太極拳
    平成19年度 後学期
                                            (2008.10 2009.2


全学共通教育-スポーツ・健康科学-「太極拳」:火曜日の3時限、4時限; 第2体育館

担当教員: 工学部機能材料工学科 教授 清水宏晏
                                (日本武術太極拳連盟2段 公認B級指導員 公認2級審判員)
非常勤講師:  清水宏子 (日本武術太極拳連盟2段 公認B級指導員)
                
    馬場理恵 (日本武術太極拳連盟2段 公認B級指導員)

               
     清水宏晏 教授(中央)、非常勤講師 清水宏子(左)と馬場理恵(右)



「概況」

 「太極拳」開講以来5年目を迎えました。昨年度から、学生諸君の履修希望が多くあるため「太極拳」の授業の数が1コマ増えて、2回実施しており、今学期はその2年目です。ここでは3時限目と4時限目の2つの授業をまとめて報告いたします。これまで4年間の経験を踏まえて、今年度も太極拳の国際的スタンダードである「簡化24式太極拳」を全て教え終わることを主目的とせず、むしろこの「簡化24式太極拳」の基本を徹底することを最大の目標にしました。
  
昨年度から学生諸君がパソコンを用いてのウエブ履修登録が始まり、「太極拳」は希望者多数の対象となり電子的な抽選により選ばれた3時限目30名、そして4時限目30名の学生諸君をそれぞれ
A, B, C3グループに分け、3時限目を清水宏晏が主、4時限目を清水宏子と馬場理恵が主となり、全員で2つの「太極拳」授業の指導・習熟に当りました。これは、「24式太極拳」の初期導入には、予想外に手が掛かるからです。
   
幸運にも今年度は実質13回の(各90分)実技授業を実施でき、最終回の学生表演では、各グループが太極拳の格好と雰囲気を漂わせ、十分に満足できる演武を見せてくれ、その成果は十分得られたものと信じています。



「受講者の学年別、学部別の分布数」

3時限目:総数30名(男;6名、女;24名)
     1年生;29名、2年生;1名。
     教育学部;13名、地域科学部;5名、医学部;1名、
     応用生物科学部;4名、工学部;7名。

4時限目:総数30名(男;6名、女;24名)
     1年生;27名、3年生;3名。
     教育学部;2名、地域科学部;2名、医学部;11名、
     応用生物科学部;7名、工学部;8名。


                

最終日( 2009. Feb. 3 )の3時限目の集合写真

                

             最終日( 2009. Feb. 3 )の4時限目の集合写真


「簡化24式太極拳への取組み;目標と結果」

 「簡化24式太極拳」は、50余年前の1956年に太極拳の普及のために中国で制定され、24組の動作からなる標準的な太極拳として世界で広く愛用されている。それに要する時間は、通常6−7分くらいで、一見短時間と思える24式太極拳であるが、これをマスターするのは、なかなか難しい。それは、ただ24組の動作の順番(套路;とうろ)を覚えるだけでなく、太極拳の本質である「肩を落とし胸を張らず、体をゆるめる」「体の中心軸を垂直に持続して、重心移動を行う」「体をねじらない」「顔、手足、胸腰部の動きを協調一致させる」「動作のスピードを均一に」など多くの要求を満たさなければ、自然で美しい太極拳はできず、ぎこちない太極拳になってしまう。したがって、授業の最初には、毎回十分なストレッチで体を柔らかくし、そして太極拳の基本である手法(手の動き;例えば、体の前でボールをつくる(抱掌))や歩法(歩き方;足の出し方や重心移動の方法)の習得に時間をかけた。そして授業の前半部分では全員の総合練習により、平均すれば1回の授業で2組の新しい動作(套路)を覚え、さらに後半部分ではA, B, Cの3グループに分かれ少人数でそれらの習得の徹底を図った。
 学生諸君は、当初、何をやっているのか判らない様な反応であり(こんなはずではなかった、との表情を示す者もいた)、太極拳は予想以上にたいへんで、筋肉痛を訴える学生もいたようであった。しかし、回を重ねる度に、だんだんと太極拳らしい「ゆったりとした動作」を習得し、彼らの太極拳への順応性とイメージを体で表わす能力に驚いた。
 最終回のグループ表演では、A, B, Cグループがそれぞれ選んだ音楽、例えば、蕾(コブクロ)、ハナミズキ(一青よう)、カブトムシ(Aiko)、三日月(絢香)、姫神、などに合わせて、「簡化24式太極拳」をゆったりと演武してくれました。見ていた他のグループと指導者は、それぞれの表演に大きな拍手をおくりました。今年度は雪も少なく比較的暖かい冬でしたが、それでも大きくて冷えた体育館での練習を終えて、当初の基本に重点を置いた「太極拳」習得の目的を達成してくれた学生諸君を見ながら、大きな喜びと充実感を感じました。


「授業の様子を表わす写真」

               

               

               


「2つの授業を終えて;感想そしてお礼」

 太極拳を短期間に初心者に教えることは容易ではありません。それは、心(頭で考えること)と体(イメージを動作で表わす)の協調一致と融合には、長い時間を必要とするからです。今年度は、圧倒的に1年生の数が多く(特に、医学部からの受講者が多かった)フレッシュな若者達は、熱心に「太極拳」に挑戦してくれました。しかし、1年生のためか、初めの頃はなんとなく静かで盛り上がらず、指導者達はその雰囲気を心配していました。しかし、回を重ねる内に、自主的に太極拳のそれぞれの動作を質問したり、また具体的に自分の動作のチェックを求めたり、やる気が十分見えてきました。そして、最終的には、最終回のグループ表演に向けて、みんなの気持がまとまりました。
 今年度の授業でも、かっての「簡化24式太極拳」を全てマスターさせることをあきらめ、「太極拳」の基本をじっくり習得してもらうことに主眼を置きました。その結果、24組の内の20番目(シャントンペイ)までで終わりました。それは期間的に十分な余裕がなく、また限られた時間内で行わなければならないためです。受講生の授業終了後の感想文の中には、24式の最後までやりたかった、との意見も少しありますが、練習を走らないで基本をじっくりやれて良かったとの意見も多くありました。大切なことは、「太極拳」の真髄を知ってもらうことである、と信じています。

   
最後に、この「太極拳」の授業を実施することに協力いただいた教育学部保健体育の川岸教授をはじめ、スポーツ/健康科学のスタッフにお礼を申し上げます。今年度も2コマ(2回)の「太極拳」授業が出来たことは、より多くの学生諸君に太極拳を体験してもらったことを意味しており、3人の教員は非常にうれしく思っています。清水宏晏は、本年度で工学部教授を定年退職しますが、次の平成21年度も非常勤講師として、今年度と同様に「太極拳」授業が2コマ実施できることになっており、また意欲を新たにしております。ありがとうございました。また、授業直前の第2体育館内の環境整備や授業の写真記録などに協力いただいた工学部清水研究室の皆さんに深く感謝いたします



3時限目のグループの最終表演「24式太極拳」の動画

   ↑クリックすると別枠で動画(wmvファイル)を見ることができます。
   (約6分)大きい画面はこちら





授業終了後に寄せられた3時限目と4時限目の受講生の感想文の中から,彼らの承諾を得て,7編を以下に載せました。


「太極拳の授業を終えて」
                                                                                             応用生物科学部 1年 夏目尊好


 私が太極拳を履修しようと思った理由は、太極拳ってどんな武術なのだろうと単純に思ったからである。小学校から高校まで、少林寺拳法をやってきた私には、少林寺拳法以外の武術がどんなものなのか、まったく分からなかった。そして、他の武術にも興味があった。そこで、太極拳を履修することにしたのである。少林寺拳法を長くやっていたため、太極拳の新しい動きが出てくると必ず、この動きは何のための動きだろう、どこを守るための動きだろうと考えていた。そして、少林寺拳法との共通点や相違点を探しながら、授業を受けていた。そうすると、意外にも多くの共通点があり、やはりどちらも素手で戦う武術だなと思った。「倒巻肱」での片手の位置を変えずに足を後ろに下げていく動きや、「穿梭」の片手で相手の攻撃を防ぎながら、相手に攻撃をしかける動きは、少林寺拳法とほとんど同じであった。頭の中では、こんなことを考えながら、太極拳を習得していった。

最初の授業で清水先生たちは、「24式太極拳」を見せてくださった。それを見た私の最初の感想は、一通りの演武が長いということだった。少林寺拳法にも演武は存在するが、一通りの演武が、5分近くもある演武は存在しない。そのため、すべて覚えられるか不安になった。毎回の授業では、24式の内、2つくらいずつのペースで進んでいった。なので、1回の授業での負担は少なかったが、やはり回を重ねるごとに覚えていくのが、つらかった。一番つらかったのは「単鞭から雲手、単鞭」のあたりで、ここの部分は、授業の回数が終わりごろにならないと覚えられなかった。少林寺拳法とは異なり、太極拳は動きがとてもゆっくりしていた。初めのうちは、それがなんだか物足りなかった。しかし、授業の回を重ねていくと、そのゆっくりとした動きをしながら、その動きに呼吸を合わせるのが気持よくなってきた。不思議な感じではあったが、音楽に合わせて演武をおこなうことが、より気持よかった。
    太極拳で一番難しかったのは、一つ一つの動きの中で「力を抜く」ということだった。普段の生活でも意識して力を抜く場面というのは少なく、また少林寺拳法においても、演武の中で力を抜く場面は少ないため、太極拳の演武で力を抜くというのは、非常に難しかった。太極拳は体の力が抜け、動きがしなやかであることが、きれいであるのに、私はどの動きをしても必ず肩や腕に力が入り、動きが硬くなってしまった。そのため、先生に何度も肩の力を抜くように指導を受けた。そのおかげで最初のうちは、ガチガチだったと思われる私の動きも、授業の終わりごろには、いくぶん力が抜けるようになったと思われる。また、意識的に力を抜くようになった。太極拳の授業では、力を抜くということは意外にも難しいということを学んだ。
    最後の授業で、先生方が披露してくれた「32式太極剣」は、かっこよかった。しかし、動きは24式太極拳よりもはるかに複雑そうだった。先生方の指導は、とても熱心で丁寧に動きの説明をしてくださったので、とてもよく理解することができた。これからも何かの機会に太極拳にふれることがあれば、積極的に参加してみたいと思う。太極拳の授業を履修したことで、今までやってきた少林寺拳法とはまた違った武術の一面を体験することができた。私は、太極拳の授業を履修してよかったと思う。


「太極拳との出会い」
                                         工学部応用情報学科 1年 岩本真奈美

入学した当初、体育の授業に太極拳があるのを見つけた私は「柔道や剣道ならわかるけど、太極拳もやれるんだ、すごいな…」と感心してしまいました。同時に、懐かしいなという思いもありました。そう思ったのには、訳があります。
    私は、小学校5年生のときに一度、太極拳を体験したことがあります。5年生のあるクラスの担任の先生が中国にとても詳しかったこともあり、運動会で「24式太極拳」を表演することになったのです。その時は、どういったものをやるのか見当もつきませんでしたし、実際にやってみても、“形だけやっています”、という感じで、動作の意味も全くわからず、言われるがままに動いていました。そして8年後、久しぶりにやってみようかなと軽い気持で、この太極拳の講義を受け、再び太極拳をすることになったのです。
 最初、先生たちの演武を見た時、初めの方は、この動き、覚えている!と思ったのもありましたが、後半にいくにつれて、「?」の数が増えていったのは言うまでもありません。

 実際にやってみると、こんな動きだったっけ「?」とさすがに8年も前のことだったので、ほとんど頭から抜けていて、また一からしっかり覚えようと思い直しました。太ももの筋肉がプルプルして、こんな状態で最後までできるのかなと不安にもなりました。ですが、清水先生や宏子先生、馬場先生が丁寧にわかりやすく教えてくださり、時間がたつにつれて、楽しいと思い始めていた自分がいました。
 この講義を受講して気づいたことが沢山ありました。

 一つ目は、太極拳は球技などの普通の運動と違って、全身運動であるということ。実際に体重移動や手と足を同時に違う格好で動かしたりするし、なにより中腰姿勢で常に動き続けなくてはいけないことを身にしみて感じました。
 二つ目に、相手を想像すること。太極拳は、その動きからは想像つかないけれど、武術なので、常に相手を想像しながらやるとわかりやすいと感じました。

 三つ目に、気を意識して練習すること。太極拳と言えば、気を大切にしていくという意識が私の中にはあったので、どの動作をするにも「気」を意識してやりました。

 四つ目に、何よりも楽しいということ。初めは覚えるのに必死で、こんな形でいいのかなとか、動作があっているのか不安が多かったのですが、その都度、先生方がいろいろなアドバイスをくださり、先生方の動きを見て、真似するようにしたところ、動き方のコツやタイミングをつかむことができるようになり、太極拳の時間が楽しみになりました。

 小学5年でやったときは、手の細かい動きや足の動きなど、訳が分からなかった私ですが、この講義を受けたことで、太極拳の奥深さを知ることができました。「24式太極拳」すべてをやることは時間の都合上、無理でしたが、いつかは24式すべての動きをマスターしていけたらと思っています。
 また、最後の授業で先生方が表演した剣を使った「32式太極剣」を見て、古代から続く太極拳が時代を超えて私の目の前にあることや、自分が時代をさかのぼってこの演武を見ているような何とも言えない雰囲気を感じ、不思議な感覚になりました。自分もこんな風に演武ができるようになれたらいいな、と思いました。また、太極拳にもたくさんの流派や種類があることを知りました。
 最後になりましたが、一つ一つの太極拳の技や方法を、丁寧にかつ優しく、分かりやすく教えてくださった、清水先生、宏子先生、馬場先生に感謝の気持でいっぱいです。これから先、太極拳をする人がたくさん増えることを願っています。
 本当に、楽しかったです。ありがとうございました。


                「太極拳の感想」
                           地域科学部 1年 箕浦みさき

  12月のある日、映画を観た。といっても英語学習のために部屋にいる間CDを聞くように映画を流しているので、その映画を観るのは7回目くらいであった。「イン・ハー・シューズ」という、キャメロンディアスが主演の映画である。いつも通りにテレビ画面を観たり観なかったり、適当に流していたのだが、ある場面で、急に目が止まった。思わず巻き戻してもう一度見てしまった。アメリカの住宅地にある公園で、老人たちが太極拳をしているのである。5秒ほどの非常に短いシーンであったが、そのまま述べると「おお!太極拳じゃん!」である。何度も観たシーンなのに授業で太極拳に取り組むまで全く何も気づかなかったのだ。なんだか不思議と嬉しかった瞬間であった。
 以上のことからも分かるように、太極拳という言葉自体は皆に知られているが、一体どんなものなのかと言われるとなかなか答えられる人は少ないであろう。実際私もそうであった。初回の授業では何が何だかよくわからないが、とにかく先生方の真似をしてみる、という状態で、正直に言うとあまり楽しめていなかった。しかし授業も後半に入り、気が付くと先生を見ずにできるポーズが増えてきて、(もちろん不格好ではあるが繰り返すうちに何となく覚えていったのだろう)だんだん楽しくなってきた。10回目の授業からは音楽に合わせて太極拳をするということになり、ますます楽しくなるとともに、やりがいを感じた。物事はよくそうなるものだが、楽しく、かつ慣れてきたところで終わってしまうのである。もちろん授業が終わるだけであってこれからも続けることは可能かもしれないが…、やっと太極拳というものに近付けたと思ったら授業は最終回を迎えてしまった。
 他大学に通う友達に言われる。「太極拳?そんな授業うちの大学にはないよ〜」そう、どうやら授業として大学で太極拳を行っている大学はそう多くはないのである。この授業の目的はどのようなものであるか、先生が定めるところであろうが、私はこう思う。今まで触れた事のないスポーツ「太極拳を体験してみる」ということである。決して授業を軽く見ているから体験といったわけではなく、普段あまり触れることのない太極拳を紹介され、体験でき、それは経験となる。本当にいい機会だと思う。そして、かけがえの無い経験になると思う。今後もぜひこの授業が岐阜大学で行われ、多数の学生が太極拳に触れ、知ることができたら、と願う。最後に3人の先生方、ご指導ありがとうございました。


「太極拳の授業を受けて」
                教育学部 特別支援学校教員養成課程 1年 山下陽子

 高校生のとき中国にホームステイしたことがあります。ステイ中、毎朝公園の前を通るたびに集団で太極拳をしている人たちを見て、当時は太極拳だということがわからなかったので、ホストシスターに何をしているのか聞いたことを覚えています。そのときは太極拳が中国のものだという考えがあったので、自分ができるとは思っていませんでした。しかし、大学に入って体育の授業で太極拳があることを知り、せっかくの機会なのでやっみようと思い受講することにしました。
  授業初日、先生方に太極拳を見せていただきました。遠くからしか見たことがなかったので、近くで初めて見てその独特な動きに見入ってしまいました。こんな繊細な動きを自分ができるのかな…と不安もありました。

    実際にやり始めてみると、やはり難しかったです。動きを覚えるのはもちろんですが、指先にまで集中して一つひとつ動いていくのは大変でした。普段はすることのないゆっくりとした動きが、予想以上に体力や集中力を使ったような気がします。最初は先生や近くの人の動きを見て、ついていくのがやっとでしたが、毎回先生方がゆっくり丁寧に指導してくださり、グループに分かれて細かく教えてくださったので、だんだんと落ち着いた気持で授業を受けることができるようになりました。何回も繰り返し練習することで、前の動きを忘れることなく次に進めたので良かったです。音楽に合わせての練習もとても楽しかったです。
    最終日のグループごとの発表はとても緊張しました。練習のときは何気なくできていた動きも、いざ発表するとなると思ったように動けませんでした。途中で間違えてしまい残念でしたが、一生懸命できたと思います。上手にはできなかったけれど、約半年間頑張って取り組んできて良かったです。授業の最後に先生方に見せていただいた剣を使った「32式太極剣」の演武はとてもきれいで、あらためて太極拳は奥が深いなと感じました。
    教室でじっと座って講義を聴いていることが多い大学の授業の中で、太極拳の授業は1週間の中で1番集中していたような気がします。何でもゆっくりとすることが好きな私にとって、とても落ち着く時間でもありました。他のスポーツと違って、人と競ったり勝ち負けを決めたりすることがないところや、周りの人と動きを合わせて穏やかな気持でできるところは、太極拳にしかない魅力だと思いました。
    最後に、10月から毎回毎回丁寧に、わかりやすく指導してくださった清水先生、宏子先生、馬場先生、本当にありがとうございました。最初は私にできるのか心配だったのですが、先生方のおかげでいつの間にか楽しく取り組めていました。これから、太極拳を通して学んだ集中力を忘れずに、いろいろなことに挑戦していきたいと思います。また、ホストファミリーと共有できる話題が増えたので連絡をとりたいと思いました。


「太極拳レポート」
                                               医学部 看護学科 3年 和田称子

    私は、全学共通教育の授業の中で、スポーツの単位をとる必要がなかったのですが、自由選択科目の枠内で、どうしてもスポーツをやりたいと思い、体育の授業を選択しました。以前、私は看護短大に在籍していたのですが、そこでの病院実習で入院患者 (糖尿病) のために開かれる健康教室で、受け持ちの患者さん達と一緒に「太極拳ウォーキング」に取組んだことがありました。その経験から、これから看護師として働く自分には、「太極拳」がぜひ必要だと考え、多くの授業の中から太極拳を選択しました。
    太極拳は動きがゆっくりですので、せっかちな私には当初とても苦痛でした。しかし、授業で練習を重ねるうちに、もっときれいにやりたい、もっと先生に近づきたい、と強く思う様になりました。常に大腿筋を使うところは、私が高校時代にやっていた「槍投げ」に似ていると思い、徐々にやる気がわいてきました。
    私は3年次編入学の3年生、まわりの受講生は、ほとんど1年生ばかりで、同じ編入学の友人2人と授業の個別練習グループが異なったため、初めは消極的でした。しかし、上述の積極的な気持を持つようになってからは、同じ看護学科の1年生や、医学科の1年生と少しずつ話すようになり、共にわからないところを確認し合い、練習するようになりました。それから、太極拳の授業がどんどん楽しくなり、さらに、音楽に合わせるようになってからは、その気持がより一層強くなりました。
 太極拳が病院の健康教室や、お年寄りの運動にも利用されているのは何故か、と考えてみました。全身の大きな筋肉 (大腿筋・上腕筋) を使うことで、少しのエネルギー消費で身体を動かすことが出来ます。そして、ゆっくりとした動きのため、急激な筋肉や関節の使用を避けることができます。息の乱れも最小限に抑えることができ、精神的疲労感も少なくすることが出来て、運動の継続にもつながります。関節可動域が広いため、徐々に可動域を拡げ、筋力アップにもなります。この点から、高齢者の健康維持・増進に、太極拳は最適であり、糖尿病患者の運動療法にも適していると感じました。そして、集団で仲良く、太極拳をすることが、精神的な健康にもつながるのだと強く思いました。
 諸先生方、半年間のご指導、ありがとうございました。


「太極拳の授業を終えて」
                                    応用生物科学部 獣医学課程 1年 井上紗季


 私にとって太極拳の授業は、回を重ねるごとに楽しくなる、とても素晴しい授業だった。実のところ私が太極拳の講義を選んだ理由は、太極拳はゆっくりと動くものだから、極端に運動音痴な私でも楽に出来るのではないかと思ったからだった。しかし、その予想は見事に外れ、初回の講義から筋肉痛に襲われた。しかも初めのうちは知り合いが一人もいなくて心細かったし、自分を鏡で見ながら、しかも人前で太極拳を学ぶのはなんだか恥ずかしくて、大変な授業を選択してしまったなぁと思っていた。
    しかし、すぐに私は毎週の講義を楽しみにするようになっていった。今は終わってしまったのが寂しい位だ。新しい動きを教わる度に混乱し、なんとなくわかったかと思うと、更に新しいのを覚えなくてはならず、また混乱してしまう。毎回そんなことの繰り返しだったが、とてもやり甲斐があり、楽しかった。
    太極拳は自分との勝負だったと思う。先生方が言われた事に気を付けたり、自分の頭で考えて工夫をしてみると、少しずつでも上達する。手を抜こうとしたり、まぁこんなもんで良いだろうと妥協してしまったらそこまでだ。たくさんの技を覚えるのはとても難しいし、一つ一つの動作をもっときれいにしたいと思えば更に大変だったが、そうしてどこまでも追求し続けることが出来るからこそ、太極拳はおもしろいのだと思う。最後の講義まで先生達に比べたらまだまだかっこよく演武することは出来なかったし、発表のときは緊張のあまり怖い顔でこわばった動きをしてしまった。それでも一生懸命練習してきた結果なので、達成感を得ることが出来た。
    また、太極拳のおかげで友達もたくさん出来た。中には授業以外でも、一緒にラーメン屋に行けるほどに仲良くなれた友人もいた。普段は同じ獣医の友達と固まっていることが多く、他の学部の知り合いが出来ることはあまりないので、とても嬉しかった。これからは更に専門科目が増えるので、もうこの様な良い機会はないのではないかと思う。
    この太極拳の講義で得られた奥深く追求する楽しさや、えられた素敵な友達を、これからずっと大切にしていきたい。
    半年間、本当にありがとうございました。


                        「太極拳を通して」
                  教育学部 特別支援学校教育課程 1年 西川紗帆

私が太極拳の授業をとろうと思った一番の理由は、何か新しいことをやってみたいという思いがあったからです。小中高とやってきたスポーツとは違う、大学だからこそできるようなものは何かないかなあと思ってシラバスを見ていた時に、目に入ったのが太極拳でした。はっきり言って、太極拳がどういうものなのか、ほとんど分かっていなかった私でしたが、もの珍しさと、なんとなく楽しそうだし、これなら筋金入りの運動音痴の私でも大丈夫だろうという勝手な予想から、太極拳の受講を決めました。

しかし、実際に取り組んでみた太極拳は想像していたほど簡単ではなく、むしろ大変なものでした。初めは先生方の動きを見よう見まねでやってみることはできても、太極拳には程遠い、変わった動きの盆踊りみたいになってしまい、どうしたら先生方のようにかっこよくできるのだろうと、いつも考えて練習していました。ゆっくりした動きだからといって「へなへな」していてはいけない、だからといって、体が固くなってもいけない、そのバランスが太極拳における、とても大事なポイントなのだと私なりに思いました。しかし、言葉では簡単に言えても、体は思うように動かず、どこかぎこちない動きになってしまい、自分の体を思い通りに動かすことの難しさを痛感しました。
    私は高校からアーチェリーというスポーツを部活でやっていて、ずっと自分の中で課題となっていることがあります。それが、肩に力が入ってしまうことです。どんなに力を抜こう抜こうと思っていても、いつの間にか、肩に余分な力が入ってしまい、肩が上がってしまうのです。今回、太極拳の授業の中で、同じように肩のことを注意されたことが何度もありました。そのたびに、ああ、アーチェリーのときと同じだと思い、体の余分な力を抜くことを意識して練習するようになりました。心を落ち着け、体から余分な力を抜き、かつ、安定した姿勢で立つこと。簡単そうで、これをずっと保ち続けるためには、思ったより神経や体力が必要で、驚きました。それでも何度も練習をするうち、なんとなくではあるけれど、コツみたいなものがつかめるようになってきた気がします。よく考えてみると、人間は、生まれた時は、皆、ほとんど自分の体を動かせない状態で、今、当たり前のように行っている、食べたり、歩いたり、書いたり、という動作も、全てすぐにできるようになったわけでなく、繰り返し、繰り返しやっているうちに、次第にスムーズに意識をせずにできるようになったのだと、改めて感じました。
    今回、太極拳の授業を通して、日常生活でも、背中を伸ばしていい姿勢で立つことを心がけるようになりました。おおげさな言い方かもしれませんが、きれいな姿勢を意識するだけで、心と体がすっきりして、世界が変わった、という感じがしました。この授業の前までは、中国で人々が太極拳を毎朝やっている様子などを見ると、ゆっくりした動きであるし、ラジオ体操みたいに体を伸ばしたり、大きく動かしたりするわけでもなさそうだし、やっていて何か意味があるのかなあと思うこともありました。しかし、実際に授業でやってみて、太極拳が健康にいいと言われる理由が分かりました。私は、まだまだうまくできるようにはなっていないし、動きもぎこちないけれど、これからも、時々太極拳をやっていけたらいいなあ、と思っています。
    最後に、ご指導いただいた、清水先生をはじめ、宏子先生、馬場先生、本当にありがとうございました。リラックスが苦手な私でしたが、先生方の笑顔と明るい指導により、最終的には体の余分な力を抜いて、太極拳を楽しめるようになりました。これからも、ずっと元気でいて、太極拳のおもしろさを、たくさんの人達に伝えていってください。