太極拳

( 2010.10~2011.2 )

全学共通教育―スポーツ・健康科学―「太極拳」:火曜日の3時限、4時限;第2体育館
担当教員:
  非常勤講師;清水宏晏 岐阜大学名誉教授(工学部)
           (日本武術太極拳連盟 公認指導員 公認審判員)
  非常勤講師;清水宏子 (日本武術太極拳連盟 公認指導員)
  非常勤講師;馬場理恵 (日本武術太極拳連盟 公認指導員)
  補助指導員;樋口幸子 (日本武術太極拳連盟 公認指導員)

写真;左より、樋口幸子、清水宏晏、馬場理恵、清水宏子



「概況」

 「太極拳」開講以来7年目を迎えました。最近、学生諸君の履修希望が多くあるため「太極拳」の授業を2コマ実施しています。ここでは3時限目と4時限目の2つの授業をまとめて報告いたします。これまで6年間の経験を踏まえて、今年度も太極拳の国際的スタンダードである「簡化24式太極拳」を全て教え終わることを主目的とせず、むしろこの「簡化24式太極拳」の基本を徹底することを最大の目標にしました。
 学生諸君がパソコンを用いてのウエブ履修登録が始まり、今年度も「太極拳」は希望者多数の対象となり、電子的な抽選により選ばれた3時限目30名、そして4時限目31名の学生諸君をそれぞれA, B, Cの3グループに分け、3時限目を清水宏晏が主、4時限目を清水宏子と馬場理恵が主となり、また補助指導員として樋口幸子さんの好意による時々の参加を得て、2つの「太極拳」授業の指導・習熟に当りました。これは、「24式太極拳」の初期導入には、予想以上に手が掛かるからです。
 幸運にも今年度は、実質14回の(各90分)実技授業を実施でき、最終回の学生表演では、各グループが太極拳の格好と雰囲気を漂わせ、相当満足できる演武を見せてくれ、その成果は十分得られたものと信じています。

「受講者の学年別、学部別の分布数等」

3時限目:総数30名(男;13名、女;17名)
    1年生;30名。
    教育学部;8名、地域科学部;1名、医学部;9名、
    応用生物科学部;6名、工学部;6名。

4時限目:総数31名(男;7名、女;24名)
    1年生;31名。
    教育学部;10名、地域科学部;4名、医学部;6名、
    応用生物科学部;5名、工学部;6名。



3時限目の最終日集合写真



4時限目の最終日集合写真Ⅰ



4時限目の最終日集合写真Ⅱ

「簡化24式太極拳への取組み;目標と結果」

 「簡化24式太極拳」は、50余年前の1956年に太極拳の普及のために中国で制定され、24組の動作からなる標準的な太極拳として世界で広く愛用されている。それに要する時間は、通常6-7分くらいで、一見短時間と思える24式太極拳であるが、これをマスターするのは、なかなか難しい。それは、ただ24組の動作の順番(套路;とうろ)を覚えるだけでなく、太極拳の本質である「肩を落とし胸を張らず、体をゆるめる」「体の中心軸を垂直に持続して、重心移動を行う」「体をねじらない」「顔、手足、胸腰部の動きを協調一致させる」「動作のスピードを均一に」など多くの要求を満たさなければ、自然で美しい太極拳はできず、ぎこちない太極拳になってしまう。したがって、授業の最初には、毎回十分なストレッチで体を柔らかくし、そして太極拳の基本である手法(手の動き;例えば、体の前でボールをつくる(抱掌))や歩法(歩き方;足の出し方や重心移動の方法)の習得に時間をかけた。そして授業の前半部分では全員の総合練習により、平均すれば1回の授業で2組の新しい動作(套路)を覚え、さらに後半部分ではA, B, Cの3グループに分かれ少人数でそれらの習得の徹底を図った。
 学生諸君は、当初、何をやっているのか判らない様な反応を示し、太極拳は予想以上にたいへんで、筋肉痛を訴える学生もいたようであった。しかし、回を重ねる度に、だんだんと太極拳らしい「ゆったりとした動作」を習得し、彼らの太極拳への順応性とイメージを体で表わす能力に驚いた。
  最終回のグループ表演では、A, B, Cグループがそれぞれ選んだ音楽に合わせて、「簡化24式太極拳」をゆったりと演武してくれました:音楽は、3時限A;未来予想図II (ドリームズ・カム・トゥルー)3B;オリオン(中島美嘉)3C;タイタニック主題歌(セリーヌ・ディオン)。4時限A;かえで(スピッツ)4B;Cabi und Klaus 4C;雪の華(中島美嘉)。見ていた他のグループと指導者は、それぞれの表演に大きな拍手をおくりました。今年度は、特に厳しい冬のため、大きくて冷えきった第2体育館での練習であったが、当初の基本に重点を置いた「太極拳」習得の目的を達成してくれた学生諸君を見ながら、大きな喜びと充実感を感じました。

「2つの授業を終えて;感想そしてお礼」

 
太極拳を短期間に初心者に教えることは容易ではありません。それは、心(頭で考えること)と体(イメージを動作で表わす)の協調一致と融合には、長い時間を必要とするからです。今年度は、受講者全てが1年生で、フレッシュな若者達は、熱心に「太極拳」に挑戦してくれました。しかし、1年生のためか、初めの頃はなんとなく静かで盛り上がらず、指導者達はその雰囲気を心配していました。しかし、回を重ねる内に、自主的に太極拳のそれぞれの動作を質問したり、また具体的に自分の動作のチェックを求めたり、やる気が十分見えてきました。そして、最終的には、最終回のグループ表演に向けて、みんなの気持がまとまりました。
 今年度の授業でも、かっての「簡化24式太極拳」を全てマスターさせることをあきらめ、「太極拳」の基本をじっくり習得してもらうことに主眼を置きました。その結果、24組の内の20番目(シャントンペイ)までで終わりました。それは期間的に十分な余裕がなく、また限られた時間内で行わなければならないためです。受講生の授業終了後の感想文の中には、24式の最後までやりたかった、との意見も少しありますが、練習を走らないで、基本をじっくりやれて良かったとの意見も多くありました。大切なことは、「太極拳」の真髄を知ってもらうことである、と信じています。
 最後に、この「太極拳」の授業を実施することに協力いただいた教育学部保健体育の川岸教授をはじめ、スポーツ/健康科学のスタッフにお礼を申し上げます。今年度も2コマ(2回)の「太極拳」授業が出来たことは、より多くの学生諸君に太極拳を体験してもらったことを意味しており、4人の指導員は非常にうれしく思っています。清水宏晏は、一昨年度、工学部教授を定年退職しましたが、この平成22年度も非常勤講師として、昨年度と同様に「太極拳」授業を2コマ実施できたこと、ありがとうございました。また、今年度も、親しい太極拳友人の樋口幸子さんが補助指導員として協力してくれたこと、ここに記して厚くお礼を申し上げる。



学生諸君との記念写真



指導者達による太極剣表演の後、剣を確かめる学生諸君

授業終了後に寄せられた3時限目と4時限目の受講生の感想文の中から,彼らの承諾を得て,7編を以下に載せました。


「太極拳感想」
           教育学部 英語教育課程 1年 田頭美穂


 大学の講義でまさか太極拳があるなんて思ってもいませんでしたが(他大学の学生に言っても驚かれます)単位取得と新しい経験が同時にできるという好都合はそうそうないので、この講義を受講しようと思いました。
 初めて体育館に入った時、太極拳の動作を表わす漢字の羅列を、鏡の前に見つけてびっくりしました。そのイメージだけで難しそうと思いましたが、それらの名前には一つ一つ意味があって、ちゃんとした武術なのだとわかると逆に理解しやすくなりました。今では動きながら「膝を払った、そしたら相手がふらついた、今なら突ける!」と頭の中で実況できるほどになりました。まだ動作は極まっていませんが、このような想像って必要だと思います。
 最初の難関は、「起勢」の時に股関節を緩めて後ろに座るイメージがいまいち掴めなかったことです。今まで経験してきたスポーツで、「股関節を緩める」という動作がなかったので、本当にわかるまで苦労しました。「とりあえずお尻を突き出す感じなのかな…」と勝手に解釈していましたが、一番しっくりきたのは「虚歩」を習った時でした。股関節を緩めて後ろに座ることで、断然バランスがとりやすく安定することが判った時に、新世界の幕開けに立ち会った気分でした。「重心を真っ直ぐ下に」という意味も同時に理解できました。先生がおっしゃっていることと自分が解釈していることに相違が生じると息苦しいのですが、理解できた時の感動を思い出すとスポーツってやめられないなと思います。
 そして段々慣れてくると、一つ一つの動作が自分のものになっていくのが判りました。新しい動きを習う度に覚えることに集中してしまい、本来の動きの意味を見失うことがありました。そんなときに本当の動きを思い出そうとするとなかなかできずに苦労しました。ゆっくりだからこそ、適当にやっているということが顕著にわかってしまいます。全てを通してきちんとやっているつもりでも、油断すると股関節が硬くなる、重心が曖昧になるなどのミスが出てしまいます。武術と言うだけあって、かなりの集中力を要するのだと実感しました。最後まで集中力を保つことができたら、よほどの力が付いたことになるのではないかと思います。
 先生方の32式太極剣の表演も素晴らしく、いっそう太極拳に興味が沸きました。太極拳について何も知らない私にも理解しやすく、先生方のチームワークもうまく取れていてとても受講しやすかったです。
 たった半年でしたが、非常に濃い内容をやりきったという感じがします。これだけの単位数でここまで内容理解ができるとは思っていませんでした。授業最後の発表会も多少ミスはしましたが、自分の中で一番の表演ができたと思っています。先生方、ありがとうございました。


「太極拳」
           医学部 医学科 1年 服部公博


 自分が太極拳を習うにあたって初めに感じたことは、型を習得することが他の武術に比べてかなり難しいということでした。そもそも太極拳は門外不出の武術として育ち、そののち健康にも効能があるという理由で簡易化され一般に広まったそうで、それを考えるとかつての太極拳はいかに難しかったか想像もできません。
 特に授業を終えてから思ったことは、自分と先生方とでは足の挙動が全く異なっていたことでした。健康維持に大きな効果を持つとはいえ、スポーツとしての側面を多分に持つ太極拳は見た目も重要だと思い、練習時から先生方の動きをうまく真似るようにしていました。しかし、なかなか足の動きだけは真似できず、授業最終日の集団演武(発表会)の時にもまだ習得できませんでした。今では、授業を時たま休んだことを悔やむばかりです。
 また、他の武術と異なる点は生体エネルギーという概念があることです。空手にも「臍下丹田」という言葉がありますが、大地からのエネルギーを吸収するという点にロマンを感じました。さらに円の概念を重要視しており、陰陽道の思想を大いに受け継いでいるのだと感じました。同様に発勁(中国武術における力の発し方)や独特の呼吸法から気功とも関連があるのではと思いました。
 しかし、この授業を終え自分の中には満足感がありました。新しい武術を覚えられたことに喜びを感じました。また、ゆっくりでも大きな動きを続けることで寒い冬でも暖かくなり、定期的に気持よい運動ができ毎週の太極拳の授業がとても楽しみでした。特に普段の僕たちの動きはてんでバラバラで、手だけや足だけといった分断された体の使い方をしています。それを太極拳では一つの動きにして、全身を協調させるのです。最初はなかなか難しいのですが、全身が協調していく時の感覚はとても気持ちいいものです。僕はこの気持ちよさを味わうために太極拳を続けていたようなものでした。また、かつて空手の練習をしていたときの思い出がよみがえってくるようで、懐かしい思いを持ちながら毎週の練習をしていました。
 簡化24式太極拳の全ての型を練習できたわけではありませんが、通しで練習すると全体の流れを感じることが出来、それらを音楽にあわせて演武しました。自分のC班は、タイタニックの主題歌に合わせて行いましたが、テンポのゆっくりとしたよい曲で終わった時には、とても気持ちがよかったです。
 これから先、おそらく太極拳をする機会はないかもしれませんが、医師になった後に患者さんの健康促進のために太極拳を取り入れることも悪くないと思いました。もし、再び太極拳をする機会がきたなら、今回の授業の経験を生かして、さらに上手になれるように練習をしたいと思います。
 とても楽しい授業をありがとうございました。後輩にも推薦しようと思います。


「太極拳の授業を受けて感じたこと」
           工学部 生命工学科 1年 神崎真吾


 「太極拳」…この体育の講義を見つけた時、僕は小学校時代を思い出しました。
六年生の時の担任の先生が中国の文化にとても詳しい人で、学習発表会の時に太極拳を発表することになったのです。だから今回、一度経験したことのある太極拳をもう一回チャレンジしてみようと決めました。
 太極拳には本当は相手がいて、相手から身を守る武術として生まれましたが、今では地面を感じながら行う健康法として中国では広く根付いています。簡化太極拳には24式の基本動作があり、授業では20番目まで学びました。その中で僕が好きな動作は、16、17番目の「左下勢独立」、「右下勢独立」です。体を低くして体重移動するのが大変ですが、ここがきまるととても見栄えがいいと思います。他には「雲手」が難しいと感じています。これは授業で習った20種類の動きの中で、一番太極拳を象徴する型で、記憶に残りやすい動きだと思います。僕はこの雲手が好きです。
 そして、2月1日の授業最終日に発表会がありました。僕は3時限A班で、自分が選んだドリカムの「未来予想図Ⅱ」の音楽に合わせました。この曲はそれほど早くもなく太極拳にぴったりだと直感で選びました。僕は自分が選んだこの曲にあわせて発表することができて本当に嬉しかったです。発表会は普段の練習よりも少し緊張しましたが、全体的にいい出来だったと満足しています。他のB班とC班の演技、そして先生方の剣を持った32式太極剣の表演を見て、太極拳は本当に良いものだと感じています。
 授業は清水先生、宏子先生、馬場先生の三人によって行われ、月に1度くらいは樋口先生が指導に来てくださいました。先生方、本当にあたたかいご指導ありがとうございました。授業の雰囲気がとても良く、全学共通教育の中でもかなり良い講義だと思っています。僕は人生で2度目の太極拳なので、もうこれからは太極拳の経験者として、太極拳の良いところを伝えていきたいです。
 これから太極拳を始める人に伝えたいことは、最初は動きが少ないので、つまらなく感じるかもしれないけれど、これが24種類そろった時、そしていい曲と動きを合わせた時、最高の喜びを感じるということです。
 他のスポーツと比べて怪我をするリスクもほとんどありませんし、無理のない健康法です。是非もっと広まって欲しいです。僕はこの講義を取ることができて本当に良かったと思いました。


「太極拳を終えて」
           応用生物科学部 食品生命科学課程 1年 村瀬彩乃


 私が太極拳の授業を選択した理由は二つある。一つ目は、カリキュラムの関係でスポーツ演習科目を履修しなければならなかったことである。前期はそのことを知らず、健康科学を履修した。二つ目は、スポーツが苦手だったことである。激しく体を動かす科目はとても自分には選べなかった。このように、とても消極的な理由から受けることになった太極拳の授業であったが、実際は大変興味深く、積極的に授業に参加できたと感じる。
 私は授業が始まるまで、太極拳についてほとんど知らなかった。太極拳と聞いて思い浮かぶものといったら、中国の公園で朝、老人たちが並んでゆったりと太極拳をしている光景くらいであろうか。老人にもできるものなら自分にもできるだろうと根拠のない判断を下していた。しかし10月の授業の開始とともに、その判断が甘かったと気付かされることになった。全くできなかったのである。流れ、体勢、手足の動き、どれもがとても難しかった。過去に少しバレエの経験があったのだが、それともまるで違っていた。特に戸惑ったのは、足を踵(かかと)から降ろしたり踵を蹴り出したりすること、流れに強弱がなく、常に一定のペースで進行していくことであった。これらはバレエでは経験がなかった。そうして、一つ一つのポイントに驚きながら、新しいことを覚えていった。授業が何回か進んでいくと、少しずつコツがつかめてきた。「右手を動かして、次に左手、同時に体の方向」と覚えていくだけでなく、流れを大きく見て動くことができるようになった。また、「気」を感じたり動きのイメージを持ったりする余裕も生まれた。先生に褒めていただけることも多くなった。反対に、進んでいく中でできないことも増えた。体の柔軟性がなく足が上がらなかったり、どこまで進んでいるか分からず混乱したりした。体勢の維持がつらく、足がポキポキと音を上げたりもした。しかし、さらに進んでいくとできないことも減っていった。そうして、いよいよ授業最終回の発表会を迎えた。あがり症の私は少し緊張してしまった。他の班の発表を見ると、最初の頃より皆ずっと上達していた。同じ型のはずであるのに一人ひとり動きに個性があって、見ていて飽きなかった。三番目に自分たちの班の発表をした。上手く体が動かなかったり、間違えたりしたところも何ヵ所かあったが、無事に終わることができた。最後は先生たちによる発表があった。「太極剣」の演技であったが、さすがだと改めて感じた。
 ここまでを振り返ると、やはり太極拳を履修してよかったと思う。おそらく大学で授業がなければ、一度も経験せずに終わっていただろう。そして、もう一つ履修してよかったと感じることがある。それは健康面のことである。私は人に比べ、不健康な方である。どこが悪いというわけではないが、体調を崩しやすい。しかし、太極拳を初めてからそれが改善したように感じる。偶然かもしれないが、最近はずっと体調が良かった。定期的に続けていけば、確かに健康増進に役立つことだろう。私の母は私よりさらに不健康であるため、現在太極拳を勧めている。家で暇な時に、少し教えてあげてみてもいいかもしれない。これから先、太極拳に触れることは少ないとは思う。しかし、次に太極拳の名前を見る時には、前より関心を持って注目していきたい。そして機会があれば、また挑戦してみたい。


「太極拳」
           教育学部 理科教育(生物学)1年 古川絵理


 私がこの講義を選択したのは、ただ単に「面白そう!」と思ったからでした。運動神経ゼロのため体育なんて取りたくなかったのですが、教員免許を取るためにどうしても体育の2単位が必要でした。そんな憂鬱な気持ちでシラバスをめくっていた時に「太極拳」の講義を見つけました。ゆっくり、全身運動、武術…、経験者もおそらくいない、「これしかない!!」と私は、この講義を履修しようと思ったのです。衝動的に選び履修したので、もちろん知り合いはおらず、少し孤独を覚悟して授業に臨みましたが、先生方が気軽に声をかけてくださり、また周りの学生も仲良くしてくれて、楽しく受講することが出来ました。
 太極拳は何も考えずにやると、ただ「のそのそ動いている」だけですが、体重移動、目線、見栄え、重心といろいろな項目を意識して行うと、とてもやりがいのあるものです。しかし、たいへん難しいものでもありました。それを一番感じさせられたのは、幾度となく目線や肩の位置を指摘・注意された時でした。言われる度に気を付けないと、と思いつつすぐ忘れてしまい、また注意されるというのが一体何度繰り返されたことか…。しかし、先生方の「繰り返し療法」のおかげで、「意識する」ということが習慣付けられたと思います。人の目を見て話そうと意識するようにもなりました。
 最後の授業の発表会で私が発見したことは、みんな同じ動きをしているはずなのに、それぞれ全く違う動作に見えたことです。同じ体育館で、先生の同じ動きを見て、同じタイミングで太極拳を習ったはずなのに、どうしてだろう?と思いました。そして、私は次の結論に至りました:きっと私たちは自分で考えているほど自分の体を制御できず、また、思っているほど自分の体の動きを把握できていないんだ、と。
 私は、この太極拳の授業を通して、改めて自分を見つめることが出来たかなと思います。普段生活するなかでは見えてこない、体のこと、動作のこと、物事に取り組む姿勢、社会に出る前の大学生のこの時期に、これらに気付けてよかったと、つくづく感じています。
 24式太極拳の最後までを教えてもらえなかったことと、先生方が最後に披露してくださった太極剣をやれなかったことが、心残りですが、またの機会がある時に挑戦したいです。後学期の半年間でしたが、先生方には、お世話になり、ありがとうございました。


「太極拳感想文」
           教育学部 国語教育課程 1年 桑原篠太郎


 この太極拳の授業を選択したのは、「運動が得意な方ではないし、出来るだけ苦労しないのを選ぼう」と思っていたからでした。しかし、その考えが間違っていたことは最初の授業で思い知らされました。
 まず、最初に困惑したのは「起勢」の動作でした。「股関節を緩めて椅子に座るイメージ」と、先生方が言っていましたが、最初のうちは全くうまくできませんでした。よくわからないうちは、「とりあえず膝を曲げればいいかな」位にやっていました。正直言って、最初のうちは太極拳の授業が憂鬱でした。
 しかし、この授業の5分間の休憩時間がその思いを大きくかえてくれました。留学生(工学部)の「クイさん」や「アムリさん」と交流するようになって、お互いにその日やった動作や、これまでの動作でよくわからない部分について、お互いに「どうやればうまくできるか」について、意見を出し合って真剣に考えられる様になりました。特に、クイさんは少林寺拳法の経験者で、体の動かし方やイメージについても、非常に的確なアドバイスをしてくれ、とてもありがたかったです。
 また、先生方からも、太極拳の動作が、どのような意味合いを持っているのかについて、武術における動作等の説明を交えながらわかりやすく説明して頂け、この授業の受講回数が増すにつれて、どんどんと楽しさが増していきました。だんだんと覚える動作が増えてくると、動作同士のつながりをいっそう意識する必要も出てきてなかなか大変でした。また、新しい動作が増えてくると、これまで習った動作のポイントを忘れてしまったり、おろそかになったりしてしまうこともありました。
 しかし、そのようなことになっても、休憩時間の度に、クイさんやアムリさん達と一緒に、動きを見せ合ったりアドバイスをし合ったりして、復習ができました。普段だったら、学科も学部も違うため、まず交流することがありませんが、全学共通教育の授業であること、また少人数で行う授業ならではの親密な交流ができて良かったです。
 授業も最後に近づくにつれて、音楽に合わせて行うことが多くなりましたが、足の運びは、意識を向けていないといい加減になってしまいがちでした。それでも、最後の授業の発表会の時には、ミスもしてしまったところはありましたが、一所懸命に取り組むことができたと思います。また、先生方の太極剣の表演もすばらしく、その演技は先生方のチームワークがあってこそだ、と思いました。
 なかなかうまくできなくても、根気よく丁寧に教えて頂けた先生方の努力あってこそ、この授業が成り立っていたと思います。14 回という短い期間でしたが、大変多くの学ぶことがありました。この授業をきっかけにして、少しでも太極拳に触れていけるようにしていきたいです。有難うございました。


「想像以上に面白かった太極拳」
           工学部 機械システム工学科 1年 DAM XUAN QUY
                                (ダム スァン クイ)


 太極拳の授業を受けた理由は、前から武術に対する興味を持っていたことでした。特に、太極拳への憧れがありました。太極拳を勉強してから、武術的のみならず、健康、精神的にもいいことをたくさん得ました。
 まず、なにより太極拳をする際、呼吸を整え、リラックスすることがストレス解消になっていると思います。勉強とアルバイトを共にしている私は、毎日忙しいせいでストレスがたくさん溜まっています。太極拳を勉強してから、少しずつストレスを解消しました。前は頭痛のせいで、よく眠れない夜もありましたが、太極拳をしてから、最近熟睡できるようになり、頭痛も無くなりました。
 また、太極拳は、武術的にも非常に面白いと思います。私はだいぶ前に、少林拳や空手を習ったことがありました。太極拳は少林拳や空手とは違った厳しさがあったし、正中線をしっかりと守り、三角形を作って構えるところはいかにも武術的で、すっかり気に入ってハマッテしまいました。
 習い始めの頃は、空手の時と違って「力を抜いて」と、よく注意されたのを思い出します。最初はすぐ慣れなくて、非常に難しかったです。しかし、毎週先生達は大変熱心で丁寧な指導をしてくださいましたので、少しずつ覚えるようになって、いつの間にか、太極拳に夢中になりました。家でも、毎朝、練習するようになりました。今、少し成長したと感じています。
 さらに、精神力をつけることができたと思います。前は、人の前で喋る時はとても緊張していました。また、仕事をする時、何でも、焦っていた日々が続きました。太極拳を練習してから、自分に自信がつき、緊張や焦ることなどが減りました。
 この太極拳の授業を受けて、本当に良かったと思います。これからも、太極拳を練習し続けたいと思います。