景というものでした。子供からお年寄りまで皆健康のために、早朝から集まって楽しんでいる光景をメディアを通してよく目にしてきました。誰にでもできるという点においては、拳”というもののその実は“舞”に近いのではないか、とすら思っていました。そのせいもあって、私がこの授業を履修しようと思ったとき、それほど大変ではないだろうと多少甘く見ていた部分がありました。
   さて実際に授業を受けてみてどうだったかというと、これが思ったよりきつかったというのが率直な感想です。授業の前半はまだ暖かい日も多く、一通りの動作練習を行うと汗ばむこともしばしばでした。やはりこれは武術であるのだと思い知った次第です。先生方のお話の中で、今では日本でも多くの愛好者がいて比較的高齢者が多い、というくだりがありましたが、なかなかどうして、これは立派なスポーツと言って差し支えないと思います。健康増進はもちろんのこと、体力増強も出来るでしょう。少し太極拳について調べてみたところ、本場中国では「制定拳(簡化太極拳)」として政府が国民の健康増進を目的に太極拳の普及に力を入れてきた歴史があることを知りました。また、太極拳の源流は武術としての「伝統拳」にあり、こちらは授業で行なった様な、ゆったりとしたものではなく俊敏で力強いことを知り、是非一度こちらも見てみたくなりました。もちろん実際にやってみる機会があれば良いのですが、さすがにそれは厳しいような気がします。せっかく今回の授業で太極拳の入口に立てたのですから、是非とも前に進みたいと思うのですが、まずは「二十四式太極拳」をマスターするところから始めた方がいいのでしょう。伝統拳は全く別のものと考え、話を制定拳に戻します。私が今回の授業で学んだ型の中で印象に残っている型は「ゴンブー(弓歩)」の姿勢です。最も基本的な姿勢であると思いますが、この姿勢は正中線を軸にバランスがとれ安定した姿勢であると感じました。ちなみに、私は部活でラグビーをやっていますが、相手に当たる時の姿勢はまさにこの弓歩の姿勢です。この姿勢で当たるときれいに相手をはじき飛ばすことができるのです。一緒に授業を受けた安田君がコーチとして部活で指導してくれているのですが、「桑山くん、当たる時は弓歩の姿勢だよ!」と言ってくれたのを今でも覚えています。ラグビーと太極拳は全く異なる運動ですが、何か通じる部分があるのだなあと感慨深いものがありました。
   今回の授業では二十四式太極拳を全てやることはできませんでしたが、これまでに習った部分を忘れないようにし、いずれは二十四式を演武出来るようになればなと思います。太極拳は、それなりの負荷はあるものの年齢に関係なくできる運動だということもわかったので、これから医学に関わっていく私の人生において、いずれまた太極拳に触れる機会があるでしょう。その時には今回の授業を思い出しながら太極拳を行いたいと思います。短い期間でしたが先生方、丁寧なご指導ありがとうございました。


「太極拳」       教育学部 国語学科 1年  河村彩夏

   まず、私が太極拳の授業を取ろうと思った一つの理由は、バレーボールやテニスなどのポピュラーなスポーツはやろうと思えば何時でもできますが、太極拳はポピュラーでなく私にとって未知のスポーツで、大学の授業などでなければ経験することができないと思ったからです。
   最初の授業で、これから私達が学ぶ「二十四式太極拳」の先生方による模範演武を見せて頂いた時、とても動作がゆっくりであることに驚きました。私の勝手なイメージでは、ジャッキーチェーンのような素早い動きだと思い込んでいました。しかし、合わせる音楽のXジャパンの曲調(Forever Love)と太極拳の動きがうまく一体化しているようで、すごいなぁと思いました。実際の授業が始まって、初めはゆっくりした動作だから覚えてしまえばできるだろうと思っていました。しかし、まず腰を落としてその姿勢を保つところから大変でした。猫背になってはいけないし、だからと言って意識しすぎると背中をそってしまいそうで、基本の姿勢を身につけるのは簡単ではありませんでした。授業が週に1回だったので、その日の授業では覚えることができても次の授業では忘れてしまいそうだったけど、いつも前回の復習をしてくださり、授業でやったところまでを通して練習できたので、回数を重ねるごとに太極拳の動作を覚えることができました。しかし、動きを覚えることはできても、なかなか先生方のようにお手本通りにはできませんでした。非常に優雅な動きで、体をリラックスさせているように見えても、全神経を集中させているかのような無駄のない動きだったので、そんな理想的な動きに少しでも近づこうと一生懸命頑張りました。私はあまり体が柔らかい方ではなかったので、全体的に動きが硬くなりがちでした。一つの動作から次の動作へと移るところなど、ぎくしゃくしないでなめらかにつなげられるように意識してやりました。太極拳をやっているうちに、気持ちも穏やかになるというか、落ち着いた気持ちになることが分かりました。太極拳は、特に精神と体がリンクしていて影響しあうスポーツなのではないかなぁと感じました。最終授業の発表会で、私のチームの友人が選んだ曲は「小さな河の流れに」という、リチャード・クレイダーマンと中国のオーケストラによる演奏で、太極拳の雰囲気によく合っていてやりやすかったです。曲名のように流れるようななめらかな動きを意識してやれたと思います。最後の発表会では、友人達の前だったのでとても緊張しましたが、今まで練習してきた成果を出そうと頑張りました。自分の中では、良き集大成であったと思えました。授業の最後に、先生方が授業で教えて下さったのとは違う、剣を使った「32式太極剣」を見せて下さいました。雰囲気が特別で、また異なった太極拳の魅力を知りました。とってもかっこいいなぁとの印象です。
   太極拳の授業はこれで終わってしまったけど、見た目の美しさというか、動きで魅せるスポーツの楽しさが学べたと思います。これからも体を動かすことの楽しさを、感じていきたいと思います。ありがとうございました。


「太極拳」     応用生物科学部 応用生命科学課程 1年 西松佑希恵

   私が後学期の授業で太極拳をやってみようと思った理由は、大学生になってからあまり運動していなかったので週に一回でも何か運動したい、でもハードなものは大変だと思ったからと、高校生の時3年間担任していただいた先生の趣味が太極拳だったので、先生が好きな太極拳ってどんなものなのかと興味をもったからです。そして、初めて太極拳をやってみた時に感じたことは、やる前までは軽めの運動というイメージだった太極拳でしたが、実際は、ゆっくりであるけれども、体全体を使ってじっくり細かく動く、想像していたものと全く違うハードな運動であるという印象に変わり、とても驚きました。また、私は体がものすごく硬いので、ストレッチすらも最初は大変でした。「太極拳は自分にあっていなかったのかなぁ」と思ったりもしましたが、これからの人生で太極拳をやるチャンスなんて滅多にないだろうし、自分で選んだことだし、今まで硬かった体を柔らかくするチャンスでもあると思い、友達と一緒に最後まで頑張ろうと思いました。太極拳を続けていく中で、自分に影響があったことは、少しでも太極拳をマスターしやすくするために、毎日寝る前にストレッチをすることを習慣づけたことです。その結果、太極拳をやり始める前に比べて、すごく体が柔らかくなりました。また、先生方が授業で何度も言っていましたが、太極拳は体の軸を作って動くので、姿勢が大事であるということで、これも以前は、背が高いので猫背になりがちだったのが、少し改善でき、太極拳をやってよかったなぁと思いました。また、太極拳というスポーツとしての感想は、全体としては大きく動きながらも、細かいところまで気をつける武術なので、実際自分でやろうとしても難しくて、うまくできないところがたくさんありました。特に「単鞭」や「右蹬脚」が、体がついていかず難しかったです。また、それぞれの動きを連続して行う順序もなかなか覚えることができず、ほとんど先生方の動きを見ながらやっていました。さらに、鏡で自分の動きを見て反省することができず、もっと自分がどんな風に動いて、どこが先生方と違うのかを意識すれば良かったと思いました。授業最後の前週に体調を崩して欠席してしまったことも後悔しています。私の太極拳の感想は、うまくできずに反省点が多くなってしまいましたが、音楽に合わせて太極拳をすること自体は、楽しいと思いました。また一度自分一人でも音楽に合わせて、授業で習ったところをやってみようかと思います。
   最後になりましたが、後学期の毎週火曜日に親切に教えてくださった清水宏晏先生はじめ諸先生方、時間を割いて下さり、貴重な体験をさせていただき、太極拳の授業を通してたくさんのことを学ばせていただきました。本当にありがとうございました。


「太極拳の授業を受けて感じたこと」     工学部 電気電子工学科 1年 野々村僚太

   僕は全学共通教育の授業をシラバスで調べている時に「太極拳」の授業を見つけました。いろいろなスポーツの授業がある中で、せっかくだから経験したことのない太極拳を選んでみようと軽い気持ちで履修申請しました。
最初の授業に出席したとき、先生方がXジャパンの曲に合わせて「二十四式太極拳」を見せてくださったのがとても印象的でした。太極拳というと硬いイメージがありましたが、音楽に合わせて楽しく行えるものだとイメージが大きく変わりました。そして、これなら自分もやっていけると思えるようになりました。
   しかし、いざやってみると想像以上に難しく苦労しました。激しい動きはないけれど、肩の力を抜くことや重心のゆるやかな移動といった細かい動作が要求される結構ハードなスポーツだと感じました。私は足を上げた状態で体をまっすぐにする動作の時に、体を反らしていると何度も指摘を受けました。太極拳の動作では、体のバランスを取るのが最も大変でした。授業では3人、時には4人の先生方が一人一人に親切で細かいアドバイスをしてくださるので、安心して技術を身に付けることができました。そして、慣れてくるうちに体の力が抜けたような感じになり、午後からゆったりと落ち着いて過ごせたことは、とても有意義な時間になったと思います。
   清水先生が授業の初めによく世の中の出来事の話をされていたのが印象的でした。「新聞を読みなさい!」と。特に、私は電気電子工学を専攻しているので、「スマート・グリッド(賢い送電網)」の話が有りがたかったです。これは将来のエネルギー供給にとって、キーポイントになりそうです。このように、単に体育の単位をとるということだけでなく、これからの人生で大切なことが身についた、との実感を持てました。
   最終表演のチームごとの発表会では、とても緊張しましたが、なんとかミスなく発表を終えることができ達成感がありました。みんな初歩からのスタートで、ここまでできるようになったという感慨でうれしくなりました。これは先生方が温かい雰囲気で授業を展開してくださったおかげでもあると思いました。
   僕は短い期間ではありましたが、全学共通教育の授業で太極拳を受講できたことは、素晴らしい経験になりました。今後、太極拳に触れ合う機会があれば、もっとチャレンジしていきたいと思います。もし、全学共通教育の授業で選択に迷っている人がいたら、僕は即座に、この「太極拳の授業」をお勧めします。
   先生方、いままで本当にありがとうございました。